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桔梗色のきたじー

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詩的なものに惹かれることが多く、小説家やエッセイストに憧れがある。 ――消えかけの灯火と、茨に絆された心。
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桔梗色のきたじー

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*(再々生。)
*(胸中虚空、筆未だ起きず。)
*(茨我が身を絆し、心月光を追ふ。)
*(落葉知りて落陽見ること歳の暮れ、愁ひは冬に跨がる。)
*(所在知らざるは此の心、我が身復た昼夜心を追ふ。)
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#気付き
英語について……特に英単語 "can" について。

アメリカ英語では、僕はてっきり「キャン(/kjæn/)」と発音しているものだと思っていた。
が、突然、気付いてしまった。「そんな発音、してない!」と。
最初は「キャン」に聞こえていた。だが、よーーーーーく聞くと、「キャン」ではない。ギリギリではあるが、アメリカ英語でも「カン(/kæn/)」と言っている。イギリス英語の「カン(/kan/)」とは流石に違うが、意外と「カン」に聞こえる。

僕にとってはイギリス英語が喋りやすいが、これは、まさか僕がアメリカ英語の喋り方を、どこか勘違いしているからなのではないか? ――そんな考えに至った瞬間だった。

イギリス英語は喋りやすい。僕にとって、すごく口に合う英語。それは事実。でも、学校(少なくとも高校まで)では9割アメリカ英語で学習していた。
アメリカ英語が少し喋りにくいから……と少し敬遠していたが(嫌という訳ではなく寧ろたまにアメリカ英語を混ぜて喋ることがあるが)、アメリカ英語で喋るのを「また」勉強してみるのも良いかもしれないと思った。
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#創作詩
『vanitas』

何もないのに
突如胸の奥が
ズキンと言い出す
食い込む茨

心にできた空白
瘡蓋の如く
塞がろうとしては
失敗するのだ

この人体の方が
再生は早いだろう
でも心となると
大きな泡が瘡蓋に

空しさが泡となって
増えていくでもなく
ただ膨らむ
だから瘡蓋がずっと脆い

意味があるかも知らず
月に祈る
しかしその祈りは
私のためではないのだ

祈るだけ祈って
結局私は無力
それを知ってしまうから
永遠に私は空しいまま

自分の全てを恣《ほしいまま》に
できたらそうしてしまいたい
そうしてこの「空の空」を
強制的に塞ぎたいのに

私がそんなに器用な訳が
あるはずもないのだ
自作の詩の星自作の詩の星
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*(再生。)
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#詩
『茨』

茨が私の心を覆い
色を奪っていく
滲んで霞む景色は
生の実感すらも
押し退けてしまう
文字を連ねることで
正気を保っている
やはり、私は本当に
弱すぎるんだ……
涙が落ちて潤うのは
心ではなくこの茨
太陽の熱はこの茨を
焼き切ることができぬ
放心の茨が
貫かんばかりに私を刺す
罪悪の茨が
じわじわ私を蝕んでいく
無力の茨が
見える景色を霞ませては
絶望の茨が
私の希望を折ってしまう
この茨の一つ一つが
あまりに痛いから
涙が出てしまうけど
結局茨を潤す
次の私の戦いは
この茨が相手なんだ
この景色の色を
取り戻すために
私はもがく
痛くても、痛くても、
もがき続ける
この茨が負ける瞬間が
きてくれると信じて――
自作の詩の星自作の詩の星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

さあ行くんだ、その顔を上げて――。

淵野辺駅にて、希望の歌。

雨よ、風よ、僕の心を潤して。

僕の、この目の輝きを絶やさぬために。

月よ、星よ、僕の足元を照らして。

昔々の船乗りたちを導いたときのように。

そして、僕よ……

「立て!」

強かな「人間」に成るんだ!



(心に、数多の応援歌を。)
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銀河鉄道999

ゴダイゴ

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#夢
『鏡職人』(10月28日~29日にかけて。夢の記録。)

そこら中に鏡が掛けられている。年季が入った建物の中らしく、言語化の難しい、歴史と風情を感じる独特の香りに満ちていた。
奥の方で、胡座をかいて何かを作っている人を見つけた。――話しかけようと近付いてみると、男性である。その手には、大きな丸型フラスコ。
「何を作っていらっしゃいますか?」
「これかい? 鏡を作ってんだ」
厳めしい顔立ちに反して、思いの外温和だ。ただ、それはそうと、鏡を作っているにしては、作業場に違和感がある。
「こ、これが鏡になるんです?」
「? ……おう」
一瞬、きょとんとされるが、数秒後、男性は気が付いたのか、「あ」と声を上げた。
「なるほど、そういうことを言いたいのか。――そうだ、水銀はない」
そう、水銀がどこにもないのである〔現在、実際の鏡に水銀は使われていないが、明治時代には、水銀を使った鏡が流通していた〕。
「代わりに、こいつを使う」
そう言って男性が指差したのは、ある瓶だった。ラベルが色褪せて(あるいは焼けたか)文字が見辛くなっているが、「A」と「NO」は辛うじて見えた。……硝酸銀!?
「お、察した顔だな」
そう言って得意気にフフフ、と笑う男性。直後男性は、この、栓をされた大きな丸型フラスコを、横倒しにした状態で持ち上げ、前後に回すようにゆっくりと振っていく。中の液体がジャバジャバ言うのが聞こえた。
やがて、本当にフラスコが鏡になった。
「ほれ、完成だ」
驚いた。本当に丸い鏡だ。曲面だから扱いにくいが、鏡である。
感心してまじまじと眺めていると、男性はラベルシールを取り出した。何故か、日付と時間が書いてある。製作日時かと思っていたが、どうも違うらしい。
「この鏡、あんまもたねぇんだよな……」
「というと?」
「3時間放っておくと、爆発するかもしれねぇ」
「なんと!!!」
とは驚いたものの、これはきっと、雷銀のことを言っているのだと思った。
なるほど、水銀を使おうが使わまいが、鏡を作ることは、「命懸け」らしい。
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#創作詩 #テディベアの日
『一つの劣等感』

ぬいぐるみというのは
愛に対して器用だ
いつでも傍に寄り添って
いつも静かに笑っている

喜びも悲しみも
動じず受け止めて
体の大きさに関わらず
包み込んでくる

余裕がなくなって
八つ当たりしてしまっても
ぬいぐるみは受け止める
笑顔のままで

ああ、あ、喋る私は
ぬいぐるみに負けている
どうしてもぬいぐるみに
憧れてしまうのだ

そんなぬいぐるみに
静かな「優しさの塊」に
今日もこれからも
きっと憧れていくのだ
自作の詩の星自作の詩の星
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しあわせは 空のうえに

しあわせは 雲のうえに

かなしみは 星のかげに

かなしみは 月のかげに

ひとりぽっち――

年季の入った赤い電車から聴く歌。
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#創作詩
『抱き枕が欲しいらしい』

親の曰く私は
寝相が悪いらしい
また曰くに私は
何かと抱き付きたがるらしい

「何かと抱き付きたがる」
語弊しかないのだが
変な意味の一切をなくせば
事実この上ない

確かに私は寝ている間
抱き付けるものを
探しているらしい
求めているらしい

なるほど、私は
抱き枕が欲しいらしい
しかしながら抱き枕は
収納を食ってしまう

だから抱き枕は諦めて
そのまま眠ってしまう
大きなぬいぐるみも
きっと同じことで諦めた

しかし抱き枕があったら
私の寝相は本当に
直ってくれるのだろうか
秘かに疑う

それでも私はごく稀に
抱き枕が欲しくなる
そうなっているらしい
そうなったらしい

(何も深い意味がない「欲望」の詩歌。)
自作の詩の星自作の詩の星
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#悪夢
『无題(3)』(10月23日~24日にかけて。悪夢の記録。)

家も木々も草も全て白い世界にいる。しかし、雪ではない。
道に、倒れている人がいた。……瞬間、とても知っているシルエットだと認識した。見ると、怪我をしている。衣服に血も滲んでいた。
が、安否を確かめようと駆け寄ると、その人物は私を睨み、私を突き放す。その目に光はなく、目の下には涙の跡が鮮明に残っている。
その時、この怪我は私が負わせたのだと知った。
近寄ろうにも、「来ないで!!!」と怒号を浴びせられる。
私は、「何もできなかった」。
怪我をしている私の「友」は、よろよろ立ち上がると、家の方へゆっくり歩いて行った。その手足は震えている。
私は、去っていく「友」の背中を見て、膝から崩れ落ちる以外に、「何もできなかった」。
ふと、世界が一面黒くなる。
何者かに睥睨されているのを感じ、顔を上げると、目の前に、見知った……「人外」がいた。
泥だらけ。
私が顔を上げたのを知ると、それは俯きつつ薄ら笑いを浮かべた。直後、こう言う。
「言っただろう? 『私は死なない』と」
刹那、一気に胃も脳も沸騰する。襲いかかろうとするものの、見えない壁に阻まれる。
……泥被りだった。前に倒したはずの、泥被り。
泥被りは、私を嗤い、こう言う。
「おのれ、滑稽だな!」
そして、泥被りは去ってしまった。

目が覚めた時、顔に違和感を覚えた。違和感の源を探ると、それは涙の跡だった。
そんな……。
私はとうとう夢で泣いてしまったのだ。嬉しくもない涙である。
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#短歌 #文語
帯は緑 我孫子止まりの 前十両
行かむ寝床は 叢の先

(字余りあり)

残りぬ五両は、成田へぞ行きし。連結切り離しの瞬間とぞいふめづらしき場面に立ち会ひけるのち、冷風吹きたり。その風の幽かなるは、いとよろしくありてむ。
短歌の星短歌の星
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好きなカップ麺は何ですか?好きなカップ麺は何ですか?
NISSINカップヌードルの、しょうゆ。 UwU

え、ありきたり? それが良いんだよ兄弟! ÙwÚ
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『水戸線完走』

私がこの日に学校をサボってしまったのを、親はきっと知らない。尤も、こんなことは知られてほしくもないが。
友部で赤い常磐線に遭遇した後、赤い常磐線が入ったレーンと同じレーンに特急が来た(生憎、ときわ号かひたち号か分からなかった)。特急列車出発の際、発車メロディである、坂本九の『上を向いて歩こう』が流れた。

「水戸線」と言いつつ友部で止まってしまうこの路線は、常磐線と同じ車両を使っている。そのため、自動アナウンスの音声が優しい。路線のイメージカラーも青である。
途中、若干風変わりな地名を見かけたが、それ以上に笠間駅の駅名標がやけにデコレーションされていたので、またいつか行きたい。

少し寒い日であったが、この寒さは、体温が高めな私にとても合った。
水戸線を完走して、小山に着いてホームに降りたとき、新幹線の音がしたのは、きっと上にそれが走るところがあるからであろう。

ああ、私は確かに、この分かち合えるか分からない微かな達成感は、学校をサボってでも得たかったのだ。
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#今日の1枚
……やってしまった。僕は「悪い子」になってしまった……![びっくり]
学校をサボって友部まで。水戸線完走チャレンジへ、現在50分弱待ち中。

待っている途中、赤い常磐線(赤JJ)に遭遇。
撮れなかったけど、この後向かい側のホームに特急が来て、九ちゃんの『上を向いて歩こう』が流れました。幸福[ほっとする]

……うん、これ以上はサボらない。決めました[冷や汗]
流石にこれ以上学校サボるのはよろしくないので、ね……[目が回る]
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#創作詩
『黄葉の兆し』

肌寒い日が続き
今は雨の降りそうな
鈍色の曇り空
神無月

この月には末日に
あの収穫祭によって
街が嫌に騒々しくなる
渋谷の惨劇

しかし私はこの祭りで
どんちゃん騒ぎができないのだ

祭り静かに穏やかに
私は黄葉を待つ
見れば街路樹の葉に
黄葉の兆しがある

あゝ私は今年の
10月31日も
やはり静かでいるのだ
きっとそうであるのだ

あゝ今年も当日は
きっと仮装しないのだ
自作の詩の星自作の詩の星
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ストレートな「好き」って嬉しい?それとも照れる?笑ストレートな「好き」って嬉しい?それとも照れる?笑
両方 =w=

いや、「好き」って伝えるのは大事と思っているし、ストレートに伝えた方が良いとも思っているし、寧ろ僕だったらそうしてほしいと思うんだよ……
そうは思うんだけどね???
照れるものはね、照れるんですよ[目が回る]
「嬉しい」と「照れる」は同時に存在できるんだよね……だから、「両方」。
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#創作詩
『上野駅13番線』

かつて流れていた
13番線の演歌
しかし今はもう
「思い出」になってしまった

それでもなお未だに
私の心に残っている
「ふるさと」への愛が
あの歌に刻まれていたのだ

「くじけちゃならない人生」
「胸にゃでっかい夢がある」
懐かしんでも、懐かしんでも
私は「今」という地を踏み締める

私の目に
私の手に
私の足に
私の心に

小さいながら強靭な
「希望」というものを宿して――。
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自宅でよく聴く音楽のジャンルは?自宅でよく聴く音楽のジャンルは?
色々聴いているよ~[笑う]
ただ、最近は新しい曲とかじゃなくて、昔流行った曲とか、駅でご当地発車メロディとして(若しくはご当地接近メロディとして)流れてくる曲とか聴いているね。

駅で流れる曲だったら、例えば、
川崎や友部で流れる九ちゃんの『上を向いて歩こう』や、
金沢八景で流れるEXILEの『道』、
茅ヶ崎で流れるサザンオールスターズの『希望の轍』、
かつて上野で流れていた『あゝ上野駅』、
今も尚地下鉄側の上野駅で流れる森山直太朗の『さくら』
などなど……

ご当地メロディはね~、いざ実際に駅で聴くと一種の愛を感じるよ[大笑い]

去年だったかな……クレヨンしんちゃんの『オラはにんきもの』っていう曲が春日部駅で流れるって噂に聞いて……なんと僕はそれを聴くためだけに春日部まで電車で行くっていうね[泣き笑い]
みさえ(しんのすけの母)の「しんのすけ!!」って言う声まで聞こえそうだったね、あの時はw
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(※画像は、マインクラフト公式によるもの。)
#創作詩
『不器用でも』

歩いては止まって
進んでは止まって
そんなに大股で
前に行ける訳じゃない

それでも自分なりに
頑張っている
これまでそうだった
今日だってそう

そしてこれからも
頑張っていくんだろう?
「自分」よ、これからも
頑張るんだろう?

いつか自分のことが
誇らしく思えるなら
不器用でも
失敗ばかりでも

そのときがやってくるまで
頑張るんだよ
苦しいことだろうけど
頑張るんだよ

これまで頑張った
今日も頑張って
これからも頑張る
不器用な自分なりに

(やさしい、自分のための戦歌。)
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#悪夢
(※閲覧注意)

『怪物、再び』

真っ黒な空間にいる。私の目の前に、人がいた。あまりの暗さで、体の輪郭や表情がよく見えない。しかし、とんでもなく強い殺気は感じることができた。
この人は、「怒って」いる。
だのに、私は何を思ったのか、この殺気に満ちている人に向かって、数センチずつ近付いてしまった。
すると、一瞬目が光ったと思ったら、私は腹を思いっきり殴られた。この強さで殴られたことはない。だからなのか、痛さを感じるまでに時差が生じた。何なら、あまりに強く殴られたため、10メートルほど吹っ飛ばされた。
ショックで腰が抜ける。立とうとしても、立てない。そして、私を殴ってきた人が、こちらに近付いてきた。
やがて目の前まで来ると、私はやっと顔を知ることができた。
私の顔である。
そうか、やって来たのか、あの「怪物」が。
それから私は、胸倉を掴まれてグッと持ち上げられてそのまま地面に叩き付けられたり、脚が捥げそうなほど引っ張られたり、たかいたかいの如く上に掲げられたと思ったらそのまま上に10メートルほど投げられて落ちたりした。
これほどのことをしたら痛いどころの話ではないのに、私はこの時、自分が本当にそういう運命だったのだと思った。だから、抗わずに、受け入れてしまった。
悪夢は、繰り返されたのである。
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#夢 (一刻の記録。10月11日午前0時45分?)

『魔法ではない小石』

カバノキの森にいる。森の中に、一本の小川。さらさら流れている。
小川の対岸に、学ランを着た青年がやってきた。本当に高校生のような佇まいである。
その青年は、手の中に小石を何個も持っていた。余程こぼしたくないのか、がっちりと握っている。小川のすぐ側まで来ると、川に向かって蹲踞の姿勢になる。
対岸に私を見つけるとこう言い出す。
「ここに、『魔法の小石』がある。けど、ちっとも魔法じゃない。君ならきっとそれが分かるはずだよ」
そして、持っていた小石を一気に川に放り投げた。やや黒い小石だった(アスファルトよりは明るい色)。すると、見よ、小石が水面に浮き、燃え出したではないか。パチパチ音を立てて、何なら破裂しながら水面を走っている。破裂したそれも、燃えていた。――火が、水の上を走っていた。
しかし、この時は何故か、確かにこれは魔法ではないときっぱり分かった。小石と思われるそれを川に投げたら、それは燃えたり、破裂したり、燃えたまま水の上を走ったりする。何なら、一頻り燃えたり破裂したりした後、水に消えている。微かに白い、煙のようなものも出ていた。この煙のようなものは水蒸気だと思っていたが、それを微量吸ってしまった青年は噎せて、こう言う。
「離れて。吸ったら毒になっちゃう」
ああ、そういうことか。
あの小石は、ただの小石ではない。が、「魔法の小石」でもない。

あれは、カリウムだった。
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#創作詩
『二度と戻れぬ』(Too Far To Go Back)

「前を向け」
「前へ進め」
休みながらも
人に言われ続け
自ら言い聞かせ続けた言葉たち

「のし上がれ」
「上を目指せ」
言われる度に
厭な気持ちが立ち
何度も避けたかった言葉たち

「後ろを見るな」
「下を向くな」
それが私には
茨のようにとげだらけの
鞭を打ち付けるような言葉たち

できることなら
止まりたい
振り返りたい
戻りたい
下りたい

でも来てしまった
思ったときにはもうここまで
戻りたくても
下りたくても
それは決してできない

だから
行くしかない
進むしかない
上るしかない
それしかない

悔いてもどうにもならない
それはこの身が知っている
それでも悔いてしまうのは
「仕方のないこと」なの?

戻れない
下りられない

「ダメだ、こんなに悔いては」
頭はそう思ってくれる
でも肝心の心は
悔いるのをやめてくれないの?

あゝもう
「歩いている」気がしない
自作の詩の星自作の詩の星
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#創作詩 #夢 #悪夢
(※10月8日午前1時頃に見たと思われる夢の記録。閲覧注意。)

『夜色電車の悪夢』

少し濁った夜空のような
そんな色の電車が
私を乗せてとうとう
終点の駅に入る

ドアが開いた
私は降りる
最後に降りるは
車掌と運転士

ホームで佇めば
突然のベル
しかしこのベルは
誰もが知るベルではない

ブリキを叩く音
遅くカンカンと
鳴らしているのは駅員
その顔はひどいものだ

目は死んでいて
瞳の黒は濁って
笑っているのやら何やら
分からない顔をする

ブリキの音と聞こえるは
駅員の荒んだ歌
メロディーなんぞ拾えっこない
悍ましい歌

「龍の涙はうまきにや
鵺のこれをぞ嘗める事
この地に足を付けたなら
鵺に間もなく喰われる」

なんて歌を歌っている!
怒鳴りたくなったものの
私の声はいつの間に
奪われてしまったのか

「そうそ、ここは骨の街
誰も誰も、来てはならず
然れば、やや、帰りてよ
帰り申し上げ戻るまじ」

そうだ、ここにいてはいけない
そうだ、ここにいてはいけない
そうだ、ここから帰らないと
そうだ、ここから帰らないと……

「嗚呼今に今にやってくる
悪魔が襲いにやってくる」

帰ろう! もう帰ろう!!
こんな所にいたくない!!!

駆け込み乗車、いけません
でもこの夢では許してくれ
この悪夢は金輪際
見てしまいたくないのだ

嗚呼電車は帰っていく
私を乗せて帰っていく
目が覚めたなら気付くだろう
あんな場所なんてなかったと
自作の詩の星自作の詩の星
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#創作詩
『アブクバコ』

愛は在るのですか
何処に在るのですか

山奥の地中ですか
暗すぎる海底ですか
貴方が度々押さえる
その胸の中ですか

愛は在るのですか
何処に在るのですか

それは見えますか
それは触れますか
それは痛いですか
それは熱いですか

愛は在るのですか
何処に在るのですか

それはもろいですか
それはかたいですか
それはとがっていて
怖いものなのですか

愛は在るのですか
何処に在るのですか

食べられるのですか
飲み込めるのですか
この空気と混じって
吸い込めるのですか

愛は在るのですか
何処に在るのですか

私にも在るのですか
私に持てるのですか
私が力を込めると、
壊れてしまいますか

愛は在るのですか
何処に在るのですか

愛は在るのですか
何処かに在りますか

(誰にも見つかることのなかった宝箱と、泡の幻。)
自作の詩の星自作の詩の星
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植物とか育てたりする?お花とか緑とか、好きだったりするかなって。植物とか育てたりする?お花とか緑とか、好きだったりするかなって。
育ててはいないけど……草花は好きだね[ほっとする]

一時期、花言葉めちゃめちゃ調べまくったことがあって(流石に全部は覚えていないけどw)、その時は調べている間、勝手にロマンチックを感じることもあったよ[泣き笑い]
なんか、「こんな意味があるなんてロマンチックだな~[ハート]」とか「この花、綺麗なのに、こんなに怖い意味あるんだ……[目が開いている]」とか思いながらサイトを漁っていたよ。

「緑が好き」というのは、まあ……事実ではあるね。というか、好き。さっき言ったように、育ててはいないけども。
僕は青や緑が好きなんだけど、なんでその色が好きなのかといえば、自然に溢れている色の中で、癒される色だからなんだ。自然が好き。加えて、青と緑を見ると癒される。だから、青と緑が好き。
ここで聞かれている「緑」は、色そのものじゃなくて、「自然」「草木」ってことだと思うけど、「自然」「草木」は、僕が「緑という色」を好む根源にある。だから、色として捉えても、自然として捉えても、緑が好き。
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なんかいいことあった?笑なんかいいことあった?笑
良いことあったら、大体はここに書くさ =w=
あまりにプライベート出てしまう場合は書かないけど、うん、大体は書くね。
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遊園地の乗り物、絶叫系いける?それとも苦手?遊園地の乗り物、絶叫系いける?それとも苦手?
からっきし無理!!!

あのね~……これ、一つエピソードがあって……。
僕が中学校を卒業するちょっと前からコロナ禍で、それのせいで中学校の修学旅行が潰れたんだよね(大阪や京都辺りの予定だったような記憶がある)。
でも、当時の先生は物凄く頑張っていて――最早感謝しかないくらい奔走していて、なんと卒業の数ヶ月前に、潰れてしまった修学旅行の代替として、ディズニーシーに行くことになったんだ。

……そこまでは良かった。

でも、僕は同調圧力に弱かった。だから、絶叫は真っ平御免だったんだけど、弱すぎた僕は、周りの生徒の同調圧力に負けて、タワー・オブ・テラーに乗らされてしまった。ビビりすぎて笑われたし、何なら乗っている最中一度も目が開かなかった。

なんで抗おうとしなかった、中学時代の僕!!![大泣き]
そして、よく耐えたよ……いや、本当に。

でも、耐えられたからと言ったって、もう絶対に乗らない! 何が何でも乗らない!!![怒る]

(……うん……僕よ、一旦落ち着こう。な?)

……まあ、何はともあれ、こういうことがあったから、絶叫系は生理的に無理な訳だ……[目が回る]
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自分の性格を動物に例えると?自分の性格を動物に例えると?
〔2025年9月28日現在の回答〕

一番分かりやすいのは、

   うさぎ

……これの理由は至極単純。
僕は寂しがりなんだ……[大泣き]

いや、ひとりでいる時間は大切にしているよ? 今は忙しくなってできなくなったけど、たまにひとりで彷徨って(訳:電車を乗り回して)遠くまで行くんだ。そして、自由と生を体感する。
生きていることを強く実感したいんだよね。「生きている。」じゃなくて「生きている!!!」みたいな(伝わって[冷や汗])……。

あれ、だとすると、僕って「うさぎ」とは違うのかな……?[目が開いている]



それはそれとして、水戸に行きたい(←え?)
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わたしの知らないこと、たくさん知ってるんだろうな…。わたしの知らないこと、たくさん知ってるんだろうな…。
そっちが何を知らないかによる[ほっとする]

何なら、そっちが僕の知らないことを1つ知っていそう、なんて思うかも[泣き笑い]
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#夢
[9月25日午前1時の夢の記録。]

視界がひどくぼやけている。だが、私の隣で人が寝そべっているのが分かった。
寝そべっているのを認識した直後、私とこの人は向かい合っていることも知る。更に、気が付くと、私はこの人に撫でられている。
ぼやけていてよく分からないが、この人が色白なのは分かった。これが誰なのかを知ろうと少し起き上がって、全体を見る。だが、白っぽい服を着ていることと肌が色白であること以外は、やはり分からない。
突然、「しーっ」とこの人に寝かせられる。更に、この人は、言った。
「寝ようね~」
……え?
何故こういうときになって嬉しいことが分かるのだろうか?!
いや、所詮夢だが、私はこの人が分かった。まさか、隣で寝ているなんて!
私は堪らなくなって、そっと腰に手を回して抱き締めた。頭の上でコロコロ笑うのが聞こえる。

私は、胸が高鳴っているにも関わらず、眠ることができてしまった。

(ここで、夢が終わった。)
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#夢
『溢れ出る花』(9月23夜、夢の記録)

どんな空間だったかは覚えていない。ただ、明るく、暖かい場所だったことは、確と記憶している。
胸の中から、がばがば湧き上がるのを感じる。これは、比喩などではなく、本当に物理的にそうであると感じた。その直後、喉を何かふわふわしたものが通って、せり上がってくる。やがて、口に到達すると、唇をこじ開けて外に出てきてしまう。
花だ。
花吐き病……ではない。間違っても、きっとそうではない。だが、花が延々と口から出てくる。様々な花が、私の中から溢れかえっているのだ。
読者は察していると思うが、これは、花弁ではない。花本体である。
ただ不思議なのは、この口から溢れ出る花は、よく見ると大きいことである。実際の花より一回り大きい。そんなものが、私の口をこじ開けて外へ出ていく。顎が外れないか俄然心配になる。
だが、そんな心配は不要だった。やがて、花ががばがば出るのが止まったのである。
足元は、花だらけになった。歩けない。
突然、前の方から、女性が来た。色白の、大人の女性。
……何故か、私はこの女性を知っていた。
女性がこちらに歩いてくる間、その足元では、花が咲いていた。歩くと、そこに咲くのだ。
女性はやがて、私の目の前で止まると、私の吐き出した花を不思議そうに見る。途中、私の顔と私の足元を交互に見ていた。
それが数分続くと、女性は身をゆっくり屈める。そして、私の吐き出した花を手に取ってまじまじと見ては、困った顔をする。私はそれを始終見ていた。
その視線に気付いてか、女性はこちらを見る。そして微笑みかけてくれるが、困り顔なのは変わらない。
それが堪らなく愛しく見えたため近付こうとすると、女性に止められる。
「今歩いたらこれ踏んづけちゃうでしょ~?」
女性はそう言って、ふふっと笑ってくれた。その笑顔は、幸せだった。
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#夢
『盲目の羊』(9月21日~22日にかけて見た夢の記録)

やけに温かい。微かに目を開くと、私は何やら白い毛の塊を枕にして寝ていたことに気付いた。
何も見なかったことにしよう。
そう思いもう一度寝ようとすると、めぇええと声が響く。まあまあ低い声である。この声のせいで、寝られなかった。
白い毛の塊は、巨大な羊だったのだ。
見ると、巨大な羊は、浅い芝の上で脚を折って座っている。歩き疲れたラクダがするそれのようだ。
羊はこの一匹だろうか。いや、「一匹」と言うには、この羊は大きすぎる気がする。
ふと、羊が横を見た。
……いや、そんな気がしただけだった。確かにその顔は横を向いたが、そこで知ってしまった。
この巨大な羊には、目がそもそもついていなかったのだ。
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

体調どうですか?体調どうですか?
今のところ元気 =w=
……なんだけども……w 元気なんだけどね?[冷や汗]
ここ最近めっちゃくしゃみするようになって……。
そろそろ来ちゃったかな~って思う[冷や汗]
秋の花粉症ってあるし、僕ももうそろそろかなって(今まで花粉症になったことがなかった)。
それか、ただ寒暖差でくしゃみ出がちなだけっていう可能性もある[ほっとする]
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#今日の1枚
栃木駅。栗橋の方を向き、撮影。念のため言っておくと、ちゃんと安全は確保して、周囲への配慮もした。

―――――
『80%モノクロ』

新大平下駅の近くに、例の製作所があるとのことである。だから、この路線をたまに通る急行列車(これは間違っても特急ではない)が停まってくれるのだそう。
栃木からの帰り道。東武日光線。複線区間であるが、車両数も本数も少ない。そのため、栃木駅にいざ列車が来ると、座席が埋まるまで5秒ちょっとしかかからない。
駅で待っていたところ、いかにも青春色の衣服を纏う青年たちがぞろぞろとホームに来た。――明らか、高校生である。
ドア横のボタンを押して乗車する。座席は、先程言ったような具合で早く埋まった(私は座席を取らなかった)。奇遇にも、私もモノクロの衣服を着ていたため、車内が一気にモノクロだらけになった。
今、車内は、白、灰、黒の他に、各々の肌の色だけである。
「こんなに白だらけになることがあるのか」と最初は思った。しかし、新大平下、静和、藤岡……と停まっていくうちに、ぞろぞろ高校生たちが降りて行く。埋まったはずの座席の緋が、やがて顔を出した。この列車が終点に着いた頃には、きっと、もっと車内に色が増えていくに違いない。
そう、それはまるで、さっきまで曇りだったこの空のよう。
栃木に来る途中、少しの間だけ雨が降っていた。しかし、帰りのこの列車に乗る頃には、雲の間から日光が射し込んでくるまでになったのである。
とはいえ、時間も時間だ。この時期、夜が早くなり始める。せっかくの晴れ間、せっかくの日光。しかし、間もなく暮れる。
早く帰らねば。
東武日光線に乗ったものの、日光までは行っていない。でも、栃木駅で日光を浴びた。ややこしい。
この列車ががなる傍ら、私はつまらぬ洒落を脳から追い出すのだった。
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

『ハマのホシは蒼い』

関内にて、応援歌が響く。そうか、この近辺は……
JRも、ハマのホシたちを応援している。京急も、東急もといみなとみらいも、横浜市も。

「Oh Oh Wow Wow 横浜ベイスターズ
熱き星たちよ――」

明日を信じて――。
よく分からない希望が、ふと、胸の奥から顔を出す。出どころも理由も何も分からない希望。そんな希望を信じてしまう私は、きっとどうかしている。でも、どうかしているままでいた方が、なんだか、足が軽いというか……。
私は現実に閉じ籠るような人間ではない。寧ろ、幻想に閉じ籠ろうとしたことすらある。しかし、現実に入り込んできた「希望」という一種の「ゲンソウ」は、未熟な私にとって、現実を歩くための杖である。これがあるから歩けると言っても良い。

「Oh Oh Wow Wow 横浜ベイスターズ
熱き星たちよ―― Let's go!
Oh Oh Wow Wow いつでも Winning stars――」

明日を信じて。
ハマのホシたちに贈る応援歌のはずが、私の丸まった背中を伸ばす。顔が上がった気がする。
明日を信じて。明日を信じて。
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横浜ベイスターズ球団歌 -熱き星たちよ-

横浜ベイスターズ

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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#今だから言えること #今だから言う
『无題(2)』

某駅のプラットホーム。色々伏せるのは、関係者(もっといえば従事者)へのせめてもの敬意だ。
階段を上がってすぐが例のプラットホームだが、なんと上ってから少し歩くと、小さなビニール袋が低空飛行している。焼きたてのパンか何か入っていたのだろうか、いわゆるレジ袋のようではなかった、その形状。
もう、そういうことだと思う。
これはポイ捨てか、落としてしまったが気付かなかったかだろう。でも、どうであれちょっとがっかりだ。
尤も、言いたいことはあるが、黙っていても良い気がする。
僕が拾えば良い。点字ブロックを越えて線路に落ちる前に。
その気を袋が察したのかは分からないが、私の足元にやってきたので拾った。そこに、先程買ったおにぎりの包装を入れる。袋をぺしゃんこにしながら袋の口を縛って、バックパックのポッケに仕舞うが、押し込みすぎて見えなくなってしまったかもしれない。

……良いことしたな。

電車がやってくると、私は通常に見せかけて微かに誇らしげに乗るのだった。
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桔梗色のきたじー

#今日の1枚
これは、成東駅のホーム。

―――――
『無心、彷徨、虚心』

目的はない。ただ、彷徨いたかった。
目的はなくて良い。時間があった。意欲があった。それで十分だ。
お八つ時の静かな駅。緑はレールを挟んでも目の前に。
あゝ、来て良かった。そうそう、こういう所に来たかったんだよ。
駅があまりに静かだから気付けた。つくつくぼうしが鳴いているじゃないか。でも、つくつくぼうしの声以外に今はほとんど音がない。
これで良い。

このつくつくぼうしと緑のお蔭で、萎れた心が、やがてまた膨らんだのだった。
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#創作詩
『銀に潤う』(If The Sky Silver Would Moisturize Me)

今、空は銀色
今にこの銀が降ってくる

銀は磨かねば
艶がなくなる
手が入っていないと
色を変えてばらける

今、空は銀色
今にこの銀が降ってくる

これを鈍色と言う人も
燃えかす色と言う人も
ドブネズミ色と言う人も
今にこの銀をこうむる

今、空は銀色
今にこの銀が降ってくる

私もこの銀をこうむる
傘を持っても持たずとも
降るものは降る
降りかかるのだよ

今、空は銀色
今にこの銀が降ってくる

もしこの銀が私の心も
肌も諸共潤してくれるなら
私に艶が付くだろうか
潤い輝けるのだろうか

今、空は銀色
今にこの銀が降ってくる

もし私がこの空の銀で
潤って輝くことができたら
あなたは私の目を見て
「綺麗だ」と言ってくれるだろうか

今、空は銀色
今、この銀が降ってきた

あなたの目に
艶のある私が
映っていてほしい
「綺麗」であってほしい

今、空は銀色
今、この銀が降ってきた

潤った私を見て
艶の付いた私を見て
「綺麗だ」と言ってほしい
私をその頭に焼き付けてほしい

今、空は銀色
今、この銀が降ってきた

いや、やっぱり無しだ
そんなことはしないで良い
今その望みを叶えてしまったら
次まで「お預け」になってしまう

あなたの「綺麗」の一言が
「お預け」になるのならば
いっそ言わないで良い
きっとそれで良い

今、空は銀色
今はこの銀が降っている

いや、やっぱり言ってほしい
いや、やっぱりやめておこう
待った、やっぱり言ってくれ
いや、やっぱり忘れてくれ。

(わがままが脳を巣食う音と共に、優柔不断な心が洗い流されぬままに。)
自作の詩の星自作の詩の星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#挨拶 #創作詩 #文語
『あをにぶし』

海か空かは分からねど
今沈みゐるこの身かな
静けさよなほ包みてよ
世界の色を忘るるまで

あをなむにぶくなる時に
わが身の写し身を見につ
こを愛せとぞ言わむやは
見しこのひとみ何ぞある

―――――
〔口語訳〕

海になのか空になのかは分からないが
今この身は沈んでいるよ
静けさよ、もっと(私を)包んでおくれ
世界の色を忘れるくらいにまで

青が鈍くなってきたところ
私は自分の写し身を見つけた
この写し身を愛せと言おうとしているのだろうか
見つけたこのひとみ(瞳・人身)は一体何なのか(何を伝えようとしているのか)

* * * * *

ごきげんよう……〈きたじー〉です。創作大好き現役大学生です[ウインク]
詩を楽しみたく、この星に入りました。以後、お見知り置きを~[笑う]
自作の詩の星自作の詩の星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#今日の1枚
〔※マイクラ公式より、YouTubeコミュニティ投稿から〕

「今日もよく頑張った」
「いつも頑張っているね」
「君を誇りに思う」



――優しく在りたい。
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桔梗色のきたじー

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#短歌 #久闊 #文語
母の故郷フィリピンより帰国し、一首。

この町は 恋しかりけむ 何どきも
今は静かに この家を愛づ

わが心、ここにあり。鼕々と応ふるわが心、ここにあり。
日の本にて、黄金の盈月を確と見き。や、この月こそ見なむと思ひぬもの。有り難し、有り難し。有り難し、このいのち。
短歌の星短歌の星
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#幻
『自苦之記』/Cp. 決「不言如満月」

「私は死なない! おのれがまた幸福になれば、また戻ってくる。幸せになどさせてなるものか!」
泥被りが、融けていく。
「覚えていろおおおおお――」

シュウウウウウ……。

泥被りは、土壌に染みるでもなく、ただ、蒸発した。
まるで、何もなかったことにするかのように。
暫く、静寂。
「や、やった……!」
亡友が、やっと笑った。恐怖は、もうその顔に張り付いていない。
だが、これでまだ安心してはいけない。
……数秒後。
頭に激しい痛み。視界が端から蒼くなってくる。何かが私の気道を詰まらせようとしている。気が付けば、過呼吸。音も、一部分からなくなってきた。酸素がまともに吸えていない。
亡友が、さっきから背中を叩きながら声をかけてくれているが、あまり内容が聞こえない(恐らく、「大丈夫か!?」と言っていたのだろう)。
彼は、私の手を取って、この場所に繋がっていた扉へ引いた。
私たちは、脱出した。
外の空気は、大変に旨かった。やっと、普通の呼吸ができる。彼は、私を助け出してから、何も言わずにどこかへ行ってしまった。
体が落ち着いてから、周りを見渡す。夜だ。私が泥被りと闘っていた最中、豪雨があったのだろうか、周りに泥や土が散乱している。大きな水溜まりもちらほらある。……歩きづらい。
扉は、振り返ると、消えていた。全ては忘れるべき幻だったとでも言わんばかりに、扉も鍵穴も何もなくなっている。
嵐の後の静けさである。
これにて、不幸を連れてくる悪魔は、神避った。しかし、私は、まだ許せないものがある。
扉の先にあったあれを、あの悪魔は「隠し物」と言っていた。何なら、あの中にあった屍は、知った顔がちらほら見られた。私の成れの果て――即ち、あの悪魔の化けた姿である泥被りも、そこにいた。
そこで、気にかかることがある。

誰の隠し物だ?

予想はつく。だが、そうだからといって詰問するのは、「我」と在れる私ではない。
では、どうするか?
そう、「亡命」である。
私は、星の奥地で死にかけたのだ。もうあれがある星に留まるなどできない。それが、私に対する呪縛なのだから。もう一度星の地を踏めば、忽ち私は息を詰まらす。そして、草這る。
そんなことになったら堪ったものではない。
だから、私はこの地に別れを告げることにした。丁度良い。間もなくセブを発って、私の本当の家へ往くから。
自分と闘い、泥被りと闘い、打ち克った。もう十分である。
あの隠し物がある限り、私はこの星へ帰れない。これも、ある意味「呪い」なのか?



さらば、ことばりうむ。



その夜、満月が高く上っていた。満月は、私を静かに褒め称えてくれている。
この別れについて、私はこれ以上言わないでおこうと思う。アポカリプスである。
月詠よ、私を幸福の実る樹へ導いてください。
物言わざること満月の如し――。私は、小さな、静かな幸福を、とうとう噛み締めるのだった。

これにて、『自苦之記』の完結とする。
ことばりうむの星ことばりうむの星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#幻
『自苦之記』/Cp. 討「私ではない」

泥だらけの、偽物と言えば良いのかすら分からぬ「私」が、そこに横たわっていた。
本物の私は、ここに立って、この横たわる泥被りを見下ろしているというのに。
泥被りは、突然、口を開いた。
「何故? こんなところ、見つかる訳がないはずなのに」
それはそうだ。当たり前だ。でも、私には助け手がいたから、ここに来られたのだ。
「まあ、良い……これで、手間が省けるかもしれないからな」
手間?
「何の?」
気付けば訊いていた。
「おのれ……おのれは、今さっき、隠し物を見たのだ。この星の。光らないのは、『隠して』あるからだ、分かるな?」
「隠し物? なんで……」
「隠し物は、見つかってはいけないから隠し物なのだ、そうだな? ――その隠し物は、あの現状もそうだが、一番は……」
言葉を切って、泥被りはポキポキと立ち上がる。そして、加えて言う。
「一番は、

おのれの未来だ」

「何を言って……?!」
恐怖の余り、声を張り上げる。大声を出しても、恐怖感なんて無限に湧くのに。
「おのれを幸せになどさせない。させる訳がない。今、おのれが見ている私は、直に成るおのれなのだ!」
「どういうことだ?!」
「おのれは、不幸に死ぬ。不幸に生きて、不幸に死ぬ。幸福など、おのれに持たせてたまるものか。『幸せになってやる』だあ? 滑稽この上ない。おのれの、自らへの憎悪が、私なのだ。私が生きていて、おのれが幸せになれるなどと、そんな甘い考えをしていたのか?」
泥被りは、高笑いする。
「幸せを持てば、私が来る。そして、奪う。おのれは、幸福で死ぬような人間ではないのだからな?」
「待て、じゃあ、⬛⬛⬛⬛が病に勝てなかったのって……?」
「あははははははは!!! よく気付いた! そうだ、私は、もうその時から居たのだ。全ては、おのれを不幸せのまま生きさせるため。天国など、行かせない。尤も、おのれが私に気付きさえしなければ、楽だったがな」
私の人生が、勝手に操られていたのか? この悪魔に?
私の人生は、私を私たらしめるために、私が創るものであるはずだ。それを、こんなものに捻り曲げられていたなんて憤慨する。
これが、私? ふざけているのか、この泥被りは!
「⬛⬛⬛⬛!」
「なっ、何……?」
「斧、持ってきて」
「! ……わ、分かった!」
彼は、さっきの斧を取りに行った〔この斧については、Cp. 戦「星の奥地」を参照されたい〕。
「おのれ、馬鹿なのか?」
泥被りは嘲笑う。
「そんなことをしても、未来が早まるだけだ!」
そう言った瞬間、泥被りが私に襲いかかってきた!
私は、怒りはしても、戦闘は苦手である。だから、躱すので精一杯。でも、ある瞬間に、亡友の彼がこう叫ぶ。
「投げるんだ!」
直後、泥被りの動きと、私の手の動きが上手く絡んだ。泥被りは私の肩を噛もうと大きく口を開けたが、何年振りか知らない大外刈で阻止した。無論、大外刈は、勢いがありすぎると危険だ。下手したら、投げた相手が頭を打ってしまう。
現に、泥被りは、これで頭を打った。投げた瞬間に私が手を放したから。
この泥被り、受け身が取れないんだな……私は、ここまでで半分助かった。
そして斧が到着……しなかった。それは、見るに、ただの木の棒。
「刃がまるっきり消えていたんだ! きっとこいつがやったんだ!」
この野郎、往生際が悪い……。私を不幸にして何になるのか?
「いや、刃はなくて良い」
「はあ!? 気は確かなの!?」
「確かじゃないけど確かだよ」
その後、彼は何か言っていたが、聞いていなかった。
泥被りの胸板を踏む。そして、その鼻すれすれに、棍棒もどきの先端。
私は、この棒を両手に持って、怒りの限りに顔に振り下ろした。何度も。酷い音が森に谺したかもしれない。
そうしているうちに、私は、叫んでいた。
「お前は、私じゃない!」
そうだ、これは、私ではない。この泥被りは、決して私ではないのだ。私ではない。私と認めない。私であると認めたくない。誰が何と言おうと、これは私でない。これに、私はならない。なりたくない。なってたまるか。
「お前は私じゃない!」
そう、何度も叫んだ。
が、これで決着は当然つかなかった。泥被りが、立ち上がってしまった。そして、息を荒げて、逃げてしまった。
無論、これを私は追いかける。
「おい! 襲いかかってきておいて逃げるんじゃない!」
私は、いつしか泥被りに追い付き、泥被りの頂を打ち続けていた。泥被りは、打ち続けるうちに、走りが遅くなり、仕舞いには、膝をついた。それでも、私は怒りの限りに打ち続ける。
私は、恐怖と憤怒でぐちゃぐちゃだった。顔が変に歪んでいたかもしれない。申し訳ない、許してほしい、⬛⬛⬛⬛。今のこの顔だけは、君に見られたくないよ。
泥被りが先程のようにうつ伏せになって倒れた頃合いには、私は打つのをやめていた。棒は、適当に投げ捨てる。
「く……………そっ……………」
微かにそんな声が聞こえる。直後、泥被りの体が融解し始めた。
「こんな………はずで……は…………なかっ……た……」
勝った……。本当に、勝った……。



と、思っていたのだが。
「あは……は……ははあ……あははははははは!!!」
泥被りが高笑いする。生きている!?
「これで終わりと思うな!」
土壌へ融けながら泥被りは言う。
「私が負けても、おのれを息ができないようにすることはできる! 進んでいることだからな!」

……。



次の章節を「決」とする。
ことばりうむの星ことばりうむの星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#幻
『自苦之記』/Cp. 戦「星の奥地」

例の銅像の足元に、本当に扉があった。扉には、銅像の後ろにある建造物に彫られた文言と同じく……
 "GLORIAS"
とある。スペイン語で「栄光」。そうだ、私は、今から、この扉を開けて、「栄光」を掴みに行くのだ。これまでの不幸に決着をつける。そして、新たに幸せを得る。幸せになる。幸せになってみせる。
幸せになれ、私よ。幸せになってやれ、私よ。
三日月形になるまで大欠けした白い貝殻――即ち、「鍵」を2つ、ドアノブ横にあるコンセントのような穴に挿し込む。すると、鍵はゆっくり鍵穴に吸い込まれ、「ガチャッ」という音が鳴る。ドアノブの回りは軽かった。
見ると、森林にいる。が、地面も木々も眩しい。渋谷や秋葉原とは比べ物にならない。白すぎる。眩しすぎる。
ふと、声がする。
「眩しいってことを先に言っておくんだったね……申し訳ない」
ああ、彼だ。私の一番聞きたい声だ。直後、瞼に何かをかざされる感触を覚える。
「さあ、目を開けてご覧」
そう言われて目を開けると、眩しさはそのままだが、目が痛くない。光が、比較的大人しくなった気がする。
「目は平気?」
「平気になった」
「よし! じゃあ、君は準備は万端だよ」
「本当かな……手ぶらだけど」
「手ぶらの方が良いよ、これに於いては」
さあ、ついてきて、と彼は手招きした。
暫く、私たちは歩いた。
見つけたのは、おんぼろな小屋である。板材で四方を覆ってあって、窓はない。屋根は斜め。トタンではなく、これも板材。広さは4畳前後だろうか。
この小屋は、光っていない。むしろ、小屋自体がこっぴどく汚れていて、「光」の「ひ」もない。蝿も沢山飛んでいる。
「この中にいるよ」
彼は言った。
「君がこれから決着をつける相手が、ここにね」
「こんな汚れた場所に……?」
「汚れ覚悟で行くしかない」
「……そうだね」
意を決して小屋のドアを開けようと思ったら、見つけてしまった。
南京錠。
「あちゃー……これの鍵も見つけておくんだったね。そうすれば、一刻も早く決着がついたのに」
「……いや、鍵じゃなくても良いかもしれない」
困惑する彼をよそに、私は小屋の裏へ回る。ここに、なんと斧がある。実は、小屋に着いたときに、しれっと見えていたのだ。
斧を持って戻ると、おお……と後退りする彼。
「危ないよ……?」
「大丈夫」
「え、それで開けるつもり?」
「そうだよ?」
「良いのかな、そんなことして……」
「いや、問答無用。鍵盗みに行く暇なんてないし」
そして、私は豪快に鍵を破壊した。扉も、ほんの少しではあるが、一部壊れた。その壊れた箇所から、蝿が出てくる。
「行こうか、⬛⬛⬛⬛」
「うん、行こう」
扉の取っ手に手をかけて、ばっと開けた。
中は、血腥い臭いに満ちていた。蝿が無数に飛んでいる。もうこの時点で吐きそうである。
「大丈夫?」
「大丈夫かもしれないし大丈夫じゃないかもしれない」
「だよね~……」
鼻を摘まんだまま彼は返事する。鼻声みたくなっているが、何を言っているかはギリギリ分かる。
「電気あるよ、ここに」
彼が何かをシャラシャラ鳴らしながら言った。
「点けて」
直後、周りの光景が鮮明になる。すると、そこにあったのは……

  死屍累々だった。

私はとうとう耐えきれず、外に逃げて……吐いてしまった。
体が落ち着いてから、もう一度中に入る。光景は変わらない。
「大丈夫?」
「なんとか……」
私を気にかけてくれる彼。彼もきっと耐え兼ねるかもしれなかったのに。
屍は、複数あって、一部、知った顔(?)もあった。全身泥だらけで、蝿がひどく集っている。近くには、工具を引っ提げる場所、その下に小さなデスクがある。デスクの上には、写真が置かれていたが、そこで、見てしまう。
私の顔を。
大きな、太線の罰を付けられた、私を。
その横に、女性の写真があったが、そちらは、顔を大きなハートで囲んであった。……ここは、偏愛者の小屋と言うべきか。
こんな場所、知りたくもなかった。だが、決着のためだ、致し方ない。
が、思えば、ここで格闘なんておかしな話である。偏愛者と格闘して何になるというのか。それは物理的に私が生存しようとしているだけである。今までの全ての不幸に対する決着ではない。
そんなことを考えていたとき、彼は突然こう言い出す。
「ね、ねえ……

死体が一つ消えていないかい?」



……は?
私は慌てて周りを見渡す。確かに、扉近くの死体が消えている。虫に覆われていてよく見えていなかったが、ものの数分で消えるのはおかしい。
「外に出たら何かあるかな……?」
私が提案すると、彼は一瞬引き攣った顔をして、こう言う。
「覚悟決めてから出た方が良いよ?」
「そうかもね……」
深呼吸はしない。できないから。できない理由は、察していただきたい。
意を決してドアを開ける。すると、先程「消えた」と言っていた死体があった。虫の数は少ないが、血腥さは変わらずである。
死体に近付いてみる。すると、もっと恐ろしいことに気付く。
指が、微かに動いている。
顔から血の気がさーっと引いていくのが分かる。死体と思っていたこれは、信じたくないが、生きていたのだ。
直後、その首から嫌な音が鳴って、顔がこちらに向いた。
その顔は、恐ろしかった。



私だった。



次の章節を「討」とする。
ことばりうむの星ことばりうむの星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#幻
『自苦之記』/Cp. 散「メモ」

その日、大急ぎで空港に向かった。飛行機は定刻に発つから、2時間前までであればいくら急いでも無駄足である。それなら2時間前きっかりに来た方が良い。……それは分かっていたのだが、やはり、私の身――あるいは身の上と言うべきか――におかしいことが起きているから、ただまずいと思って急いでしまった。
飛行機に乗ったら、緊張や不安が数ミリ湧き上がることが多いが、今回に至っては、意識がこの飛行機になかった。そのため、不安という不安や、ましてや緊迫もこの飛行機にはなかった。
帰りも、セブを経由する。
セブの海が綺麗なのは行きの際にもう実感しているのだが、このときばかりは、海を見たくない。私が浜辺を歩いていたせいで何かこの海に災難が降りかかるなんてことがあってほしくないのだ。「考えすぎだ!」と思われるだろうが、何が起きるか分からないので、考えすぎた方が良い気がするのである。
というのも、マクタン・セブ国際空港(MCIA)に着いたときに、体調がおかしかったからだ。
喉が痛い。何なら、鼻も詰まっている。まったく、どこから拾ってきたのか。母が万が一を考えて風邪薬を持ってきてくれて良かった。宿で、晩食を済ませてから、この医薬品を飲む。希望はまだある。
どこから拾ってきたか知らない風邪。それは、追っ手である何かの存在を暗示していそうな気がしてならない。
警戒はしつつ一夜を過ごす。
次に目が覚めたときには、ベッド横の小さなキャビネットの上に、誰が置いたか知らないメモがあった。日本語で、こうある。
「鍵穴はあの銅像の下」
銅像……ああ、あれか。あれの下に用意された扉があるのか。
決闘の時まで、一気に近付いた。

次の章節を「戦」とする。
ことばりうむの星ことばりうむの星
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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

(※閲覧注意)

#幻 #悪夢
『自苦之記』/Cp. 止「自失」

悪夢である。
まだ記憶に新しい光景。丁度、スリガオのあの海だった。ここからは、あの夜泊まったコテージが確認できない。
空は鼠色。そして、海の色も心なしかくすんでいる。
……ん? 海がくすんでいる?
嫌な予感がした。この海は、透き通るほどに綺麗だったはずである。何なら、浅いところでは、緑っぽい色だったのも記憶している。
瞬間、海が突然バタバタ暴れ出した!
驚きの余り、腰を抜かす。至極当然。この前は、この海で、従姉妹たちが泳いでいたのだ。その時に、「不穏」の「不」の字もなかったはずである。だのに、どうして今、こうして暴れているのか?
後退りながら暴れ海を見ると、少しずつ、海面が下がっていくのが分かった。――背筋が凍る。

ドーーーーーン!!!

そんな轟音と共に、海がどっと私に襲いかかる! 私は、ヤケになったかのように一目散に走って逃げた。
1分。振り向くと、海が私を追いかけている。
2分。振り向かずとも、海の暴れる音が嫌でも分かってしまう。
3分。まだ、追っ手。
4分。まだまだ、追っ手。
5分。
6分。
7分。
8分……。

結局いつまで走っていたか分からない状態で、夢から醒めた。
ところが、スマホを開いた途端、その通知に硬直する。

【9月4日、午前6時45分、マグニチュード5.3の地震が北スリガオ州ジェネラル・ルナ自治区を襲った。(※原文訳、時間はフィリピン標準時)】

まずい。これは、とんでもなくまずいことになった。



次の章節を「散」とする。
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY
GRAVITY13
桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#短歌 #文語
暦なら 今に秋なむ 訪れる
家守の声ぞ 暑さの中に

雲ぞ暑さを閉じ込めける。長月に入りしこと未だ七日に満たず。家守の虫を食ひたるにも、蚊は飛びぬ。蝉時雨こそ止みにけれど、蚊も早く退きなむと吾思ひしは、昼餉の後なり。
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桔梗色のきたじー

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#生きてる #生きている
#二度寝 #二度寝最高
『自苦之記』/Cp. 部「二度寝」

母の誕生日である。早朝に、寝室の扉の向こうから騒ぎ声がしていた。耳を澄ますと、「ハッピーバースデー(Happy birthday)!」が聞こえる。ああ、そうだった、そうだった。でも、母よ、これは大変申し訳ないが、まだ寝させてはくれませんか。睡眠負債返済督促信号が、脳天から発せられているのです。
尤も、遅くまで起きてしまっていた私の責任なのだが。
でも、どうかそれには目を瞑ってください。騒いで祝うより、私は静かに祝いたいのです。敬意はありますから、どうかお見逃しください。どうか揺り起こさないでお待ちください。大丈夫です。二度寝すれば本調子に戻りますから。大丈夫です。
私が寝るのが好きなのは、きっと、後天的なものであろう。だが、眠い。睡眠負債もあるが、寝たいときは寝たい。生活リズムが乱れるから本当は良くない。それは承知である。正直、直したい気持ちも山々だ。だが、寝ることが好きになってしまった以上、欲に従いたい気持ちも、やはりある。それも、ある意味「素直である」ということにしてはくれまいか。
隣の部屋が騒がしくてもぐっすり寝られる私は、親戚からして、愛しく見えていてほしいものであるよ。
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桔梗色のきたじー

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#生きてる #生きている
『自苦之記』/Cp. 保「不安、胃酸に溶解」

晩食に、豚肉と茄子の炒めものをいただいた。母が、土産物として日本から焼肉のタレを予め故郷に送っておいたらしい。
食いたくてたまらない、この料理。
食事の前の祈りが終わると〔母の実家はキリスト教の家庭であるため、食事の前に必ず祈りを捧げるのだそうな〕、私はこの肉茄子にがっついた。
肉の脂、厚み、歯応え。しなやかな茄子はタレを吸収してその旨味をより濃いものにする。歯も舌も喜ぶその料理は、私に生の実感を齎す。強い実感。ただただ「快」である。この「快」に託つけて、普段はそこまで多くは食わないのだが、この夜に限って、私はがつがつ食った。行儀の悪い食べ方になっていなかっただろうか、と後になって思う。
しかし、がつがつ食ったお蔭か、私の胸の上で悪さする得体の知れないものが、胃へ流れてしまった。不安が、やっと、食事に負けた。
単純になるが、おいしかったから、この料理はまた食いたい。

次の章節は「部」とする。
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