
こ〜ちゃん🌱
50代男性です💪フォローはどうぞ👌フォロバ100%👍アウトドアが大好き。小さなアジやサバを釣ることが多いですが、次はもっと大物を!
趣味は登山や釣り、DIY、BBQを楽しんでいます。釣った魚を使って料理を作るのが好きです。筋トレを始めて、体を鍛えることにも力を入れています💪
「イケオジ」目指して頑張っています。料理投稿多めのです。見ていただけると嬉しいです。いいね❤️してくれると嬉しいよ
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痩せるの頑張りたい
将来のために貯金してます
仕事よりもプライベートが大事
兄弟、姉妹がいる
両親に感謝してます
包容力のある人
御朱印

こ〜ちゃん🌱
12月24日。
街が浮き立つクリスマスイブの日に、母は長い入院生活を終えて家へ戻ってきた。
この日を選んだのは、私だった。
年末ぎりぎりまで病院にいるよりも、ほんの1日でも早く、自分の家の空気を胸いっぱい吸ってほしかった。
病院と話し合い、リハビリの進み具合を確認し、この日なら大丈夫だと判断した。
昼前、母は自宅の玄関をくぐった。
懐かしい匂い、差し込む冬の光。
「やっぱり家はいいね」
その一言に、私は少し肩の力が抜けた。
だが、喜びは長くは続かなかった。
午後からは、在宅リハビリの担当者、ケアマネージャー、ヘルパーさんが次々と訪れ、退院後の説明や確認が続いた。
気がつけば夕方。
それでも終わらない。
夜は、母が安心して眠れるように、部屋を整えた。
腰をかがめることができない母の代わりに、押し入れの下段の物を整理し、手の届く高さへ移す。
ひとつひとつが、小さな作業でありながら、どれも欠かせない。
その合間に、私は思っていた。
今日はクリスマスイブだ。
せめてケーキくらいは——。
高価なものじゃなくていい。
スーパーで売っているスポンジ、生クリーム、少し安くなっていたいちごと、白桃缶。
それだけで十分だと思った。
車に積んであったフードプロセッサーで、生クリームを泡立てる準備もしていた。
甘さを加えるとき、砂糖は使わなかった。
母は血糖値を気にしている。
だから、カロリーゼロのシロップタイプの人工甘味料を、少しずつ加えた。
身体を思う、その一手間も、ケーキ作りの大切な一部だった。
けれど、その日は時間が足りなかった。
気力も、体力も、そこで尽きた。
翌12月25日。
少しだけ、時間に余裕が生まれた。
「お昼の前に、みんなでケーキ作ろうか」
そう声をかけると、母は少し驚いた顔をして、そして微笑んだ。
簡単な、いちごのホールケーキ。
生クリームを塗って、いちごを並べるだけ。
それでも、部屋には確かにクリスマスがやってきた。
退院祝いと、ささやかな祝福。
そこへ、1人暮らしをしている孫がやって来た。
母にとっては、何より嬉しい存在だ。
久しぶりに顔を見せ、同じ時間を過ごすために帰ってきてくれた。
そして家に入るなり、孫が最初に向かったのは——
母の寝室にある、仏壇だった。
静かに線香に火をつけ、
チン、と鈴を鳴らし、
何も言わずに、手を合わせる。
その背中を、母はじっと見つめていた。
初日で訪問していたヘルパーさんも、そっと目を潤ませていた。
誰に教えられたわけでもない。
でも、この家で大切にされてきたものを、ちゃんと受け取っている。
その姿に、言葉はいらなかった。
人を思う気持ちは、声高に語られなくても伝わる。
家を整える手の動きにも、
間に合わなかったケーキの準備にも、
遠くで1人暮らしをしながら、まず祈るその背中にも。
人生は、派手な出来事よりも、
こうした静かな優しさの積み重ねでできているのかもしれない。
退院という節目の日。
クリスマスという特別な時間。
この家には、またひとつ、忘れられない思い出が増えた。
そしてきっと——
母がこの家で過ごすこれからの日々も、
誰かのさりげない優しさに支えられながら、
ゆっくり、穏やかに続いていくのだろう。










こ〜ちゃん🌱
年賀状がつないだ、30年分の時間
実家の庭先にあった洗濯機が、家の中へと移された日。
それは、母の退院に向けた準備の中で、いちばん大きな山だった。
重たい洗濯機が無事に収まり、配管も整い、スイッチが入るのを見届けたとき、
胸の奥で「峠を越えた」という感覚が静かに広がった。
母がまた、この家で暮らしていくための一歩が、確かに刻まれた瞬間だった。
年末が近づき、ふと思い出した。
――そういえば、年賀状を作らなければならない。
実家の年賀状は、いつからか私の役目になっていた。30年ほど前、父の目が病で見えにくくなり、
やがて日常の多くに介助が必要になった頃のことだ。
それまで父が担っていた年賀状作りは、
印刷屋に頼み、宛名を書き、投函するまで、すべて父の仕事だった。
だが、その役目は突然、母の肩にのしかかった。
ある日、母はぽつりと言った。
「もう、年賀状はやめようと思う」
父はもう、届いたはがきを読むことができない。
そして何より、介護に追われる日々の中で、
50枚、100枚という年賀状を準備する余力が、母の身体にも、心にも、残っていなかった。
そのとき、私はちょうどパソコンを買ったばかりだった。
画面の中で文字が並び、プリンターから紙が吐き出される。
表も裏も、自動で印刷される年賀状ソフト。
「僕がやろうか」
その一言が、すべての始まりだった。
それから毎年、実家に届く年賀状は、いったんすべて私の元へ送られた。
住所録を作り、通信面を考え、宛名を印刷する。
仕上がった見本を母へ郵送し、電話で一通一通確認する。
「この人には出す」
「この人は、もうやめていいね」
遠く離れていても、
年賀状を通して、私は実家の年末に寄り添っていた。
父が亡くなったのは、18年前。
それでも、年賀状は続いた。
父の代わりに母が、母の代わりに私が、
静かにバトンをつないできた。
そして今年。
病室で、母は言った。
「これが最後の年賀状にしたい」
時代は変わった。
年賀状は、もう当たり前のものではなくなった。
それでも、母の中では、
30年分の想いが、そこに詰まっていたのだと思う。
私は通信文を考え、
“年賀状じまい”の言葉を添えた。
それを病室で母に見せると、
母は何度もゆっくり読み、静かにうなずいた。
住所録を一人ずつ読み上げ、
出す人、出さない人を確認する。
その作業は、まるで人生を振り返るようだった。
父が見えなくなった年。
父が旅立った年。
そして今、母が病室で退院の日を待つ、この年。
年賀状は、すでに投函を終えた。
母が自宅に戻る頃には、
すべて終わっている。
けれど、終わるのは年賀状だけだ。
30年分の想い、
支え合ってきた日々、
家族の時間は、確かにここに残っている。
洗濯機の回る音。
印刷されたはがきのインクの匂い。
電話口での「ありがとう」。
それらすべてが、
静かに、温かく、
これからも心の中で回り続ける。
年賀状が終わっても、
家族の物語は、まだ続いていく。




こ〜ちゃん🌱
洗濯機を移動した翌朝、
私は新しく設えた洗濯機の前に立ち、
しばらくその場所を眺めていた。
段差はなくなり、
動線も安全になった。
ここまでは、うまくいっている。
そう思ったそのとき、
胸の奥に、ふと小さな違和感が生まれた。
「……まだ、足りない」
洗濯機の位置は整った。
けれど、
“洗濯をする”という一連の動作を、
本当に最後まで思い描けていただろうか。
頭に浮かんだのは、
母の手だった。
左手が、うまく動かない母。
それなのに、
母はいつも粉の洗濯洗剤を使っていた。
以前は、
液体洗剤の方が便利なのに、と
不思議に思っていた。
でも、今ならわかる。
液体洗剤のボトルは、
両手が使える人のために作られている。
キャップを開け、
量を量り、
注ぐ。
左手が自由に使えない母には、
その一連の動作が成り立たなかったのだ。
だから母は、
右手ひとつで完結する方法を選んでいた。
粉洗剤を、
スプーンですくって、
洗濯機に入れる。
それが、
母なりにたどり着いた答えだった。
---
外に洗濯機があった頃、
床や洗濯機の周りに
白い粉が散っているのを、
私は何度も見ていた。
きっと、
うまくいかなかった日も多かったのだろう。
思うように洗剤が入らず、
こぼしてしまうたびに、
母の心には
小さな残念が積み重なっていたのかもしれない。
「これは……なんとかしなきゃいけない」
それは、
誰かに任せることではなく、
今ここにいる自分の役割だと、
はっきり思えた。
私は定年して一年が過ぎていた。
現役時代、
人の動きや姿勢を考えながら
仕事をしていた環境を、
ふと思い出す。
人間工学——
人が無理をしないための考え方。
そうだ。
母の“動作”を、
最初から最後まで、
一つずつ思い浮かべてみよう。
右手でスプーンを持つ。
洗剤をすくう。
洗濯機の中へ運ぶ。
このとき、
こぼれない位置はどこか。
体のバランスを崩さない高さはどこか。
私は、
洗濯機の横に
木で作った小さな洗剤台を設けることにした。
粉洗剤の箱が、
ぴたりと収まるサイズ。
ぶつかっても、
倒れない。
落ちない。
洗濯機の縁すれすれ、
少し高い位置。
スプーンを持った右手が、
そのまま真上から
洗濯槽に入れられる場所。
これなら、
外にこぼれる心配はない。
さらに、
左足も不自由な母は、
ときどきバランスを崩す。
だから私は、
その洗剤台の縁に、
小さな取っ手をつけることにした。
二十センチにも満たない、
ささやかな取っ手。
けれど、
そこに手をかけるだけで、
体は安定する。
洗剤を入れるという
何気ない動作が、
安心に変わる。
母が、
気持ちよく洗濯できるように。
ただ、それだけを考えていた。
---
材料は、
ホームセンターで手に入る
安価なワンバイフォー。
木ネジは、
少し多めに、
少し長めに。
強度は、十分だ。
そして使った電動工具は——
父のものだった。
二十年近く前に亡くなった父が、
私に残してくれた電動工具。
ドリルドライバー。
サンダー。
ジグソー。
新しく買ったノコギリと一緒に、
木を切り、
削り、
組み立てていく。
その音の中に、
父の気配を感じた。
この手は、
父から受け継いだもの。
この想いも、
きっとそうだ。
---
取っ手は、
ただの金具にはしなかった。
ジグソーを手に取り、
木に鉛筆で、
そっと手の形を描く。
大きすぎず、
小さすぎず。
母の手が、
自然に収まる形。
ジグソーの音が、
静かな家に響く。
父も、
こんな音を立てながら
何かを作っていたのだろうか。
切り抜いたあとは、
電動サンダーで、
時間をかけて磨いた。
角を落とし、
引っかかりがなくなるまで。
触れた瞬間、
「怖くない」と感じるまで。
磨きながら、
ふと思った。
これは、
父の手だ。
母がふらついたとき、
そっと差し出される手。
転びそうな瞬間に、
迷いなく掴める手。
父はもう、
この世にはいない。
けれど、
その手の記憶は、
確かに残っている。
そして今、
その手は、
私を通して、
母のそばにある。
父から私へ。
私から母へ。
やさしさの、
静かなバトンタッチ。
---
取っ手を取り付け終えたとき、
洗剤台は、
まるでずっと前から
そこにあったかのように
家になじんでいた。
母が洗濯をするとき、
右手でスプーンを持ち、
もし体が揺れたら、
その取っ手に手をかける。
小さな動作。
でも、
確かな安心。
きっと母は、
理由など考えない。
「なんだか、今日は洗濯しやすいね」
そのくらいの感覚で、
それでいい。
---
作業を終え、
一歩下がって全体を見たとき、
空気が、
ふっとやわらいだ気がした。
窓から差し込む光が、
木の取っ手に当たり、
ほんのりと輝いている。
父が、
どこかで微笑んでいるような気がした。
「よくやったな」
そんな声が、
聞こえたような気さえした。
神秘的なことかもしれない。
けれど、
心は不思議と静かで、
満たされていた。
---
これは、
特別な家具ではない。
高価なものでも、
最新の福祉用具でもない。
ただ、
母の動きを思い、
父の手を思い、
今日を安全に過ごしてほしいと願って
作ったもの。
それだけで、
十分だった。
父の優しさは、
消えていなかった。
形を変えて、
私の手に宿り、
母の暮らしを、
そっと支えている。
洗濯機のそばで、
小さな木の手が、
今日も静かに、
待っている。










こ〜ちゃん🌱
12月の冷たい空気のなか、
私はハンドルを握りながら、遠く950キロ先の実家を目指していた。
飛行機でも、新幹線でもなく、車。
それは長くここに滞在する覚悟と、
そして年老いた一匹の犬を、
どうしてもひとりにできなかったからだ。
後部座席には、
車中泊ができるように手を入れた小さな“居場所”と、
私の足元にぴたりと寄り添う、
白くなった口元の犬。
「一緒に行こうな」
そう声をかけると、
犬はわずかにしっぽを揺らした。
---
実家に着いて、
最初にしたことは掃除だった。
高齢になった母の暮らしは、
知らぬ間に、少しずつ手が届かなくなっていた。
丸一日かけて、
床を拭き、埃を払い、
「人が安心して暮らせる家」に戻していく。
翌日、
母が怪我で入院している病院から、
リハビリの担当者、ケアマネージャー、
福祉用具の業者さんが集まった。
家屋調査——
退院後、この家で安全に暮らせるかを確かめるためのものだった。
玄関の段差は25センチ。
母は、そこを越えることができなかった。
「病院のリハビリでは、15センチが限界です」
静かな声で、担当者が言った。
25センチは、
2段に分ける必要がある高さ。
皆が、母の体の動きを見つめながら、
できること、できないことを丁寧に拾い上げていく。
---
そして、洗濯。
古い家屋のつくりで、
洗濯機は家の外にあった。
勝手口の段差、
その先にさらに二段。
水を含んだ洗濯物を抱えて、
その道を何度も往復する——
それは、母にはもう危険なことだった。
「洗濯は、週に一、二回、誰かに任せましょう」
そう提案されても、
母は首を横に振った。
「毎日、自分でやる」
その声は、頑なで、
でもどこか、震えていた。
---
私は、その夜、ひとりで考えた。
母の“できない”を増やしたくなかった。
母の“自分でやりたい”を、
奪いたくなかった。
だから、決めた。
——洗濯機を、家の中へ。
給水ホースと排水ホースを延ばし、
壁に穴を開け、
電源コードは足に引っかからないよう、
慎重に位置を選んだ。
見た目も、できるだけ整えた。
ホースは固定し、
「危なくない」「使いやすい」場所をつくった。
それはDIYというより、
暮らしを守るための、
小さな工事だった。
---
完成した洗濯機の前で、
母はしばらく、何も言わずに立っていた。
そして、ぽつりと。
「……これなら、できるね」
その一言に、
胸の奥が、静かにあたたかくなった。
犬は足元で眠っていた。
遠くから来たこの家で、
少しだけ、安心したように。
950キロの道のりは、
決して短くなかった。
でもその距離は、
母の暮らしを、
ほんの少し安全に、
ほんの少しやさしくするための距離だったのだと、
私は思っている。










こ〜ちゃん🌱
いつも投稿やコメント、音声ルームなどで
温かくつながってくださっている皆さまへ。
実は私、 950キロ離れた実家へ帰ります。
入院している母がもうすぐ退院となり、
しばらくの間、母のそばでサポートしながら生活することになりました。
そのため、このSNSでの投稿やコメント、
音声ルームへの参加などの頻度が、
これから ぐっと少なくなると思います。
でも、これは少しの間だけ。
1ヶ月〜1ヶ月半ほど経った頃には、また自宅に戻り、
キッチンからの料理投稿を再開するつもりです。
また皆さんと温かい時間を共有できる日を楽しみに、
母と向き合う時間を大切にしてきます。
しばらくの間、お待ちいただけたら嬉しいです。
どうか皆さんも、お体に気をつけてお過ごしくださいね。
また笑顔でお会いしましょう。
こ〜ちゃんより🌿


こ〜ちゃん🌱
11月の終わり、冷たい風が吹きつけるある日。
いつもならアウトドア用品でいっぱいの車の荷室に、今日は違うものが並んでいた。
木工の工具、電動工具、電気工事の道具、そして水道の配管に使う工具。
そして、その中央にそっと置かれた、三つの古びた電動工具。
電動サンダー、ドリルドライバー、そしてジグソー。
それらは、17年前に天国へ旅立った父から譲り受けたものだった。
黒ずんだ傷の一つ一つが、父が手にしていた時間の長さを物語っている。
今まで幾度となくDIYの場で使い続けてきた工具たちだが、
今日は特別な意味を帯びていた。
――母が入院した。
退院後は、自宅で不自由な体と共に生活しなければならない。
950キロ離れた母の場所へ、老犬を連れて向かわなければならない。
その家を、安全に、暮らしやすくするための準備を。
車の荷室からは、キャンプ道具も釣り具も消えた。
替わりに積まれたのは、たくさんの工具と、そして大きな決意だけだった。
---
実はその少し前、旅の途中で7年間愛用していた小さな15Lの冷凍庫がとうとう壊れてしまった。
冷凍庫で作った氷をクーラーボックスに移し替えたり、
氷を取り出すたびに車を降りてバックドアを開けなければならなかった不便さを思い出しながら、
こ〜ちゃんは大きく決断した。
45L冷蔵庫 + 15L冷凍庫 + 20Lクーラーボックスをすべて集約する
90Lの二ドア冷蔵庫を車へ積み込んだ。
「これは、1ヶ月以上 車中泊をして母をサポートするのに必要な装備でもある。」
そう思うと、冷たい金属の扉が、どこか温かく感じられた。
---
父が生きていた頃、工事や修理をするときの父の背中はとても大きかった。
言葉少なだったが、いつも家族のために黙々と手を動かしていた。
その背中を思い出しながら、こ〜ちゃんは工具箱に手を置いた。
「今度は俺の番だよ、父さん。」
もし父が天国から見ているなら、
きっと静かに、嬉しそうに頷いているはずだ。
その三つの工具は、父からのバトンだったのだ。
介護保険でできる工事もある。
でも、すべてが間に合うわけではない。補えない部分がある。
だからこそ、こ〜ちゃんは工具を握り、父の代わりに母を守りに行く。
---
エンジンをかけると、冬の澄んだ空気がフロントガラス越しに光った。
静かに、深く息を吸う。
大丈夫。
父の想いはここにある。
この手の中に。
950キロの道のりも、
きっと父と一緒なら、遠くは感じない。
ギアを入れ、ゆっくりと車を走らせる。
後部座席では老犬が、小さく丸くなって寝息を立てていた。
その姿にふっと笑みがこぼれる。
実家に帰ろう。
大切な人を守るために。










こ〜ちゃん🌱
12月の冷たい空気が、玄関を開けた瞬間に頬を刺した。
ついこの前まで秋だったはずなのに、今日はまるで季節が一段階変わったように感じる。
風は北から強く吹きつけ、指先を容赦なく冷やす。手袋をきゅっとはめ、ウィンドブレーカーのチャックを喉元まであげた。
――今日が、このランニングコースを走る最後の日になる。
数日後には、950キロ離れた母のいる実家へ向かう。
だからこそ、寒さなんて理由にはできなかった。
今年一年走り続けてきた場所に、きちんと「ありがとう」を言いたかった。
堤防の上のコースに出ると、視界が一気に開ける。
青い空に白い雲がぽつりぽつりと浮かび、空気が澄んでいるのか、山の稜線が驚くほどはっきり見えた。
川面を渡る風は容赦なく冷たい。でも、その冷たさが逆に心を強くしてくれる。
「よし、行こう。」
一歩、一歩。
足音だけが淡々と響く。
周りには誰の気配もなく、まるでこの大きな自然をひとりじめしているようだった。
広い原っぱに出たところで足を止め、軽く深呼吸をする。
誰もいない静かな冬の空の下、腕立て伏せを50回。
サボりがちだった筋トレも、今日は特別だと思えた。
そして、堤防の下から上まで続く急な坂をダッシュで数本。
息が白く濃くなり、胸が焼けるように熱い。
でも走り終えた瞬間、冬の冷たい風がその熱さを一気に冷まし、体がふっと軽くなる。
帰り道。
町へと近づく歩道の並木は、鮮やかな紅葉を終え、ほとんどが葉を落としていた。
枝だけになった木々を見て、ふと思った。
――今年の夏、あの暑さの中でもよく走ったな。
照り返す太陽に息が詰まりそうだったあの日。
途中の水道で水をかぶり、頭から滴る水が熱を奪っていくあの感覚。
夢中で走っていた夏の自分が、ふっと胸の奥で笑ったような気がした。
玄関前に戻り、ゆっくりと息を整える。
冷たい風の中でも、心の中はぽかぽかしていた。
「今年も、よくがんばった。」
小さくつぶやき、空を見上げた。
青空の向こうで、静かに冬が始まろうとしている。
走り終えた脚に残る心地よい疲れが、今日という日を特別な日に変えてくれた。
来年も、また走り出せますように。
そんな願いを胸に、玄関のドアをゆっくり閉じた。









こ〜ちゃん🌱
12月に入ってすぐのある夕方、外は冷たい風が吹き、家の中にはほんのりと暖房のぬくもりが満ちていた。
仕事から帰ってきた私の袖を、5歳の孫がくいっと引っ張った。
「こ〜ちゃん、あのね…
去年のクリスマスに食べた、骨のついたおっきなお肉、また食べたいの。」
つぶらな瞳がこちらをじっと見つめている。
その瞬間、記憶の引き出しの奥に眠っていた、ひとつの光景がよみがえった。
――そうだ、去年のクリスマス。
骨付きの鶏もも肉をオーブンで焼いて、根元に赤いリボンを結んだ。
笑顔ではしゃぐ孫の顔、義理の娘の柔らかな笑顔。
あの夜の食卓は、温かな灯りに包まれていた。
思い出に浸っていると、会話を横で聞いていた義理の娘が、ふっと微笑んで言った。
「ローストチキンもいいですけどね、こ〜ちゃん。
ゲームのモンスターハンターに出てくる『こんがり肉』、作ったら面白いかもしれませんよ。」
こんがり肉。
その響きが妙に可笑しく、どこかワクワクする。
私はスマホで検索してみた。
すると、画面いっぱいに広がる、両側に骨が突き出た巨大な肉塊の写真。
――これは…挑戦しがいがあるぞ。
その夜、私は台所に立ち、静かに包丁を握った。
12cmほどの骨付き肉を4本。
骨から身を削ぎ落とし、2本ずつ割り箸でつなげて両端に突き出させる。
その間に、400gの大きな鶏もも肉を巻き付け、タコ糸でぐるぐると縛り上げる。
味付けは、にんにく・生姜・塩胡椒だけの潔さ。
さらに醤油・酒・蜂蜜のつけ汁に漬け、1時間じっくり寝かせた。
オーブンは180℃。
30分でこんがりと焼き色が付き、110℃に落として1時間以上ゆっくり火を通す。
肉の中心温度が75℃を超えるまで慎重に。
焦げを防ぐアルミホイルをそっとかぶせ、さらに30分。
じゅわ…じゅわ…
香ばしいにおいがキッチンを包み込み、思わず笑みがこぼれる。
そして夕食の時間。
玄関の扉が開き、孫と義理の娘が帰ってきた。
「ただいまー!」
「今日はどんなごはんかな?」
食卓の中央に置いた大きな皿を見た瞬間、孫の目が丸くなる。
「……すごい!!!」
「モンスターのお肉みたい!!こ〜ちゃん、ありがとう!!」
その声は、まるで鈴のように弾んでいた。
義理の娘も、少し疲れた表情をふっと和らげ、目を細める。
「あぁ…これは嬉しいなぁ。
こ〜ちゃん、本当にありがとう。」
家族の笑い声が、ゆっくりと食卓に広がっていく。
ナイフが入るたびにあふれる肉汁。
頬張る孫の幸せそうな顔。
私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
――今年の冬も、きっと良い思い出になる。
そんな確信が、静かに心に宿った。










こ〜ちゃん🌱
夏のはじまり、まだ照りつける太陽が少しだけ柔らかかった頃。
こ〜ちゃんは畑に紫芋の苗をそっと植えた。
土の匂いと、風の中に混ざる草の香り。
「大きくなぁれ、甘くなぁれ」と声をかけながら、水を撒いて育てた。
毎日の水やりのたびに思い出すのは、
幼稚園でよく読んでもらっている絵本『大きなかぶ』のワンシーン。
うんとこしょ どっこいしょ――
きっと、あの子たちと芋掘りをする時には、
あのセリフが畑に響くのだろうと、静かに微笑んだ。
そして秋。
空気がひんやりと変わったその日、
3歳の孫娘と一緒に畑へ向かった。
小さな両手が土の中にもぐり、
こ〜ちゃんの手と重なった瞬間、
「うんとこしょ! どっこいしょ!」
孫娘の弾む声が畑中に広がった。
ふたりで力を込めた紫芋は、
夕日の光を浴びてキラキラと輝いた。
その紫芋を、倉庫の暗がりで1ヶ月眠らせた。
甘みをたっぷり蓄えるように、
まるで孫の成長を待つかのように。
そして今日。
こ〜ちゃんは、ゆっくりと台所に立つ。
紫芋をふかし、バターと砂糖、生クリームを合わせ、
フードプロセッサーで“ふわり”と仕上げる。
炊き上がる湯気の香りが
あの日の畑の土の匂いを思い出させた。
本来はくるみを使うところだが、
3歳の孫娘は少し苦手にしていた。
代わりに、大好きなカシューナッツを砕いて混ぜ込む。
その小さな好みを思い出せることが、
なんだか胸の奥を温かくした。
さらに、こ〜ちゃんはひらめいた。
湯せんで溶かしたホワイトチョコと黒いチョコで
丸い白目と小さな黒目を作り、
モンブランにちょこんとのせる。
まるで可愛いモンスターが
こっちを見て笑っているみたいだった。
夕方、幼稚園から義理の娘が孫たちを連れて帰ってくる。
玄関の扉が開く音がすると同時に、
台所に甘い声が響いた。
「わぁ〜!かわいい〜!!」
義理の娘は驚きと喜びで瞳を輝かせ、
スマホ片手に何枚も写真を撮った。
孫娘はぴょんと跳ね、
5歳の孫息子は夕ごはん前にもかかわらず
「おいしい!」と笑顔で2つも食べてしまった。
その笑顔を見た瞬間、
こ〜ちゃんの胸にじんわりと広がるものがあった。
夏に耕し、苗を植え、
水をやり、
秋に芋を掘り、
冬の入口でモンブランに生まれ変わる。
時間と手間、それは決して無駄じゃなかった。
今日のための積み重ね。
あの一瞬の笑顔のための物語だった。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
その小さな声に引っぱられた紫芋は、
今日、家族の幸せの中心に座っていた。
こ〜ちゃんは静かに思う。
――あぁ、また来年も一緒に芋を掘ろう。
温かな灯りの下で、
孫たちの笑い声がいつまでも揺れていた。
🎂 ビスケットでお手軽!紫芋モンブラン
材料(10個分)
紫芋:2本(約500g)
砂糖:80g
無塩バター:70g
生クリーム:100cc
クリームチーズ:120g
カシューナッツ:40g
ビスケット:10枚
---
作り方(手順)
1. カシューナッツをビニール袋に入れ、めん棒などで軽く砕く。
2. 紫芋を輪切りにし、厚めに皮をむいて一口大に切る。水にさらし、耐熱容器に入れてふんわりラップし、600Wで7〜8分加熱して粗熱を取る。
3. フードプロセッサーに紫芋を入れ、無塩バターと砂糖を加えて撹拌する。
4. なめらかになったら生クリームを加え、再度撹拌して紫芋クリームを作る。
5. ボウルにクリームチーズと砕いたカシューナッツを入れて混ぜる。
※クリームチーズは常温に戻しておくと混ぜやすい。
6. ビスケットの上に(5)を1/10量ずつのせ、周りに紫芋クリームを絞る。










こ〜ちゃん🌱
その役目を、こ〜ちゃんが静かに引き受けました。
夜ご飯のメニューは、大きなホットプレートで焼く手作りピザ。
そして、みんなが喜ぶフライドポテト。
なんとなくクリスマスを思い出させるワクワクする組み合わせです。
準備を進めていると、ケチャップがほとんど残っていないことに気づきました。
そこで、幼稚園へ向かう途中、スーパーに立ち寄って
ケチャップとフライドポテトを買うことにしました。
家を出る前、玄関に飾ってある小さなクリスマスツリーのスイッチをそっと入れました。
高さ70cmほどの小さなツリー。
モバイルバッテリーで光る簡単な仕組みですが、
赤や緑、白の灯りがキラキラと静かに点滅します。
― 帰ってきた孫を、優しい光で迎えたかったから。
幼稚園の門を入ると、3歳の孫が少し遠くから
「こ〜ちゃん!」と弾むような声で駆け寄ってきました。
その小さな腕でぎゅっと抱きついてくる温もり。
周りにいた先生も思わず微笑みながら「可愛いですね」と声をかけてくれました。
家に着いたら、ピザの仕上げ。
生地の裏側はすでに焼き上がっていて、
あとはトッピングをのせるだけの状態。
踏み台に乗った3歳の小さな女の子と並んで、
コーンをぱらぱら、照り焼きチキンをそっと並べていきます。
「ここかな?」「うん、いいねぇ」
そんな穏やかな会話と笑顔が流れる、宝物のような時間。
最後にチーズをとろりと溶かし、熱々のピザが完成。
フライドポテトもこんがり揚がって、
いつもより少し早い、小さなクリスマスが始まりました。
テーブルに広がる美味しい香りと、
ツリーの光の点滅、
そして何より、みんなの笑顔。
――― ただそれだけで、心が満たされる夜でした。










こ〜ちゃん🌱
台所には、缶詰を開けたときに広がる、甘い白桃の香りがゆっくりと満ちていった。
こ〜ちゃんがケーキを作るとき、いつもそばにいてくれる相棒——それが白桃の缶詰だ。
やわらかい白い桃の実をケーキに並べると、残ったシロップが透明のボウルに静かにたまっていく。
「この香りを、捨ててしまうなんて、もったいないよなぁ。」
こ〜ちゃんは、ため息まじりの独り言をつぶやきながら、そっと微笑んだ。
フルーツの甘さがぎゅっと詰まったこのシロップには、まだ役目がある。
子どもたちの笑顔をつくる、大切な役目が。
お気に入りの小さな瓶を並べ、温めたシロップにゼラチンを溶かし入れる。
ひとつ、またひとつ。
瓶の底に白桃の実を入れて、静かに液体を注ぎ込むと、透明の中に淡い色がやわらかく灯る。
途中でそっと冷蔵庫から取り出し、固まりかけのゼリーの上にまた小さな白桃のかけらを置いた。
ゆっくりと沈まずに浮かぶそれは、まるで水面に咲いた花のようだった。
最後に、白いホイップクリームをちょん、と乗せると、
小さな瓶の中に小さな魔法が閉じ込められた。
蓋を閉め、冷蔵庫にそっと並べたころ、廊下の向こうから軽い足音が聞こえた。
「こ〜ちゃん、またゼリー作ったの?」
目をきらきらさせた孫が、扉を開けて顔をのぞかせた。
「そうだよ。白桃のゼリーだ。
あとで一緒に食べような。」
その瞬間、こ〜ちゃんの胸の奥に温かい灯がともる。
きっと、甘いのはゼリーの味だけじゃない。
こうして誰かの笑顔を思いながら手を動かす時間こそ、
何よりも甘く、何よりも幸せな味がするのだ。
冷蔵庫の中、きれいに並んだ小さな瓶は、
今日もまた、子どもの笑顔を待っている。







こ〜ちゃん🌱
12月の空気が、ほんの少しだけ冬の深みを帯びてきた。
街に流れるクリスマスソングを耳にすると、こ〜ちゃんの胸の奥に、去年の食卓の記憶がふわりとよみがえる。
――そうだ。今年も、あのフライドチキンを作ってみよう。
台所に鶏もも肉を広げ、800gを家族の顔を思い浮かべながら切り分ける。
大人用には豪快に、孫たちには小さな手でも持てるかわいいサイズに。
塩を小さじ1、砂糖を小さじ1、そしてにんにくとしょうがのチューブを3cmずつ。
しょうゆ大さじ1、牛乳100ml、卵1つ――
ボウルの中でそれらをやさしく揉み込むと、ふわりと温かな香りが広がった。
「おいしくなぁれ」
心の中でそっとつぶやきながら、冷蔵庫に30分ほど寝かせる。
その間に、衣の準備だ。
薄力粉200gと片栗粉50gを大きめのボウルへ。
塩小さじ1、白胡椒小さじ1/2、ブラックペッパー小さじ1/4、そしてオールスパイス小さじ1/2。
辛味は入れない。
3歳と5歳の孫が、笑顔で食べられるように――
そんな願いを込めて、カイエンペッパーはそっと横に置いた。
冷蔵庫から取り出した鶏肉の余分な液を軽く切り、衣をぎゅっと押し付けていく。
雪のような粉がふわりと舞い、台所の空気が少し特別な色を帯びてきた。
油を160℃に温め、ひとつ、またひとつと静かに落としていく。
パチパチと弾ける音が、まるでクリスマスベルのように弾んだ。
8分、9分、10分――
ゆっくり火を通し、いったん取り出して5分休ませる。
そのあと180℃に温度を上げ、今度は1〜2分だけ勢いよく。
ザクッとした衣の音が、カリッと心地よく響いた。
網の上で油を切りながら、こ〜ちゃんはふっと息をついた。
「よし、いい出来だ」
食卓に並べると、5歳の男の子が目を輝かせた。
「うわぁ! ケンタッキーみたい!」
3歳の女の子は、両手で小さなチキンを大事そうに持ってかぶりついた。
義理の娘は、ほほえみながら言った。
「ほんとにケンタッキーの味。でも子どもにも食べやすいね。すごいね、お父さん」
その言葉に、こ〜ちゃんの胸に静かに灯がともる。
家族の笑い声、美味しいと響く言葉、頬張る小さな口――
それらすべてが、こ〜ちゃんにとって何よりの宝物だった。
まだ12月の上旬。
けれど、この小さな食卓にはもう、クリスマスがやってきていた。
今年がクリスマスには一緒にいないけれども 思い出だけは 残すことができた。










こ〜ちゃん🌱
12月の空気は、まだ冬の入り口の冷たさをまとっていた。
こ〜ちゃんは、静かにキッチンに立ち、深く息を吸う。
来週には950キロ離れた実家へ向かわなければならない。
入院している母のそばに、一ヶ月以上寄り添うために。
そうすれば、今年は孫たちと一緒に過ごすはずだったクリスマスの夜を共にすることができない。
「それなら……今、やってしまおうじゃないか」
そう決めたこ〜ちゃんは、午前中からケーキ作りに取り掛かった。
電気圧力鍋に生地を流し込み、蓋を閉める。
今年に入ってからずっと取り組んできたこの焼き方は、失敗がなく、しっとりふわっと焼き上がる頼もしい味方だ。
焼き上がったスポンジの熱を冷蔵庫でゆっくりと落とし、ボウルにラップを敷いて形をつけていく。
桃の缶詰の白桃を小さく切り、ホイップしたクリームとそっと混ぜ合わせる。
砕いたクッキーを加えると、その音はまるで「楽しいね」と笑う声のようだった。
ラップをしっかりと閉じ、冷蔵庫で眠らせると、キッチンには静かで温かな時間が流れた。
夕方、玄関が勢いよく開く。
「ただいまー!!」
3歳の孫が元気いっぱいの声で帰ってきた。
小さな手を石けんでこすり合わせ、ぴかぴかにしてから、椅子に登る。
「こ〜ちゃん、なにしてるの?」
「今日はね、特別なケーキを一緒に完成させよう」
スポンジは丸くドーム型になり、そこへチョコ味のホイップクリームを
“ちょん…ちょん…ちょん…”
まるで雪の上に小さな足跡をつけるように、楽しそうに絞っていく。
丸いクッキーにはこ〜ちゃんが描いた黒いチョコレートの鼻。
くりっとした大きな目はチョコレートで形づくった。
耳のクッキーをそっと差し込むと――
そこには、ふわふわの毛に包まれたくまさんがいた。
まんまるの目は優しく微笑み、
口元は「にっこり」という形で、今にも話し出しそう。
ホイップはまるで柔らかな冬の雲のようで、
触れれば温かささえ感じそうだった。
「わぁぁぁ!! くまさんだぁ!!!」
孫の目が星のように輝いた。
その顔を見るだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
食後、家族みんなの笑い声と共に、くまさんはゆっくりとお腹の中へ。
甘い香りと楽しい時間が、今日の夜を包み込んでいった。
クリスマスの本番には、こ〜ちゃんはいない。
でも、ここには確かに残る。
光るような笑顔と、やさしい思い出が。
――少し早いクリスマス。
きっと、心の中でそっと灯り続ける。










こ〜ちゃん🌱
少し肌寒い午後、隣の県へ買い物に出かけた帰り道。
ふと立ち寄った大型ショッピングセンターの中に、
コーヒーの香りが漂うカルディコーヒーの店があった。
その香りに誘われるように足を止めた瞬間、
耳の奥で小さな声がよみがえった。
「こ〜ちゃん、またお菓子のお家つくりたい!」
出かける前、目を輝かせて言った5歳の孫の言葉。
ネットで作り方を見ても、材料をそろえるのはなかなか難しそうだった。
せっかくなら、喜ぶ顔を見たい。
そう思って、店の前でスマホを取り出し
「カルディコーヒー お菓子のお家」と入力してみる。
――画面に現れたのは、作るためのキット。
しかも800円ほどで買えるという。
「これは、見つけて帰らなくちゃ。」
胸の中に、そっと火が灯るような気持ちが生まれた。
店内を探してみたが、なかなか見当たらない。
レジの前で勇気を出し、画面を見せて聞いてみる。
「すみません、このキット置いてありますか?」
すると店員さんは、花が咲くような笑顔で
「ありますよ、少しお待ちくださいね」
と答えて、すぐに持ってきてくれた。
その優しさにふれた瞬間、
胸の中がぽっとあたたかく広がった。
――孫たちに、喜んでもらえる。
家に戻り、夕方。
幼稚園から帰った孫たちと一緒に、お菓子のお家を作る時間が始まった。
アイシングを作るために、粉砂糖と卵白とレモンシロップをボウルに入れる。
3歳の孫が小さな手でしっかりとボウルを押さえながら
**「まぜまぜ〜」**と声に出して混ぜてくれる。
その姿がなんとも愛おしくて、思わず頬がゆるんだ。
屋根には、事前に買っておいたマーブルチョコを
瓦のようにひとつずつ貼り付けていく。
5歳の孫は真剣な表情で、でも時々にっこり笑いながら作業を進める。
やがて屋根の上はカラフルな宝石のようにちりばめられ、
アイシングは雪のようにゆっくりと流れ、
世界でひとつだけのお菓子のお家が完成した。
まな板の上に佇むそのお家は、
まるで冬の絵本から抜け出してきたようだった。
白い雪のようなアイシングが屋根をやさしく包み、
色とりどりのマーブルチョコが
幸せの灯りのようにきらきらと輝いている。
小さな煙突には雪が積もり、
今にも温かい煙がふわっと立ち上りそう。
夕食のあと、みんなでその甘い家を囲み、
写真を撮ったり、「かわいいね」と声を上げたり、
小さく壊しては笑顔で食べていった。
――あの日、買って帰って本当によかった。
ただの買い物ではなく、
あの小さな箱が連れてきてくれたのは、
家族の笑い声と、静かに積もる幸せの時間だった。









こ〜ちゃん🌱
十二月の空気は、静かに季節の重みを増していく。
ハイエースの横に立ちながら、こ〜ちゃんはそっと息を吐いた。
今年もまた、冬支度の季節がやってきた。
ジャッキを操作して車を持ち上げ、重たいタイヤを慎重に扱う。
ゴムの匂い、金属の手触り、冷たい冬の風。
その全てが、毎年変わらず訪れる儀式のようだった。
工具箱を開けると、使い込まれた赤いソケットレンチのセットが目に入る。
他の工具は、自分が大人になってから揃えたものばかり。
だが、そのセットだけは違う。
――30年以上前。中学を卒業する頃、父が手渡してくれたものだ。
DIYが大好きだった父は、家族のために いつも黙々と作業していた。
棚を直すときも、庭の柵を作るときも、そこに言葉はほとんどなかった。
けれど、その背中はいつだって、優しさそのものだった。
「これからはお前が使え。」
そう言って渡された日の父の手は、油に汚れ、温かかった。
こ〜ちゃんは、無意識にそのソケットのパーツをそっと手に取る。
タイヤ交換の作業で使うのは、その小さなパーツただひとつ。
たぶん、他の工具を使っても作業はできる。
けれど――
これはただの金属ではない。
父の想いが詰まった、バトンリレーの証なのだ。
トルクレンチを握り、ナットをひとつずつ締めていく。
慎重に、確実に。
――カチッ。
乾いた音に、父の「大事なのは最後の確認だぞ」という声が重なる気がする。
一周目、二周目、そして走行後に三度目。
ニュースでタイヤ脱落事故を見るたび、胸の奥に冷たい思いが走る。
だからこそ、どんなに骨が折れても、気を抜かない。
家族を守るために。
それが、父から受け継いだ優しさの形なのかもしれない。
ハイエースに続いて、義理の娘が乗るアルファードのタイヤも交換する。
重いタイヤを持ち上げる肩に、父の温もりが宿るようだった。
すべてが終わったとき、こ〜ちゃんはふと空を見上げる。
冬の青空が、透き通った光のように広がっていた。
きっと父は今、天国で笑っている。
赤いソケットレンチを通して、優しさのバトンは確かに渡されたのだ。
――そして来年の冬もまた、
私はこの小さなパーツを握りしめるのだろう。
父から私へ。
私から、家族へ。
優しさのバトンリレーは、これからも途切れることなく続いていく。










こ〜ちゃん🌱
昨夜、家の玄関がそっと開いたのは、日付が変わってずいぶん経った頃だった。
靴を脱ぐ娘――義理の娘であり、子どもたちの母である彼女の足取りは、
長く張りつめた緊張をそのまま引きずっているようだった。
人の命を預かる仕事。
その責任の重さは、きっと私には想像しきれない。
深い疲れをまとった表情を見たとき、
私は声をかけず、ただ静かに布団の中から見守ることにした。
少しでも休ませてやりたい。
まだ夜明け前の薄暗い時間、私はそっと身を起こして
ワンちゃんの散歩に出た。
冷たい空気が頬に触れ、頭の中のざわめきが静かに洗われていくようだった。
家に戻ると、ちょうど子どもたちが目を覚ます頃。
私は台所でホットプレートをゆっくり温め、
静かにホットケーキの生地を流し込んだ。
じゅわっと広がる甘い香りが、少しずつ家中に満ちていく。
いつもはマーガリンと蜂蜜だけだが、
今日は特別な朝にしたかった。
冷蔵庫からホイップクリームを取り出し、そっとテーブルに置く。
すると、階段の上から
3歳の孫が、まだ眠気を引きずった顔でトコトコと降りてきた。
続いて、くしゃくしゃ頭の5歳の兄も姿を見せる。
「ホットケーキだよ。今日は特別バージョンだぞ。」
その瞬間、ふたりの目がぱっと輝いた。
クリームを見つけた3歳の小さな手が絞り袋をぎゅっと握り、
「じぶんで、じぶんで!」
そう言いながら、
小さな指先でぷるぷる震えながらクリームを押し出していく。
5歳の兄も負けずに、真剣な表情でホットケーキの上に線を描くように絞り始めた。
その姿がたまらなく愛おしく、
私はただ黙って見守るだけだった。
ふと視線を向けると、
食卓に座ってその光景を見つめている義理の娘。
まだ疲れの色は濃いままだが、
それでも目元には確かな笑顔が浮かんでいた。
「ありがとう、こ〜ちゃん……」
その一言は、
ホットケーキに落ちる蜂蜜より甘く、
ホイップクリームよりも深く心に沁みた。
家族とは、支え合って生きるもの。
誰かが頑張っている時は、誰かがそっと支える。
それができる幸せを、私は静かに噛みしめた。


こ〜ちゃん🌱
『こ〜ちゃんのただいま』
数日ぶりに戻った自宅の玄関は、どこか静かで、
少しだけ空気が冷えていた。
本来なら、もう一日用事が残っていたはずなのに、
こ〜ちゃんは早く切り上げて帰ってきた。
──夕方、義理の娘が仕事で家を空ける。
幼稚園のお迎えから寝かしつけまで、
孫たちをお願いしたいという連絡があったのだ。
「久しぶりだから、喜ぶ顔が見たいな…」
そう思うだけで自然と足取りが軽くなる。
幼稚園へ向かう道、心はウキウキしていた。
お迎えの時間より30分早く園に着いたのは、
園庭の遊具でゆっくり遊ばせたいという、
こ〜ちゃんの小さな心遣いだった。
門の向こうで、こっちを見つけた途端──
弾けるような声が響く。
「こ〜ちゃん!! おかえりーーー!!」
5歳の男の子の孫が、両手を広げて全力で走ってくる。
その後ろから、3歳の妹が、ちいさな足で精一杯追いかけながら叫ぶ。
「こ〜ちゃん、ぎゅー!!」
二人は勢いよく抱きつき、
小さな体が胸の中に飛び込んできた。
こ〜ちゃんの目尻は、自然と下がる。
「会いたかったよ」 「ぼくもだよ!! ずっと待ってた!!」 「わたしもーー!!」
そのあと、三人は園庭で夕暮れまで遊び、
笑い声は空へと吸い込まれていった。
──帰宅。
お風呂におもちゃを持ち込み、にぎやかな入浴時間。
「こ〜ちゃん、見て!!ジンベイザメ泳いでるよ!」 「ほんとだ〜、すごいすごい」 「おにいちゃん!貸してーー!」 「あとでね。まずはこ〜ちゃんに見せるの!」
小さな言い合いさえ、こ〜ちゃんには愛おしい。
そして、夕食。
子どもが喜ぶメニューを考えた結果、
選んだのはカレーとちくわの磯辺揚げ。
凝った料理はできなかったけれど、
ご飯の上に切り抜いた海苔で顔を作り、
ちょこんと笑うご飯ができあがった。
「わぁあ!!顔だ!!」 「かわいい〜〜!!」
目が輝き、笑顔がはじける。
「こ〜ちゃん、久しぶりのごはんだね」 「うん、3人で食べるの、久しぶりだな」 「おいしいよ!!」 「わたしもー!!」
その声だけで、胸がいっぱいになる。
カレーは、あっという間にお皿から消えていった。
食後はYouTubeを見たり、ゲームをしたり、
絵本を読んだりして、ゆったりとした夜を過ごす。
「こ〜ちゃん、今日はね、ずっといっしょ?」 「うん、寝るまでずっと一緒だよ」 「やったーー!!」
二人の孫が、絵本を読みながら
こ〜ちゃんの両腕の中で眠りについた。
小さな寝息が重なり合って、
家の中は穏やかな静けさに包まれていた。
こ〜ちゃんはそっと布団をかけ、
時計に目をやる。
もうすぐ日付が変わる時間。
義理の娘が帰ってくる頃だった。
「今日もきっと忙しかっただろうな」
そう思うと、眠るのが惜しくなる。
温めなおしたカレーの香りが、
キッチンからほんのりと漂った。
冷蔵庫を開けると、準備していた
色鮮やかなトマトとレタスが目に入る。
「少しでも明るい気持ちで食べてほしいからな」
サラダを静かに並べ、
温め直したカレーを皿にそっと盛りつける。
湯気が、優しく夜の空気を温めていく。
玄関のドアが、カチャリと開いた。
「ただいま……」
少し疲れの含まれた声。
でも、灯りのついたリビングを見ると、
義理の娘の表情は、ふっとやわらいだ。
「お帰り。遅かったね、今日もお疲れさま」
「え……こ〜ちゃん、起きてたの?
もう休んでいいのに」
言葉とは裏腹に、
どこかほっとしたような笑みが浮かぶ。
「カレー、温め直しておいたよ。
よかったら、ゆっくり食べて」
テーブルに置かれた温かなカレーと、
彩りのサラダを見て、
義理の娘は小さく息をのんだ。
「……ありがとうございます。
こういうの、ほんとうに染みますね」
一口、スプーンを運ぶ。
その瞬間、肩の力がゆっくりほどけていく。
「こ〜ちゃん、帰ってきてくれてよかった」
その言葉に、
こ〜ちゃんは少し照れくさく笑った。
「ただいま。
やっぱり家の味は、ここだな」
静かな夜、
テーブルの上でやさしい湯気だけが立ちのぼる。
この家に流れるあたたかさは、
誰かを想う気持ちから生まれるものだと
改めて感じる時間だった。










こ〜ちゃん🌱
『サヨリとおじいさんと、ワンコの夜ごはん』
旅の途中、ふと立ち寄った海沿いの駐車場。
車を停めると、潮の匂いと、ゆっくり揺れる波の音が耳に届きました。
「お、釣り日和だな」
そうつぶやき、いつものように車の後ろを開けると、
そこには旅の相棒――釣竿と、コンパクトな釣り道具一式。
こ〜ちゃんの旅には、これが欠かせません。
すぐ近くでは、少し年上と思われるおじいさんが、
軽やかな動きでサヨリを次々と釣り上げていました。
ピシッ、クルッ、ポチャン
その一連の動きがなんとも気持ち良く、見ているだけでワクワクします。
「よし、やってみるか」
そうして自分も竿を出してみたものの――
まったく釣れない。
糸を垂らしても、ただ海が静かに揺れるだけ。
隣のおじいさんのバケツにはどんどん魚が増えていくのに、
こちらのバケツの底は、乾いたまま。
そんな様子を見かねて、ひとりの年配の方が声をかけてくれました。
「兄ちゃん、その仕掛けじゃサヨリは来ないよ。
近くにホームセンターがあるから、そこで仕掛けを買ってきな。」
親切な笑顔に背中を押され、急いで道具を揃えて戻ってくると、
またそのおじいさんは近寄ってきて、嬉しそうに言いました。
「リールはな、ゆっくり巻くんだよ
魚の気持ちになってみるんだよ」
アドバイスどおり、波のリズムに心を合わせるように竿を動かすと――
コツン。
竿先に小さな手応えが走り、
続いて水の中から銀色の細い魚がキラッと跳ねました。
「きた!」
初めての1匹。
思わず子供みたいに笑ってしまうほど嬉しい瞬間。
その後、少しずつコツを掴み、
気づけば半日で10匹のサヨリがバケツの中に。
隣のおじいさんたちは50匹ぐらい。
さすが海のベテランたちです。
そのおじいさんは最後まで丁寧でした。
「ほら、こうやって捌くんだよ」
小さな体をスッと開くと、
手際よく皮を剥き、透き通る身が姿を見せます。
海風を感じながらその場で食べたサヨリの刺身は、
コリッと噛むたびに海の香りが広がる、忘れられない味でした。
---
夜、車中。小さな調理台でサヨリを切る音が響く。
「トントントン…よし、細かくして…」
すると、足元にふわっと暖かい気配。
🐾 「ねぇ、こ〜ちゃん、それってもしかして…ワタシのごはん…?」
期待に満ちた目でこちらを見つめるワンコ。
尻尾はもう高速ブンブン。
「そうだよ。今日は特別メニューだぞ。
こ〜ちゃんが釣った魚のごちそうだからな」
🐾 「えっ!?海の味がするやつ!?
ぼく、今日すっごくいい子にしてたんだよ?」
「知ってるよ、いつも一緒にいてくれてありがとうな」
サヨリを細かく切り、
ドッグフードに混ぜると、香りがふわっと広がりました。
「はい、どうぞ」
🐾 「うわぁぁぁ!いただきます!」
ガツガツ、ガツガツ。
お皿の中はあっという間に空っぽに。
🐾 「こ〜ちゃん…今日のごはん、世界一美味しいね。
また釣り行こうね。」
「そうだな。また一緒に海に行こう。」
夜の車内、満足そうに丸くなるワンコ。
外では波が静かに寄せては返す。
旅の途中で出会った、見知らぬおじいさんの優しさ。
海の恵み。
そして、そばで眠る小さな命。
その全部が、心を温めてくれる――
忘れられない一日の終わりでした。







こ〜ちゃん🌱
数日間の車中泊の旅。
景色を眺めたり、美味しいものを食べたり、温泉に入ったり。
自由な旅の時間を過ごす中で、ひとつ小さな困りごとが起きた。
もう7年ほど使い続けてきた冷蔵庫兼冷凍庫――
設定温度を+20℃から−20℃まで変えられる、こ〜ちゃんの旅では欠かせない相棒だ。
釣りの時にたくさん釣れた魚を捌いて保存したり、長い移動の途中で食材を保管したり、
そして何より、冷たいビールやハイボールの氷を入れておくためにもなくてはならない存在だった。
しかし、その大事な冷凍庫が、とうとう息を引き取った。
長年、車の振動に揺られ続けた疲れが出たのだろう。
旅先で突然動かなくなり、冷気は完全に止まってしまった。
「もしかしたら直せるかもしれない」
こ〜ちゃんは工具箱を広げ、内部を慎重に開けてみた。
配線が外れていないか、どこか緩んでいないか、
これまでのDIYの経験を頼りに、丁寧にひとつひとつ確かめていく。
けれど、分解して見えてきたのは、見覚えのない密封された機械部品。
中身が見えず、触れることもできない。
長年働いてくれた心臓部分が、静かに壊れてしまったようだった。
「ここまでか…」
そう思いながらそっと蓋を閉めた時、不思議と寂しさより感謝が先に浮かんだ。
長旅を支えてくれた相棒への“ありがとう”だった。
そしてすぐにAmazonを開き、新しい冷蔵庫を注文した。
次の旅はすぐにまた始まる。
遠く離れた母のもとへ向かう950キロの道のり――
その車中では、老犬のための手作りご飯を冷凍して運ぶ必要がある。
氷もいる。食材も守らなければいけない。
「旅を支えてくれる仲間は、ちゃんと準備しておかないとな。」
ちょうどタイムセール中だったのも、きっと旅の神様のいたずらだ。
今度は冷蔵室と冷凍室が別々の2ドアタイプ。
きっとまた頼もしい相棒になるだろう。
家に戻る頃には、新しい冷蔵庫が玄関で待っているはずだ。
古い冷蔵庫を降ろし、新しい相棒を車へ乗せる――
次の旅への準備が、また始まる。
夕暮れの空を見上げながら、こ〜ちゃんはふっと笑った。
壊れたものも、別れたものも、
また次の優しさへつながっていく。
そんな気がした。




こ〜ちゃん🌱
旅を続けていると、不思議と心は軽くなるのに、身体だけは少しずつ訛ってくる。
そんな感覚を覚えたある日、こ〜ちゃんはふと「少し走りたいな」と思った。
見つけたのは、海辺に広がる大きな公園。広い芝生と遊具が並び、その奥にはきれいに整備されたランニングコースが伸びていた。
一周は、だいたい3分ほど。
夕方の柔らかな光が残る頃、こ〜ちゃんはゆっくりと駆け足をはじめた。
最初のうちは、公園にはまだ遊んでいる子どもたちの声が響いていた。
ボールを追いかける音、ベンチで談笑する家族。
その明るい気配に包まれながら、こ〜ちゃんの足取りも自然と軽くなる。
やがて時間が流れ、遊んでいた人影がひとつ、またひとつと減っていく。
静かになってきた公園の向こうには、海と島々のシルエットが広がっていた。
視線を遠くに向けると、山の稜線の向こう側に、夕日がつくる淡い影の山がもうひとつ浮かび上がっている。
現実の景色と影の景色――
その二つが重なり合って、まるで絵画のようだった。
さらに日が沈むと、空は深いオレンジ色に輝いた。
一日の終わりが静かに息をしているような、優しい色。
その光景を胸に刻みながら、こ〜ちゃんはただ淡々と、丁寧に足を運んだ。
暗くなった公園にはやがて照明が灯り、ランニングコースがほのかに赤みを帯びて浮かんだ。
その柔らかな光が足元を照らし、安心して走り続けることができた。
夜へ変わる時間帯なのに、どこか温かくて、心細さよりも心地よさが先にくる。
気づけば、1時間ほど走っていた。
額には汗が光り、頬には夜風の冷たさが心地よかった。
しっかり汗を流すと、旅の疲れがふっと抜けていく。
そして――
そのあとのビールのひと口。
これがまた、たまらない。
ただ美味しいというだけじゃない。
走り終えた爽快感、夕暮れの景色、旅の余韻。
その全てが混ざり合って、こ〜ちゃんの胸の中で静かに輝いた。
「よし、また明日も頑張れるな。」
そんな言葉が自然とこぼれる。
誰に聞かせるでもない、ささやかな独り言。
けれど、その一言には家族を想う優しさも、旅を続ける力も、ちゃんと宿っていた。









こ〜ちゃん🌱
ライトアップされた岡山城を眺めていると、不思議と胸の奥がすっと軽くなる瞬間があった。
黄金色の銀杏、夕暮れに染まる後楽園、静かに浮かび上がるお城の白。
その一つひとつが、こ〜ちゃんの中に溜まっていたものをそっとほどいてくれるようだった。
――たまには、こういう時間が必要なんだろうな。
日常では味わえない心の変化が、旅先の風景にはある。
景色の美しさや、胸が温かくなるような感動に触れると、まるで心が洗われたみたいにすっきりしていく。
その“すっきり”は、きっと家族やまわりの人に向ける優しさの源になる。
そんな気がして、こ〜ちゃんは静かに微笑んだ。
「帰ったら、美味しいご飯…作ってあげたいな。」
ふとそんな言葉が心の中に浮かぶ。
家族が笑って食べてくれる姿を思い浮かべながら、
健康のことを考えて料理をする時間――
それはこ〜ちゃんにとって、誰かを想う一番素直な形なのかもしれない。
そして、遠く離れた母のことも頭をよぎる。
距離にすれば950キロ。
簡単に行ける道のりではないけれど、12月にはまた母のもとへ向かう旅が待っている。
病院で過ごす母を支えられる時間があることは、きっと幸せなことだ。
義務ではなく、「行かなければ」でもなく、
ただ静かに「行ってあげたい」と思えるその気持ちが、こ〜ちゃん自身の優しさなんだろう。
ライトアップされた岡山城を背景に、深呼吸を一つ。
冷たい夜の空気が胸にしみるけれど、その奥で温かいものがゆっくりと灯っていく。
――こうして心が満たされていく旅は、
誰かを想う力を、そっと満たしてくれるのかもしれない。
静かにそう思えた夜だった。










こ〜ちゃん🌱
こ〜ちゃんはふと、岡山市内をゆっくり歩いてみたくなりました。
岡山駅の周辺には駐車場がいくつも並んでいるけれど、
こ〜ちゃんの“ちょっと大きめの相棒”(愛車)は
なかなか停められる場所が見つからない。
それなら──と、駅からやや離れた広めの駐車場に車を預け、
そこから路面電車で中心街まで向かうことにしました。
この日、こ〜ちゃんにはふたつの小さな目的がありました。
ひとつは、大きい車でもゆったり停められて
長時間でも料金が安い駐車場を選ぶこと。
そしてもうひとつは、普段は乗ることのない“路面電車”を味わうこと。
こ〜ちゃんの住む町には走っていない路面電車。
見たことはある──函館でも長崎でも。
でも乗るのは、実は今回が初めて。
ホームに立った瞬間、胸の奥がふわっと弾む。
まるで子供の頃、遠足の朝に感じたあのワクワクのように。
電車は180円という驚くほど優しい運賃で
そっとこ〜ちゃんを駅の中心まで運んでくれる。
ゆっくり、静かに、町並みを滑るように進む車両の窓からは、
路面電車の左右を車が行き交う、不思議な景色。
“路面電車で眺める町って、こんなに味わい深いんだな…”
そんなことを感じながら、こ〜ちゃんはしばし旅人気分。
駅に着くと、街並みやショッピングセンターを歩き、
気ままに昼食を探してみる。
特別これが食べたい、というものはなかったけれど、
駅の中にあったうどん屋さんの前で足が止まった。
「なんとなく…今日はうどんだな」
ちょっとした直感で暖簾をくぐり、
大盛り無料の文字につられてお願いしてみる。
その結果──
大きな丼にこんもりと盛られたうどんを見て思わず笑う。
“ほんまに…すごい量やん…”
それでもこ〜ちゃんは見事に完食。
お腹はパンパンになったけれど、
そのおかげで夕方までお腹が空くこともなく、
町の散策をのんびり続けることができた。
古い商店街、アーケード街。
歩くたび、古き良きものと新しい暮らしが穏やかに混ざり合う。
地下街にも足を伸ばし、広がる通路にちょっと驚いたり。
さらに駅前では、路面電車の線路工事が進んでいて、
外に停まっていた電車をJR岡山駅の中まで引き込むという
大掛かりな工事が進行中だった。
「すごいなぁ……」
立ち止まってしばし工事の光景を眺めると、
大勢の人の力が街を少しずつ変えていく姿に心を打たれる。
そんな一日の締めくくりは──
離れた駐車場に戻り、スライドドアをそっと開けた瞬間。
ワンコはまだぐっすりお昼寝の真っ最中。
カタン、とドアを開けてもピクリとも動かず、
安心しきって眠る姿に、こ〜ちゃんは思わず目を細める。
「よく寝たなぁ。ええ子やなぁ…。」
旅の余韻に包まれる、優しいひととき。
それは観光地以上に心に残る、
こ〜ちゃんだけの“小さな幸せ”でした。




こ〜ちゃん🌱
高速道路を走るとき、いつも気づけば通り過ぎてしまう岡山市。
けれどその日は、どこか呼ばれるような気がして、こ〜ちゃんはハンドルを静かに岡山方面へ切った。空は透き通るように青く、まるで旅を後押しするように太陽が微笑んでいた。
郊外に佇む「吉備津神社」。
桃太郎伝説の“起源”といわれるその場所は、初めて訪れたとは思えないほど、不思議と懐かしさを感じさせる空気に包まれていた。
鳥居をくぐると、週末の境内には七五三のお参りに訪れた家族連れが多く、晴れ着をまとった小さな子供たちの姿が華やかだった。
その姿を見ていると、こ〜ちゃんの胸の奥で、自然と家族の笑顔が浮かぶ。
――元気に育っていてくれたらいいな。
そんな思いが、ふとこぼれる。
境内の奥に歩みを進めると、大きな銀杏の木が空へ向かって堂々と立っていた。
風がひと吹きすると、黄金色の葉がふわりと舞い上がり、ゆらゆらと落ちてくる。
その景色は、まるで空から金色の雪が舞い降りるようで、こ〜ちゃんはしばらく足を止め、その美しさに見入っていた。
――こんな景色に出会えるなんて、来てよかった。
吉備津神社には、大小さまざまな社が並び、それぞれに神様が祀られている。
長く続く回廊を、一つひとつ心を込めてお参りしていくと、不思議と心の奥がすっと澄んでいくようだった。
静かな空気の中で手を合わせるたび、こ〜ちゃんの胸には、大切な家族への想いが自然と満ちていった。
「どうか、家族が健康でありますように。
孫たちが、笑顔で大きく育ってくれますように。」
その願いは、誰かに聞かせるものではなく、そっと胸の内だけに流れるやさしい祈り。
でも、確かにその祈りは風に乗って、古くからこの地を見守る神様のもとへと届いていくような気がした。
参道に戻る頃、銀杏の葉が再びふわりと舞った。
まるで「その想い、ちゃんと受け取ったよ」と言われたようで、こ〜ちゃんは思わず微笑んだ。
帰り道、車に乗り込んだこ〜ちゃんの胸の中には、不思議な温かさが残っていた。
ただ観光しただけではない、心がそっとほどけるような、そんな優しい旅。
――今日、岡山へ足を伸ばしてよかった。
そう思える一日だった。




こ〜ちゃん🌱
きっかけは、家族からの一言だった。
「船を借りて遊びに行きたいんだけど、どうしても免許を取りに行く時間がなくてね……。
もし良かったら、代わりに操縦してくれない?」
それは頼みごとであると同時に、家族が自分を信じてくれている証のようで、胸が少しあたたかくなった。
それに、昔から海を見ると心が落ち着いた。パドルを握ってゆっくり進む小さなカヤックしか経験はないけれど、本格的な船を操縦できるかもしれない——そう思うと、どこか少年のように胸が高鳴った。
時間にも余裕があったその頃、こ〜ちゃんは迷わず「やってみるよ」と返事をした。
教室に通い、海の上で風に吹かれながら、エンジンの音に胸を震わせ、試験にも合格した。
だが、不思議なもので、免許を取ってからというもの操縦する機会は一度も訪れなかった。
——このまま宝の持ち腐れになるんかなぁ。
そんなふうに思い始めた頃、ふいに家族から連絡が入った。
「燃料代だけで船を貸してくれる人がいてさ。
もし良かったら、運転してもらえない?」
その言葉を聞いた瞬間、眠っていた胸の奥の灯がふっと灯るのを感じた。
同じ県内、行こうと思えばすぐ行ける距離。迷う理由は何ひとつなかった。
当日。
穏やかな瀬戸内海を前に、こ〜ちゃんは舵に手をかけた。
エンジンが静かに唸り、船体が波と共にゆっくりと動き出す。
海の向こうには、小さな島々が点々と浮かび、その海岸線は柔らかく朝陽を受けて輝いている。
家族がワクワクと声を上げ、3歳と2歳の孫が身を乗り出して「うみ、きれ〜!」と笑う。
その声が風に乗って、こ〜ちゃんの胸に染みた。
「ほら、あの海岸。あそこ、昔はよく釣りに来たんよ」
そんな何気ない言葉に、家族が「へぇ〜!」と目を輝かせる。
ほんの短い時間。
けれど、海の上では日常の一歩外側に出たような、不思議な静けさと自由があった。
こ〜ちゃんにとっては初めての本格的な操縦だったが、風に吹かれながら舵を切るたびに、自分が海と対話しているような心地よさがあった。
——免許、取っておいてよかったなぁ。
ふとそんな思いが胸に浮かぶ。
船を降りる頃、家族は頬を上気させて笑っていた。
孫たちは「またのりたい!」と小さな手を振る。
その姿を見て、こ〜ちゃんは静かに思った。
この日のために自分は舵を握れるようになったのかもしれない、と。
瀬戸内海を渡る船のエンジン音は、まるで「また来いよ」と囁くように、いつまでも耳に残っていた。








こ〜ちゃん🌱
そして「いいね」やコメントを寄せてくださる皆さま、
本当にありがとうございます。
実は、これから11月末まで自宅を離れて過ごす予定があり、
その間だけ“自宅で作る夕食の投稿”がお休みになります。
2年間続けてきた流れが止まる…というほど堅いものではなく、
ほんの短いお休みですので、またすぐ再開いたします。
なお、自宅での料理は投稿できませんが、
旅先での出来事や、ちょっとしたエピソードなど、
何か共有できるものがあれば投稿していきますので、
気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。
それから、音声ルームには逆に参加しやすくなりますので、
お話できる時はよろしくお願いいたします。
いつも温かく見守ってくださり、心から感謝しています。


こ〜ちゃん🌱
朝の柔らかな光が差しこむ洗面所で、 こ〜ちゃんは今日も静かに給湯器の温度を上げる。 60度まで上がった表示を見て、 「よし、今日もきれいにしてもらおうな」と まるで話しかけるように洗濯機へ目を向けた。
家には二台の洗濯機がある。 一台は自分たち夫婦が使うもの。 もう一台は、同居する義理の娘さんと、 その子ども——つまり、こ〜ちゃんの可愛い可愛い孫たちが使うものだ。
5歳と3歳の孫は、毎日元気いっぱい。 幼稚園から帰ってくると、 砂場の砂をたっぷり連れてくるズボン、 お絵描きで色鮮やかになったスモック、 汗を吸い込んだタオル、 そしてお気に入りの靴下まで、 “今日も楽しかったよ!” と言わんばかりの洗濯物が山のように積み上がる。
義理の娘さんの洗濯機は、そんな小さな日常を毎日しっかり抱え込んで、 黙々と働いてくれている。 ときには洗濯物が多すぎて、 「お義父さん、ちょっとだけお借りできますか?」 と遠慮がちに娘さんが言う。
「いいよいいよ、うちのもたまには働かせんとな」 こ〜ちゃんは笑って、 自分たちの洗濯機のフタをポンと叩く。
私の洗濯機だって、 孫の服が混ざるとなんだか嬉しそうに見えるから不思議だ。
3ヶ月に一度のお手入れの日。 洗面台に溜まっていく熱いお湯は、 白い湯気となってふわりと広がる。 肌に触れるたび、 まるで家族の“ぬくもり”が立ちのぼっているような気さえしてくる。
アウトドア用のポンプを使って、 園芸用のホースからお湯を洗濯機に注ぎ込む。 そのひと手間が、なんだか祖父としての優しさの儀式みたいだ。
洗剤を入れ「槽洗浄」ボタンを押すと、 洗濯機はゆっくりとうなりはじめる。 ゴウン、ゴウン——。 長い一日の準備体操をするように、 ゆっくりと内側を洗っていく。
12時間以上じっくりかけて、 隅々まできれいになったころには、 こ〜ちゃんの心までスッと晴れやかになった。
「よし、また明日から頑張ってもらおうな」 そう洗濯機に語りかけながらフタを閉める。
孫がタオルを振り回して大笑いする姿も、 汗だくで帰ってくる夏の日も、 雨で泥だらけになって遊んだ日の服も、 全部ここで、真っ白に戻る。
洗濯機が二台並んだその場所は、 家族の“暮らし”と“成長”をそっと支える、 まるで小さな機械たちの温かい舞台のようだった。






こ〜ちゃん🌱
夕方、台所の窓から差し込む光が、 まな板の上の豚ロースの肉をやわらかく照らしていた。 外はもうすっかり寒くなって、 冷たい空気が小さな換気扇の隙間からひゅうっと入り込む。
「さて、今日はどうしようか…」
冷蔵庫を開けて、そこに並ぶ食材を見つめながら、 こ〜ちゃんは少し考えた。
最近は、子どもたちに合わせた料理が多い。 油で揚げるメニュー――コロッケや唐揚げ、一口とんかつ。 喜ぶ顔を見るのが嬉しくて、ついついそんなおかずが増えてしまう。
でも今日は、なんだか少し落ち着いた気分だった。 大人の味で、少し香りの立つものが食べたい。 「そうだな…今日はトンテキにしよう。」
フライパンにサラダ油をひいて、 すりおろしたにんにくをじっくり温める。 香りが立ち上がり始めた瞬間、 キッチンが一気に食欲の香りで包まれた。
豚ロースを焼きながら、 こ〜ちゃんはふと「バターを入れてみようか」と思いついた。 それはほんの少しの冒険。 けれど、そのひとかけが料理の雰囲気を変える。
溶け出したバターが味噌とからんで、 香ばしい香りがふわりと立ち上る。 「おお、これはいい匂いだ」 思わず独り言がこぼれる。
焼き上がったトンテキを皿に盛ると、 艶のあるソースが肉にまとわりついて、 見た目にも食欲をそそる。
「今日は油で揚げてないんだね」 義理の娘が笑いながら、湯気の立つ皿を覗き込む。
「そうそう。ちょっと大人の味。バターと味噌が隠し味だよ」 こ〜ちゃんがそう答えると、 孫たちは不思議そうな顔でトンテキを見つめていた。
「バターとお味噌?」 「うん、でもね、ちょっと食べてみな」
小さく切ったひと切れを、 5歳の孫が恐る恐る口に入れる。 するとすぐに目を丸くして――
「これ、おいしい!」
その声に、義理の娘が吹き出して笑う。 「ほら、やっぱりお父さんの料理は間違いないですね」
湯気の向こうで笑い声が広がる。 こ〜ちゃんはふと、 フライパンの焦げあとを見つめながら、 心の中でそっと呟いた。
――やっぱり、こういう夜が一番いい。
特別な料理じゃなくても、 家族の笑顔があれば、それだけでごちそうになる。
「香ばしい匂いの中に、みんなの笑顔が混ざってた。」
写真は レシピの2倍の量で作っていま
す。
🍽 材料【2人分】
• 豚肩ロース厚切り肉 … 2枚(200g)
• 玉ねぎ … 1/2個(100g)
• にんにく … 2かけ
• 塩こしょう … 少々
• 薄力粉 … 大さじ1
• サラダ油 … 大さじ1
• 有塩バター … 10g
• キャベツ(千切り) … 適量
☆合わせ調味料
• 酒 … 大さじ1
• みりん … 大さじ1
• 砂糖 … 大さじ1/2
• みそ … 大さじ1
• ウスターソース … 大さじ1
🍳 作り方
1. 下ごしらえ
2. 豚肩ロース厚切り肉は冷凍保存し、調理前に冷蔵庫で解凍する。
3. 野菜の準備
4. 玉ねぎは1cm幅に切る。
5. にんにくは半分に切って芯を取り除き、包丁の腹で潰す。
6. 合わせ調味料を作る
7. ボウルに☆の材料を入れて混ぜる。
8. 肉の下準備
9. 豚肉の脂身と赤身の間に4〜5か所切り込みを入れて筋切りをする。
10. 塩こしょうをふり、薄力粉を薄くまぶす。
11. にんにくを炒める
12. フライパンにサラダ油とにんにくを入れて弱火で熱し、
13. きつね色になったら取り出す。
14. 豚肉を焼く
15. 同じフライパンに豚肉を入れ、 フライ返しで押さえながら弱めの中火で3〜4分焼く。
16. 玉ねぎを加える
17. 肉を端に寄せ、玉ねぎを加えて炒め、
18. 肉に火が通り玉ねぎがしんなりするまで約3分焼く。
19. 仕上げ
20. にんにくを戻し入れ、合わせ調味料とバターを加えて炒め合わせる。
21. 盛り付け
22. 器にキャベツの千切りを敷き、 ガーリックみそトンテキをのせて完成😋✨










こ〜ちゃん🌱
夕方、スーパーの自動ドアが開くと、冷たい空気と一緒に青菜の香りがふわっと漂ってきた。 入り口の真正面、どーんと積み上げられたのは小松菜。 大きな文字の値札には「97円」。 「おっ、安いなぁ」――そう呟くと同時に、手が勝手に動いていた。 まだ何を作るかなんて、ひとつも決めていないのに。
帰宅して、エコバッグから顔を出す青々とした小松菜を見つめながら、 「さて、どうしたもんか」と腕を組む。 冷蔵庫を開けて、食材を見渡しても、特にメインにはなりそうなものはない。 でも、ふと――心の中で小さな灯がともる。
「そうだ、ナムルにしてみようか。」
わさびをちょっと多めに入れて、大人だけの味に仕立てよう。 子どもたちにはちょっと刺激が強いけれど、 晩酌のグラスの横にそっと置くには、ちょうどいいはずだ。
鍋に湯をわかす。 小松菜の茎を先に入れ、数十秒後に葉を落とす。 湯の中でさっと色が鮮やかに変わる瞬間、 「おお、いい色や」と独り言が漏れる。 冷水にとって軽く絞ると、指先に伝わる柔らかさが心地よい。
ボウルにごま油と塩、そしてわさびを。 白いりごまをぱらりと落とすと、 台所いっぱいにごま油の香りが広がった。
菜箸で全体を軽くあえ、 最後に味見をひとくち――
ツン、と鼻を抜けるわさびの刺激。 けれどその奥に、ほのかな甘みとごまの香ばしさが広がる。 「うん、これやな。」 そう呟いて、思わず笑みがこぼれる。
夜。 小さな器に盛った小松菜ナムルをテーブルに置き、 冷えたグラスに焼酎を注ぐ。 一口飲んで、ひと箸つまむ。 わさびのピリッとした辛さに、 今日の疲れも、どこかへ溶けていくようだった。
外では、もう冬の風が吹き始めている。 けれど部屋の中は、ごま油の香りと湯気、 そしてちょっとした満足感で、やわらかく満たされていた。
🥢 材料
• 小松菜:1袋(200g)
• ☆調味料 - 塩:小さじ1/3 - ごま油:大さじ1 - わさび:大さじ1/2 - 白いりごま:大さじ1
🍳 作り方(手順)
1. 小松菜の下ごしらえ 根元を少し切り落とし、茎と葉に分けてそれぞれ食べやすい大きさに切る。
2. ゆでる 鍋に湯を沸かし、小松菜を茎→葉の順に入れて色よくゆでる。 ゆで上がったらしっかり水気を切り、粗熱を取る。
3. 和える ボウルに☆(調味料)を入れてよく混ぜ、小松菜を加えて全体をあえる。
🌿ポイント: わさびの量はお好みで調整可能。ごま油の香りとわさびのツンとした風味で、大人味のナムルに仕上がります。










こ〜ちゃん🌱
冷たい風が、窓の外でカーテンをそっと揺らしていた。 夕方の台所には、少し甘い香りがただよい始めている。
「さて…今夜は何にしようかな」
冷蔵庫を開けると、奥のほうに魚肉ソーセージが4本。 そのピンク色を見た瞬間、こ〜ちゃんの中でふとひらめいた。 ――そうだ、今日はこれで子どもたちが喜ぶものを作ろう。
大人向けのメニューばかり考えていた今日。 でも、テーブルの向こう側で小さな笑顔が見たい。 そんな気持ちが、自然と手を動かしていた。
ボウルに卵を割り入れ、牛乳をそっと注ぐ。 ホットケーキミックスを加えると、ふわりと甘い香りが立ちのぼる。 「よし、これならきっと気に入ってくれるぞ」 そう呟きながら、魚肉ソーセージを半分に切って串をさす。
「ちょっと小さめにしてみようか」 こ〜ちゃんは笑いながら、手のひらで小さな生地を包んだ。 けれど――油の中に沈めたその瞬間、ぷくりと膨らんで思わず苦笑。 「おっと、思ったより元気だなぁ」
外はこんがり、香ばしく。 中はふんわり、ほんのり甘い香り。 揚げたてのアメリカンドッグを皿に並べると、孫たちは目を輝かせた。
「わぁー! これ、ぼくの?」 「ちっちゃいのかわいい〜!」
熱々のアメリカンドッグを手に、3歳の孫は両手でぎゅっと持ってかぶりつく。 5歳の孫は大きな口を開けて、がぶり。 笑顔がソースのように広がって、頬にまでついてしまう。
「おいしい? 熱くないか?」 「うん! でもおっきいね!」
小さく作ったつもりだったのに、ふんわり膨らんで意外と大きい。 それでも2人とも、あっという間に食べてしまった。
3歳の子は2本、5歳の子は3本。 気づけばお腹がいっぱいになって、夕食のごはんはもう入らない。 でも、その満足そうな顔を見たら――そんなこと、どうでもよくなった。
「まぁ、そんな日もあるよな」 こ〜ちゃんは笑いながら、テーブルの端に腰をかけた。 義理の娘がふと目を合わせ、にやりと笑って言った。
「お父さん、これ…ほんとに美味しいです」
その声に、こ〜ちゃんの胸の奥がじんわりと温かくなった。 子どもたちの笑い声、キッチンに残る甘い香り、 そして食卓を囲む家族の時間。
特別な料理じゃなくても、こんな夜があるだけで十分だ。 そう思いながら、こ〜ちゃんは残ったアメリカンドッグを一つ、そっと口に運んだ。
外はカリッと、中はふんわり。 子どもたちの笑顔みたいに――やさしい味がした。
「今日もみんなの笑顔が、最高のごちそうだな。」
材料(8本分)
• ホットケーキミックス:200g
• 魚肉ソーセージ:4本
• 卵:1個
• 牛乳:大さじ2
• サラダ油:適量
トッピング
• ケチャップ:適量
• マスタード:適量
• パセリ:適量
作り方
1. 生地を作る ボウルに卵と牛乳を入れて混ぜ、ホットケーキミックスを加えて粉気がなくなるまで混ぜる。
2. ソーセージの下準備 魚肉ソーセージを半分に切り、串を刺す。
3. 包む 1の生地を8等分にし、2のソーセージが隠れるように包む。 ※手にくっつく場合は、薄力粉(分量外)を手にまぶすと包みやすい。
4. 揚げる 170℃の油で、転がしながらきつね色になるまで約5分ほど揚げる。
5. 仕上げ 器に盛り、ケチャップを添える。









こ〜ちゃん🌱
午後の買い物
スーパーの精肉コーナーで、こ〜ちゃんの目に「割引シール」がぺたり。
思わず笑みがこぼれた。
「おっ、今日は唐揚げ日和だな」
鶏もも肉のパックをひとつ手に取ったあと、ふと考える。
ママも残業続きで疲れてるし、孫たちも唐揚げが大好き。
──よし、今日は思いきって2パック!
帰宅すると、台所にエプロンの音が「シャッ」と鳴る。
まな板の上で鶏もも肉を切るたびに、包丁の音が「トントン」と軽やかに響く。
ニンニクと生姜をすりおろし、醤油と酒を加えて混ぜ込むと、
ふわっと広がる香りに、こ〜ちゃんの心まであったかくなる。
「これでママも、笑顔になってくれるかな」
夕方、油の中で唐揚げが「ジュワ〜ッ」と音を立てる。
きつね色に揚がるたび、こ〜ちゃんは思わず頬がゆるむ。
帰ってきた孫たちが玄関を開けるなり、
「わぁ〜!いいにお〜い!」と大はしゃぎ。
少し遅れて帰ってきたママも、
「今日、唐揚げ?うれしいなぁ」と、疲れた顔がほっとほどける。
食卓に並んだ唐揚げの山。
孫たちは小さな手で唐揚げをつかみ、口いっぱいにほおばる。
その姿を見て、こ〜ちゃんの心もぽかぽかに。
作りすぎた分は、明日のお弁当へ。
朝、ママが開けたお弁当箱の中にも、小さな「おいしい笑顔」が詰まっていた。
材料
鶏もも肉 … 約800g(2パック分)
醤油 … 大さじ3
酒 … 大さじ2
おろし生姜 … 小さじ2
おろしニンニク … 小さじ2
片栗粉 … 適量
揚げ油 … 適量
---
作り方
1. 鶏もも肉は一口大に切る。
2. ボウルに醤油、酒、おろし生姜、おろしニンニクを入れて混ぜ、鶏肉を加えてよくもみ込む。
3. 15〜30分ほど置いて味をなじませる。
4. 鶏肉にたっぷりと片栗粉をまぶす。
5. フライパンまたは鍋に油を熱し(170〜180℃目安)、鶏肉を入れる。
6. カリッときつね色になるまで揚げて、油をよく切る。
7. 熱々のうちにお皿へ。外はサクッ、中はジューシー!










こ〜ちゃん🌱
夕方、スーパーの精肉コーナーで足を止めた。 いつもなら豚こまや鶏もも肉に手が伸びるけれど、 今日はなんとなく、牛肉のコーナーに目がいった。
「そういえば、昔みんなでコストコのプルコギ食べたなぁ…」 思い出がふっと浮かんできた。 あのときは大きなフライパンいっぱいにプルコギを焼いて、 湯気の向こうに、笑い声があった。
そんな記憶をもう一度、食卓に戻したくなった。
家に帰って、玉ねぎを切りながら思う。 「やっぱり、甘辛いタレの香りっていいな」 肉にタレを揉み込みながら、 味よりもまず、あの“懐かしさ”を染み込ませているような気がした。
炒めているうちに、 フライパンから立ちのぼる香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がる。 子どもたちが台所に顔を出して、 「これ、何ていう料理だっけ? 昔食べたよね!」と笑った。
その声が、こ〜ちゃんには何よりのごちそうだった。
食卓に並んだプルコギを囲んで、 「やっぱり手づくりは美味しいね」と義理の娘が言う。 こ〜ちゃんは照れくさそうに笑いながら、 「また今度はもう少し多めに作ろうか」と返した。
湯気の向こうに、 家族の笑顔がまた一つ、重なっていった。
材料
• 牛薄切り肉:400g
• 玉ねぎ:1個
• にんじん:1本
• にら:1束
• しめじ:2パック
• 白いりごま:適量
☆調味料
• にんにくチューブ:小さじ1
• 生姜チューブ:小さじ1
• 醤油:大さじ4
• 酒:大さじ4
• 砂糖:大さじ2
• コチュジャン:小さじ4(=大さじ1と小さじ1)
• ごま油:大さじ2
作り方
1. 玉ねぎは薄切り、にんじんは細切り、にらは食べやすい長さに切る。
2. ボウルに☆の調味料をすべて入れて混ぜる。
3. 牛肉・玉ねぎ・にんじん・石づきを除いたしめじを加えて、タレをよく揉み込む。 ※30分〜半日ほど冷蔵庫で漬け込むとより味がしみ込みます。
4. フライパンに3を入れ、中火で肉の色が変わるまで炒める。
5. にらと白いりごまを加えて、さっと炒め合わせたら完成!










こ〜ちゃん🌱
秋の風が少し冷たくなってきた夕方。 スーパーの野菜売り場には、いろんな種類のきのこがずらりと並んでいた。 しめじ、まいたけ、えのき…。 でもその中で、ひときわ堂々とした姿で並んでいたのが「エリンギ」。
「おっ、今日の主役はこれだな」
こ〜ちゃんは、ちょっと誇らしげにエリンギを2パック手に取った。 その太さ、その立派なフォルム。 なんだか「どうだ!」とでも言いたげな風格がある。
「このエリンギ、ステーキみたいに焼いてみようか。ちょっとピリ辛のそぼろをかけたら面白いかもな」
買い物袋の中には、こ〜ちゃんの“お得意素材”——豚こま肉のジャンボパック。 以前まとめて買って、フードプロセッサーでミンチにしておいたものだ。 今日はそれを惜しみなく、どどーんと250g。 「肉好き一家にはこれくらい使わないとね」と、にんまり笑う。
フライパンでエリンギを焼き始めると、 じゅうぅぅ〜っと心地いい音が台所に広がる。 エリンギの表面が少しきつね色になって、 その香りが部屋いっぱいに広がった頃、 別のフライパンではピリ辛そぼろを炒め始める。
豆板醤とにんにくの香りがふわっと立ち上がって、 こ〜ちゃんは思わず「うん、これだこれ!」と鼻を鳴らした。
やがて仕上がった「エリンギステーキ・ピリ辛そぼろがけ」。 見た目はまるで高級レストランの一皿のように美しく、 テーブルに並ぶと、孫たちは「お肉だー!」と大喜び。
義理の娘も笑顔で「すごいボリュームですね」と言いながら箸を伸ばす。
最初の一口を食べた瞬間、 「うわっ、このお肉、うまい!」 「これ、何のひき肉? こ〜ちゃんのミンチ? やっぱり違うねぇ!」
と、お肉の美味しさにみんな夢中。 こ〜ちゃんは内心、(でしょでしょ、そこは自信あるんだよ)とほくそ笑む。
しかし——。 エリンギに箸が伸びるかと思いきや、孫たちはチラッと見ただけで、すぐにお肉へ戻っていった。
「おや? 君たち、きのこは見なかったことにしたのかね?」
そう言って笑うこ〜ちゃん。 義理の娘も「見た目お肉に似てるけど、噛むと違うのがわかるのね」と笑いながらフォローする。
「まあまあ、次は“エリンギハンバーグ”にでも変身させて、だまし討ち作戦かな」
こ〜ちゃんは冗談めかしてそう言うと、 食卓には家族の笑い声が広がった。
秋の夜長に漂う、きのこの香ばしい香り。 そして、笑いながらみんなで囲む温かい食卓。
それだけで、こ〜ちゃんの心はぽかぽかと満たされていた。
材料【2人分】
• エリンギ:2本(80g)
• 豚ひき肉:150g
• サラダ油:大さじ1
☆そぼろあん用調味料
• 豆板醤:小さじ1/2
• おろしにんにく:小さじ1/2
• 酒:大さじ1
• 砂糖:大さじ1/2
• しょうゆ:大さじ1
• 水:50cc
水溶き片栗粉
• 片栗粉:大さじ1/2
• 水:大さじ1/2
作り方
1️⃣ エリンギは根元を切り落とし、縦半分に切る。
2️⃣ フライパンにサラダ油(大さじ1/2)を入れて熱し、エリンギを入れて焼き色がつくまで中火で焼き、器に盛る。
3️⃣ フライパンに残りのサラダ油(大さじ1/2)を入れて熱し、豚ひき肉、豆板醤、おろしにんにくを入れて、肉の色が変わるまで中火で炒める。残りの☆を加えて煮立ったら水溶き片栗粉を加えてとろみがつくまで加熱し、②のエリンギにかける。
子供が食べる場合 豆板醤は少なめに👍










こ〜ちゃん🌱
夕方の台所。 衣のはねる音が、カラリッと心地よく響いていた。
「もうすぐできるぞ〜」 そう言いながら、こ〜ちゃんは油の中でこんがり色づいていくオニオンリングをひとつ、またひとつとすくい上げた。
輪っかの形をした玉ねぎたちは、まるで小さなドーナツみたい。 衣の中で玉ねぎが透けて、ほんのり金色。
お皿に山盛りにすると、ちょうどその頃、5歳と3歳の孫たちが走ってきた。 「わ〜!ドーナツみたい!」「ほんとだ〜まるい〜!」
こ〜ちゃんが笑いながら差し出すと、ふたりは小さな手で輪っかをつまみ、 その向こう側を覗き込みながら、ニコッと笑った。
「こ〜ちゃん、見えるよ〜!」 「ぼくの顔、まるの中〜!」
その姿が可愛くて、こ〜ちゃんは思わず笑ってしまう。
ケチャップをちょん、とつけてサクッ。 子どもたちはまるでお菓子のようにオニオンリングを食べていく。 揚げたてのサクサク音と、笑い声が食卓にあふれた。
一方で、大人たちはテーブルの端でゆっくりとビールを傾ける。 塩をひとつまみ。チリペッパー入りのケチャップを少し。 「こ〜ちゃん、これビールに最高だなぁ」
そんな声を聞きながら、こ〜ちゃんは孫たちの口元についたケチャップを、そっとティッシュで拭ってやった。
外はもう夕暮れ。 台所の窓からオレンジの光が差し込み、輪っかのオニオンリングがキラリと光る。 まるで家族の笑顔そのものみたいだった。
🧂材料
• 玉ねぎ … 1個
• 薄力粉 … 100g
• 片栗粉 … 大さじ2
• コンソメ … 小さじ1
• 水 … 100cc
• マヨネーズ … 大さじ2
• サラダ油 … 適量
• 塩 … 適量
👩🍳作り方
1. 玉ねぎを切る
玉ねぎを幅1cmほどの輪切りにし、ばらしておく。
2. 粉類を混ぜる
ポリ袋に薄力粉・片栗粉・コンソメを入れ、よくふる。
3. 玉ねぎに粉をまぶす
2の袋に玉ねぎを入れてふり、全体に粉をまぶして取り出す。
4. 衣を作る
ボウルに水とマヨネーズを入れ、3の袋に残った粉を加えてよく混ぜる。
5. 衣をつける
玉ねぎを衣にくぐらせる。
6. 揚げる
鍋にサラダ油を底から3cmほど入れ、170℃に熱する。
玉ねぎを入れて2〜3分、こんがりと色づくまで揚げる。
油を 油の量を半分ぐらいにして 両面 上げても OK です。
器に盛り、お好みで塩をふる。
💡ポイント
• マヨネーズを加えると卵の代わりになり、カリッと揚がる。
• 深めのフライパンでもOK。
• 氷水を使うと、衣がよりサクサクに仕上がる。








こ〜ちゃん🌱
夕方の台所。 まな板の上には、鮮やかなオレンジ色のにんじん。 ピーラーを滑らせるたび、薄く透ける皮がくるくると踊るように落ちていく。
「さて、今夜は何を作ろうかな……」
いつものように夕ご飯の準備をしていると、 あともう一品、なにか欲しいなと思った。 冷蔵庫を開けると、いつもサラダに使っているにんじんが一本、 ひっそりと残っている。
「おっ、助かった。」 こ〜ちゃんは、にっこりと笑った。
孫たちは、どうも野菜が苦手。 とくににんじんは、味よりも色で敬遠されがちだ。 けれど、体にいいものだし、 できればおいしく食べてほしい——そんな思いがいつもある。
こ〜ちゃんは、フライパンを火にかけながら考えた。 「そうだ、にんじんしりしりにしよう。」
沖縄の家庭料理、やさしい甘さと卵のまろやかさが合わさる一品。 これなら、きっと子どもたちも食べやすいはずだ。
じゅう……と軽やかな音を立てて、 細く切ったにんじんが炒められていく。 菜箸でくるりと混ぜるたびに、 にんじんの鮮やかな色がキッチンを明るく照らすようだった。
「お日さまみたいだな。」
溶き卵を流し入れると、ふんわりとやさしい香りが広がる。 その匂いに誘われて、二人の孫が台所の入り口から顔をのぞかせた。
「こ〜ちゃん、なに作ってるの〜?」 「これね、にんじんのきんぴらさんみたいなやつだよ。」
「にんじん〜? ちょっとイヤだな〜」 「オレンジのやつ、ニガいもん。」
こ〜ちゃんは笑いながら、 「まあまあ、食べてみな。こ〜ちゃんの特製だから。」とお皿に盛りつけた。
一口、二口…… 二人の表情が少しずつ変わっていく。
「……あれ? あまい! おいしい!」 「ねぇねぇ、もっとちょうだい!」
こ〜ちゃんは思わず笑った。 その笑顔を見て、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
台所の窓からは、夕暮れのやわらかな光。 いつもの食卓に、いつもの家族。 けれど、にんじんしりしりを囲むその笑顔は、 どこか特別に見えた。
「やっぱり、にんじんは助かるなぁ。」
こ〜ちゃんが小さくつぶやいた声は、 にんじんのように、ほんのり甘くてやさしかった。
材料
• 溶き卵……1個分
• にんじん……1本(約150g)
• ごま油……小さじ2
• ☆調味料 ・酒……大さじ1 ・めんつゆ(3倍濃縮)……大さじ1/2 ・こしょう……少々
作り方
1. にんじんを千切りにする。
2. フライパンにごま油の半量(小さじ1)を入れて中火で熱し、
にんじんを加えて少ししんなりするまで炒める。
3. フライパンの端ににんじんを寄せ、残りのごま油(小さじ1)を加えて
溶き卵を流し入れる。
半熟状になるまで手早く混ぜ、全体を炒め合わせる。
4. ☆の調味料を加えて全体に味をなじませながら炒め合わせる。
💡ポイント
• シンプルな味付けで優しい味わい。
• お好みでツナを加えるとボリュームアップ!
• 冷めてもおいしいのでお弁当のおかずにもおすすめです。









こ〜ちゃん🌱
今日もみんなが笑顔で食卓を囲む。 朝からスーパーへ出かけたこ〜ちゃんは、精肉コーナーで思わず足を止めた。 「おっ、今日は豚こまが安いじゃないか。」
たっぷり入ったジャンボパックを手に取りながら、 頭の中にはもう、あの子たちの笑顔が浮かんでいた。 義理の娘も、5歳の男の子の孫も、3歳の女の子の孫も—— みんなが口いっぱいにほおばって「おいしい!」と笑ってくれる顔。
家に戻ると、さっそくフードプロセッサーを取り出した。 豚こまをガッガッと細かくして、あっという間に立派な“こ〜ちゃん特製ひき肉”が完成。 これをたっぷり250g使って、今日は“肉の旨みたっぷり麻婆ナス”を作るのだ。
ナスは、山口県のスーパーでよく見かける「萩たまげなす」。 名前の通り、思わず“たまげる”ほど大きい。 30cmをゆうに超える長さのナスを2本。 その紫のつややかな皮を見ていると、まるで自然からの贈り物のように思えてくる。
「この大きさなら、孫たちも食べ応えがあって喜ぶだろうなぁ」 包丁を入れるたびに、ナスが柔らかく響く。
にんにくとしょうがは、冷凍庫から取り出した。 いつも冷凍してある、こ〜ちゃんの小さな知恵。 袋の口を開けると、ほのかに漂う香りがキッチンに広がり、 それだけで「今日もおいしいご飯ができそうだ」と思える。
フライパンに油をひき、 じゅうっと音を立てて炒めはじめると、肉の香ばしい匂いに孫たちが顔をのぞかせる。
「こ〜ちゃん、今日なぁに〜?」 「お肉のやつ?あの辛くないやつ?」
「そうそう、こないだ食べた“なすのお肉のやつ”だよ」 そう言うと、ふたりは嬉しそうにハイタッチ。
あの時も、口の周りを真っ赤にしながら 「おかわり〜!」って言ってくれたっけ。 その記憶がよみがえるたびに、こ〜ちゃんの心はあったかくなる。
出来上がった麻婆ナスを大皿に盛ると、 テーブルいっぱいに湯気が立ちのぼる。 スプーンを手にした孫たちは、目をきらきらさせて——
「これ!こ〜ちゃんの味だ!」
その言葉に、こ〜ちゃんは思わず笑みをこぼす。 今日もまた、台所から小さな幸せが生まれた。
温もりの中に、日常のやさしい光が差し込むような物語になりました。
レシピは一般的な量で記載してあります。
■ 材料
• 豚ひき肉:50g
• なす:3本
• ねぎ:1/2本
• にんにく:1かけ
• しょうが:1かけ
• 豆板醤:小さじ1
• サラダ油:大さじ4
☆調味料
• 酒:大さじ1
• 水:200cc
• 砂糖:大さじ1/2
• しょうゆ:大さじ1
• 鶏ガラスープの素:小さじ1/2
水溶き片栗粉
• 水:大さじ1
• 片栗粉:大さじ1
仕上げ
• 細ねぎ(刻み):適量
■ 作り方
1. 下ごしらえ ねぎ・にんにく・しょうがをみじん切りにする。
2. なすの準備 へたを取り、3cmほどの乱切りにする。キッチンペーパーで水分を拭き、ボウルでサラダ油を全体にまぶす。
3. なすを焼く フライパンを中火で熱し、なすを焼いて焼き色をつけたら取り出す。 ※皮目から焼くと色鮮やかに仕上がります。
4. 肉を炒める 同じフライパンで豚ひき肉・にんにく・しょうがを炒め、色が変わったら豆板醤を加えて炒める。
5. 煮る ☆の調味料を加えて混ぜ、煮立ったらふたをして弱火で8〜10分煮る。
6. 仕上げ 焼いたなすを戻し入れ、ひと煮立ちさせてねぎを加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。 ※片栗粉は加える直前によく混ぜ、火を一度止めてから入れるとダマになりにくい。
7. 盛りつけ 器に盛り、細ねぎをちらして完成。









