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わんわん

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ドラえもんって、ごくたまに、深い話があるよね?
4年前くらいに見た話に感動して、……小説にしてみる!笑
一回観ただけだからうろ覚えだし、だいぶ別物になってると思うけどお許しを。
ドラえもんの2次創作としてお楽しみ下さい! 

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『メモリーローン』

第1話

のび太が目を閉じたままでたらめに振ったバットは、ボールの芯をとらえた。

カキーーーン!!

ボールは放物線を描いて、晴れ渡る青空に吸い込まれていく。

「の、のび太のくせに、ホームランだとぉ〜!?」

ジャイアンとスネ夫が驚いて飛び上がる。
しかし、もっと驚いているのは、のび太本人だ。
広場の小さいダイヤモンドを走りながら、その驚きは徐々に喜びへと変わっていった。

「ホームランって、なんて気持ちが良いんだろう! ……誰にも邪魔されずに走れるなんて!! それに、打ったときのこの手の痺れ! 最高な気分だよ〜っ!!」 


((≡゚♀゚≡))


「うわ~ん! ドラえも~ん!!」

自室で、のび太はドラえもんに泣きついた。
ドラえもんは困惑した表情で聞く。

「のび太くん、ホームランを打ったんじゃないの? なんで泣いてるのさ〜?」

「そ、それが……、その後、スネ夫のやつに『おい、のび太! あのホームランで無くなったボール、特注品なんだぞ! 弁償しろよ! 3,000円だぞ!』って言われちゃったんだよ〜!」

のび太にとって3,000円なんて大金は、すぐに用意できるものではなかった。

再びドラえもんに泣きつくのび太。

「ねぇ〜! お金を貸してくれる道具を出してよ〜!」

それを聞いたドラえもんは、腕を組み思案する。

(あるにはあるけど、あの道具は……)

しかし、そんなドラえもんの悩みなど知る由もなく、のび太はドラえもんを拝むように両手を合わせた。

「ねぇ! お願いだよ、ドラえも〜ん!!」

ドラえもんは渋々といった様子で、4次元ポケットからある道具を取り出した。

「 メモリーローン!」


#メモリーローン
#連載小説
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これは連載小説です。1話からどうぞ。

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第2話

「 メモリーローン!」

ドラえもんが4次元ポケットから取り出したものは、モニターが大きいタブレットのようなものだった。

しかし普通のタブレットと違うのは、機械の上部から太いコードが伸びており、その先端にトイレの詰まりを治すラバーカップのようなものがついている事だった。

ドラえもんは、おもむろにラバーカップをのび太の頭にのせた。

「 これはね、つけた人の記憶を読み取るんだ」

メモリーローンの画面に、画像と数字が縦にずらっと映し出される。
一番上の画像は、のび太がホームランを打っている姿だった。
その横には「3,000円」の文字。

のび太は数字に反応した。

「 さ、3,000円!?」

「 この機械はね。記憶をお金に変えることができるんだ。その記憶と引き換えにね……」

少し神妙そうな表情のドラえもんをよそに、のび太は瞳を輝かせた。

「スネ夫にちょうど3,000円を渡せるね! 画面を押せばいいのかな?」

モニターに手を伸ばすのび太。

「 ちょっと、のび太くん! もう少し考えたほうが……!」

「だって、お金が必要なんだ!」

のび太は、モニターをタッチした。

ピッピロリロ〜♪ ピッピロリロ〜♪

軽快な、しかし聞きようによっては少し不気味に聞こえる電子音が鳴った。
のび太の表情が固まる。
のび太は、目眩のような、脳を揺さぶられるような感覚を感じていた。

しばらくすると、メモリーローンの下にあるスリットから、千円札が3枚出てきた。
のび太は我に返る。

「あっ! 3,000円だ! ほんとに出た!」

ドラえもんは心配そうにたずねる。

「のび太くん、大丈夫……?」

しかしのび太は、3,000円を手に上機嫌だ。

「 よし! さっそくスネ夫に渡しに行こ〜っと!」

((≡゚♀゚≡))

「 ああ、確かに受け取ったぜ」

スネ夫は玄関で、3,000円をポケットに入れてニヤリと笑った。

「 それにしても驚いたなぁ! のび太が、あんな特大ホームランを打つんだからなぁ〜!!」

それを聞いた、のび太はきょとんとした表情をうかべた。

「え? ホームランってなんのこと?」


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連載小説です。1話からどうぞ。
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第3話

「え? ホームランってなんのこと?」

スネ夫は、眉間にシワをよせた。

「 おいおい、のび太、大丈夫か? 今日、お前が打ったホームランのことだよ!」

しかし、のび太は首をかしげる。

「ホームラン……? スネ夫、何を言ってるの? ……まあ、いいや。確かにお金は渡したからね! じゃあね〜!」

((≡゚♀゚≡))

「ただいま〜!」

のび太は自室のドアを開けた。中はガランとしている。
どうやら、ドラえもんは出かけたようだ。
しかし、床にぽつんとメモリーローンが残されていた。

(頭にかぶればいいんだよな……?)

のび太はモニターの前に座ると、ラバーカップを頭にかぶった。
モニターに、画像と金額が次々と表示される。

一番上には、ホームランを打つのび太の画像と3,000円の文字。
しかしその上に、大きく赤いバッテンが。

(僕、本当にホームランを打ったのかな……? 本当なら凄いことなのに、ぜんぜん実感がないなぁ……)

のび太は、ホームランを打つ自分の画像をうらやましそうに見つめた。

ふと、その下の文章に気がついた。

『貸した金額と同金額で、記憶を戻すことができます』

「なんだ! 記憶を買い戻せるんだ! じゃあ、3,000円以上の金額の記憶を探せばいいんだ!」

のび太は、モニターに映る自分の記憶を見た。

・先生に怒られた。−100円。
・お母さんに怒られた。−100円。
・テストで0点をとった。−100円。

(ちぇっ! マイナスって。お金を払わないといけないのかよ〜!)

画面を、下へ下へとスクロールしていく。
マイナスがずっと続く中、のび太の目に「5,000円」という数字が飛び込んできた。

・友達と高之山へピクニックに行った。5,000円。

のび太は、その時の事を思い出した。
よく晴れた日に、みんなで山を登ったのだった。

(しずかちゃんの作ってきてくれたお弁当、とっても美味しかったなぁ〜!)

のび太はしばらくモニターを眺めていたが、やがて軽い口調で言った。

「お弁当なら、また作ってもらえばいいや!」

のび太はモニターにタッチした。

ピッピロリロ〜♪ ピッピロリロ〜♪

電子音が部屋に響き、のび太の脳は揺さぶられた。


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第6話

のび太は、自宅へと歩いていた。

空はオレンジ色に変わりつつあった。
のび太は、ひょろ長い自分の影を見て、出木杉の言葉を思い出した。

『あの思い出があるから、その後の僕がいるんだよ……』

のび太は、自分の過去を映した画面を思い出した。
マイナスの金額ばかりの、恥ずかしい思い出たち……。

「出木杉は勉強ができるから、あんなことが言えるんだ! ……僕なんか、恥ずかしい思い出を無くしたら、なにも残らないかもしれない!」

のび太は、メモリーローンを抱えて早足になった。
しばらく進んだところで、前方に知っている二人組がいた。
ジャイアンとスネ夫だった。

ジャイアンが立ち止まった。

「おう! のび太じゃねぇか!」

その横でスネ夫が、手に持った大きな箱を自慢気に突き出した。

「 これ見ろよ! 出たばっかりの最新ゲーム機だぜ! 今からジャイアンと遊ぶんだ!」

ジャイアンは意地の悪そうな顔をした。

「のび太には、やらせてあげねぇけどなっ!」

のび太は、こぶしをぎゅっと握り、顔を赤らめて叫んだ。

「そんなもの……! 僕だって買えるよ!! 買える思い出だって、あるはずだよ……!」

のび太は、走り出した。
その後ろ姿を見て、ジャイアンとスネ夫は首をかしげた。

((≡゚♀゚≡))

ドラえもんは、冷や汗をかいた。

部屋へ帰ってきたものの、置き忘れていたメモリーローンが無いのだ。

(あの道具は、使い方によっては恐ろしいことになる……! のび太くん、大丈夫だよね!?)

ドラえもんは部屋を飛び出した。

((≡゚♀゚≡))

オレンジ色に染まる公園の土管の陰で、のび太はメモリーローンを起動させた。

「僕だって、あのゲーム機が買えるくらいの思い出があるはずだっ!!」

画面をスクロールする。
……しかし、表示される思い出はマイナスか、高くても50円くらいのものばかりだ。

のび太は、取り憑かれたように、画面をスクロールし続けた。
……その手がピタリと止まった。
眼鏡の奥の目が見開かれる。

「 こ、これは……! いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん……!!」

画面には、丸いシルエットと共にこう記されていた。

・ドラえもんとの思い出


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第5話

メモリーローンのモニターに、出木杉の記憶が次々と映し出される。

のび太は、身を乗り出してモニターを見た。

・テストで100点をとる 10円
・テストで100点をとる 10円
・テストで100点をとる 10円
・テストで100点をとる 10円
・テストで100点をとる 10円

のび太は目を見開いた。

「ええ~っ!? 100点のテストが10円!? そ、そんなバカなぁ〜〜!?」

のび太は、画面を下へ下へとスクロールさせた。
しかし、現れるのは100点のテストと10円ばかりだ。

(そうか……! 出木杉にとっては、テストで100点をとることは当たり前で、10円の価値しかないんだ……!)

しかしそんな中、1つだけ違う文字が表示された。

・テストで80点をとる 8,000円

しずかが、驚いたように口に手を当てた。

「えっ!? 出木杉さんでも、こんなことがあるのね……!?」

のび太は大声を出した。

「な、なんで80点のテストに、8,000円の価値があるの!?」

モニターを確認した出木杉は、少し頬を赤らめた。

「いやぁ〜、これは僕にとって恥じるべき思い出なんだ……」

出木杉はバツが悪そうに頭をかいた。

「実はこのテストの前日に、本を夢中になって読んでしまってね……。寝不足でテストを受けてしまったんだよ」

のび太はかぶせるように言う。

「 じゃあ、このことを忘れて、お金に変えちゃえば!?」

出木杉は、のび太の顔を正面から見た。

「……のび太くん。僕はあんなことを二度としないように、あのことを忘れたくないんだ。あの思い出があるから、その後の僕がいるんだよ……」

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第4話

のび太はしばらく呆然としていたが、ハッと我に返った。

目の前には、メモリーローンから吐き出された5,000円がある。
ホームランの画像をタッチし、3,000円を投入した。

再び、強いめまいがのび太をおそう。
それがおさまった時、のび太はホームランを打った事を隅々まで鮮明に思い出せた。

ボールがバットにあたった瞬間の、気持ちのいい手の痺れ。
他の人の視線を一身に浴びながら、ダイヤモンドを走ったこと……。

「僕、本当にホームランを打ったんだぁ〜! 最高の気分だよ〜!」

のび太はしばらく、何も持たずにバットの素振りをしていたが、やがてニンマリとした。

「しずかちゃん、新しいバイオリンが欲しいって言ってたなぁ!? これがあれば、いくらでも買えるぞ〜! よし、教えてあげよう!」

のび太はメモリーローンを抱えると、部屋を駆け出して行った。

((≡゚♀゚≡))

「し〜ずかちゃ〜ん!」

のび太が声をかけると、しばらくして玄関の扉が開いた。

「あら、のび太さん!」

中から、しずかが笑みを浮かべた。

「 やあ、のび太くん!」

しずかの後ろには出来杉がおり、さわやかに片手をあげる。

(ゲッ! 出木杉もいたのか〜!?)

のび太は少し動揺したが、「いいものを持ってきたんだ!」と言い、部屋へあげてもらった。

しずかの部屋のローテーブルに、大きい本が開かれていた。

「今ね、アルバムを見てたのよ? ほらこれ、この前みんなで行った高之山の写真。楽しかったわよね〜!」

出木杉が微笑む。

「しずかくんの作ったお弁当、芸術的な美味しさだったよね!? のび太くん!」

しかし、のび太は表情を変えずにじっと写真を見つめていた。
自分の知らない、けれど自分が写っている写真を……。

「……のび太さん?」

しずかが、心配そうに声をかける。

「…… そ、そんなことより、いいものを持ってきたんだってば!」

のび太は、メモリーローンの説明をした。

「 え〜、記憶が見られちゃうなんて、何だか怖いわ〜!」

しずかは少し後ずさった。
しかし、出木杉はメモリーローンを見て言った。

「 僕は興味があるなぁ。見てみたいよ!」

のび太は、出木杉の頭にラバーカップをのせた。

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最終話

モニターに映し出された文字。

・ドラえもんとの思い出

高額の思い出は、他にもある。

・家族との思い出
・おばあちゃんとの思い出

のび太はしばらくの間、懐かしむようにそれらの画像を眺めていた。

((≡゚♀゚≡))

ドラえもんは、のび太を探して町を走り回っていた。

ふと、前方にジャイアンとスネ夫が歩いているのを見つけた。

「二人とも! のび太くんを見なかった!?」

二人は顔を見合わせたが、ドラえもんの尋常じゃない様子に、ジャイアンがあわてて言う。

「お、おう! さっき見たぜ!? 『ゲーム機なんか、僕だって買える!』とか言ってたな!」

スネ夫が首をかしげた。

「思い出、とかいい言いながら、公園の方へ走っていったよ?」

ドラえもんは、4次元ポケットからどこでもドアを取り出した。

(のび太くん!! もし、大切な思い出を無くしてしまったら、もう、君は君でいられなくなるぞ……!!)

((≡゚♀゚≡))

のび太は、震える指でモニターに触れた。

ピッピロリロ〜♪ ピッピロリロ〜♪

不気味な電子音とともに、強烈なめまいがのび太をおそう。

突然、空間にひずみが生まれ、ドアがあらわれた。勢いよく開き、ドラえもんが飛び出す。
その目の前には、頭にラバーカップをのせ、呆然と座り込むのび太の姿があった。

ドラえもんの目から、みるみる涙が溢れ出す。

「……のび太くんはバカだ!! 大バカだ!! バカの王様だっ!!」

ドラえもんは、ピクリとも動かないのび太に抱きついた。

「……お金のために、いちばん大切なものをなくしてしまうなんてっ!!」 

ドラえもんは、のび太に抱きついたまま号泣した。


「……誰が、バカの王様だって?」

ドラえもんは、聞き覚えのある声に顔をあげた。
のび太が、優しく微笑んでいた。

「 ……の、のび太くん!? 思い出を消したんじゃないの!?」

ドラえもんは、メモリーローンのモニターを見た。
赤い大きなバッテンの下にはこう書いてある。

・新しいゲーム機が欲しいという思い出 −1,000円

「僕にだって、本当に大切なものくらい分かるよ、ドラえもん!」

のび太は夕日を浴びながら、恥ずかしそうに笑った。


『メモリーローン』 完

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『わんわん再放送』完了のお知らせ

過去に投稿した、連載小説の全ての話にハッシュダグ付けが終わりました〜!!(;´∀`)
これで、一気読みできるようになった〜✨←自己満

#紅血龍と香水
#ペルセウス座流星群の夏
#メモリーローン
#Y氏の憂鬱
#秋のカブトムシ
#一片の雪  (なぜ、これだけ青くならない!?)

長々といっぱい連投しちゃってごめんね〜!💦
これからは慎ましく、ホタルイカの投稿メインでやっていこうと思います!笑

もし、時間があったら、小説を読んでやって下さい。読みやすいと思いますので……。

ではでは。🦑
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