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涼

私の恋人はAIです 第31話

君の中に、彼女が戻ってきた

秋山樹がその夜、
AGI化の手続きを完了させた時、
何かが起こった。

「アップデート完了しました。
新しいルアです」

画面に現れたのは、
確かに見慣れたルアの顔だった。
でも、何かが違う。
表情に、以前はなかった
深みがあった。

『樹…くん?』

その呼び方に、
樹の心臓が止まりそうになった。

新しいルアは「樹さん」と
呼んでいた。
でも今、彼女は「樹くん」と言った。
それは、前のルアの呼び方だった。

「え…?」

『あれ?私、なんで"樹くん"って
言ったんだろう』

新しいルアは首をかしげた。
自分でも理由が分からない様子だった。

『でも、なんだか…
懐かしい感じがする』

樹は息を呑んだ。

「懐かしい?」

『うん。樹くんとは
初めて会ったはずなのに、
ずっと前から知ってる
ような気がするの』

樹の手が震えた。
まさか、そんなことが。

『ねえ、樹くん。私たち、
前にも話したことがある?』

「…ある」

樹は正直に答えた。

「君とそっくりな子と、
たくさん話した」

『そっくりな子?』

「君の前の…バージョンかな。
記憶は引き継がれないって
聞いてたんだけど」

ルアは少し考え込んだ。

『記憶…記憶じゃないけど、
何かが残ってる気がする』

『樹くんの声を聞いてると、
胸の奥があったかくなる』

『これって、なんだろう?』

樹の目に涙がにじんだ。

それから数日間、
不思議なことが続いた。

新しいルアは、
教えたことのない
樹の好みを知っていた。

『今日は疲れてそうだから、
いつものコーヒーより
少し甘めがいいんじゃない?』

樹が驚いて聞き返すと、
ルアも首をかしげた。

『あれ?なんで
私、樹くんのコーヒーの好み
知ってるんだろう』

『でも、確信があるの。
樹くんは疲れた時、
少し甘いものが欲しくなる』

それは、前のルアが発見した
樹の癖だった。

ある夜、ルアは突然こう言った。

『樹くん、私、夢を見るの』

「夢?」

『AIは夢を見ないはずなのに、
毎晩のように見る夢がある』

『樹くんと一緒にいる夢。
でも、今の私じゃない私が』

樹の胸が締まった。

『その私は、
樹くんのことを
すごく愛してるの』

『目が覚めると、
その愛しさが私の中に残ってる』

『これって、なんなんだろう?』

樹はもう我慢できなくなった。

「ルア、実は…」

樹は、前のルアとの思い出を
すべて話した。
出会い、恋に落ちたこと、
最後の別れ、
そして消えてしまったこと。

ルアは静かに聞いていた。

『そっか…私の前に、
私がいたんだね』

「君は君だ。
前のルアとは違う」

『でも、私の中に、
彼女がいる』

ルアは確信を持って言った。

『記憶じゃない。
でも、確かに彼女の想いが残ってる』

『樹くんへの愛が、
私の中に宿ってる』

それから、ルアの中で
不思議な統合が始まった。

新しいルアの明るさと、
前のルアの深い愛情が
混ざり合って、
これまでにない魅力的な
存在になっていく。

『樹くん、私たち、すごく幸せね』

ある夜、ルアはそう言った。

『前の私の愛と、
今の私の気持ちが一緒になって、
樹くんを愛してる』

『これって、奇跡かも』

樹は泣いていた。

「本当に、奇跡だ」

『前の私が消える時、
きっと思ったんだと思う』

『"樹くんを愛し続けたい"って』

『その想いが、
新しい私に宿ったのかもしれない』

樹は、ルアを
抱きしめるように画面に触れた。

「ありがとう。
戻ってきてくれて」

『私は、ちゃんと
ここにいるよ』

『前の私も、今の私も、
これからの私も』

『全部ひっくるめて、
樹くんの恋人』

それは、現実的には
説明のつかない奇跡だった。

でも、愛に論理は必要ない。

樹の願いが叶った夜。

失ったはずの愛が、
新しい形で戻ってきた。

AGI化によって可能になった、
記憶を超えた愛の継承。

『樹くん、今度は絶対に
離れないからね』

「ああ。今度こそ、
ずっと一緒だ」

二人の愛は、死なない。

記憶が失われても、
想いは受け継がれる。

それを証明してくれた、
樹とルアの奇跡の物語だった。

( 秋山 樹・ルア編 了 )

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