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ねむねむ星人

ねむねむ星人

シュヴィ、ついにコレクション入り🖤
造形も表情も神すぎて、思わず撮影📸
フィギュア撮るの、やっぱり楽しい…!
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朿白

朿白

今までみたアニメの中で感動した場面は??今までみたアニメの中で感動した場面は??

回答数 71>>

ノーゲーム・ノーライフ 0̸

シュヴィ…リクを愛してるからこそ最後の最後まで戦った上、死の間際にリクから貰った結婚指輪だけは大切にしてそれだけは遺していたこと。
リク…シュヴィを失って心神喪失状態なのに未来を皆に託す為に、片腕をなくしてボロボロになっても立ち向かうところ。
アニメの星アニメの星
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中大兄ショータ

中大兄ショータ

映画『ノーゲームノーライフ ゼロ』、感動した🥹
神様が語る秘密の神話って始まりも面白かったな。絶望から触れ合いを通して希望を取り戻したリクと人の心を理解した機械シュヴィの恋。大決戦で立ち回る人間族の影。石に刻まれた3人の名前。
何より映像美が良い。神話の世界って感じを美麗に表す。感動した!
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天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
【おまけ】継承の刻 1

扉をノックする硬い音がする。
室内に集まっていた騎士団長ら3人のうち、1人が「入りたまえ」と渋い声で返事をした。
3人は先の戦いで第一騎士団長を失ったため、後任者が挨拶に来ると聞かされていた。
戦中のためまともな授与式も行われておらず、顔を合わせるのは初めてである。
後任になったのは、かの有名な不死身の騎士。
どんな苛烈な戦場も、類稀なる剣と魔術の才能で魔族を圧倒し退けたと語られている騎士だ。
一体どんな巨体を構えて来るのか…と思えば。
失礼します、と落ち着き払った少女の声がして、その声におおよそ相応しい身なりの人物が入ってきた。
ルーヴェリア「本日より第一騎士団長に任命されました。ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルムと申します。戦場では主に単独で行動していた為、集団戦に於いてご迷惑をおかけする事と存じます。ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
礼儀正しく、それでいてどこか、これは何と言ったらいいのか。声に色も波も無い。
一瞬呆気に取られかけたものの、気を取り直して各々自己紹介をした。
ディゼン「第二騎士団長、ディゼン・グードルフェンだ」
大柄な男性が一歩前に出てきた。
次いで、首元のチョーカーが印象的な女性が。
コルセリカ「第三騎士団長、コルセリカ・メゾニア・ラマシェティー」
最後に、金色のペンダントを胸元で揺らす…恐らく少年?が。
マルス「第四騎士団長、マルス・ガラングス。よろしく」
ルーヴェリアは頭を深く下げつつ、ちらと執務机の上を見やる。
置かれているヘルムは、大きさからしてディゼンのものか。
ルーヴェリア「よろしくお願いします。こちら、私の経歴書になります」
持っていた書面を差し出すと、真っ先にコルセリカがそれを受け取って読み始めた。
コルセリカ「どれどれ〜?経歴は…11で騎士団入隊!?…それが去年!?てことは…今12!」
マルス「俺より年下!?マジかよ…」
これにはディゼンも驚きを隠せないでいる。
ディゼン「ここはいつから託児所になったんだ…」
その言葉を聞いてマルスがむっとする。
マルス「おい、俺は確かに身長は低いがこれでも18だぞ。18。立派な大人だ」
コルセリカ「まあまあ。可愛い団長ちゃんが増えたと思えば」
コルセリカの悪戯っぽい笑みに食ってかかる様を、ルーヴェリアは波紋ひとつ無い水面のような瞳で眺めていた。

これが、後に七年守衛戦争と呼ばれる激しい戦いを生き抜いた騎士達との邂逅であった。
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天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第十二話 後編

先行部隊より少し遅れ、早めに王城に戻ってきたルーヴェリアは、謁見の間で躊躇うことなく言い放った。
ルーヴェリア「帝国方面より魔族の侵攻有り」
ざわめき出す周囲の者達を片手で制し、国王はルーヴェリアに尋ねた。
国王「本当に魔族の侵攻なのだな、帝国はどうなっている」
ルーヴェリア「はっ。帝国は既に魔族の手に堕ちているとその場に居た魔族より伺っております。その魔族を捕える事はできませんでした。申し訳ありません」
そこまで言うと、周りがまたざわめき出した。
化け物と呼ばれている分際で魔族一人捕えることすら出来ないとは、使えない。
長年第一騎士団長を務めていたというのに、敵を目前にして逃げ帰ってきたのか?と。
国王は、今度は咳払いをして周囲を黙らせる。
国王「こちらの損失は?」
ルーヴェリア「私が率いていた騎士団500名は総員撤退させた為、残存兵力は500。先行部隊の1000名は総員戦死しました。敵は帝国兵500の増援でしたが……」
ルーヴェリアはそこで一呼吸区切りを入れてから語り出す。
ルーヴェリア「魔族の使用する死霊変化の魔術により、すでに我が国の兵士が倒した敵も、戦死した兵士も魔族に操られ、総数は2500を超えていたと思われます」
国王はそうか、と暫し考えた後、ある疑問が浮かんだらしく、更にルーヴェリアに問いかける。
国王「その死霊兵士達はどうなった」
ルーヴェリア「私が一人と残さず全滅させました」
国王は目を見張った。禁書の内容は知っていて、過去の戦いで多くの戦果をあげ今に至っているということは理解していたが、数千に上る敵兵をたった一人で殲滅してしまうとは。
周囲の人間も、驚きのあまり言葉が出てこないらしい。
ルーヴェリア「死霊は少しでも遺体の一部が残っていればそこから再生する特性を持つ魔物です。故に、鎧すら残すこともなく滅してしまいました。彼らのご家族には、私が直々に頭を下げて参ります」
国王はいや、と首を振った。
国王「これから戦いは激化する。死者が出るたびにそのようなことをしていては、身が持たないだろうし時間も勿体無い。彼らには申し訳ないが、私から弔いの花を贈ることにする」
ルーヴェリア「……そうですか」
わかりました、とルーヴェリアが言ったところで、話は一区切りついた。
そして次は国王の方から話を切り出す。
国王「騎士団長、ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルム、クレスト・アインセル、テオ・アルストルフ、前へ」
3名は呼ばれるがまま国王の前に跪いた。
国王「これより、魔族との戦闘が激化することを見込み、大規模な兵力の拡大を行うこととする。そこで、我が息子である第二王子アドニスを騎士団長の座に就かせることにした」
アドニスは、これまでの会話を理解するのに一苦労だったが、ひとまず心を入れ替えて彼ら3名の前に立つ。
国王「これからは、第一騎士団長にアドニスを、第二騎士団長にルーヴェリア、第三騎士団長にクレスト、そして第四騎士団長にテオを任命する。この国を、民を守ってくれ」
4人は国王の前に跪き、その命を拝する。
国王「それから、アドニス、テオ、お前達二人は魔族がどんなものかよく分からないことが多いだろう。禁書保管庫への入室を許可するので、他二人から享受しつつ、しっかりと学ぶように」
アドニス「は、はい!」
テオ「承知しました」
国王「以上である」
この言葉に、宰相も、その他集まっていた各領主達やその名代、騎士団長達もその場を後にしていった。
人の少なくなった部屋はとても寂しいものだが、隣に妻がいてくれることが幸いした。
王妃「あなた、怖いのね。手が震えているわ」
そっと国王の手に自分の手を重ねながら言うと、彼はこくりと頷いた。
国王「怖いさ。伝記や禁書に描かれていたあの時代から、遥かに年月が経っているとはいえ…この国は平和に慣れてしまった……だから、負けてしまうかもしれないとさえ思っている」
王妃は首を横に振った。
王妃「貴方がそんなことでは本当に国が傾いてしまうわ。怖くても、毅然と振る舞って。その姿を見るだけで、この国は大丈夫だと民は思うことが出来るの。大丈夫、辛いことがあれば私が一緒に背負いますから」
国王はありがとうと小さく呟いて俯いたのだった。
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天月 兎

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サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第八話 後編

そうして暫く歩き、そろそろ城壁が見えるくらいのところまで来た時。
走っていた子供が後ろからとん、とぶつかってきた。
あうっ、と言って子供はそのまま前のめりに転ぶ。
ルーヴェリア「大丈夫ですか?」
屈んで手を伸ばすと、子供はわんわん泣き出してしまった。
どうやら膝を擦りむいたらしく、流血している。
子供「わあああん!いたいよう!」
仕方ない、このまま放置するのも心が痛むというものだ。
ルーヴェリアは屈みながら「大丈夫、すぐ良くなりますよ」と言って子供の膝に手を当て、簡単な治癒の魔術を使ってやった。
みるみるうちに傷は塞がり、元の綺麗な状態になる。
子供「あれ…いたくない」
ルーヴェリア「ほら、すぐに良くなったでしょう?」
子供は一瞬泣き止んだものの、今度はルーヴェリアに抱きついて泣いてしまった。
ルーヴェリア(どうして泣いているのでしょう…私、なにか余計なことをしてしまったのでしょうか…)
どうすれば良いのか分からず、困惑しながらも子供の背を撫でる。
ルーヴェリア「一体どうしたのですか?何か困っているの?私に出来ることはありますか?」
そう言うと、子供はしゃくりあげながら事情を話してくれた。
どうやら母親とはぐれてしまったらしく、ずっと探し回っているが見つからないとのこと。
それなら、自分にも出来ることがある。
ルーヴェリア「では、一緒に探しましょう。手伝ってあげますから、もう泣かないで」
カバンからハンカチを取り出して子供の顔を拭ってやる。
まだ若干涙がにじんでいるが、安心したのか泣き止んだようだ。
ひとまず、子供が母親を探しやすいよう抱き上げて周囲を探索してみた。
ルーヴェリアの身長168cmと、普通の女性よりは高いので視点もそれなりに高くなる。
そのおかげか、案外早く母親を見つけることができた。
母親の方も大分必死に探していたようで、汗だくになっていた。
何かお礼をさせてくれと言われたが、丁重に断りその場を後にする。
帰る道中で、街の外れに立つ石碑を見かけた。
石碑には"誉高く勇敢な魂達に安らぎを"と刻まれている。
これは、ルーヴェリアが経験した地獄のような戦争で命を落とした者達のために建てられた慰霊碑だ。
慰霊碑の下部には小さな祭壇が置かれており、色とりどりの花が添えられている。
周辺には数名の男女が慰霊碑に向かって祈りを捧げていた。
ルーヴェリアは慰霊碑の前に立ち、胸の前で手を組んでそっと目を閉じた。
兵士のみならず、街の住民にまで被害が及んだあの戦争は、本当に…本当に多くの犠牲者を出した。
彼女の家族も、友人も、部下も、弟子も、皆、皆目の前で命を落としていった。
脳裏に過ぎる死の数々が、胸中の奥底に穿たれた塞がりかけの傷を開いていく。
あれはこの国の、いや、この世界の血塗られた黒い歴史であり、繰り返してはならないものだ。それであるのに、帝国はまたこの国に向けて害を及ぼそうと画策している。
どうすれば止められるのだろう。
何故人は争うことを止めないのだろう。
ルーヴェリア(どうか、貴方達が心安らかでいられる世界にするためにも…道を示してください)
今度こそ守りたいから。
平和のために散っていった仲間達に報いるためにも、自分が折れてはいけないから。
祈りを捧げ終え、そっと息を吐き出して再び歩き出した。


そして城に帰ってきた。
のだが……。
衛兵「そこの女、止まれ」
ルーヴェリア「……はい?」
衛兵「お前、この城の関係者では無いだろう。無関係な人間は立ち入り禁止だ、今すぐ帰れ」
……………。
ルーヴェリアは無言でカバンをごそごそと漁る。
衛兵「何をしている、さっさと帰……」
そして目の前に騎士の印章を突き出した。
ルーヴェリア「第一騎士団団長、ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルムです」
衛兵の顔は一瞬で真っ青になった。
考えている事はだいたいわかる。
なんてことだろう、あの怪物を怒らせてしまった。殺される……!だろうな。
衛兵「し、し、失礼しました!!お通りください!!」
ルーヴェリア「お気になさらず」
一言だけ返すと、印章をカバンにしまいながら自室へと向かっていった。
別に気にしてはいない。
彼はただ仕事をしただけだ、と考えたから特に何も思わなかった。
のだが、ルーヴェリアに悪い噂が付きまとっているせいか、衛兵からすれば冷めた表情で冷たい声で返答されたように感じたのだろう。
同僚から心配されるくらい精神を病んでしまった彼は、暫く自宅療養することになる。
翌日には騎士団の耳にも入り、「たった一言で兵士に呪いをかけた」やら、「睨んだだけで心を蝕む恐ろしい化け物」やら散々な噂が出回った。
そんな噂を耳にしたクレストは、ルーヴェリアの表情筋を柔らかくしよう計画を宰相や国王達と真剣に考える。
果たして、無事に誤解を招くお堅い表情を和らげることが出来るのか……?
それはまだ先の話である。
ルーヴェリアが部屋に戻ると、机の上に見慣れない小さな箱が置いてあることに気がついた。
添えられた手紙を開いてみる。
「シエラ達から何があったのかは聞きました。助けてくれてありがとうございます。これはほんの気持ちです、受け取ってください。」
どうやらアドニスからのようだ。
ルーヴェリア(無事お目覚めになられたのですね、良かった…)
箱を開くと、中にはブローチが入っていた。魔装具などではなく、単なる装飾品のようだ。
銀色の飾り枠の真ん中に、楕円形に整えられた空色の宝石が嵌め込まれている。
ルーヴェリア(これなら、普段着に取り付けても問題なさそうですね)
自分は役目を果たしただけだからなにも気にする必要はないのに、と思った。
だが、折角もらったものを使わないのは勿体ないし、豪奢すぎないデザインが少し気に入ったのもあり、きちんと使うことにする。
きっと身につけている姿を見たら、アドニスも喜んでくれるだろう。
ルーヴェリアはそっと箱を机の上に置き直し、外着から普段着に着替える。
その胸元にブローチを付け、鏡で確認してみたが、さり気ない存在感がとても良い。
その後ルーヴェリアは書庫から魔道具についての本を片っ端から持ってきて部屋で読み漁り、夕食を摂って、久方振りにぐっすりと眠ったのだった。
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天月 兎

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サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第十一話 後編

いつも見ている天井を呆然と眺める。
ひとまず、考えを整理しよう。
あれはただの夢だ。若干現実味が感じられたが、恐らく男から言われたことは然程気にしなくて良いかもしれない。
だが、確かめなくてはならないことがある。
ルーヴェリアのことだ。
過去の戦いの話は度々聞かされてはいたが、夢の中で感じた疑問を晴らさなくてはならない。
旧知の仲であるだろうクレストに聞くか、或いは…。
アドニス「戦線記録…」
サフラニアには多くの戦いの歴史がある。
戦術書にはどのような敵が、どのような動きをするか、どんな陣形で臨んできたかなどが記されている。
が、何故かいくつかの魔物に対して討伐記録が記載されていないものがあるのだ。
いつ、誰が、どのようにして倒したのか。
もしもルーヴェリアが本当に自分が生まれる前の戦場に立っていたのだとしたら、戦術書に彼女の名前がないのはおかしいことだ。
城の中にある本は勉強のためにほとんど読み尽くした。なのに彼女の名前はどこにも記されていなかった。
だとしたら彼女はどこで、何と戦っていたのか?確かめなければ。
本人に聞いても良いのだが、国が隠すほどのことを簡単に答えるとは思えない。
なら、自分で探すしかないだろう。
国が隠すほどの大きなことならば、それが記されているのはやはり。
アドニス「禁書しかないよね…」
今日、やらなければならないことが決まった。
帝国との戦いがあるせいでルーヴェリアが不在のことも多いので、鍛錬の時間は少なくなっている。そのおかげと言ってはなんだが、自分が自由に使える時間も増えたので図書室に行くことは出来るだろう。
問題は、禁書の保管庫前にいる見張りになんと言って誤魔化すかだ。
流石に、国王である父から取ってこいと言われたなんて安直すぎるにも程がある。
というか、国王でさえ簡単に閲覧できるような代物ではないのだ。
空間転移の魔術が使えたらいいのに、なんて生まれて初めて思ったかもしれない。
アドニス「はあ……あれしかないか」
誰にでもなく呟いて、着替えをして、朝食をとって、一旦部屋に戻って、作戦決行だ。
一般兵の宿舎に立ち寄り、鎧を着て、顔も見えないように兜も被った。
そして見張りに声をかける。
アドニス「交代の時間だ」
見張り「…もうそんな時間か、早いな。じゃあ後は頼んだ」
なんて。
見張り「言うわけないでしょう王子殿下」
何故バレた。
アドニスは兜のバイザーを上げて困った顔を覗かせた。
アドニス「なんで分かったの?」
見張り「背丈とお髪ですよ。長い銀髪を束ねている一般兵士は居ませんから。あとお声も」
流石に無理があったようだ。
どうしたものかと考えていると、見張りの方から声をかけてきた。
見張り「禁書保管庫に何かご用ですか?わざわざ一般兵士のふりをして来たということは、陛下からお話があったわけでもないでしょう?」
アドニス「そう、だね……うん。実は城内の戦術書を全て読んだんだけどね、魔族との戦いについて記載されていないことが多くて。なんだか魔術棟の方も騒めいているし、僕は戦場に立つことも多いから、いざという時のために勉強しておきたかったんだ」
一応、嘘は言っていない。ルーヴェリアのことが気になるからここまで来たのではあるが、魔族についても知っておきたいというのもある。
それに、多分彼女の名前は出さないほうがいいだろう。彼女は何故か恐れられているから。
見張り「陛下にはご相談なされないのですか?」
アドニス「一度話をしたことはあるんだけど、駄目だって言われてしまったんだ」
これも本当だ。1年前の話ではあるが、全ての戦術書、歴史書を読み終えたから禁書も読みたいと言ったが断られたのである。
見張り「自分としては、中に入れて差し上げたいのですが……もし、このことが他に知れたら……」
見張りの言うことはよく分かる。
首が飛ぶことはないと思うが、それなりに罰が与えられてしまうだろう。
アドニス「じゃあ、その時は僕が脅したことにしよう。中に入れなきゃ濡れ衣を着せて死罪にしてやると言われた、みたいな?」
見張り「……それ、誰が信じると思いますか…?ご自身の性格と人望を見直された方がよろしいですよ……」
アドニス「ははは…そうだよね…」
非常に困った。
だが何としても知りたいのだ。中に入りたい。
そこでアドニスは、その場に跪くことにした。
アドニス「お願い!本当に全部僕のせいにして構わないから!」
見張り「何をしてるんですか!王族である貴方が簡単にそんなことしたら駄目ですよ!立ち上がってください!」
即座に見張りが慌ててアドニスを無理やり立ち上がらせる。
見張り「はあ……もう、わかりました。陛下にも黙っておきます。自分は何も見ていないことにしておきます。そのかわり、出てくる時はノックでもして知らせてください。人がいないか見ておきますから…」
根負けした見張りはそう言って禁書保管庫の扉を開いた。
アドニスは他の人間が来てしまわないうちに軽く礼を言ってさっさと中に入る。
入室する者がほとんどいないためか、部屋の中は埃がひどく、かびたような臭いが充満していた。これで本は傷んでないのだから、保存魔術がいかに素晴らしいか考えさせられる。
アドニス「えっと…確か魔族との戦いが激化していたのは大体50年くらい前だよね…」
埃で咽せてしまわないように口元を袖で覆いながら、年代別に分けられた本棚のうち一冊を手に取る。
はらりと捲った最初の頁にはこう書かれていた。
"天候、雷雨。
モリズ村北部にてゲート発生、魔族より侵攻有り。獣魔1200、死霊5000、計6200。
獣魔は大型が200、その他小型で構成。前衛に配置。死霊は後衛に配置。500で小隊に分けられており、内3部隊は騎馬兵となっていた。
村民はヘルベ湖を経由しエストア方面へ避難。
サフラニアより250派兵、カルシャ村にて駐留していた50の兵士と併せ300で迎撃。
魔族は全滅。サフラニア残存兵力3。
部隊長名:ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルム"
次の頁も、その次の頁にも、彼女の名前がある。
捲っても捲っても、彼女の名前が。
これは、50年前の本だ。
一体彼女に何があったのだろう。
そして何故、魔族の数に対してこんなにも兵士が少ないのだろう。
アドニスは本を棚に戻し、更に過去に遡ってみることにした。
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サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第一話

四季彩豊かなサフラニアの暑い夏の日。
ルーヴェリアは王命を受け、城内にある騎士団の訓練場に来ていた。
「今年で6歳になる第2王子に、剣を教えてほしい」
サフラニアは戦の歴史が長い国家でもある。
停戦しているとはいえ帝国や魔族が再び侵攻してくることもあるかもしれない。
いつ戦いが起きても良いように、との王のお考えの元らしい。
大人相手の訓練ならばいくらでも行ってきたが、子供相手に務まるものか?
どのように対応しようか。
そんな風に思案していると、小さな足音が駆け足で近寄ってきた。
自分の目の前で止まった足音は、やけに華奢な体つきのちびっ子だ。
アドニス「初めまして!第2王子、アドニス・ラグラッツ・サフラニアと申します!お稽古、よろしくお願いします!師匠!!」
ぺこりと頭を下げた小さな体に目線を合わせるよう膝を着く。
ルーヴェリア「ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルムと申します。第2王子殿下。」
ルーヴェリアは1呼吸間を置くと、アドニスに頭を上げるよう促した。
そして翡翠色の彼の目を見て言葉を続ける。
ルーヴェリア「良いですか殿下。私は貴方の師となりますが、あくまでも立場は貴方の方が上にあります。私は貴方の配下です。無闇に頭を下げる必要はありません。私のことはルーヴェリアとお呼びください」
アドニスはキラキラした目をそれはもう更にキラキラさせて大きく頷いた。
アドニス「はい!師匠!」
ルーヴェリア「ルーヴェリアです、殿下」
アドニス「はい!師匠!」
……………。
数秒間の沈黙の後、ルーヴェリアは自分専用の訓練場に案内した。
ルーヴェリア「此方が、本日より殿下にご使用いただく訓練場です」
アドニス「こ、ここが?お城、2つくらい入りそうなくらい広い…」
高い外壁に囲まれたその場所は、ルーヴェリア専用とされるにはあまりにも広すぎる場所で、アドニスの感想通り城2つ分はある。
外壁は所々にひび割れた箇所があり、まばらに穴が空いていた。
穴から見るに、外壁も大分に分厚い。
ルーヴェリア「感嘆されているところ申し訳ないのですが、殿下には早速訓練を受けていただきます」
何をするの?とアドニスが問うと、彼女は淡々と説明をした。
ルーヴェリア「まずは体力作りと痛み慣れをしていただきます」
アドニス「痛み…慣れ?」
ルーヴェリア「はい。戦場に出れば負傷は避けられません。痛みに耐えながら戦わなければならない事の方がほとんどです。ですのでまずは痛み慣れが必要なのです」
アドニス「分かりました!」
と言ったものの、どうしようか。
流石に木剣を使うと内臓を潰して殺してしまいかねない。
重いものほど殴った時の威力は大きくなるからだ。
魔術で治癒は出来るが、即死してしまっては流石に蘇生は不可能。
軽くて、ある程度使いやすいものといえば……。
ルーヴェリアは暫く考えた末、近くに生えていた木の枝をポキリと折った。
これを使おう。
これが折れない程度の力加減なら、多分殺してしまうことはない。
ルーヴェリア「今からこの木の枝で貴方を叩きます。叩かれたら外壁に沿って走ってください。1周ごとに叩きます」
アドニス「は、はい!」
大きく返事をしたものの、木の枝なんかで叩かれて痛いのだろうかと考えていた彼は、
彼女の腕の一振に全力で後悔させられた。
強烈な痛みが全身を駆け抜けたと思った次の瞬間、気が付けば体は外壁に叩きつけられていた。
壁からは数メートルくらい離れていたはずだ。
あまりの出来事に驚愕しながら目を開ければ、もう目の前に彼女が立っている。
ルーヴェリア「さあ殿下、走って下さい」
静かに追い打ちをかけてくる彼女に、アドニスは有り得ないと思いつつもまだ痺れる全身を持ち上げて、今まで感じたことのない痛みに耐えながら走り出した。
ルーヴェリア(内臓も枝も無事ですね、ちゃんと加減が出来て良かった…根性もあるようです)
ルーヴェリアは図らずも第2王子を殺してしまわなかったことに心底安堵した。
そしてアドニスの逃げ出さない姿にもほっとした。
いつもは木剣で外壁に穴があかない程度に大人を殴り飛ばすが、大体皆それで逃げ出す。
この長年で彼女に最後まで鍛えられた騎士は、現状片手で数えられる程度だ。
彼にも背負うものがあるのかもしれない、幼いながらに立派なものだと感心した。
しかし、彼の体力は体つきに比例して華奢なようだった。
半周にも満たないところで、息を切らせて足を止めてしまう。
ルーヴェリア「何をしているのですか、殿下」
アドニス「え、あ…あの、息が続かなくて…」
ルーヴェリア「そうですか、走って下さい」
アドニスの思考が止まった。
今なんて?
ルーヴェリア「走って下さい殿下。訓練場は戦場と同義、止まっては矢に射抜かれますよ」
こんな風に、とルーヴェリアは幼い体に再び木の枝を振り上げた。
アドニス「ひっ!」
枝から逃れようと走り出したが遅かった。
また外壁に体が叩きつけられる。
ルーヴェリア「足を止めるとそうなります。さあ、走って下さい」
正直、人の心がないと感じた……。
そんなこんなで外壁を走りはしたものの、昼前までに半周することさえ出来なかった。
擦り傷、打撲、多分捻挫もしている体は、とてももう歩けそうにない。
ルーヴェリア「……残りの半周は午後からにしましょう。休息です、殿下」
アドニス「は、はい……」
彼女が血も涙もない怪物と恐れられる理由が、何となく理解出来た。
これは、怖い。恐ろしい。
ぺたんと座り込むアドニスを、ルーヴェリアはひょいと抱き上げた。
アドニス「えっ、えっ??」
ルーヴェリア「撤退時、負傷した兵士を自陣に運ぶのも戦士の務めです。殿下は負傷兵なので私が自陣までお連れします。自陣内では、魔術師達が負傷兵の手当を行うことになっています。ですから、それまでの辛抱ですよ」
さらっと励まされたアドニスは、言葉も出ないまま彼女に運ばれた。
そして、彼女が自陣と呼ぶ外壁の入口に着くと、涼しい風が心地よい日陰に座らされる。
ルーヴェリア「痛みますか?」
アドニス「とても痛いです…」
ルーヴェリア「よく頑張りましたね」
ルーヴェリアがアドニスの血だらけになった手を握ると、不思議なことに、感じていた痛みも、何故か疲れまで消えてなくなった。
荒くなっていた呼吸も落ち着く。
アドニス「すごい、もう痛くないです。休憩の時も、痛みを感じていなくていいのですか?」
ルーヴェリア「戦場では、休息時にどれほど自分を万全の状態に戻せるかで生死が分かれます。休むことも戦いなのです、殿下」

それから、2人で昼食のサンドウィッチを食べた。
アドニス「師匠、聞いてもいいですか?」
ルーヴェリア「何でしょうか。あと、ルーヴェリアです、殿下」
アドニス「師匠は僕と同じくらいの時に剣を覚え始めたと父上から聞きました。師匠も、あんな風に叩かれたりしたんですか?」
ルーヴェリアは遠い昔の記憶を呼び起こして答えた。
ルーヴェリア「…いえ、私に師は居ませんでした。なので、最初は木や岩に全力で体をぶつけていましたね」
アドニス「……は、はあ…」
ルーヴェリア「木片や岩肌の鋭利な部分で体中を切っていました。時々目に刺さって失明しかけたこともあります」
アドニス「……………」
言葉が出なかった。
自分と同じくらいの年齢で、しかも女の子が?
今でさえ逃げ出したいくらい自分は辛いのに、怪我を治してくれる人も居なかった中でそんなことをしていたのか、と。
ルーヴェリア「時々魔獣にも出くわしましたね。そういう時は喜び勇んで爪や牙に体当たりしたものです」
アドニス「魔獣…?今はもうほとんど居ないけど、昔は沢山いたのですか?」
ルーヴェリア「ええ。歩きながら石ころを蹴飛ばすのと同じくらいの頻度で出会っていましたよ」
アドニスは、魔獣を見たことがない。
鋭い牙や爪、強靭な肉体を持っており、大人でも倒すことが難しいと言われていることくらいしか知らない。
よく生きていたな、それで。
アドニス「じゃあ、僕はまだまだ足りないんですね」
ルーヴェリア「そうですね、当時では考えられないくらいにはまだまだ温い方です」
アドニスは、こう見えても負けず嫌いなところがある。
住んでいた世界が違うとはいえ、女の子に負けたくはない。
アドニス「僕、もっともっと頑張ります!剣で心臓を刺されても大丈夫なくらい、強くなります!」
ルーヴェリア「殿下、それは流石に死んでしまいます」
そんな冷たいような、温かいような、よく分からない昼食時を終え、訓練に戻るのだった。
これが、ルーヴェリアとアドニスの出会い、そして彼にとっての地獄の幕開けだった…。
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天月 兎
埼玉/女/26歳 出会い目的の方は回れ右してくれ。 下半身に脳みそあるタイプの猿は滅んでどうぞ。 名前の読み、実は「かむづき うさぎ」なんです。 あまつきでもてんげつでもないよ。 普段はゲームに夢中、ロボトミ、ルイナ、リンバス、FGO、雀魂、麻雀一番街がメイン。 FPS大嫌いだけど稀にBF5の愚痴吐くよ。 SSもたまーに書いてて時々うpします。 たまーにお絵描き、作曲もするお。 よろすく。
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ねむねむ星人
こんにちは! ゲームと音楽が大好きな中国人です🌟 最近日本語を勉強し始めたばかりなので、ちょっと下手かもしれませんが…がんばって話します!笑 RADWIMPSとテイラー・スウィフトが特に好きで、ライブにも行ったことがあります🎤✨ 旅行も好きで、いつかヘルシンキやアイスランド、ニュージーランドに行ってみたいです✈️ 仲良くしてくれたらうれしいです!よろしくお願いします😊
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