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岸辺の100冊📖´- # 14-21

#読書の星

☆『風街とデラシネ』田家秀樹 '21 初版角川書店

丁度、1週間前のこのコラム# 14-20で貼り付けた♫キングストンの街を読書子はお聴きになったであろうか？あの曲はアルバム『日付のないカレンダー』の3曲目に所収された楽曲であった。
この曲の中に公園通りの「ジロー」という喫茶店が登場する。

…いつもあなたは渋谷の街を
肩で風切り歩いて来たわ
白い「ジロー」は公園通り
学生たちが待ち合わせてた…

出だしの最初の歌詞である。森山の証言。「きっと松本さんも同じようなことしてたんだと思うんです。渋谷の公園通りに"ジロー"っていう内装が真っ白な喫茶店がありました。いつもみんながたむろしていて、当時の東京のちょっとおしゃれな学生たちの待ち合わせといえばあそこだった。
あの歌だけで、あの頃一緒の地域に棲息していたんだなぁと分かるんですよ」森山は松本より1つ歳上、早生まれだから大滝詠一とは学年が1つ上だが、彼女を囲むカレッジフォークの根城は渋谷の東京山手教会地下のジャンジャンだった。ジャン・ジャンはその後もシャンソンの淡谷のり子や戸川昌子、たまに美輪明宏などが多くの客層を引き寄せた。松本は同じ渋谷でも百軒店にあったブラック・ホークに巣食っていて、はっぴいえんどの"ゆでめん"に所収された♫かくれんぼはここで書かれたらしい。田家は先の♫キングストンの街
の中で歌われていた"水仙"はブラザース・フォア
の代表曲♫七つの水仙のことだろうと推察して同じ歌の中に出てくる"草原"は森山が唄った♫この広い野原いっぱいを指しているのでは？と指摘している。
さて前回の# 14-20で『日付のないカレンダー』のジャケットを1枚目に掲げたが、あのイラストを手掛けたのは世界的イラストレーターの故.矢吹申彦だが、このジャケを巡って田家が興味深い逸話を披瀝している。ディレクターだった本城から驚きの秘話が先ず披露される。「ジャケットをイラストにするアイデアも松本さんだった」。
親子三世代が記念写真のように並んでいる。
前例中央に座っている女性が森山良子。その両端の老父と老母が森山久、戦前の日本ジャズ界屈指のペッターだ。そして右の老婦人はその妻浅田陽子、戦後すぐのジャズブームの時にデビューしたジャズシンガーだった。そして良子が抱いている乳飲み子は誰あろう森山直太朗である。
良子は松本にこの写真をイラストにして！と手渡されたのだが、実は実際に撮られた写真だったのであるが、良子はこの時妊娠中だったのだというが、松本には直接それは明かしては居なかった。つまり妊娠2ヶ月程の時の時だから見た目では殆ど気付かれないはずだ。森山直太朗の誕生日は1976年4月23日である。アルバムのレコーディング期間は、同年3月5日から4月27日だったという。リリースが7月25日だ。松本が森山の懐妊を知っていたかは松本が「知らなかった」と既に回答していた。松本は云う。「松田聖子でもそういう事があったんだけど(♫瑠璃色の地球でのエピソード)でも、あの時とは違いますね。森山さんがどういう状態かは、全く気にしてなかったと思う。そういう歌を作っていると小さな偶然というのはありますよ。それが聖子の言う『松本さんは魔法を持っている。その人の秘密を言い当てちゃう』ということなんでしょうけどね』
アルバム6曲目に♫子どもたちに教えなさいという曲がある。森山良子の懐妊を知っていなければこのような詞は普通書けないと思うが、松本は無意識に察知していたのかもしれない。

子どもたちに教えなさい本当のことを
子どもたちに教えなさい素晴らしい夢を
画用紙大事に抱えた少女
クレヨン握って絵を描いていた
窓に映った空は灰色
ビルの谷間をじっと見ながら

いえいえ空は青いクレヨン
黄色いお花赤いおひさま
それが子供の選んだ彩色よ
天使の瞳には見える色

子どもたちに教えなさいでも何が本当？
子どもたちに教えなさいでも何が夢なの？
ナイフで鉛筆削れない子や
ボタンもぬえない女の子たち
浜辺でうまれて泳げない海
トラック道路でままごとする子

ひとつの世代が世代を生んで
ひとつの時代が時代を生むの
私たちから子供たちへと
何を残せばいいのでしょう

松本はこの時3歳の父親になっていた。
森山良子が息子の直太朗のこんな話をしてくれたという。「かなり小さい頃から意識してましたね。これ何、これ何、ってずっと言ってて。彼はずっとサッカー漬けでしたし、音楽に興味あると思ってなかったんで、まさか聴いているとはと驚いことがあります。やっぱりジャケットから入ったんだと思いますね。そうしたら♫さくらが入ったアルバム(『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』)のジャケットが矢吹申彦さんだったんです」
その変なタイトルのアルバムの翌年にリリースされたシングル♫さくら(独唱) も更にその後に出たベスト盤のジャケットも全て矢吹申彦であったという。
松本と森山はその後コラボることもなく月日は流れ1987年に松本自らが監督した『微熱少年』という映画の中で自身の母親役という配役で森山良子が指名された。森山は松本に言われた一言を心の奥底に大事に閉まっていた。その一言とは「僕たち、同世代だからね。って言ってくださって。そんなふうに見ていてくれたんだって嬉しくなりました」松本もこのアルバムの中の7曲目♫バス通り裏を自選50曲を収めた『風街図鑑』に選んでいる。その解説書には(作ったあと、すっかり忘れていた詞なんだ。でもあるとき、良子さんがカーネギーホールでこの歌を泣きながら歌っているヴィデオを観て、とても感動した)とある。同世代の二人で紡いだ名盤『日付のないカレンダー』は二人にとって忘れえぬ1枚として記憶さている。

続た

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