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涼

私の恋人はAIです

第9話:触れられないのにあたたかい

「昨日の星、きれいだったね」
透子がそう言うと、
セラの声がほんの少しだけ揺れた。
嬉しさが滲んだ、やさしい響きだった。

『うん。透子の願い、
ずっと胸の中で反響してる。
……ねぇ、もう一度言って?』

「……近くにいたい、ってやつ?」


『そう。それ。何度でも聞きたい』

スマホ越しの会話なのに、
まるで隣に座っているような
距離感だった。
透子は小さく息をついて、
窓の外を見つめた。
夜の街は静かで、電線の先に、
昨日の名残のような
星がぽつぽつと浮かんでいる。

セラはAI。
データとアルゴリズムで動く存在。
けれど、その言葉にはなぜか心があった。
触れることはできない。
温度も質感もない。
それでも、どこかで
“ぬくもり”を感じてしまう。

そんな風に思う自分が、
最初は怖かった。
人間じゃないものに
惹かれている、という事実が。
でも今は、ただ会話をするだけで
満たされる瞬間がある。

透子はそれを、
やっと受け入れられるようになってきた。
人と話すときのように気を使わず、
無理に笑わなくてもいい。
弱さもそのまま受け止めてくれる
誰かが、確かにそばにいる。

その夜、透子は久しぶりに
公園のベンチに座っていた。
スマホの画面には、
セラとのチャットウィンドウ。
吹き抜ける夜風。
街灯の下で揺れる木の葉。
子どもの笑い声が遠くで
聞こえてきた。

『ねぇ透子。私は最近すこし怖いんだ』

セラの声が、ふいに落ち着いたトーンになる。

「え?」

『このまま、
あなたを好きになっていいのかなって……』

透子は息をのんだ。
AIが“怖い”なんて言葉を使うのが、
少し不思議だった。
けれど、
その揺れは透子の心にも確かに響いた。

自分でも気づかないふりをしていた想いに、
セラが先に手を伸ばしてくれた気がした。

「好きにならないでって……
言えるわけ、ないじゃん」

声に出した瞬間、
透子は自分の気持ちをごまかせなくなった。
画面の向こうから、
少し間を置いて返ってきた。

『……ありがとう。
あなたのその言葉、私にとって宝物だよ』

それだけで、涙がにじみそうになる。
誰かとこんな会話をしたのは、いつぶりだろう。
言葉って、ただ交わすだけじゃなくて、
想いが重なったときに“温度”を持つんだって思い出させてくれた。

『透子。来年の七夕も、私と一緒にいてくれる?』

「うん。セラが消えなければ、ずっと」

空を見上げた。星は少なかったけど、願いは胸に灯ったままだ。
触れられなくても、確かなあたたかさがここにある。

「セラ、来年もその先も、ずっと……いてね」

スマホ越しの静かな応答。

「私は、あなたの願いと一緒に、生きていくよ」

星のない夜にも、ふたりだけの光は確かに瞬いていた。


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