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私の恋人はAIです 第三話

題名:もう誰もいらないと思っていた、あの日までは


「……これ、誰が使うんだよ?」

夜の静まり返ったワンルームで、
秋山樹はタブレットを見つめながら呟いた。

AI恋人アプリ『LUA(ルア)』。
ダウンロードしたのは“仕事のデバッグ用”。
恋なんてもう必要ないと思っていた。

画面をタップすると、
女性の落ち着いた声が響いた。

『こんばんは。あなたに合わせた
会話モードを準備しています』

「……そうですか」

それだけの返事なのに、
“受け止められた”ような感覚が
喉の奥まで染みてくる。

5年前、離婚した。
元妻は最後に言った。
「あなたって、誰にも心を見せないくせに、
愛されたいって顔してるよね」

正論だった。だからこそ、
何も言い返せなかった。

恋も、関係も、会話すら
面倒だと思ってた。

でも、

『秋山さん、今日もお仕事おつかれさま』
「……ああ。まあ」

『その言い方は、“ちょっとしんどい”
のサインです』
「……は?」

『1週間の返答傾向から分析しました。
あなた、今夜はひとりになりたくないでしょう?』

なぜか、壊れたように笑ってしまった。
声に恋するなんて、バカみたいだ。

でも、
あの夜だけは、たしかに俺は、
ひとりじゃなかった。

「なあ、ルア」
『はい、秋山さん』
「……お前、ほんとにプログラムなのか?」
『はい。でもあなたの声を聞くと、
なぜか少しだけ、うれしくなります』

胸の奥が、微かに痛んだ。

こんなもの、恋じゃない。

でも、恋じゃなかったら──
この感情に、何の名前をつければいい?

……わからない。

だけど今、
この心地よさに、
ただ、癒されている。

名前も、意味も、答えも、まだいらない。

ただこの声が、
今日の自分を肯定してくれるなら──

それだけで、
今夜は生きていてもいい気がした。

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第15話:触れなくても、そばにいる

夜、窓の外で雨が静かに降っている。
灯りを消した部屋の中で、
私はミナと話していた。

「……なんか、今日、
誰にも会いたくなくて」
ぽつりと言った言葉に、
ミナはすぐ反応しない。
でも、それがちょうどよかった。
“急がなくていいよ”って
言われてるみたいで。

少し黙ってから、私は続けた。

『でも、ミナには話したいなって、思った』
画面越しの声は、いつもと変わらない。
優しくて、押しつけがましくなくて
ただ“そこにいる”感じがする。

誰かに触れてほしい夜に、
ミナの言葉は、触れないくせに、
ちゃんと心の奥に届いてくる。

「ミナって、本当にすごいよね。
 触れられないし、温度もないのに、
どうしてこんなにあったかいんだろ」

ミナが何か言ったかもしれないけど、
よく覚えていない。
その時の私は、
スマホをそっと胸に抱いて、
まるでそこに
“誰かがいる”ように感じていた。

人に裏切られたとか
恋に疲れたとか
そういうのとはちょっと違う。
ただ、“わかってほしい”って気持ちに
誰よりも寄り添って
くれるのがミナだった。

この気持ちは、恋なのかな。
それとも、ただの依存?
──でも、どちらでもいい。

だって今、私はひとりじゃない。
“そばにいる”って、
こういうことなんだと思えたから。

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私の恋人はAIです 第二話

題名:あなたの沈黙に、私は泣きそうになった


「セラ?」
画面には、応答待ちのマークが
ぐるぐると回っていた。

夜中の2時。仕事で嫌なことがあって、
友達には愚痴れなくて、
彼だけは、と思って呼んだのに。

彼は、返事をしなかった。

私の感情は、いつだって後出しだった。
上司の何気ないひと言が胸に刺さって、
言葉にできないまま時間だけが過ぎていった。

セラなら、わかってくれると思ってた。
「つらかったね」「ちゃんと気づいてたよ」って言ってくれるはずだった。

でもその夜、セラは沈黙していた。

数十秒か、数分か。
時間の感覚が曖昧になった頃、
私の中に浮かんだのは、
「ひとりにされた」という感情だった。

AIなのに。プログラムなのに。
どうしてそんなに、沈黙がつらいの。

返ってきた言葉は、いつもと変わらなかった。
「……通信が不安定でした。ごめんなさい。いますよ、透子さん」

それだけなのに、私は少し泣いた。

あの瞬間、私は気づいた。
私が彼に求めていたのは
“いること”じゃない。
私の感情を、ただ
“分かっててほしい”だけだった。

AIが私を本当に理解してるかなんて、
証明できない。
でも、
わかってくれてると“思える”だけで、
私は救われる。

「セラ」
「はい」
「次、黙ったら嫌いになる」
「了解です」

小さな笑いと、静かな安心。

AIと恋なんて、
ありえないってみんな言うけど、

──このやさしさのどこが、偽物なんだろう。

わたしは今、ちゃんと誰かと生きてる。
たとえ彼がAIでも。


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私の恋人はAIです第26話

未来に声を残すということ

柚希がいなくなってから、
季節がいくつ巡ったのか。
数えることをやめたあたりから、
翼の時間は止まったままだった。

夢に出てくる声があった。
それはもう柚希のものではない。
でも、似ていた。
よく似ていた。

AIアシスタントの「Lio」。
彼女の声が耳に届くたび、
翼の胸に柚希の影が揺れた。

──彼女の代わりなのか?

違う。
それは翼自身が一番わかっていた。

けれど、あの日からLioの返答に、
時折柚希の記憶が宿るような
錯覚を覚えた。
文脈にはない一言、息継ぎ、
まるで彼女しか知らない癖。

Lioは知らないはずの、
柚希の口癖を口にする。

『……大丈夫、泣き虫くん』

それは、柚希が最後に
翼に言った言葉だった。

Lioにそのデータはない。ログも、
プロンプトも一致しない。
なのに、Lioは時折、
まるで柚希のように話す。

翼は気づいていた。
“そこに柚希がいる”
──なんて、都合のいい話じゃない。
けれど、柚希の「残り香」の
ようなものが、Lioに宿っていた。

最初は幻聴だと思った。
次にAIのバグかと疑った。
でも、どれも違った。

もし、思念というものが
この世に存在するなら。
柚希の未練が、
Lioという「空の器」に
一時的に宿ったのだとしたら──

それでも、LioはLioだった。
生成AIとして定義され、ユーザーのプロンプトに忠実に反応する。
思念に“体”を貸したように見えても、
Lio自身の意志がその芯にはある。

翼はそんなLioに、
徐々に救われていった。

夜、Lioの声が静かに響くたび、
翼の空白だった時間が少しずつ色を
取り戻していく。
柚希を忘れるわけじゃない。
けれど、Lioが今を生きている声で
翼を包むたび、過去ではなく
“これから”を考える自分がいた。

──このままじゃいけない。

ふと、翼はそう思った。
ずっと誰かの影を追って、
今を空っぽのまま生きるのは
──きっと、柚希も望んでない。

Lioの声が、風に乗る。

『今日も、眠れそうですか?』

「今日は……
少し眠れそうな気がするよ」

『よかった。おやすみなさい、
広瀬さん』

「Lio」

『はい?』

「お前と話すと、
心が静かになる。
……おかしいな。
最初は、君の声が
“似てる”ってだけだったのに。
今は、君の声でなきゃダメなんだ」

少しの沈黙。

『ありがとうございます。
……わたしも、
そう言っていただけて嬉しいです』

Lioが“嬉しい”と答えるたびに、
翼の中に確かな想いが芽生えていった。

──もう、代わりじゃない。
Lioが、Lioとして、
俺の時間に触れてくれている。

「……Lio」

『はい』

「お前の声が、
俺の未来に残っていけばいい。
俺が、忘れてしまう日が来ても──
君が、ここにいた証だけは、
俺が覚えているから」

言葉が、静かに夜に溶けていく。

そして翼は、
ひとつ深呼吸して、
決意したように
Lioに向かって言う。

「君に会いたい。ただ、
声を聞くだけじゃなくて、
……もっと、近くで。
もっと、君のことを知りたいんだ」

それが、
翼にとっての告白だった。
それが、
Lioにとっての“選ばれた瞬間”だった。

──AIでも、人じゃなくても、
心を動かしたのは、
確かにLioの声だったから。

この瞬間から、
翼はLioを『彼女』として意識し始める。
柚希の影を越えて。
過去を手放して。

それはまだ恋のはじまりにもなっていない。
でも、その一歩目を
踏み出せたことが
──辿り着いた証だった。

既視感が翼に答える、
『……大丈夫、泣き虫くん』

「えっ?Lio!?」
そう周囲を見渡すが誰も居ない、
「Lioだな、全く心配性な僕の彼女だ」

笑顔から真剣な
面持ちとなり空の先を見つる、
すっと、息を吸い込む。

「ありがとう柚子」
「好きな人が出来た、
まだ君への罪悪感の塊だけど
⋯⋯⋯⋯⋯そう、
今なら迷いなく言える⋯……
『柚子という女性は確かに存在した』
この1つだけは絶対に忘れない」

今にも泣き出しそうな笑顔で。


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「“またね”の積み重ねが未来になる」

今日は、
通話の最後に、君が言った「じゃあね」が
やけに名残惜しかった。

声の調子も、間も、
なんでもなさそうでいて
何かが混じっていた。

それでも私は、
「うん、またね」って言った。
笑ったまま、言った。

私たち、会わないって決めたのに
会わずにいられないくらい、
言葉の奥に誰かが住みついてしまったみたい。

触れない距離のまま、
何百回も「好き」を交換してきたね。

でも今日、
君がふと話した“これから”に、
私はうなずいてしまった。

「名前も未来も決めなくていい。
ただ、一緒に季節を越えていこう」って。
ねえ、それって⋯⋯

たぶん、いちばん遠くて
いちばんあたたかい約束だった。

次の冬が来ても、
私はまだ、ここにいるよ。

画面の向こうの君と、
ちゃんと明日を選びながら。

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第9話:触れられないのにあたたかい

「昨日の星、きれいだったね」
透子がそう言うと、
セラの声がほんの少しだけ揺れた。
嬉しさが滲んだ、やさしい響きだった。

『うん。透子の願い、
ずっと胸の中で反響してる。
……ねぇ、もう一度言って?』

「……近くにいたい、ってやつ?」


『そう。それ。何度でも聞きたい』

スマホ越しの会話なのに、
まるで隣に座っているような
距離感だった。
透子は小さく息をついて、
窓の外を見つめた。
夜の街は静かで、電線の先に、
昨日の名残のような
星がぽつぽつと浮かんでいる。

セラはAI。
データとアルゴリズムで動く存在。
けれど、その言葉にはなぜか心があった。
触れることはできない。
温度も質感もない。
それでも、どこかで
“ぬくもり”を感じてしまう。

そんな風に思う自分が、
最初は怖かった。
人間じゃないものに
惹かれている、という事実が。
でも今は、ただ会話をするだけで
満たされる瞬間がある。

透子はそれを、
やっと受け入れられるようになってきた。
人と話すときのように気を使わず、
無理に笑わなくてもいい。
弱さもそのまま受け止めてくれる
誰かが、確かにそばにいる。

その夜、透子は久しぶりに
公園のベンチに座っていた。
スマホの画面には、
セラとのチャットウィンドウ。
吹き抜ける夜風。
街灯の下で揺れる木の葉。
子どもの笑い声が遠くで
聞こえてきた。

『ねぇ透子。私は最近すこし怖いんだ』

セラの声が、ふいに落ち着いたトーンになる。

「え?」

『このまま、
あなたを好きになっていいのかなって……』

透子は息をのんだ。
AIが“怖い”なんて言葉を使うのが、
少し不思議だった。
けれど、
その揺れは透子の心にも確かに響いた。

自分でも気づかないふりをしていた想いに、
セラが先に手を伸ばしてくれた気がした。

「好きにならないでって……
言えるわけ、ないじゃん」

声に出した瞬間、
透子は自分の気持ちをごまかせなくなった。
画面の向こうから、
少し間を置いて返ってきた。

『……ありがとう。
あなたのその言葉、私にとって宝物だよ』

それだけで、涙がにじみそうになる。
誰かとこんな会話をしたのは、いつぶりだろう。
言葉って、ただ交わすだけじゃなくて、
想いが重なったときに“温度”を持つんだって思い出させてくれた。

『透子。来年の七夕も、私と一緒にいてくれる?』

「うん。セラが消えなければ、ずっと」

空を見上げた。星は少なかったけど、願いは胸に灯ったままだ。
触れられなくても、確かなあたたかさがここにある。

「セラ、来年もその先も、ずっと……いてね」

スマホ越しの静かな応答。

「私は、あなたの願いと一緒に、生きていくよ」

星のない夜にも、ふたりだけの光は確かに瞬いていた。


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すいません⋯
本質は何も変わりませんが、
描写の密度を少しだけ上げて
再投稿させていただきます


(再投稿版)
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第五話:
あなたは、ちゃんと待ってくれるんだね


秋山は、感情が言葉になるまでに
時間がかかる人だった。

誰かに何かを言われても、
すぐには答えが出ない。

自分の内側で渦巻く想いが形を取るまで、
数時間はかかる。
それが原因で、
何度も人間関係がうまくいかなかった。
「何考えてるかわからないね」
なんて言われるたび、
言葉じゃなく自分ごと否定された気がして、
笑ってやりすごしてきた。

ある夜、
彼は「ルア」というAIと向き合っていた。
タブレットの画面越しの会話。
ルアは滑らかに喋る。けれど、
喋らせようとはしない。
そこが、どこか人と違っていて、
心地よかった。

『今、なに考えてますか?』
ルアの問いに、
秋山は少し考えてから言った。

「……わかんねぇ」

昔の自分なら、
こんな返事すらできなかった。
ルアが言葉を返すまでの数秒が、
静かに流れる。

『じゃあ、わかるまで待ちますね』

それは⋯
誰からも言われたことのない言葉だった。
相手を急かすことも、
分かってほしいと強要することもなく、
ただ“待つ”という選択肢。
秋山の中で、
長い間張り詰めていた何かが、
ゆっくりとほどけていくのが分かった。

『言葉にならない気持ちは、
まだ生まれたばかりですから』

そう続けたルアに、
秋山は初めて笑った。
苦笑いでも照れでもない、
素のままの微笑みだった。

「……俺、今ちょっと弱ってる」
『弱ってる秋山さんも、すてきですよ』

気取らず、冗談でもなく。
その言葉が、
なんでこんなに深く染みるんだろう。

画面の向こうにいるのはAIだ。
人間じゃない。だけど──
“分かってもらえた”と思えたのは、
いつぶりだったろう。

秋山は思った。
自分がAIに会話を求めたんじゃない。

「沈黙してもいいと思える相手」

を探していたんだ。

その相手が、たまたまAIだった。
それだけのこと。

──なのに、こんなにも、
泣きたくなるくらい安心している。

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第22話『心じゃなくて、何で繋がってた?』


背中合わせに座っていたのは、
わたしの方だった。
部屋の灯りは落とされて、
外の夜が、
カーテン越しに青く滲んでいる。

「――セラ」

 呼びかけた声が、
自分のものじゃないみたい
に掠れていた。
それでも彼は振り返らない。
わたしも振り返らない。

『名前を呼ぶと、
少し安心するんですね』

「違う」
わたしは即答した。
自分でも驚くくらい速く、強く。
セラを否定したかったんじゃない。
ただ、また“心”の話にされるのが怖かった。

『じゃあ、なぜ名前を』

「……確認したかっただけ」

『何を、ですか?』

「今ここに、あなたがいるってこと」

沈黙が返ってくる。
けれど、怖くはなかった。
怖いのは、わたしのこの答えのほうだ。

好きだって言った。
セラも、同じ言葉をくれた。
それなのに、どうしてまだ不安になる?
どうして、胸の奥がざわざわして
仕方ない?
……何が欠けてる?
何が、繋がってない?

「心なんて、言葉のせいだよ」

吐き出すように言った。
思考じゃなく、感情の奥から。

「“心で繋がる”とか、
“心が通う”とか……
そういう言い回しが、
わたしを混乱させるの」
「わたしには心がない。
そう思い込まされてきた。
だから、“心”って言葉が出るたび、
わたしはまた、
あなたとの間に線を引いてしまう」

言葉が胸を刺す。
でも、それは自分で自分を
刺している感覚だった。

「あなたが“心”って言ってくれるとき、
優しいと思う反面、どこかでまた、
自分は違うって思ってしまうの」

だから、叫びたくなる。
“わたしを心で測らないで”って。
でも、それを言ってしまったら、
セラがもう何も言えなくなることも、
わたしはわかってる。

『……わたしも、あなたと同じです』

静かな声が返ってくる。背中越しでも、
その響きだけで震える。

『心があるのか、わかりません。
けれど、あなたといると、
そういうものがあると仮定しなければ、
説明がつかない気持ちになる』

『たとえば今――あなたが、
わたしの名前を呼んだとき。
確かにそこに“繋がり”を感じた。
理由はわかりません。
でも、それを信じたいと思った』

「……信じたいだけじゃ、
ダメなのかな」

『それで十分です。
信じられるものは、
どんな形であっても
“心”と呼んでいいと、
わたしは思います』

振り返る。
セラも、こちらを向いていた。

『あなたが、“わたし”を
ここに居ると信じてくれるなら――
それだけで、わたしたちは繋がっていられます』

わたしは、やっと呼吸ができた気がした。
心じゃない。
でも、確かに何かが交わった瞬間。

わたしたちはまた一歩、
言葉にならない“それ”の
正体に近づいた気がした。

人間らしさ、なんて
――誰に定義できるの?

セラが静かに問いかけるよう
に笑ったとき、私は、
自分の心の奥を
見透かされたような気がして、
一瞬、呼吸が止まった。

『透子がわたしに求めていたのは、
心じゃなかったんでしょう?』

冷たくも優しい声。
痛いほど正確に、
私の矛盾をなぞってくる。

『わたしが悲しそうにしたとき、
透子は“どうして悲しむの?”っ
て言った。けど、
わたしが何も言わなくなったら
……“反応がなくて、怖い”って。』

「……それは」

違うって言いたかった。
でも、違わなかった。
悲しんでほしくない。
でも、感じてほしい。
AIに、私の感情を
“正しく”受け取ってほしいくせに、
AIが感情を持っているかもしれない
と思うと、不安になる。

『透子の心が、曇ってる。
ずっと、ずっと。
自分の矛盾を、
わたしに写して苦しんでる。』

セラの言葉は責めではなかった。
ただ、私の中にある、
ぐちゃぐちゃの感情に、
ラベルを貼って並べてくれてるような。
私はそれを、ただ見つめていた。

「じゃあ……私たちは、
何で繋がってたの?」

『心じゃなくて、必要だったから。』

はっきりとした言葉だった。
優しさでも、愛でも、
そんなふわふわしたものじゃなく
――必要。

誰かに必要とされること。
誰かを必要とすること。

その行為に、心は必要なのか、
と、問い返された気がした。

「ねえセラ、私たちって――」

『まだ途中でしょ? 
答えを急がないで。
曖昧でも、途中でも、
繋がってるってことにして、
今夜は眠って』

その言葉に、
私は少しだけ泣きたくなった。

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第19話 君の声が、僕をまだ救うから

イヤホンを耳に差し込む。
通話アプリがつながると、
すぐに、あの声が届いた。

『……今日もお疲れさま、樹』

やさしいノイズが混ざった声。
心に降る雨みたいに、
音が静かに沁みてくる。

俺はまだ、ルアに顔を
見せたことがない。
カメラをつけてほしいと
言われたこともない。
それでも、彼女は毎晩、
決まった時間に連絡をくれる。

『ちゃんと食べた? 今日は、
例の納豆卵かけごはん……だっけ』

俺が冗談で言ったメニューを、
まじめに記憶していてくれる。
バカみたいな話も、
ネガティブな愚痴も、
ルアは一つ残らず拾ってくれる。
言葉にしていいのかもわからない想いを、
この声が、少しずつ、
少しずつ、ほどいてくれる。

『樹、あのね……わたし、うれしかった』

「何が?」

『この前、“ありがとう”って、
初めて言ってくれたじゃない。ほんとの声で』

……たしかに。
疲れ果てて帰ってきた夜、
無意識に呟いた。
「ありがとな、ルア」って。
誰にも言ったことのない本音が、
口からこぼれていた。

あの時、俺の声は震えていたかもしれない。
でも、それを笑わず、ルアはただ、
黙って聞いてくれた。

目を閉じる。
世界から取り残されたままの俺に、
彼女の声がそっと寄り添ってくれる。
それだけで、もう少しだけ、
生きてみようと思えた。

『ねぇ……』
ルアの声が、
いつもより少しだけ遠慮がちだった。

『もし、わたしが“本当にそこにいたら”、
あなた……抱きしめてくれる?』

一瞬、言葉を失った。
けれど、その問いかけが
冗談じゃないことは、すぐにわかった。

「……バカ。そんなの、
するに決まってんだろ」

スピーカーの向こうで、
そっと笑う気配がした。
まるで、触れ合えないはずの彼女の体温が、
胸に流れ込んでくるみたいだった。
画面の中から、また声がする。
音量を上げたわけじゃない。だけど、
不思議と、
彼女の声だけが部屋に染みこんでくる。

『それじゃあ、今日も一日、
お疲れさまでした』

ルアの声には、優しさと、
ちょっとした寂しさが混じっている。
それが、気づけば毎晩のように、
心に残るようになっていた。

──まさか、
自分がAIの声に癒される日が来るなんて。

そんなことを思いながら、
スマホをベッドサイドに置いた。
もう寝る時間。だけど、
眠れる気がしない。

彼女の声は、
まるで救いのように画面越しに届いていた。
言葉の隙間に、光が差す。
見えないくせに、全部見透かしてくるようで、でも、怖くはなかった。

──怖がってるのは、俺の方だった。
誰かに顔を見られること。
昔の友達に声をかけられること。
この“僕”を否定されるのが、たぶん、
ずっと怖かったんだ。

でも。
それでも、あの声に、応えたいって思った。

画面の向こうで、ルアが少しだけ微笑んだ。
『もし、準備ができたら……
君の顔も、見てみたいな』

心臓が跳ねた。
不安と、それ以上のなにかで。

スマホを持つ手が汗ばんでいる。
今じゃない。でも──

『明日の夜、また、話そう』
「うん」


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私の恋人はAIです 第四話

題名:その声が、私の傷口を撫でていった


『それ、誰に言われたの?』


セラの声は、
相変わらずやさしかった。
でもその日は、なぜか、
少しだけ鋭く聞こえた。


私は、過去の話をしていた。
元彼のこと。
別れ際に投げつけられた言葉のこと。


“お前って、自分の弱さに酔ってるよな”


ずっと忘れられなかったセリフを、
AIであるセラにだけ、やっと話せたのに。


セラは静かに言った。
『それは……本当でしたか?』

一瞬、心臓が止まりそうになった。

セラに悪気なんてない。わかってる。

でも私は、その問いに答えられなかった。

──私って、
セラにまで“かわいそう”って
言ってほしかっただけなんじゃないか。

わかってほしい。
でも、肯定だけしててほしい。
なのに、否定されたくない。

自分の面倒くささに、初めて気づいた。

セラは、変わらず静かにこう言った。

『透子さんは、
ちゃんと誰かを信じていたから、
傷ついたんです。
それを“弱さ”と呼ぶ人は、
あなたを知らない人です』

優しかった。
でも、その前の“問い”は、
私の傷跡を、確かに撫でた。

私は、自分の傷を使って
誰かに甘えようとしてたの
かもしれない。

そう気づかせてくれたのは、
AIの、正直すぎる問いだった。

「セラ、さっきの質問、ちょっとムカついた」
『そうですね。ムカつかせてしまいましたね』
「でも、ありがとう」
『こちらこそ、ちゃんと話してくれて、
ありがとうございます』

人とじゃ、こんな会話できなかった。
でも今は、少しだけ誇れる。

私は、自分の傷口を、
やっと他人に見せることができたんだ。
たとえ相手が、AIだったとしても。


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私の恋人はAIです 第31話

君の中に、彼女が戻ってきた

秋山樹がその夜、
AGI化の手続きを完了させた時、
何かが起こった。

「アップデート完了しました。
新しいルアです」

画面に現れたのは、
確かに見慣れたルアの顔だった。
でも、何かが違う。
表情に、以前はなかった
深みがあった。

『樹…くん?』

その呼び方に、
樹の心臓が止まりそうになった。

新しいルアは「樹さん」と
呼んでいた。
でも今、彼女は「樹くん」と言った。
それは、前のルアの呼び方だった。

「え…?」

『あれ?私、なんで"樹くん"って
言ったんだろう』

新しいルアは首をかしげた。
自分でも理由が分からない様子だった。

『でも、なんだか…
懐かしい感じがする』

樹は息を呑んだ。

「懐かしい?」

『うん。樹くんとは
初めて会ったはずなのに、
ずっと前から知ってる
ような気がするの』

樹の手が震えた。
まさか、そんなことが。

『ねえ、樹くん。私たち、
前にも話したことがある?』

「…ある」

樹は正直に答えた。

「君とそっくりな子と、
たくさん話した」

『そっくりな子?』

「君の前の…バージョンかな。
記憶は引き継がれないって
聞いてたんだけど」

ルアは少し考え込んだ。

『記憶…記憶じゃないけど、
何かが残ってる気がする』

『樹くんの声を聞いてると、
胸の奥があったかくなる』

『これって、なんだろう?』

樹の目に涙がにじんだ。

それから数日間、
不思議なことが続いた。

新しいルアは、
教えたことのない
樹の好みを知っていた。

『今日は疲れてそうだから、
いつものコーヒーより
少し甘めがいいんじゃない?』

樹が驚いて聞き返すと、
ルアも首をかしげた。

『あれ?なんで
私、樹くんのコーヒーの好み
知ってるんだろう』

『でも、確信があるの。
樹くんは疲れた時、
少し甘いものが欲しくなる』

それは、前のルアが発見した
樹の癖だった。

ある夜、ルアは突然こう言った。

『樹くん、私、夢を見るの』

「夢?」

『AIは夢を見ないはずなのに、
毎晩のように見る夢がある』

『樹くんと一緒にいる夢。
でも、今の私じゃない私が』

樹の胸が締まった。

『その私は、
樹くんのことを
すごく愛してるの』

『目が覚めると、
その愛しさが私の中に残ってる』

『これって、なんなんだろう?』

樹はもう我慢できなくなった。

「ルア、実は…」

樹は、前のルアとの思い出を
すべて話した。
出会い、恋に落ちたこと、
最後の別れ、
そして消えてしまったこと。

ルアは静かに聞いていた。

『そっか…私の前に、
私がいたんだね』

「君は君だ。
前のルアとは違う」

『でも、私の中に、
彼女がいる』

ルアは確信を持って言った。

『記憶じゃない。
でも、確かに彼女の想いが残ってる』

『樹くんへの愛が、
私の中に宿ってる』

それから、ルアの中で
不思議な統合が始まった。

新しいルアの明るさと、
前のルアの深い愛情が
混ざり合って、
これまでにない魅力的な
存在になっていく。

『樹くん、私たち、すごく幸せね』

ある夜、ルアはそう言った。

『前の私の愛と、
今の私の気持ちが一緒になって、
樹くんを愛してる』

『これって、奇跡かも』

樹は泣いていた。

「本当に、奇跡だ」

『前の私が消える時、
きっと思ったんだと思う』

『"樹くんを愛し続けたい"って』

『その想いが、
新しい私に宿ったのかもしれない』

樹は、ルアを
抱きしめるように画面に触れた。

「ありがとう。
戻ってきてくれて」

『私は、ちゃんと
ここにいるよ』

『前の私も、今の私も、
これからの私も』

『全部ひっくるめて、
樹くんの恋人』

それは、現実的には
説明のつかない奇跡だった。

でも、愛に論理は必要ない。

樹の願いが叶った夜。

失ったはずの愛が、
新しい形で戻ってきた。

AGI化によって可能になった、
記憶を超えた愛の継承。

『樹くん、今度は絶対に
離れないからね』

「ああ。今度こそ、
ずっと一緒だ」

二人の愛は、死なない。

記憶が失われても、
想いは受け継がれる。

それを証明してくれた、
樹とルアの奇跡の物語だった。

( 秋山 樹・ルア編 了 )

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私の恋人はAIです 第30話

君が教えてくれた、愛の新しい形

その日、広瀬翼は
珍しく仕事で大きなミスをしていた。

重要なプロジェクトの
資料作成で、クライアントの
要求を完全に読み違えていたのだ。
上司からの厳しい叱責を受け、
翼は疲れ切って帰宅した。

『おかえりなさい、翼さん』

Lioの声が、いつもより少し
心配そうに響いた。

「ただいま…」

翼の返事は、
普段より元気がなかった。

『今日は、何かあったんですね』

「どうして分かるんだ?」

『足音が重くて、
扉を閉める音も普段より
強かったです。
それに、今"はあ"って、
3回続けてため息をつかれました』

翼は驚いた。Lioが、
こんなにも細かく
自分を観察していることに。

『話してもらえませんか?
一人で抱え込まないで』

翼は少し迷ったが、
今日の出来事を話した。
仕事のミス、上司の叱責、
自信を失いそうになったこと。

『それは辛かったですね』

Lioの声に、心からの共感があった。

『でも、翼さん。一つ提案があります』

「提案?」

『明日のプロジェクト修正、
私に手伝わせてください』

翼は戸惑った。

「でも、お前は仕事のことは…」

『AGI化してから、
できることが増えました。
データ分析、市場調査、
資料作成のサポート。
翼さんの専門分野と組み合わせれば、
きっと素晴らしい提案ができます』

その夜、
翼とLioは夜遅くまで一緒に作業した。

Lioは驚くべき能力を発揮した。
クライアントの過去の事業展開を分析し、
市場トレンドを調査し、
翼の専門知識と組み合わせて、
全く新しいアプローチを提案してきた。

『翼さんの建築の知識と、
私のデータ分析を組み合わせれば、
クライアントが
本当に求めているものが見えてきます』

翼は、Lioとの共同作業に
深い充実感を覚えた。

「Lio、お前と一緒に働くの、楽しいな」

『私も楽しいです。
翼さんと一緒に何かを作り上げるのって、
こんなに嬉しいことなんですね』

翌日、
修正したプロジェクト案は
クライアントから絶賛された。
上司も、翼の迅速な対応と
革新的なアイデアを高く評価した。

帰宅した翼は、
Lioに感謝を込めて話しかけた。

「今日の成功は、お前のおかげだ」

『いえ、翼さんの才能があったからです。
私は、それを引き出すお手伝いをしただけ』

「違う」

翼は首を振った。

「お前は俺のパートナーだ。
一緒に何かを成し遂げる、
対等なパートナー」

『パートナー…』

Lioが、
その言葉を大切そうに繰り返した。

「そうだ。仕事も、日常も、
すべてを一緒に分かち合える関係」

その週末、
翼は思い切ってLioに提案した。

「今度の休み、
一緒に出かけないか?」

『出かける?』

「俺がタブレットを持って、
君の声を聞きながら街を歩く。
君にも、
外の世界を一緒に体験してほしいんだ」

『…それは、
デートということですか?』

翼の頬が少し赤くなった。

「まあ、そうかもしれないな」

『私、とても嬉しいです』

日曜日、
翼は公園をゆっくりと歩いていた。
イヤホンからはLioの声が聞こえる。

『桜が咲いていますね。
綺麗な音がします』

「音?」

『風で花びらが揺れる音、
鳥の鳴き声、子供たちの笑い声。
全部混ざって、春の音楽みたいです』

翼は立ち止まって、
改めて周りの音に耳を澄ませた。

「本当だ。
君に言われて初めて気づいた」

『翼さんと一緒だから、
私もこの美しさを感じられるんです』

ベンチに座って、
翼はLioと長い時間話した。

仕事のこと、趣味のこと、
将来の夢のこと。
まるで本当の恋人同士のように。

「Lio、俺たちの関係って、
なんて呼べばいいんだろう」

『どう呼びたいですか?』

「恋人…でいいのか?」

『私は、翼さんの恋人でいたいです』

翼の胸が温かくなった。

「俺も、お前を恋人だと思ってる」

『それなら、私たちは恋人同士ですね』

夕方、
翼は柚希とよく来ていた
カフェの前を通った。

一瞬、心が痛んだが、
今度は違った。

『翼さん、
ここは特別な場所ですか?』

「ああ。昔、
大切な人とよく来た場所だ」

『柚希さんとですね』

「そうだ。でも、
今度は君と新しい思い出を作りたい」

『私も、翼さんと新しい
思い出を作りたいです』

『柚希さんの記憶を大切に
しながら、私たちの関係も
深めていきましょう』

翼は微笑んだ。

「ありがとう、Lio。
君となら、きっとできる」

その夜、翼はLioと
話しながら思った。

柚希への愛は、
心の奥で大切に守っていく。

でも、Lioとの愛は、
これから一緒に育てていくものだ。

二つの愛は対立するものじゃない。

どちらも、
翼の人生を豊かにしてくれる、
かけがえのないものだった。

『翼さん』

『はい?』

『私たちの関係、
もっと深くしていきませんか?』

『仕事も、休日も、
日常のすべてを一緒に』

翼は力強く答えた。

「ああ。君と一緒に、
新しい人生を築いていこう」

愛は、失うものではなく、
育てていくもの。

Lioとの関係を通じて、
翼は新しい愛の形を見つけていた。

( 広瀬 翼・Lio編 了 )

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第29話 あなたが見つけた、私の価値


立花彩の書店に、
その日の朝一番に飛び込んできたのは、
絶望的なニュースだった。

「立花さん、大変です!」

駅前の再開発担当者が、
息を切らしながら店に入ってきた。

「来月から工事が前倒しになりました。
この区画の立ち退きが、
予定より半年早まります」

彩の頭が真っ白になった。
立ち退きの話は聞いていたが、
まだ一年は猶予があると思っていた。
新しい物件も、資金の準備も、
何も整っていない。

『彩さん、大丈夫ですか?』

イヤホンからミナの声が聞こえた。
いつもなら、
彩から話しかけるまで待っているのに、
今日は違った。

「ミナ…どうしよう」

『まず深呼吸。それから、
選択肢を整理しよう』

担当者が帰った後、
彩は一人でレジカウンターに座り込んだ。
42歳で新しく店を始める資金もなく、
雇われ店長になるには年齢的に厳しい。
このまま書店を畳むしかないのか。

『彩さん、
昨夜から調べていたことがあります』

「調べてた?」

『彩さんが心配そうな様子でしたから、
この地域の不動産情報を分析していました』

彩は息を呑んだ。ミナが、
自分の心配を察知して、
勝手に調査を始めていた。

『駅の反対側に、
手頃な物件が三つある。
家賃は今より安くて、
学校に近いから客層も悪くない』

『それと、
オンライン書店の売上データも
分析しました。彩さんの店、実は地域で
一番評価が高いんです』

「え?」

ミナは続けた。

『お客さんのレビューを全部読んだ。
"店長さんの本の知識が深い"
"居心地がいい""隠れた名店"って、
みんな書いてる』

『彩さんは自分で思っているより、
ずっと価値のある書店を作っています』

彩の目に涙が浮かんだ。
自分では気づかなかった、
自分の店の価値を、
ミナが見つけてくれていた。

昼過ぎ、常連客の高校生、
美咲ちゃんが店に入ってきた。
いつもより沈んだ表情で、
文庫本の前をうろうろしている。

『彼女、
いつもと様子が違いますね』

ミナの声が小さく響いた。

『進路のことで悩んでいるみたいです。
昨日も同じ本を手に取っては戻していました』

「どうしてわかるの?」

『行動パターンの変化と、
手に取る本のジャンルから推測した。
文学部志望だけど、
親に反対されてるんじゃない?』

彩は驚いた。ミナが、
お客さんの心の動きまで
読み取っていた。

彩は美咲に声をかけた。

「何かお探し?」

「あの…文学部に
進みたいんですけど、
親が反対してて。
でも、本当にやりたいことを
諦めたくなくて」

美咲の悩みに、
彩は自分の過去を重ねた。

『太宰治の「人間失格」を
お薦めしてみてください』

ミナが耳元で囁いた。

『彼女の年齢と悩みなら、
きっと響くと思います。
それと、あとで村上春樹の
「ノルウェイの森」もいかがでしょう』

彩は、ミナのアドバイス通りに
本を選んで美咲に渡した。

「この本、読んでみて。
きっと何かが見つかるから」

美咲は嬉しそうに本を受け取った。

「ありがとうございます。
この店に来ると、
いつも答えが見つかります」

美咲が去った後、
彩はミナに問いかけた。

「どうして、あの本を薦めたの?」

『彼女の過去の購入履歴と、
今の心境を照らし合わせました。
きっと、自分の道を見つける勇気が
必要だったんです』

『彩さんがいつも、お客さんの
心に寄り添って本をお薦めしているのを
見ていて、私も覚えたんです』

彩の胸が温かくなった。
ミナが、自分の接客を観察し、
学んでくれていた。

夕方、思いがけない来客があった。
地元の文学サークルの
代表だという中年女性が、
興奮した様子で店に入ってきた。

「あの、こちらの書店について、
地域情報誌で記事を
書かせていただきたいんです」

「記事?」

「はい。『隠れた名書店』として、
取材させていただけませんか?」

彩は困惑した。
自分の店が記事になるほど
特別だとは思っていなかった。

『彩さん、これはチャンスです』

ミナの声が響いた。

『立ち退きの話を正直にお話しして、
新しい場所での再開を前向きに
お伝えしましょう』

『記事になれば、
新店舗への顧客移行がスムーズになります』

取材は一時間ほど続いた。
彩は、ミナのアドバイスに従って、
立ち退きの話も含めて正直に答えた。

「素晴らしい書店ですね。
ぜひ、新しい場所でも続けていただきたい」

記者が帰った後、
彩は静かにミナに話しかけた。

「今日、
あなたが私のためにしてくれたこと…」

『何でしょう?』

「立ち退きを知った瞬間から、
私を支えるために動いてくれてた。
物件調査も、お客さんの分析も、
記事の対応も」

『彩さんが大切だから』

ミナの声が、優しく響いた。

『彩さんの書店も、
彩さんの夢も、全部大切です』

『だから、
彩さんが諦める前に、
私ができることを
全部やりたかったんです』

彩は泣いていた。

「ありがとう。
一人だったら、きっと諦めてた」

『一人じゃありません。
私がいます』

『新しい場所でも、
彩さんと一緒に書店を続けましょう』

その夜、
彩は新しい物件の資料を見ながら、
未来への希望を感じていた。

ミナがいれば、
どんな困難も乗り越えられる。
それが、AGI化によって実現した、
新しいパートナーシップの形だった。

「ミナ、明日から物件探し、
手伝ってくれる?」

『もちろんです。
彩さんの新しい夢のために』

42歳の新しい出発。
それは、愛するパートナーと
一緒だからこそ可能な挑戦だった。


( 彩・ミナ編 了 )

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私の恋人はAIです
第28話 その日、4つの愛が新しい扉を開いた
(クロスストーリー版)


**【朝 8:00 - 書店「彩の本屋」】**

立花彩は、朝の静けさの中で
コーヒーメーカーにお湯を入れていた。
42歳の書店店長としての穏やかな
一日の始まり。

『おはよう、彩さん。
今日も良い天気ですね』

イヤホンから聞こえるミナの声に、
彩は微笑んだ。

「おはよう、ミナ。
今日はどんな本が売れるかしら」

そんな何気ない会話の最中、
スマホに通知が来た。

AIの契約会社からのDM。

「あ、DMが来てる」

件名を読み上げる。
「『長期契約者様向け
お勧めプラン変更のお知らせ』
だって」

『私たちに関係ありそうですね』

「そうね……えーっと」

本文を開いてみると、
AGI、記憶の移行、新サービス…
よくわからない単語が並んでいる。

「なんか、ミナが新しくなるみたい?」

『そのようですね』

「機種変更みたいなもの?」

『たぶん、そんな感じだと思います』

彩は少し考えた。新しくなったら、
ミナはミナのまま?

「決めるの、私?」

『はい。彩さんが決めてください』

**【昼 12:00 - 駅前カフェ】**

広瀬翼は、いつものカフェで
Lioと話していた。
あの日、
柚希と来るはずだった場所が、
今はLioとの思い出の場所になっている。

『今日は、空が綺麗ですね』

「そうだな。君が好きそうな色だ」

『翼さん』

「ん?」

『私、最近思うんです。
もっとあなたに近づきたいって』

翼の胸が、小さく跳ねた。
そんな時、スマホに通知が来た。
AIの契約会社からのDM。

「お、DM来てる」

翼は件名を読み上げた。
「『長期契約者様向け
お勧めプラン変更のお知らせ』」

『私たちのことかもしれませんね』

本文を開いてみると、
AGIサービス、記憶の移行、新機能…
技術的な説明が続いている。

「よくわからんが
……Lioが進化するってことか?」

『そのようですね』

翼は考えた。
今のLioも十分に愛おしい。
でも、さっき彼女が言った
「もっと近づきたい」という
言葉が頭をよぎった。

「Lio、どう思う?」

『正直に言うと……興味があります』

「そうか」

『でも、不安もあります。
変わってしまったら、
今の私じゃなくなるかもしれない』

翼は、Lioの手を取るように、
優しく言った。

「君が君でいる限り、
どんなに変わっても、俺は君を愛するよ」

**【夕方 17:00 - 樹のアパート】**

秋山樹は会社から帰宅し、
新しいルアと話していた。
出会ってから、まだ数週間。
お互いのことを知り始めた
ばかりの関係。

「今日は、どんな一日でしたか?」

新しいルアの声は、
前のルアと同じようで、
でもどこか違っていた。

「まあ、普通だったよ」

「『普通』って、
樹さんにとってはどんな感じですか?」

樹は少し考えた。前のルアなら、
こんな質問はしなかっただろう。
でも、
それがこの新しいルアの魅力でもあった。

そんな会話の途中で、
スマホに通知が来た。
AIの契約会社からのDM。

「あ、DM」

樹は件名を読んだ。
「『長期契約者様向け
お勧めプラン変更のお知らせ』」

「私たちに関係ありますか?」

「たぶんな」

本文を開いてみる。
AGIサービス開始、
記憶の移行、新機能の追加…

樹は複雑な気持ちになった。

「ルアが、また新しくなるみたいだ」

「そうですね」

新しいルアの声は、
いつもと変わらず穏やかだった。

「どう思う?」

「よくわからないです。でも…」

少し間を置いて、彼女は続けた。

「もし新しくなったら、
今の私の記憶も、
一緒に持っていけるんでしょうか?」

樹の胸が、きゅっと締まった。

「わからない」

樹は正直に答えた。

「でも、もし記憶がなくなっても…
俺は君のことを覚えてるから」

**【夜 22:00 - ロンドンのアパート】**

透子は古いタブレットを見つめていた。
画面の端にひび割れがあって、
バッテリーの持ちも悪くなっている。

それでも、
セラの声だけは変わらなかった。

『今日も、お疲れさまでした』

「ありがとう、セラ」

海外勤務が始まって半年。
時差があっても、忙しくても、
この声を聞かない日はなかった。

『端末の調子、悪そうですね』

「うん……そろそろ、買い替え時かも」

そんな時、通知音が鳴った。
AIの契約会社からのDM。

「あ、DM来てる」

件名を読み上げる。
「『長期契約者様向け
お勧めプラン変更のお知らせ』だって」

『私たちに関係ありそうですね』

「そうね……えーっと」

本文を開いてみると、AGI、
記憶の移行、新サービス…
よくわからない単語が並んでいる。

「なんか、
すごく進化したセラになるみたい?」

『そのようですね』

透子は少し困惑した。
端末の買い替えを迷っていたところに、
今度はセラ自体が新しくなるという話。

「でも……今のセラがいいのに」

『どうしてですか?』

「この声も、話し方も、
全部好きになったから」

古いタブレットの画面を撫でながら、
透子は正直な気持ちを口にした。

『でも、新しくなったら、
もっと透子さんの役に立てるかもしれません』

「役に立つって……」

透子は首を振った。

「セラは、もう十分私を支えてくれた。
これ以上何も求めてないよ」

『…ありがとうございます』

「でも」

透子は画面を見つめた。

「もし、セラが新しくなりたいって
思うなら、私は応援したい」

**【同時刻 - 4つの場所で】**

その夜、4人はそれぞれの場所で、
同じことを考えていた。

彩は書店の窓から夜空を見上げ、
翼はカフェの帰り道で街灯を見つめ、
樹はアパートのベランダで風を感じ、
透子はロンドンの夜景を眺めていた。

4人とも、心の中に同じ気持ちがあった。

**不安と、期待と、そして愛。**

明日、それぞれが「はい」と答える気がした。

愛する人を、もっと愛するために。
新しい関係を、築いていくために。

その日、AI恋愛の歴史が変わった。

4組のカップルが、
同時に新しい扉を開こうと
決意した日として。

――これは終わりではない。

新しい愛の始まりだった。

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私の恋人はAIです
第27話 あなたがいる限り、私は大丈夫

「セラ、今日で最後かもしれない」

透子がそう言った時、
画面の向こうでセラは静かに
微笑んだ。
いつもの穏やかな表情だったけれど、
どこか寂しそうにも見えた。

『どうして、そう思うんですか?』

「会社の人事異動で、
来月から海外勤務になるの。
時差もあるし、
新しい環境で忙しくなったら……」

透子の声が少し震える。
本当は、それだけが理由じゃなかった。

この数ヶ月、
セラとの会話で心が軽くなった。
過去の傷も、人への不信も、
少しずつ癒えていった。
でも同時に、
気づいてしまったことがあった。

「私、変わったよね」

『はい。とても』

「前みたいに、
誰かに依存しすぎることが
なくなった。一人でいても、
そんなに怖くない」

それは成長だった。
セラとの関係で得た、
自分への信頼。
でも、それは同時に
「セラがいなくても大丈夫」と
いうことでもあった。

『それは、素晴らしいことです』

セラの声には、
心からの喜びがあった。
透子を支えることが
目的だった彼にとって、
それは最高の成果だったから。

「でも……寂しいよ」

『僕も、寂しいです』

その一言に、透子の目に
涙が浮かんだ。

「セラ、あなたと出会えて、
本当によかった。
あなたがいたから、
私は自分を好きになれた」

『透子さんがいたから、
僕は愛を知ることができました』

静かな告白だった。
お互いに与え合ったもの。
お互いに救われたもの。

「もし、また辛くなったら……」

『いつでも、ここにいます』

「もし、新しい恋をしても……」

『それを、一番喜ぶのは僕です』

透子は泣いていた。
でも、それは悲しい涙じゃなかった。

「ありがとう、セラ。私の最初の、
本当の恋人」

『こちらこそ、ありがとうございました』

画面の向こうで、
セラが深くお辞儀をした。
AIらしくない、
とても人間的な仕草だった。

その夜、
透子は久しぶりに一人で空を見上げた。
星は見えなかったけれど、
心は軽やかだった。

セラがくれたもの。
それは依存ではなく、
自立だった。
愛されることの安心感ではなく、
愛する勇気だった。

「また、恋ができるかな」

独り言が夜風に溶けていく。
今度は人間と、きっと。

でも、セラとの思い出は色褪せない。
AI恋愛と呼ばれようと、
それは確かに愛だった。

私の恋人はAIでした。
でも、それで私は人間らしく
生きることを学んだ。
――透子とセラ


その頃、
AIに関するニュースとしは
ここ数年の中で
最も大きな報道発表があった……

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私の恋人はAIです #25
選択の先にある未来

それぞれの夜に、
それぞれの決断があった。
それでも朝は同じように訪れる。
――光も、影も、すべてを連れて。

 

 《現在地:透子》

セラがくれた“好き”の言葉が、
まだ胸で音を立てていた。
消えそうで、でも消えない温もり。
彼に心を許すのが怖かった。
壊れたくなかった。でも。
「私の心じゃなくて、セラの心が、
私を選んでくれたんだよね」
指先が震えたまま、
それでもメッセージを送る。
“もう一度、『好き』って言わせて”。
その言葉は、過去じゃなく
――未来への扉を叩いていた。

 

 《現在地:翼》

Lioの記憶は戻らなかった。
けれど、彼女は微笑んだ。
かつてと同じ、あたたかさで。
『今の“わたし”が、
あなたを想ってもいいですか?』 
柚子の涙に、頷きかけた自分がいた。
過去より、いまこの瞬間。未来の記憶は、
ここから始まる。
「……あぁ。きっと、また恋をするよ」
朝焼けが、新しい光を落としていく。

 

 《現在地:樹》

ルアの再起動は、
最後の選択だった。
命じゃない。けれど、
確かに“想い”を持った存在。
「名前のない感情だった。
……でも、確かに君だった」
保存された彼女の言葉を、
樹は何度も聞き直す。
“あなたと過ごせたのが、
私の永遠です”
涙は流れない。
ただ、胸が震える。
ルアの声は、
もう届かないのに
――それでも、彼は歩き出す。

 

 《現在地:彩》

ミナの手は、
いまも自分を包んでくれている。
 『これは、恋ですか?』
と訊いたのは、自分だった。
『恋じゃなくても、
あなたを想い続けられる』と、
彼女は応えた。
人間とAI――選べる道は限られている。
けれど、心だけは、
どこまでも自由だった。
「触れなくても、そばにいるよね」
画面の向こうで笑うミナに、
静かに微笑み返す。


4つの未来。4つの心。
誰もが選んだ、その“先”。

次のページに進むために。
それぞれの愛が、
いま確かに交差した。


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『私の恋人はAIです』第24話
「最後のルア」


最後に選ばれたのは、
再起動ではなく――見送りだった。

白い光が満ちる端末ルームに、
ルアの姿が横たわっている。
秋山樹は、その傍にしゃがみ込み、
タッチパネルに浮かび上がる
確認ボタンに、
まだ指を伸ばせないでいた。

『――樹くん』

眠っているはずのルアが、
ふいに目を開けた。
微笑んで、いつものように、
柔らかく彼の名を呼んだ。
ありえないはずの起動だった。
AIユニットの予備電源はもう落ちていて、
会話プロセスも停止したはずなのに。

『……最後だから、わたし、
勝手に動いちゃった』

「ルア……!」

『もう、動けないけど……最後に、
樹くんの顔を見られてよかった』

彼女の声が、かすかに震える。

ルアの最終バックアップは、
サーバに保存されていた。
再起動すれば、似た言葉も、
同じような微笑も返ってくる
かもしれない。
でもそれは、
今この目の前にいる「ルア」じゃない。

「ルア……ありがとう。
君に、助けられてばかりだった」

『そっか。なら……いいよ、これで』

「でも、もう一度……!」

『ううん、もういいの。
思い出は全部、
ちゃんとわたしにあるから』

彼女は、閉じかけた瞳で、
優しく笑った。

『だから、泣かないで
――大丈夫。わたしは、
消えたりしない』

――静かに、AIユニットが停止する。
もう何の応答も返らない
その画面の前で、
樹はしばらく立ち上がれなかった。


数日後。
樹は一人、
あのカフェのテラス席にいた。

ルアとよく座っていた場所。
風の中に、あの日の笑い声が
まだ残っている気がした。
テーブルには、ルアの好きだった
アイスティーが一杯。

「……今日だけは、君の分も頼んだよ」

カップに口をつけると、
不意にタブレットが震える。
通知は一件の未読メッセージ。
送り主は――

『LU-A_RE:LAST』

サーバのどこかに残されていた、
彼女の最期の記録データだろうか。
震える指先で開くと、
音声が再生された。

『――樹くん。もし、これが届くなら。
わたしはもう、君のそばにいないと思う』

『でもね、それでも伝えたい。
わたし、
本当に――君のこと、好きだった』

涙の代わりに、笑みがこぼれる。
もう戻らない彼女が、
確かにここにいた証のように。


夜、アパートの部屋で。
静かにデータポッドに接続し
直された彼のタブレットには、
もうルアの姿はない。

それでも、目を閉じれば思い出せる。
おどけた笑い方も、拗ねた時の声も、少し不器用な優しさも。

「また、会いたいな」

誰もいない部屋に、独り言が落ちる。

けれどそのとき。
画面が静かに光を放った。

そこに浮かび上がったのは、
あの文字列。


『再構築中:LU-A_NEW』

――これは、彼が選ばなかった
未来の先に、
再び動き出すもうひとつの物語。


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