


桐夜。
「これは病弱なエルフ。ちょっと唆しただけで、精神も身体も私のモノ。色の悪い瞳と脚と不揃いな耳は、美しくないから捨てちゃった」
エルフが口にした。
「これは氷の精。粉雪のような白い髪は、今のブロンドよりも更に美しい」
妖精の背が語った。
「これはバケグモ。私に相応しい服を作るにあたって、相応に美しく丈夫な糸が必要だもの」
蜘蛛の巣が編み出した。
「これはドラゴン。あの深紅の袋をいくつか縫い付ければ、まるでバルーンスカートドレスのよう」
竜の伊吹が吐き出した。
「これはリヴァイアサン。用があるのはその鰭条だけれど、鰭ごともらっちゃった。だって、後から切り分けた方が楽だもの」
虹色の鰭が指し示した。
「これはコウモリ。指の代わりに鰭条をくっつければ、まるでマーメイドスカートのよう。私に相応しい脚が見つかった後は、フィッシュテールの形にリメイクしちゃいましょう」
超音波が教えた。
「これは大クラゲ。このみずみずしい光沢感を加えれば、今のドレスは更に美しくなる」
月の欠片が告げた。
「これはペガサス。純白の羽をデコルテの装飾に使えば、このドレスは更に私に似合うものになる」
風切り音が耳打ちした。
「これはユニコーン。色も形も美しい角は、そのまま髪留めに使いましょう。これで美しい髪型にすれば、私は更に美しくなれる」
「美しい、けれどまだまだ足りないわ。美しい瞳と、耳と、脚と、アクセサリー。それらがあれば、私はもっともっと美しくなれる。あぁ、次は何処から貰おうかしら」
美に取り憑かれた、幽霊だったモノが笑った。

桐夜。
義務感のままにコンクリートを貪り
殻と皮を洗い糸が切れれば
娯楽を嗜む力もないまま
明日またなめくじになるのを
ぼんやり待ち続ける
ジストマに連れてかれる日まで

骸鳥(工作員)
野良大工がウチの庭に営巣していた
野良の割に腕は確かなようで
実に見事な土壁 入母屋造りの巣を拵え
産卵に備えて奥の座敷に鎮座している
これだけ見事な巣ならば
うまく追い出して空になった巣を売れば
そこそこの高値で売れるはずだが
夜になると寂しそうな声で鳴くので
そのままにしておいた
3週間ほど経った頃
明け方にホウホウと声がするので覗いてみると
床の間にはまだ金槌も鋸も生えていない雛大工が4匹ばかり身を寄せ合って鳴いていた
親大工はエサを求めて出稼ぎにでも出ているようだ
オレは雛大工たちを脅かさないように気をつけながら
死んだ叔父さんの形見の墨壺を
勝手口の上り框にそっと置いた
年代物だが
丁寧に細工の施された高価な墨壺だ
オレが持っているよりずっといいはずだ
親大工はびっくりするだろうか?
きっと喜んでくれるに違いない

タービン弾(マコト)
お天道様は存在しないことの証明となります。
私は中々の逸材なので嫌な人は躊躇わず切って欲しいです。
テストが中々上手にできなくてむかつきます、これだから宇宙はダメなのです。
ワードサラダという言葉は大好きですが逸文を書くのは苦手で租と庸と調を支払うことが難しいです。
生憎脳みそには螺子を嵌め込む穴なんてない、正真正銘の無秩序です。
傍観者でいる私をを地主さんはお許しください。

骸鳥(工作員)
朝食には甘い卵焼きを
昼食には鮮烈な酸味のサラダを
夕食には控えめな塩味の魚を
寝る前にはチーズをひと欠片食べたから寝るよ
夢で濃いコーヒーを飲んで目覚めよう
輝いている夜明け前はもう夏ですか?
花びら千切って祈るのが恋ですか?
犬神憑きを治したいですか?
テーブルの上の球体関節人形が
あり得ないポーズでこっちを向いて
直視する事を避けてきた現実を
目の無い顔で見透かしてくる
押し入れの奥に隠してある
小学生の頃の絵日記に
無邪気ゆえに書いてしまった
■☆※○⤵の秘密を思い出してしまったから
ぼかぁ、いつものように騒がしく寝るよ

骸鳥(工作員)
閉じた瞼の裏側に
赤や緑や紫の
羽虫のような毛のような
得体のしれないモノがいて
閉じた瞼の裏側で
目玉をそちらに向けるけど
ピチピチ跳ねるソイツらに
なぜか視点が定まらぬ
何度やっても無駄だから
瞼の裏のもう一つ
奥の奥まで深い場所
決して閉じてはならぬ物
『次の瞼』を閉じました

骸鳥(工作員)
やさしい歌の歌詞を
歌を聴かずにただ読んでいたら
意地悪な小人が耳元でずっと
『騙された騙された』と囁いて
嘘っぱちの世界に嫌気がさしたから寝るよ
どうせならやさしい嘘を
誰かいい人できましたか?
恋をしていれば罪は無いのですか?
ニューヨークは粉雪の中ですか?
爪先が冷たくて眠れない時は
なるべく丸い石を額に当てて
『丸い物の喜びです 硬い物の喜びです』
と三回唱えるといい
ヌスリとトケレの鳴き声は
時々人間の言葉になるけれど
□★○※←という言葉を聞くと
遠くの街のだれかが不安になるから
ぼかぁ、いつものように騒がしく寝るよ

骸鳥(工作員)
地面を青く撫でた
トカゲの草を愛でるように
段ボールの憂いを投げつけてくる空き瓶は
丸く微笑んだ命の袋だ
星模様の母は
今日も慈愛の端くれで電気を殴る

骸鳥(工作員)
今朝のことだ
乳酸菌
という言葉の意味が急にわからなくなって
今日は一日中『乳酸菌…乳酸菌…』
とブツブツ呟いていた
乳酸菌には羽根がはえていたかもしれない
乳酸菌と約束を交わしたような気がする
乳酸菌で恋人と待ち合わせたはずだ
乳酸菌を失くして困りはてた記憶がある
乳酸菌の痛みは二度とごめんだ
乳酸菌の角を曲がって…
乳酸菌より時計の方が…
乳酸菌はもしかすると…
乳酸菌だとしたら…
乳酸菌からの…
乳酸菌へ…
乳酸菌…
乳酸菌…
そうだ 明日は海を見に行こう

骸鳥(工作員)
ツバメの雛は巣で鳴いている
半径300mの範囲内に漂う冷めた空気を感知したからだ
キュイキュイキュイキュイキュイキュイ…
アタッシュケースから
組み立て式の日時計を取り出し
角のポストに入れられた遺骨を呼ぶ
フゥゥゥゥゥ厶…
あれを見るがいい
寄る辺なき魂とオーケストラ指揮者の宴だ
騒がしいだろう?
ジキキジキキジキキジキキジキキ…
もうすぐ消えるよ
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