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天月 兎

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サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第三十三話 前編

最初は、壁を登って越えればいいと思っていた。
でも、乗り越えるにはあまりにも高すぎた。
空の遥か彼方まで伸びた壁は、城砦のそれよりもずっと堅固で、ずっと高かった。
だからその壁につけられるにはあまりにも小さすぎる門を通り抜けるしかなかった。
人一人が通れる程度の門だ。
けれど誰一人その門を通り抜けることは出来なかった。
その拳は全てを斬り伏せる剣であったから。
その拳は遍くを砕き伏せる槌であったから。
その拳は悉くを貫き伏せる槍であったから。
傍に転がる、自分達を殺すためだけに作られた鉄球なんて安物の包丁だ。
誰かが言った。
「あそこに行っても死ぬだけだ。迂回しよう」
けれどそんなこと、出来るわけが無かった。
あの壁は既に自分達を包囲していたから。
結局、鬼門に挑むしか道は無かった。
飛びかかる魔性の群れに拳が突き出されれば、巻き起こった風は衝撃波という刃となって他者を巻き込み、殺戮の限りを尽くしていった。
「くそ!後方援護はどうなってる!奴の動きを止めさせろ!」
群れをまとめていた者がそう言うと、側近が恐る恐る口を開く。
「あの壁が現れた際、巻き込まれて……」
全滅した、と。

ルーヴェリア達と別れ、王都から馬を飛ば…すより走った方が早かったので、クレストは文字通り走って戦線を見渡せる位置に到着した。
ヘルベ湖、ア・ヤ湖の合間を抜け、いまやもぬけの殻と化したカルシャ村から索敵魔術を行使する。
敵の進軍は発見された位置よりあまり動いていないように思えた。
陽動のための軍、そして平坦になったテフヌト族領を徒歩で進軍すると考えれば機動力はそこまで重視されなかったのだろう。
陣形は円、中心に少しばかり大きな魔力反応があることから、あれらを指揮している者は中心にいる。
だが進軍方向は前方であるが故、接敵した際を案じてか後方に支援魔術に優れた植魔と吸血鬼達を置いたらしい。
欠けてはいるが、まだ使い物になる程度の短剣を戦力として見ているあたり、魔王はそれなりに慈悲深いのかもしれない。
さて、敵の陣形等が分かれば後はやる事をやるだけだ。
クレスト「マルス団長のお力、少しばかりお借りしますぞ」
にっと笑った老騎士は、持ちうる魔力を大きく消耗させながら、敵から身を守るためではなく、敵を殺すための砦を文字通り顕現させた。
クレスト「空間把握、指定」
敵陣の後方を潰しながら、包囲できる位置に。
クレスト「存在固定、城砦概念付与」
敵がゲートを開いて逃げることも出来ないように、その存在を人間界に固定する。
そして大地に、堅牢な砦の意味を持たせた。
果てしなく高い壁、抜け出す余地など持たせない石造りの地下牢、生きながらえさせるのではなく、飼い殺すための牢獄。
出口は、自分が立つこの場所だけにして。
クレスト「建立せよ!否生の砦」
魔族らのいるヤ・クルヌ村付近の地面が大きく揺れた。
ただの地震だと思っていたが、すぐ真横に雷が落ちたのではないかと錯覚するような音が轟いたと思えば、地面が盛り上がり、高く聳える崖のように自分達を囲い込んでいた。
10万の軍勢を、囲い込んでいたのだ。
困惑した矢先、出口らしきところに人間が一人だけ立っていることに気が付いた。
その人間は肩に担いでいた鉄球を地面に転がして仁王立ちしている。
クレスト「人の言葉が通じるのならば、貴様ら魔族に教示しよう。私を倒すことだけが、この場所から抜け出す唯一の道だ」
相手はたった一人。
恐れるものなんて何もない。
1匹の魔獣が飛び出してその首に噛みつこうとした瞬間。
その魔獣は頭部から全身が弾けた。
弾けた後に、パン!という乾いた音が聞こえてくる。
自分達なら飛んで抜け出せるだろうと考えた吸血鬼が空を目指すが、どこまで飛んでも壁は目の前から途切れることはなく。
囲われているために迂回するという道も塞がれ、何故かゲートも開けない。
動揺した魔族の群れがとった行動は、一斉突撃だった。
拳が剣撃となって同胞を八つに斬り裂く。
拳が鉄槌となって仲間を千々に粉砕する。
拳が真槍となって味方を無数に刺し貫く。
たかが人間一人の繰り出す拳に、10万が圧倒されていった。
その数を半分以下に減らすことに、何分かかっただろう。
人間が到達するべきではない境地にまで磨き上げられた一撃は、ただ一度繰り出されるだけで数百、数千を虐殺した。
そうして一度退却できるところまで退却し、後方部隊は既に全滅していることを聞かされたのだ。
どうしろというのか。
武に人生を捧げて人間を辞めた悪魔のような輩相手に、自分達はなす術もなく殺される他に道はないのか。
焦燥感と屈辱に身を震わせる将に、聴き慣れた声が響いた。
それは魔界に住む者なら誰もが頭を垂れ、地に伏し、姿を見ることすら許されないような高みに座す方の声だ。
『諦念は死後に噛み締めよ。彼奴は魔力で身体能力を上げているだけに過ぎない。お前達はゲートを通れぬが、送る方は別であろう。彼奴の魔力が尽きるまで、百千萬の兵を送り続けよう。恨み言は冥土に辿り着いた彼奴の魂にでも吐いてやれ』
ああ、我が王よ。
そのお力を我らの勝利の為に振るわれるのか。
あの悪魔が倒れれば、我らが死せどもそれは勝利となるのですね。
なんと非情かつ合理的で、しかし存分に奮い立たされる言葉なのだろう。
今やこの身は焦燥感や屈辱などという小さなものに震えてなどいない。
目の前にある死という運命に武者震いしているのだ。
否、狂ってしまっただけなのかもしれないが。
そうして正気を失ったように、魔族の群れはクレストへと襲いかかった。
上空にゲートが開き、無数の魔物達が牢獄へと放り込まれる。
表すならば波。幾重にも連なり呑み込まんとする荒波のようだと人は言うだろう。
しかしクレストからしてみれば、雑魚が鯨の口に自ら飛び込むようなものでしかなかった。
群れを率いていたものでさえ、少しばかり珍しい餌に過ぎないような存在。
荒波を拳一つで堰き止めてしまった。
どれだけ高い波であろうと、どれだけ強い衝撃であろうと、その拳は全てを屍へと変貌させ、死を撒き散らして山へと変えてしまう。

イレディア「あの小童が、ここまで強くなろうとはな」
目的を果たした魔王が鏡を通してその光景を見、感嘆の言葉を漏らす。
対して横に立つ魔女は不愉快極まりなさそうな顔をしていた。
サーシャ「目的は終えたのだから、これ以上仲間を殺す必要はないんじゃないの」
鋭い声に動じることもなく、魔王は首を横に振る。
イレディア「いや、あれが死ぬまで送り続けるさ」
サーシャ「馬鹿じゃないの?死体が増えるだけでしょ。もうノクスだって死んでるのに、意味ないじゃない。なんなら私が出て殺しに行ってもいいのよ」
間髪入れず、すぐにでも殺しに行きそうな魔女を魔王は制止した。
イレディア「それでは意味がない、サーシャ。魔術は封じろ。手出しはするな」
硬い沈黙が両者に流れる間にも、魔族の血は絶えず流れ続けている。
もはや山となった死体が流れを相殺して勢いすら殺されていた。
クレストの体は敵が視界から消え去るまで延々と繰り出され続ける。
決して折れない剣、その破壊力は言うまでもない。
さて、送り出した仲間の数はいくつだったか。
とうに百万は超えているはずだが、老騎士に疲れは見えない。
時が夕刻を過ぎても、緩むことはなかった。
イレディアは一度ゲートを閉じる。
サーシャ「………どうするの、あの死体の山の後始末」
イレディア「…………とりあえず後で燃やしてやろう。あの砦は一度入れば死んでも魔界には戻れない場所だからな」
魔女の嘆息を最後に、会話は途切れた。

魔族がこれ以上出現せず、ゲートが閉じられたのを確認したクレストは、ふうと息を吐いた。
とん、という着地音を背後で聞いて振り返ると、鎧も服も破れて腹部が丸見えのルーヴェリアが立っていた。
クレスト「…師よ、私はどこに目をやれば良いのですかな?」
ルーヴェリア「こちらの台詞ですクレスト…その屍は10万どころの騒ぎではないように思えますが…」
クレストはとりあえず自分の持っていたマントを裂いてルーヴェリアの腹部に巻きながら答えた。
クレスト「マルス団長の城砦顕現を使わせていただいたところ、盗み見していた輩がゲートを開きましてな。数で押せば倒せると思ったようです。数十倍は破裂しましたかな」
流石の怪物と呼ばれたルーヴェリアも、これは青ざめものである。
ルーヴェリア「…拳で?」
クレスト「拳で」
末恐ろしい。怒らせないようにしよう。
心の中でうんうんと頷きつつ、ルーヴェリアも戦果を報告する。
ルーヴェリア「こちらはノクスとレイヴを、後、恐らく彼方側の切り札と呼べるような魔物……確か、ロストとか呼ばれていましたね。それらを討ち取ってきました」
クレスト「流石ですな」
マントを巻き終えたクレストは誇らしげに微笑んでいる。
こうしていると、昔を思い出す。
いつの日だったかはルーヴェリアの片腕が飛んでいたのをなんとか鎧で隠したり、潰れた目が周囲の人間の目に触れぬよう包帯を巻いてやったりと苦労したものだ。
下半身が丸々吹き飛んでいた時はどう誤魔化そうか頭を悩ませ、結果的に食糧を運ぶための籠に押し込めたこともあったか。
クレスト「…懐かしいですな」
ぽつりと呟くクレストに首を傾げながらもサフラニアの方面を見る。
じき夜になるが、何の伝令も飛んでこないということは、アドニスの戦線も好調なのだろう。
特に急ぐことはないと判断したクレストが、場に似つかわしくない言葉を吐いた。
クレスト「食事は摂られましたかな?」
ルーヴェリア「あ、そういえばまだでした」
砦の中で火を焚こうとし、しかし辺りは血塗れ。
乾いたものなんて見当たらず火種になるものがない。
どうしたものかと周囲を見渡していた時、ルーヴェリアのいた方から嫌な音が聞こえた。
こう、ガリガリと何かを噛むような……そう、咀嚼音だ。
クレスト「師い!?」
青ざめるクレストが見たのは、その辺に転がった何かの魔族の破片に齧り付くルーヴェリアだった。
ルーヴェリア「…この肉塊、恐らく元は吸血鬼ですね。血の味が濃い。こっちは割と筋肉質で……魔獣、ですかね?」
うむ、そのような方法で元が何の魔物だったかを当てないでいただきたい。
粉々になった魔物の肉塊で神経衰弱をしないでくだされ。
ではなく。
クレスト「せめて火を通してくだされっ!」
そも食用の魔族は出回らなくなって久しいうえ、その体に毒を宿している魔族だって存在するのだ。
不用心に口にして良いわけがない。
ルーヴェリア「確かに、火を通せばクレストも食べられますね」
あ、なんか嫌な予感がする。
クレストはすぐさま防御体制をとった。
刹那、砦内で見事な爆発音を起こしながらルーヴェリアの火炎魔術が"暴走"した。
クレスト「…元から荒野であるのに、更に焼け野原にして如何なさるおつもりで…」
やはり調理は苦手だ。
ほとんどの肉が炭になってしまった。
クレストが心労と頭痛で暫し俯いていることなど意にも介さず、ルーヴェリアはとりあえず炭を払えば食べられそうな肉片を見つけてクレストに差し出した。
ルーヴェリア「感触的に熊型の魔獣の肉です。火は間違いなく通っているので安心して食べられますよ」
そうではないのです師よ…加減というものを覚えてくだされ……何年生きていらっしゃるのか……。
クレスト「ははは…有り難く頂きましょう…」
ああ、ディゼン団長。
せめて貴方が我が師にお茶を淹れる程度の魔力に抑えられるよう鍛えてくだされば、今も残っていた自然が多かったでしょう…。
更に言えば、騎士団の厨房が爆発したり団長専用の個室が吹き飛んだりして国庫に大打撃を与え、当時の宰相が胃薬を毎日倍量飲むことも無かったでしょうな…。
苦くもあり、温かくもあり、そんな空気は魔術を通じて送り届けられた伝令の声に破られた。
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おりん

おりん

聡を補強して3連覇した事が全てであるようにオリさんの補強のポイントはいつも首脳陣

やれシーモアだけかとか高卒ドラフトがどーとか言ってる人多過ぎて盲目も大概にせえと嘆息

#bs2025 #オリックス
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pluton

pluton

コンストラクターとマニュファクチャー

和訳すると製造者の括り

本来なら構築者と製造者が適正かな

マクラーレンがロードカーを発表したときは驚いた。あ、MC12のときねゴードン・マレー設計のF1の時分はそれほどでなく

何が驚いたってエンジンまで製造するのか!という本気度。

原動機というヤツは難しい。作るのも動かすのもまして1千℃で燃焼しているガソリンのエネルギーを動力にするのは、電池自動車でもって産業を興隆させようと企図する勢力を見ても解る

で勝負に出たマクラーレン、最近知ったのだがエンジンの知財ごと日産のVRHを買ったのだそうだ

それを使ってMC12以降のターボエンジンを走らせているという、つまりはレーシングカーの世界でのコンストラクターなんだわな。メーカーと呼称してはいるが果たして製造者といえるのか?

本家の日産では載せているVRHはプレジデントやシーマの生産終了によって廃盤に、しかし僅かながら残っているというのは救いなのか嘆息なのか

FIAのGr.A〜Dの規制のなかでGr.Cというのが有名なル・マン24h耐久レースで永らく争われていた
市販のエンジンブロックを使い、エンジン形式で使用ガソリン量を決める面白いルール

これで日本人初の世界選手権の1戦で優勝者が誕生その名を星野一義という

マクラーレンのオーナーはン千人はいるけど、背景や性能を知悉して且つ、性能を引き出せるのは所謂ニュー・リッチとやらの中にどれほどいるのか?
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天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第二十五話

仄暗い雨粒が降り注ぐ中、数多の死霊達と第一騎士団が激しくぶつかり合った。
炎に焼き尽くされる死霊や食屍鬼達の悍ましい咆哮と、屍人達の鎧を突き破る強靭な牙に貫かれ、爪に裂かれて悲鳴をあげる騎士達の声が交わり合う。
アドニスは、己の兄だったものとその護衛騎士だったものを相手取っていた。
時々水を差しにくる雑魚共は、アドニスの剣に宿った炎の斬撃の残滓を浴びて息絶えていく。
兄だったものは他の屍人達とは違い、その鈍く光る剣を使ってアドニスを翻弄し、護衛騎士だったものがその隙を突いて両手剣を振り回してくる。
理性があるのか、ないのか。
ただ、呼びかけてもきっと無意味なのだろう。
だって彼らはもう、死んでいるのだから。
剣を交え、時に避け、退いては肉薄するを繰り返しながら、アドニスの脳裏にはかつての彼らの姿が蘇る。
第一王子、次期国王であった兄は外交のために国を空けていることが多かったが、帰ってきたら真っ先にアドニスの元へ来てくれた。
普段触れることのない品々。
物珍しい鉱石や、優しい香りを放つ香水、繊細な紋様の織物、今でも部屋に飾ってある。
いつも穏やかな笑みを浮かべていたヴィリディスは、鍛錬帰りのアドニスのボロボロの服を見て、ルーヴェリアに物申さんとしたのを慌てて止めた日もあった。
その傍に控えていた護衛騎士のケインは、ヴィリディスが公務でいない間、話し相手になってくれたこともある。
ルーヴェリアを鬼と呼び、その鍛錬の厳しさや冷酷さ、情け容赦のなさを語っては嘆息をついていたか。
今辛いと思っているなら、逃げてもいいとさえ言ってくれた人だ。
傍若無人な自由人のようでいて、誰よりもヴィリディスやアドニス達のことを気がけてくれていた。
そんな彼らが、今は。
今は敵であることに酷い憤りを覚える。
こんな姿になるまで戦ったのだろう。
こんな姿になるまで尽くしたのだろう。
それを、こんな。
アドニス「屍人に変えるなんて…!!」
一際強く放たれた剣閃が迫る2人の剣を同時に跳ね返した。大振りな動きをしていたせいでケインだったものに大きな隙が生まれる。
紅炎を纏っていた剣が青白い光の刃となってケインだったものの胸元を薙いだ。
斬撃を浴びせられたところから塵と化して風に溶けていく。
残るは1人、とその身を翻した時。
大きく吹き飛んだ騎士の体が視界の隅を掠めていった。
先ほどまでは存在すらしていなかった、巨大な人影。
恐らく食屍鬼の一種なのだろうが、なんと呼べばいいのか分からない。
それが腕を薙ぎ払ったがために、衝撃に耐えられず盾を構えた騎士はその盾ごと吹き飛んでいったのだ。
だが、アドニスもそれにかまけてはいられない。
呆気にとられている一瞬の間に、兄だったものの剣が迫る。
アドニス「くっ…!」
弾き返すためにありったけの力を込めて己の剣をぶち当てたが、剣の軌道が逸れない。
いつか、どこかで感じたような。
常軌を逸した身体強化。
そう、ルーヴェリアの剣に似ている。
戦場の音が遠のいた。
剣戟の音、兵士の声、魔物の叫び。
まるで耳を塞いだ時のように全ての音が遠く…遠く……ただ、迫る死の足音だけがはっきりと聞こえた。
兄だったものの剣先がアドニスの喉元から赤い筋を垂らす。
が、そこから先には突き刺してはこない。
アドニス「…………!」
焼けこげた屍人は、何かに抗うようにその腕を震わせ、必死に堪えているように見えた。
声はない。
ただ確かに、濁ったその目には"抗う"という意思があって。終わらせてくれという願いがあるように思えて。
アドニスは身を引いて喉元に突き刺さりかけた剣から逃れる。
アドニス「兄上……」
目に涙を溜めて、でも視界は滲ませない。
真っ直ぐに彼を見つめて、動きを止めているその首を豪焔で焼き切った。
刃が首を断つその瞬間、焔に包まれて尚微笑む兄の面影が、見えた気がした。
アドニス「魔導部隊!爆裂魔術広域展開!!」
悲しみに暮れている暇はない。
悲嘆に膝をつく時間なんてない。
アドニス「焼き尽くせ!!」
これで新たに現れた巨大な食屍鬼を退けるのと、その他の雑多な悪霊諸共を木っ端微塵にできる。
そうすれば、その先に佇む胸糞悪い七将に届くだろう。

と思っていた。


王都の各守衛隊達の元を回り労いの声をかけてから、ルーヴェリアは自室に戻ってきた。
室内のウォークインクローゼットの取手に手をかける。
これを再び身に纏う日が来ようとは。
開け放たれたクローゼットの向こうにはトルソーが1つ。
首元には黒いチョーカーが飾られていて、胸元の金のペンダントは鈍らぬ輝きを放っている。
頭部にはサフラニア騎士団長の証である黄金の房が頭頂部を飾る白銀のヘルム。
肩には光沢のある生地で織られた白いマント。
そして黄金の唐草模様が描かれた白いブーツ。
どれも埃さえ寄せ付けず大切に、大切に保管していた装備品だ。
ひとつ、ひとつ、丁寧にトルソーから外して身につけていく。
触れるたびにかつての記憶が呼び起こされる。
50年以上昔、共に生き、戦った仲間達との大切な想いと、誇り、そしてほんの少しのささやかな思い出。
トルソーの横には小さな棚があり、そこには白銀のガントレットが置かれている。
それも身に付ける。
そして最後に、アクセサリーケースを開く。
たった1つしか仕舞われていない、緑色の宝石が2つほど連なった金のブレスレットを。
身支度を整えていると、扉がノックされた。
サイズ調整を終えた白銀の胸鎧が届いたのだ。
これは、つい先日亡くなった騎士、テオが身につけていたもの。
自分に合うようにサイズを整えてもらったそれに、身体能力向上の術式を組み込んで魔装具へと変える。
ルーヴェリア「…私は進まなくてはならない。貴方の想いも背負って」
それが私にしかできない、追悼だから。
呟きながら胸鎧を纏い。
そして最後に、ベルトを取り付け、その腰に剣を提げる。
深く息を吸い込み、短く吐いた。
覚悟を決めるように。
同時に、また部屋の扉が開かれる。
そこに立っていたのは彼方此方に魔物の噛み跡がついた鎧を着た弓兵。
恐らく、アドニスの団員の1人。
ルーヴェリア「…手短に」
騎士「応援を要請します!!」
彼女は迷うことなく玉座の間へと向かった。
すれ違い様に騎士の肩に手を置き、治癒の魔術を施して。
そして今は議会の最中だと止める兵士の声を無視して勢いよく扉を開く。
ルーヴェリア「第二騎士団長ルーヴェリア、急ぎ陛下にお伝えしたき報がございます」
有無を言わせぬ彼女の雰囲気に、議会に参加していた宰相や重鎮らが口を噤んだ。
国王は黙したまま頷く。
ルーヴェリア「第一騎士団より援護要請有り。これより援護に向かいます」
国王「……国防の方はどうする?」
ルーヴェリア「各隊の隊長らに判断は任せます。援護は私1人で十分でしょう」
そもそも第二騎士団は国防の任があるため多く人を連れてはいけない。
大臣らが援護がたった1人だけなど馬鹿にしているのか、全軍を動かすべきではないかと口々に言うのを王妃が一喝し黙らせた。
王妃「静かになさい!」
ヴィリディスも行方不明になった今、国を継ぐことが出来るのはアドニスただ1人。
事は一刻を争う。
普段滅多に声を荒げない王妃が声を張るのは、それだけ緊迫した状況であるということが分かっているからだ。
国王「無事に帰るように」
ルーヴェリア「はい。行って参ります」
彼女は頭を深く下げてその身を翻す。
動きに合わせて揺らぐ白銀のマントに、誰もが息を呑んだ。
あの姿は正しく、この国の歴史に語られる戦女神のそれだと。

玉座の間を出、扉の閉じる音と彼女の足音が戦場に響くのは同時。
空間を直結させて降り立ったのだ。
そこには、狂笑を響かせるノクスと、暴れ回る土塊で出来た、50年前の兵士たちの姿があった。
ああ、そうか。
当初は遺体を回収することも骨も残さず焼き尽くす時間もなかったために、かつての戦いで散った者達は皆、腐敗の術で腐らせたのだ。
朽ち果てさせると共にこの地の礎とした。
それが今、ノクスの魔力によって猛威を振るっている。
ルーヴェリア「第二騎士団長ルーヴェリア!第一騎士団の救援に参じました!総員、後退!!」
雨も。戦場の空気も。絶望も。
全てを貫く声が響いたかと思えば、空に、地に、巨大な魔法円が形成される。
彼女の声に応じてアドニス率いる第一騎士団達は退却していく。
理性を失った土塊達は後先なく彼らを追った。
アドニスは最大限の魔力を使用し防衛魔術を展開する。
魔力の壁に阻まれた土塊達はそれ以上先に進むことは出来ない。
ルーヴェリア「座標指定」
詠唱しつつ剣を抜くと、白銀の剣が閃光の輪舞を踊る。
ルーヴェリア「術式構成」
それに手を伸ばした土塊や死霊達は悉く切り刻まれていく。
ノクス「不味いものが来る予感がするなぁ……魔王様、貴女の計画のためにも、僕だけ撤退してもいいよね?」
ノクスは徐々に退けつつある黒雲を見上げて呼びかけ、戦場に背を向ける。
ルーヴェリア「天翔ける陽光よ、此処に来たれ!」
魔力の壁の内側から、第一騎士団達は見た。
天地に展開された魔法円から、朝陽が昇り、夕陽が沈むのを。
それがどれほどの灼熱を生み出したのかは、壁の内側にいる自分達には分からない。
ただ、重なり合う対の太陽が眩しくて目を開けてはいられなかった。
瞼を閉じることを忘れてしまうほどに見惚れてしまったアドニスを除いて。
死霊も、食屍鬼も、屍人も、土塊も。
降り注ぐ雨粒すら存在を許さない白紙の空間。
一点の汚穢も残さず、全てを融かして浄化する光。
あれを希望の輝きと呼ばずしてなんと呼べば良いだろう。
バリ、という嫌な音と共に目の前の魔力の壁にヒビが入る。
アドニスははっとした。
アドニス「魔導部隊!防衛術式を多重構造で展開!全魔力を注いで構わない!!」
目を微かにでも開けば陽光がその視界を焼き尽くさんと入り込む為、皆目を閉じたまま魔力壁の修復と防衛魔術を幾重にも幾重にも重ねる。
その向こうでルーヴェリアは剣を納めながら太陽が消え去るのを待つ。
「まだ生きていたい」「消えたくない」「助けて欲しかった」
ただの断末魔でしかない魔物達の声は、彼女にとって救いを求める者達の声だ。
「どうして殺されなければいけなかったのか」
「なぜ自分達は死ななければいけなかったのか」
ただ滅びゆくだけの魔物達の痛烈な叫びは、彼女にとって──。
ルーヴェリア「守れなくて、ごめんなさい」
かつて守れなかった者達の声だ。
ルーヴェリア「今度こそ、安らかに眠って下さい」
対の太陽が完全に重なった時。
陽光は金輪を描き、金輪は心地の良い風を巻き起こしながら広がり、消えていく。
何も残さなかった静寂だけが、ルーヴェリアの心に寄り添ってくれた気がした。
遅れて透明な癒しの雨粒が騎士達に降り注ぎ、慈雨は地面に染み込んでいく。
残った魔力の壁は薄っぺらいものがたった一枚だけ。
それも程なくしてひび割れて消え失せた。
魔物の姿が見えないことに安堵した騎士達は、心身の疲弊からその場にへたり込む。
その間を縫ってアドニスはルーヴェリアの元へ駆け寄った。
アドニス「救援、ありがとうございます」
ルーヴェリア「……………」
彼女は返事を返さず、地面に落ちていた何かを拾い上げた。
アドニス「…?師匠…?」
その手に握られていたのは、第一王子ヴィリディスのブローチと、護衛騎士ケインの騎士章。
ルーヴェリアは唖然としているアドニスの手にその2つを握らせた。
ルーヴェリア「…今は、構いませんよ。雨が全て流してくれます」
普段は被っていないヘルムの向こうからかけられる、どこまでも静かな優しい声がアドニスの心を打ち崩した。
膝をついて、子供のように泣き喚く彼を、彼女はそっと抱きしめてやったのだった。
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天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
【おまけ】継承の刻 2

ルーヴェリアが挨拶を済ませ、騎士団員達にも挨拶をすると部屋を出て行った後、残された団長3人は深刻な面持ちで経歴書を眺めていた。
彼女が参戦してきた戦いは全て苛烈を極めたものだったからだ。
志願兵として入隊し魔族に占領されていたヴィト・リーシェ湖を奪還。
そのままシュガル山、ファランス山へ進軍し魔族を撃滅しつつ、北西諸国の救援を成功。
北西諸国より1000の兵士達を引き連れサフラニア王国の残存兵力と併せて1200の兵士を率い、ケレテス山脈へ進軍。
魔族を帝国領方面へと後退。
そして帝国軍との戦線を保っていた兵士達と共に残党を処理後、王都へと帰還。
この間僅か1ヶ月弱。
休む間もなく500の兵を率いてエレゾルテ山脈へと進軍。地形を活かした見事な戦術で魔族を圧倒。
そして王都方面へと引き返すと、そのままヘルベ湖の奪還まで完遂。
ディゼン「どれだけの死体を見たことやら……とんでもない奴が来たもんだ」
嘆息と共に経歴書を机に置く。
コルセリカ「あーれーはー、骨が折れるねえ…見た?あの目。光無いどころかどこも見てなさそーだったよ」
困った顔で笑いながら軽い口調で話してはいるが、憐憫の情が渦巻いて仕方ない。
だって記録されているものは、死者数百どころか数千と及ぶ戦いばかりだ。
それを生き残ってきた、というだけで彼女の心の闇の深さが知れる。
それはマルスも同じだ。
マルス「噂に名高い不死身の騎士、かあ…そりゃ、死体に塗れて自分だけ生き残ってりゃ、ああもなるよなぁ…」
しみじみとぼやいてから、数秒の静寂が訪れる。
その静寂を破ったのはディゼンだ。
ディゼン「…私達で支えてやらないといけないな」
ふっと笑ってコルセリカとマルスの方に視線を向ける。
コルセリカ「任せて任せて〜そういうのは超得意だから!」
妙にはしゃぐ彼女にマルスは肩をすくめた。
マルス「あんたは距離の詰め方がおかしいだけだろ…」
コルセリカ「言ったな?マルス?あとで剣の錆にしてやるから覚悟しな」
マルス「斧の間違いだろ…」
ディゼン「ほらほら二人ともそこまでだ。歓迎会の準備を進めるぞ」
二人「はーい」
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天月 兎

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サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第二十四話 後編

しかしその夜、言い出しっぺのルーヴェリアは最初の挨拶を済ませた後に姿を消した。
テオとの思い出を語りながら酒を酌み交わす者達に囲まれていた故にアドニスは気が付かなかったが、クレストはその場から立ち去るルーヴェリアの背を見ていた。
仕方のない人だと嘆息混じりに後ろ姿を追う。
そこには柱にもたれかかり、グラスを掲げて、半分ほど注がれた葡萄酒が月明かりに揺れる様を見つめる彼女の姿があった。
クレスト「他人と痛みを分かち合わねば、人は立って行けないと謳った貴女が独りを選ぶのは理解に苦しみますぞ」
ルーヴェリア「私が居ては、団員達の気は緩まないでしょう」
ルーヴェリアは視線を逸らすことなく答える。
クレストは肩をすくめた。
クレスト「一番悲しんでいるのは貴女でしょうに。此処には、私と貴女しか居りませんよ」
その言葉を皮切りに、ルーヴェリアの視界が滲む。
葡萄酒を透かして注がれた月光が眩しかったのか、或いは彼の最期の声を聞いた夜に見上げた月とよく似ていたからか。
ルーヴェリアは心の中で反芻するテオの「ありがとう」を精一杯染み込ませるように、否、それが最期の言葉であった悲しみを飲み干すようにグラスを空けた。
ルーヴェリア「彼に魔道具を渡しておいて正解でした。魔術の扱いは最初の頃よりは良くなっていましたが、それだけでは足りなかったでしょう」
クレスト「報告書は読みましたぞ。機転を効かせるのが得意な子でしたからな、貴女の判断は正しかったでしょう」
クレストもまた、グラスを空にした。
静かな眼差しでルーヴェリアが口を開くのを待つ。
ルーヴェリア「…結局、魔族の動きは陽動ではありませんでしたね」
クレスト「常に最悪の事態を予測して動いていた。貴女に落ち度などありませんぞ」
ルーヴェリア「私が」
クレスト「貴女が一人で攻めに行ったとしても、結果は変わらなかったでしょう。この国の守りが薄くなるだけでしたよ」
長い時を過ごしたからこそ成り立つ会話だ。
ルーヴェリアが抱く後悔や疑念を受け止め、否定している。
──援軍を出す事をしても良かったのではないか。
それは最悪の事態を予測したからしなかったことだ。
──自分一人で魔族の元へ向かえば、被害は抑えられたのではないか。
国で1番の力を持つ者が居なくなればこちらが手薄になるだけで、何も変わらなかった。と。
ルーヴェリアは柱にもたれたまま、芝生に腰を下ろした。
ずるずると、崩れ落ちるように。
ルーヴェリア「後悔しても、何も変わりませんね」
クレスト「ええ。それでも、貴女の感じる痛みを貴女が否定してはいけませんぞ」
全て飲み込むのだ。全て飲み干すのだ。
そうして散った仲間の命を背負い、彼らの誇りを背負い、信念を背負い、希望を背負って。
ルーヴェリア「それも戦いですからね……そして私たちは」
クレスト「ええ…進まねばならぬのです」
地面に向かって垂れ下がった腕は、ついにその指先まで力を失って、持っていたグラスが草の上に転がる音がする。
そっとその肩に腕を回して抱き締めてやれば、止めどなく溢れる涙が2人の胸元を濡らし、広く染み込んでいく。
ルーヴェリア「クレスト、私は悲しい」
クレスト「私もです」
ルーヴェリア「私は、悔しい」
クレスト「ええ、私もです」
ルーヴェリア「私は……憎い」
クレスト「………私もです」
2人の涙が語る。
大切なものが手からすり抜けていく悲しみを。
大切なものを守れなかった悔しさを。
大切なものを奪っていく魔族への憎悪を。
今だけだ。今だけ立ち止まって、この全てを受け入れる時間を過ごそう。
そうして朝日が昇ったなら。
その陽光は復讐の焔となって降り注ぐだろう。

テオの死から2日ほど経過した頃。
謁見の間で交わされた会議で、防勢一方だったサフラニアは反撃に出ることが決まった。
南東方面から押し寄せる魔獣と竜の群れに第三騎士団が、帝国領方面に蔓延る魔族の群れには第一騎士団が向かうことになった。
ルーヴェリア率いる第二騎士団は国防に回る。
王都中心部に集った二つの騎士団は、そこに建つ慰霊碑に祈りを捧げた。
アドニス(どうか、無事に勝利出来るように)
クレスト(どうか、この戦いで散る者の魂が安息でいられるように)
北門へアドニスが、南門へクレストが騎士団員を率いて歩みを進める。
民達は勝利を願い、希望を託すように彼らを見送った。
城のバルコニーには国王と王妃の姿も見えた。
国王「無事に帰ってきてくれ…」
王妃「大丈夫、彼らはきっと成し遂げてくれるでしょう」
ルーヴェリア達も隊を5つに分け、各門と城の守備についた。
「何があっても守るんだ、いいなお前ら!」
「どんな奴が来ようとも、先へは進ませない」
「この国と、この国に生きる家族のために」
「死んでいった仲間に報いるためにも」
ここは、絶対に守り抜いてみせる。
そんな声が国の彼方此方に染み込んでいった。

そして国を発った2つの騎士団は、別々の場所で敵の姿を拝むことになる。
垂れ込めた黒雲が陽光を遮り、冷たい雫を垂れ流す中でアドニスの目の前に広がるのは、数多の死霊と屍人の群れ。
屍人は帝国の鎧を身に纏った者から、近隣王国の兵士らしき者から、町民と思しき者、第四騎士団員達まで様々に居る。そして。
アドニス「あ…兄、上…」
その先頭に立つ、焼けこげた屍人と穴だらけになった騎士の屍人。
たとえ原型を留めていなかったとしても、その手に提げられた剣が、その胸元で確かに輝く王族と騎士の証が、彼らだということを嫌でも理解らせてくる。
あれは自分の兄とその護衛騎士、ケインだ。
その向こう側で嫌な嘲笑顔をしている異質な存在。
漆黒の髑髏に宿る爛爛とした紫の光は瞳だろうか。風に遊ばれる闇色の布地を纏っており、下半身は無いように見える。
あれは本で見た七将、ノクスだろう。
彼奴のせいで、彼奴がいなければ、彼奴が…。
怒りに支配されそうになる心を、頭を振って振り払う。
アドニス「…みんな、炎の術式をしっかり使って。この雨に掻き消されないようにね」
己の剣に炎を纏わせ、剣を高く掲げ、馬を走らせる。
アドニス「全軍、突撃!!」
彼の声は悲しみを突き刺す雨を切り裂くように響いた。

また、南東方面に向かったクレストは轟音を奏でる強風に煽られた荒野の向こうで七色の巨竜と対峙する。
理性を失ったのか、獣の群れはこちらが陣形を整える前に突進してきたが、そんな浅はかな攻撃程度で騎士団の堅固な守備は崩れやしない。
クレスト「あの竜は私に任せよ。お前達は雑魚を思う存分屠れ。憎悪を突き刺し、怨恨を叩きつけ、死の恐怖を刻みつけてやるのだ」
普段温厚な彼から発せられる言葉とは思えないほど熾烈な言葉は、第三騎士団員達の心を高く、高く鼓舞した。
誰かが魔獣の首を切り落として叫ぶ。
「奴等にこの上ない絶望を!」
また、竜を撃ち落とした誰かが叫ぶ。
「奴等に至高の苦痛を!」
七色の竜はその光景を閑静な瞳で眺めていた。
つい先日、これ程までに人というものは強くなれるのかと思い知らされたから、彼らを見くびるような真似はもうしない。
セレシュバーン「蹂躙しろ」
その咆哮を合図に竜達も呼応し、威勢良く叫んで飛びかかる。
クレスト「全軍、突撃!!」
怒号という言葉に似つかわしい老騎士の声は、暴風の巻き起こすかまいたちの刃よりも鋭かった。

怒りを、悲しみを糧に、燃え盛れ。
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