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臼井優
各怨霊の概要
菅原道真(菅原道真): 政治的陰謀で太宰府に左遷され、無念の死を遂げた学問の神様。雷(天神)として恐れられ、天満宮に祀られています。
平将門(平将門): 関東で反乱を起こした武士。首塚(将門塚)が有名で、除災厄除の神として神田明神などに祀られます。
崇徳天皇(崇徳天皇): 保元の乱で敗れ、讃岐(香川県)で無念の死を遂げた天皇。白峯神宮などで祀られ、厄除け・縁切りの神ともされます。
共通する特徴
非業の死: いずれも無念や恨みを抱えたまま亡くなった。
祟り: 亡後、朝廷や世の中に災い(雷、飢饉、疫病など)をもたらしたとされる。
神格化: 鎮めるため、またはその力にあやかる形で、神社に神として祀られるようになった(天満宮、将門塚、白峯神宮など)。
この3人は、日本の歴史や信仰の中で、恐ろしい怨霊から守護神へと変化していった興味深い存在として語り継がれています。

天月 兎
最終話 後編
ルーヴェリアの胸元に手を当て、その心臓目掛けて魔力を流し込み、内側で破裂させる。
次撃を放とうと振り上げられたルーヴェリアの剣先が、空を見上げたままぴたりと止まった。
魔術が解け、暗闇に染まっていた視界が戻ると、そこにはなんとも人間らしい表情を浮かべた魔族が居た。
今にも泣き出しそうな、悲しそうな、寂しそうな、それでいて口角は少しだけ上がっている。
どうしてそんな顔をするのか分からなかった。
ルーヴェリア「あ…」
手から力が抜けて、剣が滑り落ちていく。
足に力が入らなくなって、膝から崩れ落ちていく。
口から赤黒い液体を零しながら倒れ伏すルーヴェリアに、魔王は背を向けて歩き出そうとした。
ルーヴェリア(まだ…)
その足首を、渾身の力で掴む。
魔王すらどこにそんな力があるのかと目を瞠るほどに強い力だ。
ルーヴェリア(まだ…殺せていない…)
もう片方の手が血に塗れたイレディアの服の裾を掴んだ。
這い上がるように、更に手を伸ばし、魔王の腕を掴……。
ルーヴェリアの首が斬り落とされる。
動力源を失った腕は力尽き、今度こそ地に臥した。
ああ…守れなかった。
魔女が魔王に駆け寄っていく光景を最期に、視覚も聴覚も失われた。
ある日、行軍の途中で拾ったチョーカー。
地面には「私の生きた証」と書かれていた。
コルセリカ団長、ごめんなさい。
ある日、援軍に駆けつけたが間に合わず壊滅した自陣の中でブレスレットを拾った。
ソーリャ、ごめんね。
ある日、防衛戦を前にしてペンダントを渡された。
「俺の分まで、俺の愛した人が愛した国を守ってくれ」
マルス団長、ごめんなさい。
ある日、帰還途中で見慣れたヘルムを拾った。
前を向けと叱咤してくれた人のものだった。
ディゼン団長、ごめんなさい。
ある日、異国の少年は自らを犠牲にして奪還戦を勝利に導いた。
彼の生きた国に基づき、ブーツを脱がせてから葬儀をした。
ナギ、ごめんなさい。
ある日、背中を預けて戦った少女が愛用していたガントレットを託された。
「兄貴がやらかしたら、これでぶん殴ってください」
クワイア、ごめんなさい。
ある日、守るべきものを守り切って勇敢に死んでいった騎士を労った。
守りたいという意志を継ぐため、彼が身につけていた胸鎧を自分に合うよう調整してもらった。
テオ、ごめんなさい。
ある日、誕生日プレゼントに手袋を贈ってくれた人がいた。
自分の事情を知る人物の中で、唯一心を許した人。
クレスト、ごめんなさい。
ある日、愛した人が死んだ。
彼は何年も前に、凪いだ海を思わせる宝石のついたブローチをくれた。
殿下、ごめんなさい。
何一つ、誰一人、私は守れませんでした。
家族も、生まれ育った村も、忠誠を誓った国も、仲間も、何もかも。
命も時間も、全てを捧げたのに。
無力感と申し訳なさに打ちひしがれながら、サフラニア王国最後の騎士はその意識を闇に沈めた。
イレディア「逝った、か」
肩越しに目を閉じた騎士の首を顧みて、そっと息を吐く。
サーシャ「中々にしつこかったわね。貴女が手出し無用なんて命じなければ私がさっさと殺したのに」
冷めた目で同じものを見ながら、サーシャはふと違和感を感じてイレディアを見た。
血に染まった衣服、返り血だろうと思っていたが…。
サーシャ「貴女…傷……」
一番初め、死闘が始まる前に負ったイレディアの傷は癒えていない。
魔核があるなら、もう塞がっていてもおかしくはないのに、未だにどくどくと血を流している。
まさか、あの傷をずっと負ったまま戦っていたのか、この魔王は。
イレディア「………サーシャ、魔界に戻ったらあのクソ野郎に暫くの間統治を任せると伝えてくれ」
いや何を、何を言っている?
傷を治して自分で伝えればいい、人間界を支配するまでもう少しかかるからその間は任せる、と。
いや、イレディアにはもう魔力が残っていない。
サーシャが治癒の魔術を施そうとするのを、イレディアは止めた。
サーシャ「なんで!」
イレディア「これで…いいんだ…」
頽れるイレディアの体を支えながら叫ぶ。
サーシャ「どうして拒むの!治させてよ!あの剣に何か特殊な力でもあったの!?それなら私が時間を巻き戻すでも因果律を捻じ曲げるでもして治すわよ!どうして…!」
腕の中の魔王は力無く笑って答えた。
イレディア「このまま死なせてくれ…それがこの戦いの目的でもある……それにな、私は人間なんだ」
──は?
魔界を統治するに相応しい絶対的な力を持つ魔王。
七の種族の祖を従え、上層から下層までを統一した偉業を成した魔界の王。
それが、人間だった…?
そんなこと、今まで一度も口にしなかったではないか。
誰も。
それに、目的って。
サーシャ「冗談はやめてよ…自分が死ぬために戦ってきたってどういうこと…」
長い時間を一緒に過ごしてきたが、出会ってから今の今まで騙していたというのか。
怒りと困惑で声が震える。
イレディアは端的ではあるが、ちゃんと説明をしてくれた。
曰く、全ては魔界を変えるためだった。と。
自分は魔界の下層に攫われた奴隷の子供だった。
非業な行いを繰り返す魔族らに嫌悪感を抱き続けた末、その機会がやってきたから主人を殺して下層を飛び出し、当時は空席となっていた玉座を目指したのだそうだ。
事あるごとにゲートを開き、人間を攫っては奴隷として扱ってきた魔界。
魔王になり、奴隷商を違法なものと制定し、逆らうものは容赦無く切り捨て排除した。
それでも、長年に渡って染みついた慣習が削がれることは無かった。
ならば人間と魔族の接点を消してしまえばいいと考えたらしい。
魔族側がゲートを開くなら、ゲートを開く理由を潰せばいいと。
イレディア「…サーシャ。魔界に慰霊碑を建てろ…人間が魔王を殺したと、人間を讃える文を刻み、人間の持つ力の強さを奴らに思い知らせろ…そして伝えてくれ……この戦いの凄惨さを」
生きるものは皆、命を脅かす存在を忌避する。
人間も脅威になると知れば、そしてその脅威は魔王を討ち滅ぼす程のものと知れば、馬鹿な真似をする魔族は減り、最終的に人間界に魔族が現れることは無くなるだろう。
サーシャ「…そのために…私も…皆のことも…騙していたの…?」
イレディア「……いや、彼奴らには戦いを始める前に告げてあった。死んでもらうことになる、とな」
自分をかき抱くサーシャの顔がぼやけて見えなくなっていく。
そろそろ時間だ。
イレディア「身勝手なことだとは思ってる…だが、な…お前だってこれ以上、お前と同じようになる奴が増えるのは望まないだろう……?」
ああ、なんて狡いことを言うんだ。
サーシャ「それは、そうだけど、でも…私だって、私だって親友を……貴女を、失いたくないのに…」
イレディアは、とても残酷なことを口にした。
イレディア「お前しか…私の望みを託せる人が居ないんだ…頼む……ミュイール。私の願いを…望みを…背負ってくれ…」
サーシャ「…っ………」
かつての名前で呼ばれて、言葉を返せなくなった。
けれど、可能だ。
永遠の時を生きる自分なら、イレディアの抱いた魔界を変えたいという願いのために、悠久を彷徨いながらこの戦いを戒めの物語として語り継ぐことが。
サーシャ「…………わかったわ。おやすみなさい、イレディア」
イレディア「…すまない……そして、ありがとう」
その言葉を最期に、イレディアは息を引き取った。
魔女の琥珀色の双眸から、赤い涙が流れる。
悲しみのあまり、怒りのあまり、世界を呪うあまり。
まだ少しだけ温もりを感じる骸を抱いて、その熱が消え去り、冷え切るまで慟哭した。
涙は彼女の瞳を赤く、紅く、朱く、緋く染めていく。
夜が明けても、その泣き叫ぶ声が止むことは無かった。
とおい むかしの おはなしです。
まかいを おさめる 7にんのまものと
まおうさまが いました。
あるひ まおうさまは 7にんのまものと
にんげんを おそいにいきました。
つよいちからをもった まおうさまに
にんげんたちは たおされていきました。
7にんのまものたちも たおされていきました。
しかし まおうさまが つよいちからで
すべての くにを ほろぼしました。
それでも まおうさまに たちむかう
ゆうかんな ひとりの きしがいたのです。
きしは けっしてあきらめず なんども
まおうさまと けんを かわしました。
まおうさまは とてもつよくて
きしを たおしましたが
きしも まおうさまを たおしました。
にんげんは とてもつよい まおうさまを
たおしたのです。
だから にんげんを おそってはいけません。
おこった にんげんは とてもこわいから。
そうして まかいの さいかそうには
その れきしをきざんだ せきひが
たてられることになったのです。
眠りに就く前に、赤い瞳の魔女が読んでくれるおとぎばなし。
ベッドの上で少女は魔女に問う。
「ねえ、でも人間はこっちの世界にやってくるよ?もう私たちは、向こうに行ってないのに」
魔族の干渉が途絶えた後、人間界からは魔力というものが消えていった。
それ故魔術を扱える人間は減っていったのだ。
そうして長い月日を経ると、魔術を扱える人間は隔世遺伝でごく稀に生まれてくる程度になった。
そして彼ら、彼女らは、同じ人間から迫害を受けた。
後の世で魔女狩りと言われることとなる。
魔女は答えた。
「こちら側に来る人たちはね、向こう側にいる人たちに虐められたから逃げてきただけなの。だから、守ってあげないといけないのよ」
少女は無垢な眼差しで魔女を暫く見つめて、また問いかけた。
「じゃあ、向こう側にいる人間は悪い人間なの?」
魔女は少しだけ戸惑ってから頷いた。
「…ええ、そういうことになるわね……さあ、そろそろ眠りなさいな。いつまでも起きていると、また煩いのが来るわ」
少女はうんと頷いて布団を被り直すと、部屋の蝋燭を消しにいく魔女の背に声をかける。
「おやすみなさい、ミュイール」
「おやすみなさい」
時折考える。
あの騎士と魔王は、どちらが正しかったのか。
己の目的のために多くのものに犠牲を強いた魔王は正しかったのか。
ただ守りたいものを守るために多くのものを犠牲にした騎士は正しかったのか。
二人ともただ、守りたかっただけだ。
魔族も、人間も。
だからあの戦いは、どちらも正しくて、何一つ間違ってなどいなかった。
いつもこの答えに辿り着く。
人間と魔族の争いに終焉を贈りましょう。
永遠に生き、悠久を彷徨う不滅の魔女より。
荒れ果てた魔界の最下層。
瘴気の満ちる誰も寄りつかない場所に、寂しげに建つ石碑が一つ。
──魔王を討ち滅ぼした人間を讃えよ。
そこに花が添えられたことは、ただの一度も無い。
これまでも、これからも。
黒猫
偽善者的な事を言えば、何があっても人の命を奪う事は許されないとなるだろう
だけどね、あくまで個人的な意見だけどね、銃撃を受けた元首相は、問題のある宗教団体の関連団体にメッセージを送っていたという
政治家として、「李下に冠を正さず」が出来ていなかったと考えると、問題のある宗教団体と、完全に無関係は通らないと思う
自業自得の面もあるよ、多分だけどね
そーゆーところは裁判に影響しないけれどね
モリカケもそうだけれど、色々とグレーのまま逝ったって感じがして、同情も何もないってのが俺の感想
むしろ、グレーを抱えたままであっても、銃撃によって落命した事により、メディアの扱いは非業の死を遂げた政治家って扱いになった
良かったんじゃねーの?
きっと、数十年後の日本史に掲載されるときも、その扱いは変わらないだろう
やっぱ、良かったんじゃねーの?

あこ
ダン・シモンズ/著
ハヤカワ文庫
他人の思考と行動を操る「マインド・ヴァンパイア」達。
彼らの中に善人は皆無だ。
異常な嗜好により、戦時中の大量虐殺、収容所の悲劇、暗殺、サイコパスな猟奇殺人などに直接関わっている。
「マインド・ヴァンパイア」は普通の人の仮面を被っている。
彼らに目をつけられたら最期、必ず「死」が待っている。
この大いなる悪に立ち向かう主人公は、老いた精神科医ソール・ラスキ。
彼は強制収容所の生き残りだ。
そこで、『殺戮のチェスゲーム』の駒にされたが、逃げおおせた過去がある。
上中下巻を合計すると、1600ページを超える大作だが、ダンシモンズのストーリーテリングは見事で、最後まで飽きずに読んでいくことが出来る。モダンホラーとしても非常に良く出来ている。
精神/身体を支配するヴァンパイア達に対抗する手段は無く、ターゲットは朦朧とした意識のまま操られる。本作が言い様のない恐怖感を与えてくるのは、この「無力感」にある。
では、人間はマインド・ヴァンパイアのなされるがままの運命にあるのか。抗う者はいないのか。
ソール・ラスキ。彼には何一つ特殊能力はない。武器はただひとつ。理不尽な死をもたらす悪への煮え滾る怒りのみだ。
マインド・ヴァンパイア達は、年に一度孤島で人間を駒にして『殺戮のチェスゲーム』を開催する。ラスキはそこに潜り込み、彼らと対決していくーー。
ラスキはこれまでの闘いをサンプリングして研究を重ねていたが、結果的に非科学的ともいえる手段を用いて闘っていく。
地獄のような強制収容所を生き延びた者、数多の非業な死を眼にした者にしか為し得ない最終的対決の仕方。
そして、余りにも感動的なクライマックスに心を揺り動かされた。
終始希望を失わず、身を挺して闘う老いたヒーロー。
その姿を描きたいがために、シモンズは長大な物語を著したのだろう。
夢中で読んだ。


けんじ
創建の経緯: 平安時代、無実の罪で亡くなった崇道天皇(早良親王)の怨霊を鎮めるため、桓武天皇の勅願によって建てられました。
御霊信仰: 疫病や天災は怨霊の祟りと考えられていたため、怨霊をなだめる御霊会が度々行われ、疫病除けの霊社として信仰を集めました。
皇室の崇敬: 御所の守護神として皇室からの崇敬が厚く、神輿や御所車などが多数寄進されました。
応仁の乱の発端: 1467年(応仁元年)に畠山政長がこの地に陣を敷き、畠山義就と戦ったことが応仁の乱のきっかけとなりました。境内には「応仁の乱勃発地」の石碑が立っています。
ご利益: 非業の死を遂げた人々の御霊を鎮める神社であることから、「心鎮め」のご利益があるとされています。不安やストレスを鎮めるお守りが人気です。
本殿: 現在の本殿は、1733年(享保18年)に寄進された内裏賢所御殿の遺構を、1970年(昭和45年)に復元したものです。
清明心像: 1979年の国際児童年にあたり、生命の尊重と子どもの健やかな成長を祈願して建立されました。清く明るく直く正しい誠の心を育むという意味が込められています。









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臼井優
国立大学法学部卒 法律系国家資格3種保有 就職氷河期世代 元僧侶 趣味・特技 サッカー、バスケ、ボクシング、テコンドー、茶道、書道、華道、サックス、ドラム、読書、カフェ巡り、音楽鑑賞、ストレッチ、筋膜リリース、他人のデートコースを考えること 家庭教師、予備校講師、各大学でのエクステンション講座担当 担当科目・領域 小~高、文系科目全て、公務員試験全領域、面接、ES添削、マナー、論文添削等々
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