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桔梗色のきたじー

桔梗色のきたじー

#幻
『自苦之記』/Cp. 討「私ではない」

泥だらけの、偽物と言えば良いのかすら分からぬ「私」が、そこに横たわっていた。
本物の私は、ここに立って、この横たわる泥被りを見下ろしているというのに。
泥被りは、突然、口を開いた。
「何故? こんなところ、見つかる訳がないはずなのに」
それはそうだ。当たり前だ。でも、私には助け手がいたから、ここに来られたのだ。
「まあ、良い……これで、手間が省けるかもしれないからな」
手間?
「何の?」
気付けば訊いていた。
「おのれ……おのれは、今さっき、隠し物を見たのだ。この星の。光らないのは、『隠して』あるからだ、分かるな?」
「隠し物? なんで……」
「隠し物は、見つかってはいけないから隠し物なのだ、そうだな? ――その隠し物は、あの現状もそうだが、一番は……」
言葉を切って、泥被りはポキポキと立ち上がる。そして、加えて言う。
「一番は、

おのれの未来だ」

「何を言って……?!」
恐怖の余り、声を張り上げる。大声を出しても、恐怖感なんて無限に湧くのに。
「おのれを幸せになどさせない。させる訳がない。今、おのれが見ている私は、直に成るおのれなのだ!」
「どういうことだ?!」
「おのれは、不幸に死ぬ。不幸に生きて、不幸に死ぬ。幸福など、おのれに持たせてたまるものか。『幸せになってやる』だあ? 滑稽この上ない。おのれの、自らへの憎悪が、私なのだ。私が生きていて、おのれが幸せになれるなどと、そんな甘い考えをしていたのか?」
泥被りは、高笑いする。
「幸せを持てば、私が来る。そして、奪う。おのれは、幸福で死ぬような人間ではないのだからな?」
「待て、じゃあ、⬛⬛⬛⬛が病に勝てなかったのって……?」
「あははははははは!!! よく気付いた! そうだ、私は、もうその時から居たのだ。全ては、おのれを不幸せのまま生きさせるため。天国など、行かせない。尤も、おのれが私に気付きさえしなければ、楽だったがな」
私の人生が、勝手に操られていたのか? この悪魔に?
私の人生は、私を私たらしめるために、私が創るものであるはずだ。それを、こんなものに捻り曲げられていたなんて憤慨する。
これが、私? ふざけているのか、この泥被りは!
「⬛⬛⬛⬛!」
「なっ、何……?」
「斧、持ってきて」
「! ……わ、分かった!」
彼は、さっきの斧を取りに行った〔この斧については、Cp. 戦「星の奥地」を参照されたい〕。
「おのれ、馬鹿なのか?」
泥被りは嘲笑う。
「そんなことをしても、未来が早まるだけだ!」
そう言った瞬間、泥被りが私に襲いかかってきた!
私は、怒りはしても、戦闘は苦手である。だから、躱すので精一杯。でも、ある瞬間に、亡友の彼がこう叫ぶ。
「投げるんだ!」
直後、泥被りの動きと、私の手の動きが上手く絡んだ。泥被りは私の肩を噛もうと大きく口を開けたが、何年振りか知らない大外刈で阻止した。無論、大外刈は、勢いがありすぎると危険だ。下手したら、投げた相手が頭を打ってしまう。
現に、泥被りは、これで頭を打った。投げた瞬間に私が手を放したから。
この泥被り、受け身が取れないんだな……私は、ここまでで半分助かった。
そして斧が到着……しなかった。それは、見るに、ただの木の棒。
「刃がまるっきり消えていたんだ! きっとこいつがやったんだ!」
この野郎、往生際が悪い……。私を不幸にして何になるのか?
「いや、刃はなくて良い」
「はあ!? 気は確かなの!?」
「確かじゃないけど確かだよ」
その後、彼は何か言っていたが、聞いていなかった。
泥被りの胸板を踏む。そして、その鼻すれすれに、棍棒もどきの先端。
私は、この棒を両手に持って、怒りの限りに顔に振り下ろした。何度も。酷い音が森に谺したかもしれない。
そうしているうちに、私は、叫んでいた。
「お前は、私じゃない!」
そうだ、これは、私ではない。この泥被りは、決して私ではないのだ。私ではない。私と認めない。私であると認めたくない。誰が何と言おうと、これは私でない。これに、私はならない。なりたくない。なってたまるか。
「お前は私じゃない!」
そう、何度も叫んだ。
が、これで決着は当然つかなかった。泥被りが、立ち上がってしまった。そして、息を荒げて、逃げてしまった。
無論、これを私は追いかける。
「おい! 襲いかかってきておいて逃げるんじゃない!」
私は、いつしか泥被りに追い付き、泥被りの頂を打ち続けていた。泥被りは、打ち続けるうちに、走りが遅くなり、仕舞いには、膝をついた。それでも、私は怒りの限りに打ち続ける。
私は、恐怖と憤怒でぐちゃぐちゃだった。顔が変に歪んでいたかもしれない。申し訳ない、許してほしい、⬛⬛⬛⬛。今のこの顔だけは、君に見られたくないよ。
泥被りが先程のようにうつ伏せになって倒れた頃合いには、私は打つのをやめていた。棒は、適当に投げ捨てる。
「く……………そっ……………」
微かにそんな声が聞こえる。直後、泥被りの体が融解し始めた。
「こんな………はずで……は…………なかっ……た……」
勝った……。本当に、勝った……。



と、思っていたのだが。
「あは……は……ははあ……あははははははは!!!」
泥被りが高笑いする。生きている!?
「これで終わりと思うな!」
土壌へ融けながら泥被りは言う。
「私が負けても、おのれを息ができないようにすることはできる! 進んでいることだからな!」

……。



次の章節を「決」とする。
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