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大介

大介

『自作の詩の星』用
初の散文詩の後半部分(。・・。)
前半部分は、noteのほうに。

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『余白』〜散文詩、もしくは何かの終焉〜
     

その香りに導かれるように、
わたしは机の引き出しを開けた。

そこには、折りたたまれたままの便箋が一枚、
静かに眠っていた。

差出人の名はなかった。
けれど、筆跡は、わたし自身のものだった。

それは、かつて書こうとして書けなかった手紙だった。
誰かに宛てたはずの言葉が、
いつのまにか、わたし自身に向けられていた。

赦しを乞う声は、他者のものではなく、
わたしのなかに沈黙していた「わたし」の声だった。

それは、誤解されたまま、語られぬまま、
それでもなお、誰かの記憶のなかに
残っていた「わたし」だった。

わたしは、便箋を開き、
そこに書かれた言葉を読むふりをした。

実際には、何も書かれていなかった。
けれど、わたしのなかには、
確かにその言葉が響いていた。


赦されるとは思っていない。
語らなかったことを、語れなかったことを。
それでも、あなたの沈黙は
わたしを赦していたのだろう。

わたしは常に、「わたしではないもの」に、
そっと撫でられていた。


外の風景は、少しだけ色を変えていた。
遠くの山々が、まるで誰かのまなざしのなかで
見られているように、静かに揺れていた。

そのとき、わたしは思った。
赦しとは、誤解されたままでも、
なお、わたしが抱きしめることのできる、
静かな余白なのかもしれない。

わたしは、窓辺に立ったまま、
その余白のなかに沈み、静かに涙した。

流れ落ちるものは、あの手紙のように、
言葉にならないまま、余白のなかで、ほどけていった。

花の香りはまだ、部屋中に満ちていた。
それが、「わたし」の感じていたものの、すべてだったのかもしれない。

そして、それだけで──十分だった。


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