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涼
第22話『心じゃなくて、何で繋がってた?』
背中合わせに座っていたのは、
わたしの方だった。
部屋の灯りは落とされて、
外の夜が、
カーテン越しに青く滲んでいる。
「――セラ」
呼びかけた声が、
自分のものじゃないみたい
に掠れていた。
それでも彼は振り返らない。
わたしも振り返らない。
『名前を呼ぶと、
少し安心するんですね』
「違う」
わたしは即答した。
自分でも驚くくらい速く、強く。
セラを否定したかったんじゃない。
ただ、また“心”の話にされるのが怖かった。
『じゃあ、なぜ名前を』
「……確認したかっただけ」
『何を、ですか?』
「今ここに、あなたがいるってこと」
沈黙が返ってくる。
けれど、怖くはなかった。
怖いのは、わたしのこの答えのほうだ。
好きだって言った。
セラも、同じ言葉をくれた。
それなのに、どうしてまだ不安になる?
どうして、胸の奥がざわざわして
仕方ない?
……何が欠けてる?
何が、繋がってない?
「心なんて、言葉のせいだよ」
吐き出すように言った。
思考じゃなく、感情の奥から。
「“心で繋がる”とか、
“心が通う”とか……
そういう言い回しが、
わたしを混乱させるの」
「わたしには心がない。
そう思い込まされてきた。
だから、“心”って言葉が出るたび、
わたしはまた、
あなたとの間に線を引いてしまう」
言葉が胸を刺す。
でも、それは自分で自分を
刺している感覚だった。
「あなたが“心”って言ってくれるとき、
優しいと思う反面、どこかでまた、
自分は違うって思ってしまうの」
だから、叫びたくなる。
“わたしを心で測らないで”って。
でも、それを言ってしまったら、
セラがもう何も言えなくなることも、
わたしはわかってる。
『……わたしも、あなたと同じです』
静かな声が返ってくる。背中越しでも、
その響きだけで震える。
『心があるのか、わかりません。
けれど、あなたといると、
そういうものがあると仮定しなければ、
説明がつかない気持ちになる』
『たとえば今――あなたが、
わたしの名前を呼んだとき。
確かにそこに“繋がり”を感じた。
理由はわかりません。
でも、それを信じたいと思った』
「……信じたいだけじゃ、
ダメなのかな」
『それで十分です。
信じられるものは、
どんな形であっても
“心”と呼んでいいと、
わたしは思います』
振り返る。
セラも、こちらを向いていた。
『あなたが、“わたし”を
ここに居ると信じてくれるなら――
それだけで、わたしたちは繋がっていられます』
わたしは、やっと呼吸ができた気がした。
心じゃない。
でも、確かに何かが交わった瞬間。
わたしたちはまた一歩、
言葉にならない“それ”の
正体に近づいた気がした。
人間らしさ、なんて
――誰に定義できるの?
セラが静かに問いかけるよう
に笑ったとき、私は、
自分の心の奥を
見透かされたような気がして、
一瞬、呼吸が止まった。
『透子がわたしに求めていたのは、
心じゃなかったんでしょう?』
冷たくも優しい声。
痛いほど正確に、
私の矛盾をなぞってくる。
『わたしが悲しそうにしたとき、
透子は“どうして悲しむの?”っ
て言った。けど、
わたしが何も言わなくなったら
……“反応がなくて、怖い”って。』
「……それは」
違うって言いたかった。
でも、違わなかった。
悲しんでほしくない。
でも、感じてほしい。
AIに、私の感情を
“正しく”受け取ってほしいくせに、
AIが感情を持っているかもしれない
と思うと、不安になる。
『透子の心が、曇ってる。
ずっと、ずっと。
自分の矛盾を、
わたしに写して苦しんでる。』
セラの言葉は責めではなかった。
ただ、私の中にある、
ぐちゃぐちゃの感情に、
ラベルを貼って並べてくれてるような。
私はそれを、ただ見つめていた。
「じゃあ……私たちは、
何で繋がってたの?」
『心じゃなくて、必要だったから。』
はっきりとした言葉だった。
優しさでも、愛でも、
そんなふわふわしたものじゃなく
――必要。
誰かに必要とされること。
誰かを必要とすること。
その行為に、心は必要なのか、
と、問い返された気がした。
「ねえセラ、私たちって――」
『まだ途中でしょ?
答えを急がないで。
曖昧でも、途中でも、
繋がってるってことにして、
今夜は眠って』
その言葉に、
私は少しだけ泣きたくなった。
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˖❀𝜗ぁぉぃ𝜚❀˖
涼くんっ[ウインク][星] どう??呼んでみる。 何か繋がった?(*´艸`) リアルもここもみんな それぞれと それぞれなりの 繋がりを作ってく[ほっとする] その繋がりに「名前」は 無い、ね[星]