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エッセイの星

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惑星主: ぽやぽや
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ひつじ

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あなたの好きなエッセイ本を教えてくださいあなたの好きなエッセイ本を教えてください

回答数 3>>

#盛岡 の作家さんのくどうれいんさんの本

[星]日記の練習

くどうれいんさんの本のなかでもオススメの一冊になりました

日記なかなか続かないって人も、この本を読むと考え方が変わるかも知れません[照れる]
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ひつじ

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エッセイの星の皆さま、はじめまして[照れる]

どうぞよろしくお願いします[星][UFO1][星]
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とも

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【推し店員さんがいた日】#25

半年後に店を訪ねても、もう彼はいなかった。
祖父母を見送り、母の病が癒えて、私が3人の介護から解放されたあと、何度も通ったけれど、彼には会えなかった。
「彼はどうしたのか」と他の店員に尋ねる勇気もなく、
私は最新曲の感想を胸にしまった。

季節がいくつも過ぎた。
それでも、今もあの店の前を通ると、

「おねえさん、久しぶりですね」

と背後から呼ばれた気がしてしまう。

振り返っても、そこには誰もいない。



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【推し店員さんがいた日】#24

ある日、思い切ってきいてみた。
「〇〇さんは、ライブとかしないの?」
彼の表情が、少し曇った。
「俺、ライブあんまり好きじゃないんすよ」
ミュージシャンがライブ嫌いとは、どこかチグハグで違和感があったが、私は「ふーん、そっか」とだけ言った。

しばらくして、彼がまた私の席にやってきて、
「だって、お客さん入るかわからないし…とかさ…」
と、蚊の鳴くような声でこぼす。

ああ、本当は好きなのだ。
好きだからこそ、怖いのだ。
そのことに気づいた時、いたいけな子だな、と私は胸の奥で笑った。

「もしライブやる時は、教えてね」
「はい」
それが最後の会話になった。
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恋をしていなければ、好きとは言わないのだろうか。愛していなければ、一緒にいてはいけないのだろうか。もしもその関係に、名前や形がなくても、きみとずっと世界をのぞきあっていたい、そういう人のことをなんと呼ぶのか、考えている。熱が冷めても、そこにいてほしい。欲を交換できなくても、ただ手を握りたい。なんともいえない、温かな存在について。
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【推し店員さんがいた日】#23

さて、また彼に新しい曲を教えてもらった。
聴く。
感想を言う。
するとまた新しい曲ができていて、それを教えてもらう。

そんな繰り返しが、私と彼の間で、小さな決まりごとのようになっていた。
彼の曲作りの速さは私の想像をはるかに超えてきた。
「曲はいくらでも作れる。形にするのが大変」
彼はそんな風に言った。

私が店を訪れるのは半年に一度になったが、その一度が、ほかのどの日よりも幸せな日になっていた。
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【推し店員さんがいた日】#22

「どれが一番よかったですか?」
正直に答えると、「それ、最初に作った曲なんです」と彼は言った。
「期待しないでって言ったから、本当に期待せずに聴いたら、驚きました」と言うと、
「作戦通り」とニヤリ。

その後、彼はぽつりと体調を崩して休んでいた話をした。
「大丈夫?」と言い終わらないうちに、「大丈夫」と返ってきた。嘘が下手な人だと思った。

彼はまた紙を差し出して「曲を作った」とボソボソと言う。そこには新しい三つの曲のタイトルが書かれていた。
彼が前回渡した曲名まで覚えていてくれたことに、私は内心ほっとした。

実は、私は少し怖かったのだ。
彼が他の女性客にも同じことをしているかもしれないと、そんな想像をした自分がいた。
怖いと思った自分をなぜか恥ずかしく思った。

「ニースサラダだけで足りるの?」
ようやく彼の目が見えた。
彼の目は、天井からぶら下がっているたくさんのワイングラスに反射した光を受けて、キラキラしていた。
私はその恥ずかしさを、胸の奥にしまい込んだ。
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【推し店員さんがいた日】#19

「なんだ、いないじゃんか」と心の中で腹を立てながら、ふと気づく。あの会話も、もう一年半も前のことだった。そんな古い情報を、まるでお守りのように握りしめて来てしまった自分が、少しおかしかった。

店の中には、彼に似ている店員が何人もいた。けれどよく見たら、別の人だった。
私の記憶の中の彼は、すでに輪郭がぼやけ始めていた。

その日は結局、その店で一人で食事をして帰った。
「あれ、こんな味だったかな」と思った。
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【推し店員さんがいた日】#16

それからの私は、彼の曲をよく聴いた。
苦しいとき、悲しいとき、電車の窓に映る自分の顔を眺めながら、イヤフォンから流れる音楽にすがった。

けれど、感想を伝えることはできないままであった。
推し活と呼ぶにはほど遠い日々が続いた。

その頃ちょうど、介護と仕事の両立が自分には難しいと気づき始めていた。体も心も、限界に近かった。どちらかを手放さなければ、自分が死んでしまうと思った。
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【推し店員さんがいた日】#15

教えてもらった三曲は、ヒップホップ、ロック、バラードとそれぞれに色を変えていたが、いちばん心に残ったのは、彼の声とバラードが重なった時の見事さだった。
彼の歌声は、孤独を慰めるというより、孤独そのものに寄り添うような不思議な温かさを持っていた。

「今すぐ感想を伝えたい」と思った。けれど、彼のYouTubeのアカウントはコメント欄を閉じていて、私は彼の連絡先を知らない。
胸の中にあふれ出てきた言葉は行き場を失った。
そして、私は冷めかけたマグカップに手を添えて、白湯を飲んだ。
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3人回答>>
2025/04/21 20:28

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