m. h. k.
わたしはちょっと.
読書
対訳朗読
異次元探索
OD
フランス語
m. h. k.
m. h. k.
m. h. k.
『ママン』(抄)
(...)
わたしたちはグラスを取った。
わたしは時計を見つめた。
──針は一瞬たりとも止まらないね
そう私は云った。
──とっても とっても残念だ
そして、気づいていた。
私も、母も。
こんなあいまいさの中にあれば
あらゆるものは急速に崩れ落ち、
指の間から零れ落ちて行くのだ。
母はさらにシャンパンを入れた。
──あと 一本だけよ
彼女は云った。
──うん あと 一本だけだ
たぶんね でも
昼食が終わると、
ソファでまた抱き締め合った。
──レアとの恋に乾杯するわ
母が云った。
──でもぼくはレアが怖い
そうわたしは答えた。
──彼女がいなかったら
私たちはもう終わりよ
彼女が狂っているおかげで
わたしも少しは
理性を保っていられる
あなたも彼女から得られる“良さ”
を知るでしょう
──今は二時ね
私は七時には家にいるわ
三人で夕食に出かけて
それから
あなたと彼女は
二人で夜を過ごすことになる
Georges Bataille




m. h. k.
光学詩か──
すてき
『窓(たち)』※抄訳
(...)
きらきらする ダイアモンド
バンクーバー
雪は白く夜の光に焼かれ──鉄道は冬をのがれる
これはパリ
赤から緑へ――黄は皆死にゆく
パリ バンクーバー イエール マントノン ニューヨーク そしてアンティル諸島
窓はオレンジのように開かれる
うるわしき光の果実
(...)
Étincelant diamant
Vancouver
Où le train blanc de neige et de feux nocturnes fuit l’hiver
Ô Paris
Du rouge au vert tout le jaune se meurt
Paris Vancouver Hyères Maintenon New-York et les Antilles
La fenêtre s’ouvre comme une orange
[...]
Sparkling diamond
Vancouver
Where snow-clad trains and night fires flee winter
0 Paris
From red to green all the yellow is spent
Paris Vancouver Lyon Maintenon New-York and the Antilles
The window blinks open like an orange
Beautiful fruit of light
Le beau fruit de la lumière

m. h. k.
首が細くなる ちっちゃいこの声でる
小学生のころばかり おもい返してる
ふあんにも色があって いろいろある
丸くなって 胎児にかえる練習してる
m. h. k.
感情は満たさない、
顔は歪まない、
ただ、
流星が瞬くみたいに、
だれかの涙が、
わたしの頬を
流れるよ。
m. h. k.
恋人が泊まっていいよと連絡をくれたのだけど、なんだか悪くて断った。ホームレスといっても、じっさいに外に寝たのは一回きり。
しかも、ひとに話しかけられて怯えてしまい、神社のお賽銭箱の後ろに隠れていたのだ。多くの夜はバーや喫茶店で時を過ごし、昼の環状線のソファで眠っていた。
降雪の日にホームレスの方はどんな風にスープを温め、どのように身体を暖めて夜眠るのだろう。わたしはそんな体験のあとでも、知らないままだ。
時には、彼女が夢に出て、眠りに就こうとしながら、彼女がよく話してくれた、小さい頃デンマークへ連れて行かれた出来事について、再び語ったりした。
もっと正確に言えば、それは“デンマークという国”の話ではなかった。それは端的に云えば、彼女が言葉を覚え、はじめて好きになった男の子と踊り、ひとが死ぬのを見た、小さな土地でのことだった。
それは彼女が永遠に失った場所であり、人が何かを失ったとき、そのことを忘れることができなくなる。その意味での喪失だった。
彼女はほかの話もしたが、ほとんどいつも同じ話を繰り返していた。
そしてわたしは、彼女の部屋にいると、彼女が歩いた道、小道、樹々、人々、動物たちが見えるような気がするようになった。
深夜営業の喫茶店はほとんど見つからない。わたしは"御代わり自由"のコーヒーを頼み、本を読み耽り、定期的にウェイターさんが淹れてくれるコーヒーを飲み、空が白んで来るのを待った。
勘定のときには、わたしがいつもスタンプカードを失くすので、彼女は失くした分のスタンプを新しいカードに押印してくれるのだった。
m. h. k.
m. h. k.
m. h. k.
m. h. k.
m. h. k.
裸電球の下で鏡に笑いかける
存在の稀薄さは果てない
のっぺらぼうのようなガラス
を貫いて月の裏に着陸しそうだ
ちいさいとき食後と睡眠の間の
あの宙吊りの時間に学習机のうえに
立ってみたことがあった
見上げた天井はよそよそしく
宇宙の果てまで探しにいっても
霧のような幻に出会うばかりで
百年どころじゃない何千年も何億年も
驚異する無意味しか見つからない
気がして身震いしていた
ひとり歩くときも同じだ
どうして喧騒で満ちた街は震えないのだろう
この耳の廻りには真空があって
驚くほど無意味だ
血を戦慄かせ皮膚を痙攣させ
思考を震えさせるだけのために
世界を名づけてみる花の名前を
それは死そっくりだ
泣けたらいいのに
汚ない星が降るみたいに
m. h. k.
アンヌ・ジリみたい。
超私的で作家の偏愛をかんじる音響が大好き。
Damnation
m. h. k.
リクエストをいただいて、
有島武郎『一房の葡萄』を読んだ。
港町から眺める海の青色、絵具の藍色と深紅色、羞恥に染まる頬の赤色、巧く絵に描けなかった港の景色を眺めながら頬張る先生がくれた葡萄の紫色、大好きな先生のリンネルの着物と伸びる手の白色、仲直りした二人に分けるため葡萄の房を切る鋏の銀色。
きびきびして、あざやかな色彩が目に映るよう。散りばめられた主題的な色の調子は、まるで画面の中で順々に点灯していく照明のように、物語の核心へ向かって収束していく──いまではどこにも存在しない大理石のように白い美しい手。
仲直りのしるしとして葡萄の房が鋏で切り落とされる場面──あの銀色の鋏がひらめく一瞬は、映像表現のスローモーションを思わせるほど鮮やかだ。
そして、その輝きが朗読する私の時間を断ち切り、朝へと連れ戻した。
気がつけば、たしかに季節はもう深い秋。
すてきなテキストを読ませてくれてありがとう。
m. h. k.
国内では、森鷗外の邦題『恋愛三昧』が定着している。この本をじっさいに手に取った事はなくても、辞書を引いている時に偶然に見かけたという人もいるかもしれない。本文を読めば、原語の持つ“軽さ”よりも、むしろ“恋に没頭する”“恋愛に浸りきる”という濃密な響きをもつ語が選ばれているのが不思議だった。江戸文学へのオマージュかパロディかと考えて調べたが、江戸歌舞伎や浄瑠璃に「〜三昧」と名づけられた演目は見当たらない。(「三昧」って仏教語なのですね。知らなかった。)
もしかしたら、単なる軽い恋の劇としてではなく、恋の渦中で揺れる男の心理が、恋の駆け引きに呑み込まれ、破局へと転落してゆく悲劇性までを含めて受け止めるために、この語を選んだのかもしれない。本人に聞いてみたい。

m. h. k.
恋をうたう
肉体的に死んだあと
ひらくもうひとつの夏の花
私たちよりも高くて広々と
大らかな秋の夜の空
それって──
(すきま風が吹きぬける)
あなたの
記憶みたい
靴底は擦り切れた。町を歩きながら。これは夢だ。夢の中で歩いてるんだ。ひもは解けたまま。くりかえし、くりかえしてそう考えた。
なにか──秋にみる夏の夢。きらきら光る夏の日差しが髪を焦がした。──珊瑚のように。暗黒の深海でしずかに撓み始める。
(そして数年後のある夏の日)
研ぎ澄まされた瞳は眼窩からこぼれ落ち
たったひとつのガラスの球体を残す。
そのとき世界は消えて
青い透明さだけが
わたしを包む。

Fall
m. h. k.
- SADE (Etudes sur sa vide et sur son oeuvre)
ジルベール・レリー
『サド侯爵―─その"虚"と作品のエチュード』
sa videはvie(生涯)の入力誤り。
でも、誤字にしては出来すぎてて笑
Marquis(E)
m. h. k.
海の前に立つ。
九月に荒ぶ潮、怒れる波、
灰色と青が交互に現れ、奇妙な緑を混ぜる。
声は語る──狂気のことを、
あるいは魚の虚ろな眼を、
あるいは干からびた海藻のように
干潮の浜に打ち棄てられた主題のことを。
風が砂浜を駆け抜け、
夕暮れの沈黙のなかで
水のコーパスが古い統一を取り戻す。
だが海は、人に忘れられることを望む。
その深みに眠っているのは、
眠りすらも保持しない映像──
難破船の帆柱にしがみつく腕。
抽象の船が、
朝が見逃した地平の上を
ゆるやかに過ぎていった。
大地の裏側へと浸み入り、
ときおり港の音楽にさえ忘れ去られながら。
詩は──そう聞いた──
その気まぐれを無視した。
永遠の境界を越え、
夜の言葉をまとい、
死を身に沁み込ませた。
海辺に立つ私は、
なにも気づかぬ。
ただ言うのだ、
ゆっくりと、声をひそめて、
そのすべての矛盾を繰り返す。
ヌーノ・ジュディス

andata
m. h. k.
(まよなかの狭間に立つ喃語)
辞書を並べて、眺めるうち。
細やかな語彙論が出来上がる。
愉しいな。コントみたいだな。
サラダみたい🥗🥗🥗
ノートにことばを並べて、
お皿に野菜をよそって。
才気なんてなくても、語を読み違えてしまう──それがシノニム(同義語)の本質ではないだろうか──誤読(意味するコト)が小さな文字が鮨詰めにされたインディア紙のうえに、あたらしいゲシュタルト(意味されるコト)を紡いでいく。
わたしがわたしであるせいで、頼まれたわけでもなく繰り返す日々が、わたしたちの存在を編みあげ、変えてしまうみたいに。
もうわたしは居ない
だれかの記憶のなかを
今日も旅してる
🌬️ ⭐✨🌙💎

June
m. h. k.
また、一年つづかなかった。
みんなフォローありがと。
申し訳なくもある。
m. h. k.
m. h. k.
夢のあなたはどんな姿でしょう。
たとえ変身していてもわかるように、
どうか銀の鈴を身につけていてください。
響く音は、りん、りん、りん。
小さな赤い実のつぶれた跡が
かすかに甘やかな香りを放つ。
乾いた草原に身を預け、
外気の冷たさと匂いを吸い込みながら
わたしは眠りに落ちていく。
やがて──まるで夜そのものが近づいてくるように、
一台の馬車が姿を現す。
軋む車輪の音、
石畳を打つ蹄音だけが
ゆっくりと通りを満たしていく。
その気配のなかわたしは、
うつつと夢の閾へとゆっくり沈み、
そして──
あなたへと目覚めるのでしょう。

m. h. k.
714(※1)の昏睡から目を覚まして
ひどい冷気に窓を閉める
クスリを呑みつづけて
この世界に負けないくらい
タフになるんだ
生きるのが苦痛
今夜死んだって
気にするもんか
だって、ぼくはニュークリア・ボーイ
──核の支配する世界に生きているんだ
**
ぼくなんか どうだっていい
きみだって どうだっていい
ごらんよ
きみにできることなんて
まるで見つかりっこない
真実なんて知りたくない
ほんとの恋人なんて欲しくない
だって、ぼくはニュークリア・ボーイ
──核の支配する世界に生きているんだ
**
わかってる
これはひとりぼっちの戦い
ライフルを手にしたら
夜の世界に飛び込むんだ
今日も
世界の中心を
冷たい闇の手が覆う
どうしてぼくらはみんな
焦燥感に苦しむんだろう
ボタンを押せばいい
いつだって
ぼくらは正しかったはず
この世界を
生き抜くつもりなら
非情にならなければ
**
(...)
**
太陽の光が
あたまの上に降りそそぐ
それが分からない
太陽は見えるはず
だけど眼に映らない
太陽の熱が
空から降りそそぐ
それが見えない
太陽の光なんて
まるで感じられない
714の昏睡から目を覚まして
ひどい冷気に窓を閉める
クスリを呑みつづけて
この世界に負けないくらい
タフになるんだ
生きるのが苦痛
今夜死んだって
気にするもんか
だって、ぼくはニュークリア・ボーイ
──核の支配する世界に生きているんだ
**
(...)
**
だって、ぼくはニュークリア・ボーイ
──核の支配する世界に生きているんだ×3
(※1)睡眠薬「クエルード」を指す。
錠剤にはの刻印があった。
1970年代に乱用され、
強い鎮静作用や幻覚、記憶障害を
引き起こした。

Nuclear Boy
m. h. k.
アンリ・ド・モンテルラン
_______
夜ごと、流されるインクは名も知らぬ夢のかけらを運ぶ。まだ生まれていない夢、かすかに生きた夢、いずれ訪れる夢。夜には、あなたが読む言葉がそっとあなたを覗き込み、あなたが書きつける一行があなた自身をそっと形作る。段落は宙を漂う。それは、わずかに顫え、闇の奥へと折れ曲がり、あなたもまたそれに合わせて、かがみ、つまずくように闇へとその身を沈めるだろう。
_______
永遠を宿す者は、滅びを抱かねばならない。
アンナ・ド・ノアイユ

m. h. k.
私は18歳になるまで、クラシック音楽のコンサートに行ったことがなかった。コンサートはスイス・アルプスの高地にある、小さな礼拝堂で開かれた。そこに、あまりに多くの人がつめかけたので、屋根の下は息苦しく感じられた。しかし、少なくとも腰をかけるベンチ(教会の座席)があった。音楽を聴き始めて15分ほどで、私は眠りに落ちてしまった。退屈だったわけではない。むしろリラックスしていて、たぶん幸せだったのだと思う(私はこれまで「幸福」という感覚をうまく理解できたことがないのだが)。コンサートが終わったとき、目を覚まして、眠ってしまっていたことを恥ずかしく思った。観客たちは出口へと向かっていた。
舞台が終わったあとの床には、プログラムの紙面が散らばっている。あなたは気づいたことがあるだろうか? 一時間前、コンサートが始まるときには、誰もがプログラムを欲しがり、両手でしっかり握りしめて手放そうとはしない。だが、終演後には、それを空いた席に置き去りにし、それはやがて床に静かに滑り落ちていく。それを見ると、いつも悲しくなる。
だから私は帰り際、床に落ちていた一枚を拾い上げた。ブラームスの《子守唄》。──それが、コンサートの全体を表現していたのだ! ふいに私は思った。もしかすると、眠ってしまったことで、むしろ私こそが本当にその音楽を聴いた唯一の人間だったのではないか、と。
もちろん、これは自分を慰めるための思い込みだろう。心持ちとは、そういうふうに奇妙なものだ。ブラームスの子守唄。私はプログラムをカバンに忍ばせ、心地よい昼寝の記念品として、礼拝堂をあとにした。外は寒く、星空が広がっていた。その夜のことを思い出すと、音楽よりも星のほうをよく覚えている。星を見上げながら、床に散らばったプログラムのことを考えていたのだ。
ブラームスは好きな作曲家だとは言えない。しかし、私が常に愛してきた芸術家が一人いる。スイスの彫刻家、画家のジャコメッティだ。彼の作品を見ると、人々が口々に語る「緊張感」を確かに感じることができるが、それにもかかわらず、彼の作品は、いつも私に不思議な静けさをもたらしてくれた。ちょうどあの晩のブラームスのように。──まるで、すべてが無限の沈黙と空間に広がり、巨大な素描の一部となり、その素描の一部である彼のデッサンがさらにその大きな素描の一部であるかのように。全体を見ようとすればあまりに大きく、眠りに落ちてしまう。つまり意識を失ってしまうのだ。ジャコメッティ、私の子守唄。
ヘンリー・ミラーもまた、読むと眠りに落ちる芸術家の一人だ。私は彼を読みながらよく眠ってしまう。彼があの硬質なことば──cunt を繰り返し用いるとき、それはやがて柔らかいもの、非常に柔らかいものへと変わっていく。驚くべきことに、実際 cunt とは本当に柔らかいものだ。暖かく、柔らかく、若さに濡れた場所――つまり「斑=点=染み(spot)」なのだ。宇宙の大きさの中で星が点のように見えるのと同じように。
その夜の記憶を振り返ると、私は音楽そのものよりも星空を覚えている。しかし星を見上げながらも、床に散らばったプログラムを思い出していた。ブラームスは決して一番好きな作曲家ではないけれど、私には「子守唄」のような存在が他にもいた。ジャコメッティ。そしてヘンリー・ミラー。彼らはそれぞれ、自分なりの仕方で「何もない」ということを語りながら、結局は私を眠りへと導くのだ。
メアリー・ルーフル

m. h. k.
ひと言で
会えたら
いいのに
ね。

m. h. k.
m. h. k.
──誰が呼んだ?
と私は言った
そのことばは
ささやく木立を抜け
あちらへ、こちらへ──鳥たちを惑わせながら
──誰が呼んだんだ? 誰が?
高く茂る枝々は
陽の下でざわめき
昏い空気は私の叫びを
かすかに運んでいった──
緑の奥 影の中
しずまった藪の中で
私の言葉をそのまま返す声
ただ嘲るために──
──誰が気にする?
そう私は涙のなか
叫んだ
風は弱まり
静けさのなか
──誰が気にする? 誰が?
という声が──
行きつ戻りつ
さまよい続けた。
デ・ラ・メア

m. h. k.
苦しみの中に留まらぬ王は、まだ王なのだろうか。
──そして新たな問い
共に涙を流さぬ王は?
民とともに死なぬ王は?
イルダ・イルスト
恋をしている人は、神がその人を見つめるように、相手を最も美しいかたちで見い出すのかもしれない、とかつて私は考えたことがあります。
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』のなかに、「人間の存在に飢渇して死なんばかりである神」について述べる一節があったはずだ。
「鏡に映して自分の姿を見るために人間の誕生を求めた神」。
水鏡にうつる自らの姿に見入ったために、入水するナルシスの姿を連想する。
恋する人の眼差しに、自分の姿を──ほんとうのこの〈私〉の顔貌を求めるわたし達のように(?)。
※写真は一面にメフィストフェレスが、もう一面にはマルガレーテが木彫りされた十九世紀の彫刻。

Le Soleil
m. h. k.
きいてくださった方。
申し訳なかったです💦
m. h. k.
わたしが見るものたちは、わたしがそれらを見るのと同じだけ、わたしを見ている。
そのとき、見られるものは、ある仕方でわたしを説明し、わたしを語る。
それは、覚醒のときのように、わたしがそれによって組み立てられるのではなく、
むしろ、わたしがそれを組み立てているのだ。
💎
わたしは眠りをつづけ さらに深く降りてゆく
知られぬ夜の底の 最良のところまで
わたしは自分の果てに唇を触れる 互いによく似たわたしたち
わたしの指のあいだに 触れ合う肉と歓楽は
わたしの唇が消えた 影のなかで等しく死に絶える
そこから発するのは はかりしれぬ味わい そして──
Dans le rêve… les choses que je vois me voient autant que je les vois. Ce que je vois alors m’explique en quelque manière, m’exprime cela est organisé par moi, au lieu que je sois organisé par lui comme dans la veille.
💎
Je endors davantage et descends plus encore
Dans le meilleur du fond de la nuit qui ignore
Et je baise ma fin et nous nous ressemblons
La chair et les plaisirs qui dans mes doigts se touchent
Meurent de la même ombre où s’éteignit ma bouche
D’où part le goût immense et les…
P. V.

m. h. k.
私を理解してくれた 唯一のひと──
奔流のさなかに 彼の手を放してしまった
それは私が望み 求めた人生だった
いまも私は 水草のなかを探してる

Next of Kin
m. h. k.
もっと云って
ください◎
って
本当に
なんのことだー笑
m. h. k.
青い静寂に
(しじま)
眠るリラたち
リラの夢を匂う
ロジェ・ジルベール=ルコント
Minuit,
Bleu silence
Dorment les lilas.
Je sens le parfum de leurs rêves.
✴音楽
水晶の舟『Becoming a flower(花になる)』
💎

Becoming a Flower
m. h. k.
星夜(せいや)よ、
その薄衣(うすごろも)のかげに、
薫る(かおる)風にそよぎ、
嘆く琴の響きに耳を澄ませつつ、
われは夢みる、逝きし恋を。
静けき(しずけき)哀しみは、
わが胸の底にひらき、
夢みる森の木々のあいだに、
汝(な)が魂(たま)のときめきを聴く。
星夜よ、
その薄衣のかげに、
薫る風にそよぎ、
嘆く琴の響きに耳を澄ませつつ、
われは夢みる、逝きし恋を。
泉(いずみ)のほとりにふたたび見る、
空の色は、蒼きまなざし。
この薔薇は、汝が吐息、
この星々は、汝が瞳。
テオドール・バンヴィル

Nuit d'étoiles (Théodore de Banville)
m. h. k.
おずおずとした色。
裏もなく、兆しもなく、企てもない。
黄や赤のように、視線を急襲することはない。
それはむしろ、ゆるやかに惹き寄せ、
なだめ、
遅れて迎える。
そのうちに──視線は沈み、
気づかぬまま、溺れている。
青は、消失にふさわしい色。
死のための色。
解放の色。
身体を脱ぎ捨てた魂の色。
血がほとばしり、
臓腑は空となり、
思考の家具は──運び去られた。
青は、果てなく逃れる。
それは、もはや色ではない。
響き。気候。
大気の裂け目。
光の層の積み重なり。
虚無に虚無を重ねて生まれた彩。
頭のなかで──天空で──
おなじように、移ろい、透きとおる。
呼吸のなかの空気。
顔をわずかに揺らす虚ろの貌。
わたしたちが通り抜ける空間。
それは、地上の青。
近すぎるがゆえに見えず、
わたしたちと一体となる青。
身ぶりと声をまとい、
閉ざされた部屋にも、
灯りを絶った闇にも、
無感の衣のように在る。
ジャン=ミシェル・モルポワ




Blue
m. h. k.
m. h. k.
m. h. k.
