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daisuke107

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主に詩を書いていくつもりです。 【影響】室生犀星、堀辰雄、立原道造、萩原朔太郎、夏目漱石、二葉亭四迷、徳田秋聲、ドストエフスキー、リルケ、ジッド、ワイルド、フロム、バルザック、D.G.ロセッティ…etc
文学
創作
daisuke107

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『淡い時の名残』


凍りついた
海の底に
ひとつの
砂時計が沈んでいる


氷は 気配の名をそっと忘れ
砂は 時の記憶を ゆるやかに手放す


砕けた月影は
凍りついた深みを
かすかな震えのように よぎってゆく


残響の途絶えたところ
閉ざされた波の余韻が
静かな軌跡を 描いている


声なきものは沈み
触れられぬものは ゆらめきながら
ただ 淡い光の余韻だけが そっと残る


時は 輪郭を失い
海は 境界の眠りを抱き
そっと 光だけが 静寂を照らしはじめる


その向こうに
淡い時の名残が漂い
遠い気配のように
静かに息づいている



#象徴詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『そこに──』



わたしは 終わりなき回廊を
静かに ただ 彷徨っていた。

声なき傷が 夜気に滲み
わたしの輪郭を ほどいていく。


闇の裂け目に 耳を澄ます。
けれど そこには 音もなく

囁きも 叫びも 気配すら
すべては 沈黙に 呑まれていた。


言葉は 届く前に 崩れ
かすかな震えだけが 残る。

語られぬものは 消えずして──
わたしは 今も そこにいる。


誰にも知られず──
それでも 確かに そこに──


#自由詩 #創作
自作の詩の星自作の詩の星
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『欠けた場所に咲くもの』



欠けたるものよ
それは風の通り道
誰にも見えぬ傷の奥で
ひそやかに 光が芽吹く


幼き日に閉ざされた扉の向こう
言葉は凍り 夢は影となり
けれど その音なき世界で
耳は 誰よりも遠くを聴くようになった


見えぬものに触れようと
指先は 空気の震えをなぞり
名づけえぬ痛みを 色に変え
誰も知らぬ歌を 編みはじめる


人は問う なぜそんなに
深く 細く 感じすぎるのかと
けれどそれは 欠けた場所に
そっと降りてきた 世界──


欠損は 奪うだけではない
そこにしか咲かぬ花がある
夜の底でしか開かぬ
透明な花が


#自由詩 #自閉スペクトラム
自作の詩の星自作の詩の星
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『風の頁』




夢みてゐた
いつからか
呼ばれることを 

聲を持ちながらも
それを使ふこともなく──


沈黙のなかに 身を沈めてゐた

聲を出せば 
何かが壊れてしまふやうな
そんな── 
気がして
 

靴音が 通り過ぎる
だれも 知らぬはずの
わたしの記憶に ふれながら

それは 忘れられた頁の
角をなぞる 風の指先のやうだった
 

わたしは
世界の片隅に 置かれた手紙

風が その頁を
そつと めくるたびに

わたしは まだ
讀まれることを 夢みてゐた



──遠くで 笑ひ聲がした

その聲は── 
わたしではない わたし

風のなかへ 消えてゆく
かすかな 呼び聲──



#自由詩 #創作
自作の詩の星自作の詩の星
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『白い手』



わたしの白い手を見ていた。
何も汚れていないと思っていた。

けれど、その手は
いつのまにか
誰かの肩を押していたのかもしれない。

声を、いつしか、塞いでいたのかもしれない。
涙を見ないまま、
通り過ぎていたのかもしれない。
 

わたしは、ただ立っていた。
何もしていないつもりで、
何も壊していないつもりで。

けれど、
その「つもり」が、
誰かの沈黙を呼んでいたのだと、
いまは、思う。
 

自分の痛みを言葉にしたとき、
空気が、音もなく、凍った。

誰かが、黙った。
その沈黙に、
耳を澄ますことを、しなかった。

沈黙の奥に、
沈んでいたものを、
知ろうともしなかった。
 

靴の裏に
乾いた泥がついていた。

どこで踏んだのか、思い出せない。

けれど、
それが誰かの庭だったことだけは
その庭の静けさが、わたしに告げていた。

足跡が
そこに
残っていた。
 

白い手は
きれいなままで
何も掴まず
何も手放さず
ただ
すべてを通り過ぎていった
まるで
何も関わらなかったかのように
 

けれど
その無垢さこそが
誰かの痛みを
見えなくしていたのかもしれない
 

いま、
その手を洗う水が、冷たい。

それは、わたしのせいかもしれない。

水は、沈黙の重さを
冷たさで、ただ、伝えていた。


#自由詩 #自己同一性
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『終わらなかった別れ』




風がひとすじ、
窓辺をかすめていった。

それは、
誰にも呼ばれなかった声のように、

ただ、
空白の中へと消えていった。



言葉は交わされなかった。

沈黙だけが、
私たちのあいだを
ゆっくりと閉じていった。

まるで、
誰もいない部屋の扉が、
風に押されて
静かに閉まるように。



赦しも怒りも、
沈黙のなかで、
行き場を失っていた。

それらは、
未明の光のように、

輪郭を持たぬまま、
私の胸の中を、
ゆるやかに漂っていた。



私は、静かに離れた。

けれど、
その静けさには、

言葉にならなかった響きが、
胸の底に、かすかに残っていた。

それは、
闇の底で微かに揺れている、
消えきらぬ灯のようだった。



未完のままの別れは、
終わりではなかった。

終わらせられなかった、
私の中の、あなたの影だった。
 


私は、今日も名を呼ぶ。

答えのない空に向かって。

その不在を、
確かめるように。

それは、
祈りというにはあまりに遅く、
忘却というにはあまりに鮮やかだった。


#自由詩 #未完了の喪失
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『かたちを持たぬままに』



わたしの中には
ひとつの声が 灯っていた

けれど
それを あなたに向けて
灯すことはできなかった


あなたの名を
知らなかったからではない

名を呼べば
あなたが わたしに
かたちを与えてしまうようで

それが──
こわかった


わたしは
あなたの知らない時間を
あなたの知らない言葉で
ひとり 生きていた


それゆえに
黙していた


けれど その沈黙のなかに
あなたが
耳を澄ませているのを
どこかで 感じていた


それは
問いでもなく
答えでもなく

ただ ひとつの
かたちのない
声だった


いまも わたしは
その声のまわりを めぐっている

あなたに届かぬまま
あなたを 呼ばぬままに


#自由詩 #創作 #文芸
自作の詩の星自作の詩の星
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『灯の名を知らずに』




ひとつの灯が 夜にうかびて
わたしを呼ぶとも 名を知らず
風なき岸に ただ佇ちて
そのひかりの 向こうを見つ




それは 誰かの夢の名残か
あるいは わたしの影に
まだ触れぬ ことばの芽か




されど 手を差しゆかず
近づけば 消えゆくと
いつか 知りしゆえに




わたしは ただ 見つめおる
揺れもせず 燃えもせぬ
その灯のほとりに 息をひそめて




わたしは このまま
灯の名を知らずに
夜を歩みゆく


#自由詩 #創作

自作の詩の星自作の詩の星
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『対岸にて』



そのひとは
わたしの知らない季節──

たとえば
春の名残がまだ残る秋のような──
そのなかに ひとり立っていた


風が吹くたび
そのひとの まわりの空気が
触れられない何かを孕んで
そっと揺れた


わたしは ただ岸辺に立っていた


向こう岸の灯が
ひとつ またひとつ
夜のなかに浮かび上がる


それらは
わたしの言葉では
決して 名づけられないものだった


わたしは ただ 耳を澄ませていた

そのひとの 眠りの気配が
波の音にまぎれて
かすかに届くような気がして


誰かを 慕うということが もしも──

このように
遠くの灯を見つめることだとしたら

わたしは──
その灯のまわりに
ただ 漂っているだけなのかもしれない



#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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GRAVITY19
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『灯りのない方角』



時計のない部屋だった。
塵だけが
そこに流れた時間を知っていた。

音も、
声も、
置き去りにされたまま。


閉ざされた扉の向こうに、
かすかな気配があった。

薄明かりだけが
彼の存在を
まだ見ていた。


彼は、
灯りの届かぬ方角へ
手を伸ばしていた。
ただ、
手を伸ばしていた。


やがて灯りも
暗闇にまぎれ、
彼の輪郭を知るものは
いつしか
消えていった。


私は
その不在を、
街のざわめきの隙間で
ふと感じとった。

それは、
誰にも気づかれずに終わった  
存在の ひとつの
静かな消失だった。


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『朝の光』



朝の光が、障子を透かして、
そっと、部屋の奥へと忍び込んでくる。
何事もなかったような顔をして、
畳の上に、淡い影を落としていた。


けれど、その光が照らすものは、
もう、かつてのそれではなかった。
湯気もなく、声もなく、
器に満たされた静けさだけが、置かれていた。


あの頃──
朝の光は、ひとつの舟の中心に、
囲む者たちの食卓を照らしていた。
笑い声が、湯気とともに立ちのぼり、
それが、わたしたちの朝だった。


舟は、くだっていく。
音もなく、時の流れに身をまかせながら。
岸辺に着いた者から、
ひとり、またひとりと、舟を降りていく。


気がつけば、
わたしひとりが、舟の記憶を宿すこの食卓に、
取り残されていた。


それでも、朝の光は、変わらずここにある。
けれど、その光が照らす食卓には、
もう、誰の影もない。


その不在のかたちが、
わたしの風景を、静かに、かたどっている。


ときおり、心の奥に、
あの頃の談笑が、ふと、よみがえることがある。
なごやかで、そして、どこかさみしい──
まるで、遠い夢のなかの出来事のように。


悔いという名の小石を、
ポケットに忍ばせながら、
わたしは、凍てついた荒野のような日々を、
ひとり、歩いている。


そして、ふと立ち止まり、
あの光景に、そっと、まなざしを落とす。
それは、もう戻らぬもの、
もう届かぬものへの、
終わらぬ葬送だった。



#自由詩 #断章形式
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『透きとおるものの記憶』

あの せせらぎのなかに
わたしは まだ あなたの声を聴いてゐた

それは 風のかたちをして
水面に そっと ふれては消える

 
風は あらたな風と
かさなりあふことを 知つてゐた

わたしが わたしになるまへ
はじまりへと 舞いおちた
ひとひらの 時間

 
あれは かげろうではなく
たしかにあつた 想い出の交差

ふたつの影が すれちがふとき
ひとつには ぬくもりが残り
もうひとつには 忘却が
やさしく 降りる

 
影なきものを ひとは追ふ
透きとほるものを 抱きしめようとする

それが 夢であつても
それが 終はりの朝に
ふとよぎる 水の音であつても

 
──そして わたしは 思ふ

わたしは あなたのなかにゐた
あなたは わたしのなかにゐた

それは いまも 耳の奥で
しずかに 息づきながら
流れつづけてゐる


#自由詩 #抒情詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『音なき舞台』


かつて
ひとつの風が 舞台に立った

比類なき疾風が 空を舞うとき
あらゆる旋律が 響きをあげた

天翔ける 風は
ある日──
空から消えた

なんの前触れもなく
ひとつの響きが──

深みへと 沈んだ

誰の目にも映らず
誰の耳にも届かず

その響きは
沈黙の器となり
忘却の水底に 沈んだ

記憶の切れ端を
ひそかに湛えながら

光の届かぬ層を
ひとすじの旋律が
すべるように 通りすぎた

それは かつての風ではない
けれど 風の記憶を孕み
新たな風音を 奏でていた

そのとき
器の奥に残っていた 最後の音が
ふっと ほどけた

今もなお──

沈黙は 底にとどまりながら

かすかな鼓動を
胸に秘めていた

沈黙の風は
空駆けるものとは 成り得ない

───

あの記憶が
いつかの空で 
ふたたび疾風として響くことは
もう ないのだと
舞台は 照明を そっと落とした

沈黙は
もう 響くことなく 
夢の底で 眠りつづける


#自由詩 #創作
自作の詩の星自作の詩の星
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『輪郭のない声』


声にならない声が、
誰かの名を呼んでいた。

鏡の中の私は
まばたきもせず
こちらを見返さない。

その像は、
不在を映すために──
そこにある。

名を呼ばれた私は
振り返ることができず、
名を呼んだ私は
どこにもいなかった。

面影は
薄れ、
気配となった。

そして私は
ほどけた声のなかに
まだ何かを探していた。

私でない私──

それもまた、
誰にもなれなかった
私かもしれない。

それが
失われたままの
私だったとしても──


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『螺旋の書』


螺旋の書は 語らない
音もなく 回り続ける

私という物語の
始まりも
終わりも知らぬまま

 
指先に残る
誰かの手の ぬくもり

波紋のように 広がる記憶
石に刻まれた
暗黙の約束
 

私は 読む
誰かの夢みた 痕跡を

私は 綴る
私の まだ知らぬ言語で

 
ある章は 閉じられたまま
ある章は 書きかけのまま

ある章は
見知らぬ筆跡で
いつしか 塗り替えられてゆく

 
それでも 私は
この書を 抱いて生きる

語られぬままの 物語を
ひとつずつ
呼吸のたびに 辿りながら

 
螺旋の書は 語らない
それでも 私は

その太古の うねりに
私という存在を 聴きとる


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『呼び声のない街にて』


手を伸ばせば
届くはずのものを

わたしは いつからか
忘れていた
 

知っていた
それが そこにあることを

ただ 見ないふりをして
わたしは
わたしから
遠ざかっていた
 

誰にも届かぬ
声をあげながらも

わたしは いつしか
声を 失っていった
 

忘却は やさしい──

夢のような 仮面をかぶって
わたしを
誰かの残像に変えて

朝の光を
素通りさせていた

 
呼びかける人のいなくなった
この世界で

わたしは ふと
いつかの 自分の声を 聴いた

 
それは
霧の奥深くから
かすかに聴こえる

遠い 遠い
汽笛のようだった

 
わたしは 立ちどまり
その声のほうへ
歩きだした

そして
街灯さえない 路地裏で

わたしは
わたしに
還っていった
 

手を伸ばせば
届いたはずのもの──

この掌に
もう一度
 
もう
失わぬように


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『白き舟(最後の夢)』

 
ひとつ 呼吸が ほどけて
胸の 灯火が
静かに 海へと沈む
 
まだ 光は 消えていない
まぶたの裏で
かすかに 揺れ
 

遠い 記憶の 岸辺から
白い舟が 音もなく
近づいてくる
 
声は もう 届かない
 
けれど
風に ほどけた
涙のぬくもりが
 
まだ名のない 名を
そっと しかし
強く 抱きしめていた
 
そのとき わたしは 気づいた
 
あの声は
母の声だった
 
忘れていた 
やわらかな音
わたしを 
この世に呼び出した
最初の 祈り
 
かつて わたしが
はじめて 息をしたとき
母は 泣いていた
 
その涙のぬくもりが
いま わたしの頬を 伝っている
 
それは 
わたしの涙だった
けれど たしかに
あのときの 母の涙でもあった
 
ふたつの涙が 重なり
ひとつの 祈りになった
 
わたしは
わたしを 離れながら
なお この身に
とどまっていた
 
輪郭は
水に映る
星のかけらのように ほどけ
 
世界は
やわらかな 闇に
包まれていく
 
それは 終わりではなく
ただ 還ることだった
 
はじまりよりも
さらに古い
 
夜の根にある
ひかりのほうへ
 
白き舟に 身をあずけ
 
名もなき川を
わたってゆく
 

#自由詩 #抒情詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『せめて、忘れぬように──』

  《回想録》 〜彼女と私との日々〜



あの夏の日から、
風の音がどこか遠くなった気がする。
午後の光のなかで、ふと縁側に腰をおろすと、白いカーテンがふくらみ、肩を撫でてゆく。
そのたびに、私は目を細めて、
あの日の彼女を思い出す。



たしか、
あのときもこんな風だった。
彼女はひとり、縁側に座っていた。
風がカーテンを揺らし、
それが肩にふれるたび、
彼女は遠くを見つめていた。
「……いつかと、同じ匂いがする──」
そうつぶやいたあと、言葉は続かなかった。
記憶は、思い出そうとするほどに、
夢のなかで読んだ、雨に濡れた手紙のように、言葉はにじんでいった。

 

私はそっと、彼女の隣に座った。
風の音だけが、ふたりのあいだにあった。
それは、
もう戻らない時間だった。
あの午後の光も、あの声の調子も。
失われたものは、綴られることなく、
ただ、胸の奥で、風のように鳴っていた。

 

彼女は、ふと笑って言った。
「ねえ、あのとき──私たち、何を話していたのかな…」
私は答えられなかった。
言葉は、もうそこにはなかった。
ただ、静寂だけが、やさしく私たちを包んでいた。

 

いま、私は立ち止まっている。
なぞるのではなく、喪失のなかに、
ひとつの祈りを置くために。
もう戻らぬものたちのために。

 

そして、
彼女が見つめていた、
あの遠い景色を思いながら、
私はそっと目を閉じる。
風のなかに、かすかに残る
あのときの気配の名残を、
せめて、忘れぬように──



#自由詩 #断章形式
自作の詩の星自作の詩の星
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『鏡の森』



気づけば、
私は 森の中にいた。

いつから そこにいたのかは
思い出せない。

ただ、
森は 私の名を 知っていた。



風が吹くたび、
音もなく 葉が揺れ、

私の輪郭も また 揺れていた。

いくつもの私が、
枝の間を 漂っていた。



ひとつの貌が
私を 見ていた。

けれどそれは、
私の知らない 私の顔だった。

光のせいだと 思った。
森の構造が 歪んでいるのだと。

そうでなければ、
私の感覚が 壊れてしまう。



けれど、
どこへ行っても
その貌は 私を 見つめていた。

声にならない
まなざしのように。



空気に 波紋が 広がる。

声ではないが、
胸の奥に 届くものが あった。

見えないものは、
見ないふりをしても 消えない。

ただ、
かたちを変えて
静かに 沈んでゆく。



私は 立ちどまり、
目を 閉じた。

風がやみ、
森は しずかに なった。

一枚の葉が
音もなく 落ちた。

それは、
私のなかで 眠っていた
記憶の ひとかけらだった。



そして私は、
また 歩きはじめた。

夢から さめるように
あるいは 夢へ もどるように。

森の奥へ、
私の知らない 私に 向かって。


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『存在のまえぶれ』

夜の名残が
空の端に
かすかにとどまっていたころ
わたしは
目を覚ました

窓辺に立つと
冷たい空気が
頬を撫でていった

あの朝の光が
遠い記憶のように
わたしの肩に
そっと触れてきた

それは
世界がまだ
名を持たなかったころの
やわらかな光

わたしは
何かを待っているようで
何も待ってはいなかった

ただ空が
わたしのまなざしのなかで
ゆっくりと
かたちを結びはじめるのを
見ていた

そのとき
ふと思った

あの光は
わたしのなかに残っていた
最後の
存在のまえぶれだったのではないかと

それが
わたしの皮膚に触れたとき
世界はわたしを
静かに
忘れていったのだと


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『夢の岸辺にて』


それは、霧の残る朝だった。
湖畔の小道を、
彼女はひとり歩いていた。

彼女は、
いつも夢の向こうを見つめる人だった。

けれど、
あの朝のまなざしは、
どこか翳っていた。

それは、
夢に疲れた人の目だった。

それでも彼女は、
歩みを止めなかった。

岸辺に咲く、
名も知らぬ白い花のほうへ。

私は、
その場に立ち尽くしていた。

風が頬をかすめ、
水面がかすかに揺れていた。

その瞬間、
時間がわずかに軋んだ。

遠くで誰かが名を呼んだ気がして、
私は思わず振り返った。

けれど、
そこには誰もいなかった。

声は、
過去から漏れ出したものだったのか。

それとも、
私のなかでまだ終わらぬ夢が、
ひとりごとのように響いたのか。

夢は、
摘めば香りを失い、
摘まねば風に消える。

彼女は、
それを知っていたのだろうか。

あるいは、
知っていて、なお手を伸ばしたのかもしれない。


私は、

彼女の夢にはなれなかった。


けれど、
彼女の夢が咲いていた場所を、
私は今も覚えている。

その岸辺に立つたび、
私はそっと目を閉じる。

摘まれなかった花の香りが、
まだ風のなかに、
かすかに残っているような気がして──。


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『誰もいない部屋』


開かれた 扉の向こうで
遠い声が 歌った。

けれど そこには
誰の気配も なかった。

記憶の背を
なぞるような 足音が

ふと 床をすり抜けて
風の奥に 消えていった。


見知らぬ気配に ふれるたび──

あなたの輪郭は
かすかに 揺らいだ。

崩れかけた輪郭を
縫いとめるように

あなたは そっと
遠ざかった。

それは
祈りのようだった。

その奥には
言葉にならない
焦がれが あった。


──誰もいないはずの部屋。


けれど

見えないまま
遠い記憶のように

風のあとさきが
そこにいた。


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『そばにいて──
(わたしを 見捨てるまえに)』



わたしは
あなたのまなざしの中で
ほのかに かたちを結ぶ


あなたの視線の綻びが
わたしを──

霧のなかへと
ほどいていく


乾いた掌を
ひらいたまま

沈黙の中で
名を呼ばれるのを
待っていた


けれど 本当は
ただ そばにいてほしかっただけ

忘れられるのが
こわかった


その願いを
ためいきに 沈めたまま

わたしは
わたしを
見捨てていた


夜は
わたしの声を
凍らせたまま

明けることを
忘れていた──


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『星の歌声』


夜の天井が 静かに ひらいたとき
私は まだ まどろみの 岸にいた

星々の旋律が 夜空から こぼれ落ちていた

それは 昔 私が 忘れた
ひとつの 物語のようでもあり
ただ 時のように 流れてゆく気配でもあった

私は うつむきながら
その旋律を 掌に受けとめた

そこに 言葉は なかった
けれど 言葉よりも 深く
私の中を 満たしていった

心の かけらに
灯が かすかに ともった

そして 私は まだ
目覚めの ほとりに 触れていた



#自由詩

自作の詩の星自作の詩の星
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『彗星の軌道』

孤独は 選んだものではなかった
けれど 静けさは 私を包んだ

ひとり 呼吸をととのえている
触れられずに ただ 壊れぬように

想いは 軌道を外れた彗星のよう

見つめられても ふれることはできず
それでも私は その光の軌跡を
胸の奥に ひそかに記している

祈りも ため息も 風のように
私の輪郭を すりぬけてゆく
記されず 呼ばれることもなく
私は ここに 咲かずに在る

箱庭の奥に 光の届かぬ
忘れられた花として いまも


#自由詩
自作の詩の星自作の詩の星
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『斜行のなかで』


午後の街角で
濡れた舗道に
誰かの影が 過去の影をなぞっていた
それは 誰かのうしろ姿
あるいは 過去の亡霊


風が吹いていた
「どこにでも 風はある」
そんな声が どこかで 途切れた
けれど 風は もう この瓦礫のあいだで
沈黙のなかに 息をひそめている


ひび割れた鏡のなかで
光が ゆるやかに かたちを失っていく
上へ 下へ
螺旋の記憶を ゆっくりと 沈んでいくように


掌に 紙片の匂いがのこっている
それは 古い手紙の 乾いた匂い
記憶の端で 皮膚が 紙片のように 剥がれいく


そして 声が 交差せずに すれ違っていく
まるで 別々の夢を
同じ夜に 見ているように



夜の底で
誰かが くすくすと笑った
それは 言葉のぬけがらか
古い貨幣が どこかで ころがる音か



この都市は いま
呼び名を持たぬ 境界のうえに 浮かんでいる
昼も夜も 交わらず
風も 声も とどかない

ただ 影だけが
永遠の午後を 歩いている


#自由詩


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daisuke107

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『ふたつの月のしたで』


夜の椅子に 誰かが凭れてゐる
それは 私の影に似てゐて
静かに 別の夜を 呼吸してゐる

街燈は
濡れた石畳に 沈み
遠ざかる靴音だけが
記憶の底で かすかに 鳴る


(あれは 私のなかの 誰だったのだらう──)


胸の奥に 罅の入った硝子があり
そこに 言葉になるまへの沈黙が 澱んでゐる

浮かびかけては ほどける声たちが
水の皮膚に かすかに触れて 消えてゆく

私は 私に 触れようとして
凍えた手を
もう一方の手が
そっと 拒んでゐるのを 見つめてゐた

夢のなかでは いつも
ふたつの月が 空に浮かび
ひとつは 私の影を 照らし
ひとつは 私の眠りを 静かに 見下ろしてゐる


#自由詩
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『風のあとに残るもの』




春の終わりの午後だった。
白い花が、風にゆれていた。
その小径のほとりで、私はふと立ちどまった。
ほどけぬままの記憶が、胸の奥で音もなく揺れていた。




ひとつは、やわらかな風の記憶。
もうひとつは、その風に背を向けた日のこと。
どちらも、私のなかにあり、
どちらも、名を呼ぶ前に、風のように過ぎていった。




水面に映る空は、ほんとうの空よりも澄んでいた。
私は、その澄んだ像に支えられていた。
それが、ほんとうでないと知りながらも。




陽が傾きはじめると、
その澄んだものも、ゆらぎはじめる。
私はまた、ひとつの椅子に、ふたつの影を見る。




ひとつは、私の影。
もうひとつは、
かつて私だったものの、淡い余韻だった。


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『紙片の部屋』



その部屋には、
いつも薄い光が射していた。

午後の終わりのような光であり、
夢の名残のようでもあった。

彼は、
その光の中で、
何かを見つめていた。

声を持たぬまなざしが、
沈黙のかたちをなぞるように、
そこに在りつづけていた。




壁には、
古びた紙片がいくつも貼られていた。

それらは、
風化した記憶の皮膜のように見えた。

夜になると、
一枚ずつ剥がれ落ちて、
音もなく
床に降り積もっていった。

まるで、彼の時間が
静かに崩れてゆく音だった。




「そんなものに、なぜ……」

誰かが、あるいは風が、
そうつぶやいた。

けれど、彼は答えなかった。

ただ、
口元に
ひとつの歪みが浮かんだ。

それは笑みではなく、
否定の届かぬ場所に
漂う
嘲りの残響だった。




彼は、
古びた紙片に囚われていた。

だが、
そこに温もりはなかった。

その執着は、
夜の底にかすかに浮かぶ漁火ではなく、
沈まぬための錨だった。




わたしは、
いつもあの部屋を
遠くから見ていた。

灯りが揺れるたび、
彼の輪郭が
この世界から
少しずつ剥がれていくのを、

黙って見つめていた。

それが、
彼の選んだ
孤独だった。

わたしは、
ただそれを
見送るしかなかった。


#自由詩 #自己同一性
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『未明の儀式』


ひとつの名が 静かに消える
夜に棲むものたちに 気づかれぬように

今の私は 灰のように崩れ
言葉たちは 風に埋もれていく

私は 何度も生まれ変わる

出会いと 別離のあいだで
短き過去を 脱ぎ捨てるたびに
我知らず 存在が霞んでいく

過ぎし私を
朝露のなかへ そっと溶かす

それでも 私は ここを選ぶ
その矛盾のなかで
私は 新しい名を選ぶ

静寂は
夜明け前の雪のよう

無垢にして 孤独
──それでも 満ちている
やがてまた
名づけられぬ気配に 耳を澄ませはじめる

逃避ではない──

それは 自己という檻を壊す儀式

「わたしは まだ名づけられていない」

そう信じながら 
私は 名もなく 影のまま 再び消えていく



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『時相(ときあい)』

ひとつの裂け目が
無名の濃度に 微光を孕ませるとき
名指されぬものが 静けさのなかで芽吹く

それは
砂の時計でもなく
心の鼓動でもなく
ただ
移ろいの影が 新たな影を抱くこと

水底に沈んだ夢は 輪郭を持たず
不在のなかに 在るものがある
わたしたちは 名を与えられた「いま」に
無限の反響を そこに聴く

ある人は言う
それは呼吸の間にある
また別の声が囁く
それは知覚の裂け目にすぎぬ

けれど わたしのなかの
消えゆく音の 残響の襞に
名づけえぬものが ひそやかにゐる


ああ あなたの声が 遠ざかる───




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『時間ノ詩 』

Ⅰ 鐘の音

夜の底で、古い時計塔が、静かに軋む骨のような音を漏らす。
誰も気づかぬほどの微かな響きだが、それは確かに、
わたしの耳の奥で震えていた。

遠い記憶のように、
あるいは忘れられた夢の残響のように、
その鐘の音は、わたしの内側で微かに鳴りつづけている。


Ⅱ 影

時間とは何か。

煤けた街燈の下、
うつむいて佇む影のようなものだ。

誰もその姿を見たことはないのに、
いつもわたしの背後で、そっと息をしている。

気配だけが、風のようにまとわりつき、
わたしの歩みに寄り添ってくる。


Ⅲ 尾を曳くもの

あるいは、時間は首輪のない犬かもしれない。

わたしの足跡を嗅ぎまわり、
過ぎ去った日々の匂いを確かめる。

そして、何かを思い出したように
尾を曳くようにして、未来の闇へと消えてゆく。

呼び止めることも、撫でることもできない。
ただ、その背中を見送るしかないのだ。


Ⅳ 懐中時計

わたしは、壊れかけた懐中時計を胸の奥にしまい込む。

それはもう時を刻まない。
けれど、わたしの中でだけ、かすかに鼓動している。

誰にも見せることのないその小さな震えを抱いて、
わたしはただひとり、沈黙の階段を降りてゆく。


Ⅴ 夢の階(きざはし)

どこへ向かうのかも知らぬまま、
夢の底へと、音もなく沈んでゆく。



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#16性格診断 が当たりすぎて怖い😂 私のタイプは #INFJ 、一番相性が良い人は #ENFP ・・・みんなはどの性格タイプか教えて!
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