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天月 兎
エラとかいうすり抜け女がきた…
お前前回のリグスタでもすり抜けてきやがったよな…
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天月 兎
【おまけ】ある日の▓▓▓▓ 14
魔界中層の半分を占める海の中に栄えた種族が居た。
魚の頭に人間の胴、人魚の尾を持つ水棲の魔族で、種族名はグランレーン。
太古からあったわけではなく、単純にグランガチとセイレーンの間に生まれた種族だった。
ある日、人間と似た頭を持つ子供が生まれた。
今ならば隔世遺伝と分かるが、当時は誰もその言葉を知らない。
子供の親はかつてこの海を荒廃させたとされる天使セラフィムから名を取り、セラフィナと名付けた。
そして奴隷よりも酷い扱いで彼女を虐げた。
父親が言う。一族の恥晒しと。
母親が言う。あんたなんかいらないと。
出ていけ、出ていけ、今すぐ出ていけ。
毎日そう言われて家の外に追い出された。
勿論助けてくれる者なんかいない。
セラフィナはとうとう棲家を離れ、遠く遠く離れた場所へと泳ぎ去った。
どこまで行っても、闇しかない。
一族の頭に揺れていた灯りを恋しく思いながら、少しでも明るいところへと海上を目指した。
海藻を少しずつ食べながら、ひもじさを抱えて。
しかし幼子が一人彷徨うには世界が広すぎた。
朦朧とする意識の中で見つめた空は、まんまるな赤いお月様がきらきらとしていた。
こんな景色を眺めながら死ねるなら、悪くないとさえ思った。
でもそれは叶わなかった。
「ノクス、舟を止めろ」
誰か、女の人の声がする。
「死にかけじゃないか。拾うの?素材にしていい?」
無邪気そうな男の人の声に、女の人が何か言ってる。
「殺してどうすんだよ、流れ的に助けるだろうが」
気の強そうな、少し怖い男の人の声。
でも助けるって…?
セラフィナの意識はそこで途絶えた。
次に目が覚めた時、私は自分がまだ生きていることに驚いた。
小舟の上に横たわって揺れている。
月の位置的に今は朝だろうが、何があったのだろう。
いつだったか岩肌で切ってしまった腕には包帯が巻かれていた。
「起きたか。よしよし」
人間?の女の人が私を見てうんうんと頷いている。
セラフィナ「あなたは?」
イレディア「私か?イレディアだ。あっちの羽のついた生意気なのがレイヴ、そこでうたた寝してる呑気な奴はノクスだ」
自己紹介なんてされたのは初めてだ。
戸惑いながら自分も名乗る。
セラフィナ「あ、と…。グランレーンのセラフィナ…です」
イレディアは首を傾げた。
グランレーンの住処はここよりもっともっと遠い。セラフィナを拾った場所なんて更に遥か彼方だ。
イレディア「妙だな…何かに襲われて逃げてきたのか?」
セラフィナは声を震わせながらことの経緯を話し始めた。
聞き終える頃にはイレディア達の顔はグールのような形相になっていた。
イレディア「ノクス、まずはここからやろう」
ノクス「大賛成だね。海魔の屍人化してみたかったし、いい材料になりそうだ」
レイヴ「ま、弱きを救うは神の意志だしな」
困惑する私を他所に、3人は魔術を使って舟を走らせた。
住処が近づくごとに浴びせられた罵声が頭の中を木霊する。
そんな私を、イレディアは抱きしめてくれた。
イレディア「大丈夫。お前を虐げる奴は誰一人として居なくなる。私達がお前を守ってやるから、何も心配することはない」
優しく落ち着いた声に、心が温かくなって、嬉しくて、涙が滲んだ。
それからものの数十分だ。
海上をビチビチと跳ね回る同族達の姿を見たのは。
どんな魔術か知らないが、海中に逃げることができないようにされたうえ、火で炙られてる。
見知った顔もいくつかあるが、親の姿はどこにもなかった。
イレディア「大丈夫か?見ているのが辛いなら…」
セラフィナ「大丈夫です…」
言いながらも本当は心苦しかった。
でもきっと誰かは生き残っていて、都ではないどこかで暮らしているだろうから。
私の居場所はそこにはないのなら。
セラフィナ「あの…私……ついていっても、いいですか」
イレディアは不思議そうな顔をする。
イレディア「元よりそのつもりだが?」
そっか。良かった。
私はほっとして空を見上げた。
まんまるなお月様がきらきらとしている。
こんな綺麗な景色を眺めながら、幸せに生きていけるなら、それはとても嬉しい。

天月 兎
【おまけ】ある日の▓▓▓▓ 13
魔界の上層と中層は、巨大な山で隔たれており、これを登って初めて上層に辿り着く。
山の麓で切り立った崖のような様相を呈しているそれを見上げて、イレディアがため息をついた。
イレディア「これ、登るのか」
身体強化程度なら出来るがそれでもこれを登るのは流石にキツイものがある。
背後から同じように崖を見つめるノクスも同じ顔をしていた。
セラフィナ「この浜辺を迂回すれば、少しなだらかなところがあったと思います…お母さん達を探してる時に、見かけた気がして…」
おずおずと提言するセラフィナの頭を撫でてイレディアは微笑んだ。
イレディア「でかしたぞセラフィナ、労力は少なく済む方が絶対いいからな」
ノクス「決まりだね」
レイヴ「え、飛んだ方が早くね?」
イレディア「じゃお前だけ一人で飛んでけ」
にっと笑ったイレディアがレイヴを蹴飛ばすと、ゴム毬のように跳ねていき、崖に生えていた木に引っかかる。
レイヴ「え!?ちょ、高い高い!怖い!てかお尻も痛い!降ろしてー!我が主よ助けてー!」
イレディア「行くぞ〜」
レイヴの叫びを完璧に無視して歩き出したイレディアの足が、また何かを蹴飛ばした。
ぷよんとしたそれは「いでっ」と言ってコロコロと地面を転がっていく。
イレディア「スライム?」
セラフィナ「この辺に居るのは珍しいです…」
イレディア「逸れたのか?」
悪い悪い、と言いながら拾ってやると、スライムは瞳を潤ませてプルプルと震えていた。
いや、元からそういう生き物ではあるが。
「やめて!痛いことしないで!僕ちゃんと言うこときくから!」
イレディアが落ち着いた声でそんなことはしないと宥めること十数分。
スライムはやっとまともに会話ができるようになった。
ミュルクス「僕、スライムのミュルクス。仲間たちから肝試しに、あの崖を登るように言われて……でも、落っこちちゃって…それで…置いていかれちゃって…」
なんだか既視感を覚えてセラフィナを見やれば、セラフィナも同じ気持ちらしい。
イレディア「そんなことがいつもあったのか」
ミュルクス「う、うん……僕、まだまだ力は足りないけど、他の魔族に擬態することができるんだ。それは他の仲間にはできないことで、それで、その……いじめ、られてて…」
イレディアはふむ、と考えた。
これから玉座争奪戦という激戦区に向かうことを考えると、安定していないとはいえ他の種族に擬態できる能力は戦力になる。
イレディア「お前が良ければうちの一員にならないか?」
ミュルクス「え、なんで?どこにいくの?」
イレディアは空の彼方を見やって力強く言った。
イレディア「玉座だ」
この人ならきっと僕を虐めないだろう。
ちょっと変わった仲間達も居るみたいだけど、少なくとも今までのような酷い扱いは受けないはず。
そう思ったから、僕はイレディア様についていくことにしたんだよ。

天月 兎
第三十話 前編
裂けた天井から、冷たい雫が降り注ぐ。
大理石の床に広がる赤い水溜りに落ちては、静寂の空間に寂しい音を響き渡らせた。
ここには死体が二つ。
原型を留めていなくても誰なのかわかるように造られた骸の像と、たった今床に転がったばかりの、首。
隣席が空いた玉座には、首のない王の体が鎮座している。
ルーヴェリアはその胸ぐらを掴むと、この国の王妃だった骸の像の方へと放り投げた。
偶然にも、王の腕は像の胴体を絡め取るように引っかかり、彼女を抱き止めるような形で床に倒れ伏す。
ルーヴェリアは血の滴る剣を払うでもなく鞘に納めるでもなくただ、立ち尽くした。
この国は終わった。
滅んだのだ。
生まれてから今に至るまで、途方もなく長い時間をこの国で過ごしてきたその思い出が溢れて止まない。
頬を滑べるのは、雨粒か、涙か。
様々な人間の死が脳裏を鮮やかに彩っていった。
そんな思考を掻き消す雑音が何度か聞こえる。
悲しみに濡れる空間に、渇いた音が。
玉座の向こうから人影が出てくる。
ゆっくりとした拍手を贈りながら、それはルーヴェリアの真横で足を止めた。
イレディア「素晴らしい腕前じゃないか」
転がった元国王の首に視線をやった。
骨と骨の合間で綺麗に斬られた切り口は、真っ直ぐで歪みのない、見事な円を描いている。
ルーヴェリア「…黙れ」
空気に溶けてしまいそうなほど静かな、それでいて重たいものを感じさせる声色に、イレディアは拍手を止める。
別に気圧されたからではなく、飽きたからだが。
イレディア「お前はこの国の騎士だったな。国が滅びた今、お前は行く宛もあるまい」
何が言いたいと視線で問うてくるルーヴェリアに、魔王は続けた。
イレディア「降れ」
ルーヴェリア「ほざけ!」
間髪入れず声を張り上げながら剣を横に振るう。
魔王の体は胴体から真っ二つになったが、それは靄のように消え失せた。
手応えもない。
幻影とは知っていたが、感情が先走ってしまった。
ルーヴェリアは自分らしくないと思いつつ、今度は冷静に半身を玉座の間中央に向けた。
幻影ではない二体の魔物がそこに立っている。
魔王イレディアと、その側近でありルーヴェリアに不老不死の呪いをかけた張本人、魔女王サーシャが。
イレディア「どれくらい保つ?」
魔王の問いに、ルーヴェリアは即答した。
ルーヴェリア「お前が死ぬまでだ」
両者の剣が交じり合い、高い音が空を劈く雷鳴に重なる。
どうして、こんなことになってしまったのか。
遡ること、かの包囲迎撃戦出立日。
鎧を纏った女が1人、帝国軍国境を行軍中の魔王軍のど真ん中に現れた。
腕を一振りしたかと思えば、周囲の仲間の首がボロボロと落ちていく様に動揺を隠さず、軍は足を止める。
そして後退りする者が現れ、彼女を中心にぽっかりと穴が空いたような陣形になった。
ルーヴェリア「構成は吸血鬼と堕天使…と、巨人か」
亜人で構成された軍だ。
率いるのは…。
レイヴ「何だお前か、驚かせてくれるなよな」
ルーヴェリア「祖翼レイヴ……やはりこちら側に居たか」
漆黒の長髪に漆黒の翼、黒曜石のような肌に煌々とする紅玉の瞳。
ルーヴェリアの一言に、レイヴはお手上げだと言いたげに両手を上げ、落とす。
レイヴ「向こうに居ると思わなかったのか?」
向こうとは、サフラニアの南方の方面のことだろう。
ルーヴェリア「私を常人と紛うな、また翼を引き千切るぞ」
レイヴ「勘弁してくれ…とはいえ、こっちは10万だ。ノクスの奴もじきに合流するから…20万になるか?」
腕を組んで遠方の旧メレンデス王国の方を見やってから、ルーヴェリアの方に向き直った。
この数を相手にたった1人でどうするつもりだ、と言いたいのだろう。
ルーヴェリアは勿論剣についた血を払い、その切先をレイヴに向けた。
ルーヴェリア「皆殺しだ」
レイヴは犬歯を覗かせながら獰猛に笑って見せる。
レイヴ「面白い。だが、我々も何も学習しなかったわけでもないぞ?」
彼奴の目線がルーヴェリアの足元に向けられた。
淡く微かに、白く光っている。
魔法円だ。
レイヴ「ノクスから聞いたんだ、魔力封じってやつでセラフィナを捕らえたんだってな。お前は不老不死が脅威だ。身体能力も、そして類稀なる魔術の才能も。だがそれは全て魔術による恩恵を得たからに過ぎない。だから魔力の流れを封じてやった、お前がしたことと同じことをしてやったんだ、ざまぁないな」
ルーヴェリアは微動だにしない。
それは頭の中を疑問符が駆け回っているからだ。
たかが魔力を封じた程度で何故勝った気でいるんだ、此奴は?
50年前の戦いで何を学習したんだ?
魔族というのは存外頭が鈍いのか?
魔力封じは本人の魔力の流れを封じて、本人が持つ魔力の行使を阻害するものだが……。
私の鎧は全て魔装具で、流れている魔力は私のものではあるが物に宿った時点で魔力を循環するのは魔力が宿った物そのものになる。
つまり本人を封じても鎧は対象外だ。
それに加え、実は魔力封じは封じる者の魔力量が相手の魔力量よりも小さいと、簡単に破られる。
レイヴ「お前ら!此奴は不老不死の呪いで死ぬことがないから血も吸いたい放題体も弄び放題だ!思う存分楽し…」
最後まで言葉を発する前に、血飛沫がレイヴの視界を掠めていく。
ルーヴェリア「…分かった。貴様の言うとおり思う存分狩りを楽しませてもらおう」
剣を握る逆側の手には、レイヴの片翼が握られている。
血がぼたぼたと地面に滴り落ちているのを見て、やっと自分の翼だと理解したレイヴは瞠目した。
それからやっと背中の激痛を感じ、苦痛に顔を歪ませる。
レイヴ「ま、また斬りやがったなてめえ…!」
翼が元の通りになるまでには少し時間がかかる。
自分が戦ってもいいが、魔力を封じられている中でこの動きが出来るのは尋常ではない。
術式を組んだノクスに報せなくてはならないが、斥候を飛ばしたところで狩られるのがオチだ。
自分が行った方が早い。
レイヴ「こ、殺せなくてもいい!足止めだけしろ!」
背中から流れ出す血液で擬似的に翼の無くなった部分を模し、飛び去る。
ルーヴェリア(…行かせておくか。どうせ戻ってくるのなら移動の手間が省ける)

天月 兎
第二十八話 後編
ことの発端は、帝国が帝都中心部に魔術塔を設営し、その中で大規模なゲートの創造を行なったことだった。
合わせ鏡になるよう、全面鏡張りにした部屋の床と天井に魔法円を描き、3000人余りの魔導師に魔力を注がせて無理矢理にゲートをこじ開けたらしい。
その召喚の儀式に応じることができるのは、魔王イレディアだけだったという。
姿を現した魔王に帝国の皇帝や参謀、魔導師達は歓喜したそうだが、召喚に応じて契約を結べば自分の思い通りには動けないと考えた魔王は、召喚者である皇帝、その他諸々を虐殺。
七将を呼び集め、襲撃があったことすら気が付かせないよう結界を張る配慮までしたうえで帝国を中心部から各方面に向けて蹂躙させた。
そして陥落した帝都の王城を本拠地に、側近の魔女王サーシャと共に戦況の把握や攻撃地点の指示を行っているそうだ。
ルーヴェリアは考える。
本拠地がそこならば、自分が乗り込むのは簡単だ。
いつぞやの戦いで帝国側から停戦交渉があった際、その交渉が為されたのは帝都内王城。
ルーヴェリアは国王らの護衛として共に入ったため、場所はわかる。
場所がわかれば、正確には行ったことのある場所なら、どこからでも直接王城に乗り込むことが可能だ。
だがその前に、やることがある。
ルーヴェリア「サフラニア周辺地域はすでに壊滅させた後か?」
セラフィナはこくりと頷いた。
なるほど、ならば防衛すべきはこの国の中心だけということだ。
範囲が狭くなって助かる。
ルーヴェリア「簡単に話してくれて大変に助かった」
セラフィナ「じゃあ、お母さんのところに…」
ルーヴェリアはその言葉に天使のような笑みを浮かべて頷いた。
ルーヴェリア「もちろん、連れていってあげよう」
だがまだ枷は解かない。
ナイフを置いて、隣に置いてあった出刃包丁を手に取った。
セラフィナ「な、何をするつもりですか!」
ルーヴェリア「人魚の肉はこの世のどんなものよりも美味と聞いてな。一度食べてみたかったんだ。大丈夫、核は外して切ってやろう。体がバラバラになっても、核さえ残っていればお前達は生き続けるだろう?」
そう言って、左手の指から、右手の指、尾の先から、見事に核を避けて肉を切り分けていった。
苦痛に耐えかねず意識が途切れそうになると、すかさずルーヴェリアの魔術で意識を覚醒させられる。
そうして切り分けた部位を一つ一つ、丁寧に小箱に収めた。
セラフィナ「わ…私の…お母さんの…ところに…」
ルーヴェリア「魔族は約束を破る」
泣きながら縋る声に、ルーヴェリアはただ一言冷たく言い放った。
そのあまりにも冷たい声色に恐怖を感じたセラフィナは黙り込む。
ルーヴェリアは続けた。
セラフィナ「っ………」
ルーヴェリア「魔族は約束を破る。人類との休戦協定だってあっさりと破られた。そんな奴らの約束を、何故守る必要がある?」
セラフィナの顔が一気に絶望に染め上げられると、さも愉快そうなルーヴェリアの笑い声が牢内に響いた。
そして一部を残して、小箱一つ一つに"親愛なる魔王様へ"そう書いて、次元干渉の能力の応用で物だけを帝都にある王城の玉座の間に降らせた。
落雷でところどころ穴が空いているとはいえ、城の天井からいきなり大量の小箱が降ってきたら流石の魔王も驚く。
イレディア「なんだ!?……箱、か?」
一つ一つが手のひらに収まるほどの小さな箱が文字通り雨のように降ってくる。
数秒でそれは止んだ。
床に散らばったそれらの中から一つ手にとってみれば、箱には"親愛なる魔王様へ"と書いてあった。
転がった箱、いや、全ての箱に同じ文字が刻まれている。
サーシャがイレディアの声を聞いて玉座の後ろにある扉から駆けつけた。
サーシャ「何かあった?」
襲撃でもあったのかと内心穏やかではなかったが、そんな様子はないことに少しだけ安堵する。
そして床に転がる大量の箱を見て、何これ?と手を伸ばして開けてみた。
何かの、肉片。
魚の鱗のようなものがついている。
サーシャ「…………まさか」
イレディアに目を向ければ、サーシャに背を向けたまま微動だにしていない。
サーシャもサーシャで、なんと声をかければ良いのか分からず、立ち尽くしてしまう。
概ね十数秒ほどだろうか。暫しの沈黙が室内を満たしたと思えば、小箱が一斉に破裂して砕け散る。
イレディアの魔術によるものだ。
魔王は背後で立ち尽くす側近に、背を向けたまま声をかけた。
それはとても静かで、とても厳かな声だ。
イレディア「………サーシャ」
サーシャ「ええ、そうね」
言わんとしていることはわかる。
長年の付き合いだ。
イレディア「地獄を創れ」
サーシャ「地獄を創る」
戦地に赴き、命を落とすのは仕方のないことだろう。それはこちらも相手も変わらないからだ。
だがこれは違う。たとえ我々がどんなに残忍で惨虐な生物だったとしても、こんなにも凄惨な仕打ちをすることはあるだろうか。
答えは否だ。
どんなに性根が腐っていても、こんなことをするような輩は自分の知る限り魔界には居ない。
仲間を失う覚悟は出来ていた。
ある意味、そのための戦いでもある。
だがこれは、これだけは絶対に許せない。
倍にして、いや、それ以上の苦痛を以て殺し尽くしてやる。
怒りと憎しみに呼応して走る雷光が、ほんの一瞬だけ。
開いた箱に滴る一雫、その頬を滑った一筋の軌跡を照らしたのだった。
さて、魔王がそんなにブチギレていることなぞ露知らず、こちらはこちらでこの魔物をどう調理しようか迷っていた。
料理といえば、思いつく人間は一人しかいない。
そこでまな板と愛用している包丁片手に地下牢までやってきたのがクレストだった。
クレスト「これを…調理する…のですかな?」
最早元が何だったのかすらわからないのに生きているのは魔族だから、うん、それはわかる。
だがこれをどう調理しろと?
刺身か?炙りか?それとも焼き魚にでも?
どのみちこの状態じゃサイコロステーキにするのが精一杯だ。
ルーヴェリアは貴方なら出来ますよね?料理得意ですものね?という期待の眼差しを向けてくる。
クレスト(出来ることは、するしかありませんな…)
内心でため息を吐きながら、とりあえず丁重に残っていた身体の一部を切り離して小さな塊にする。
そして火の魔術で一応加熱をし、どんな味かはわからないが魚ならハーブソルトが合うだろうと調理してみた。
今まで散々ゲテモノを口にしてきたが、人魚の肉を食べるのは初めてだったため期待に胸を膨らませていた…のだが。
肉がどんどん溶け、液体となり、その液体がいくつもの泡となって空中に舞い上がった。
遠くの地方ではこれをシャボン玉と言うらしいが、それに似ている。
途中で弾けて消えるものもあれば、天井に張り付いてから消えるもの、換気口程度に作られた外と中を繋ぐ鉄柵の向こう側を目指して、潰えるもの。
ルーヴェリア「ち…魔核が逝くとそうなるのか此奴は…」
期待に胸を高鳴らせていた分、本当に残念そうに舌打ちをするルーヴェリア。
クレストも、ほぼ肉の塊を切り取るだけとはいえ人魚を捌くことは初めてだったために、その機会を失ったことを少し残念に思っていた。
若干肩を落として七将の最期を見届けた二人の元へ、荒々しい足音が近付いてくる。
兵士「た、大変です!!」
反射的にそちらを見ると、長距離を全力疾走してきたのがわかるほど汗を流して立っている姿が見えた。
ルーヴェリア「何事ですか?」
兵士「サフラニア周辺を囲むように大規模なゲートが多数出現!包囲網を形成されている模様です!!」
報告を聞いた二人はすぐに地下牢から出て玉座の間へと向かった。
すれ違いざま、クレストがよく報告してくれた、と労いの声をかけたところで、兵士はその場にストンと座り込む。
ぜえぜえと息を切らしながら牢屋の方を見やれば、誰もいないはずなのに妙に揺れている魔術封印の枷が視界に映り込んで、嫌なものを想像してしまい、すぐに視線を逸らしたのだった。

天月 兎
第二十八話 前編
深い深い、どこまでも深い水の中で、自分は生まれた。
他の皆は魚の頭に人間の体、足だけ人魚のそれという姿をしていたのに、私の頭についていたのは、人間と同じ頭だった。
淡く光る提灯の光が無数に揺らいでいる。
異形だ。奇形だ。一族の恥晒しだ。
飛び交う罵声と嘲笑。
母親らしき人物は私の頬を引っ叩く。
「あんたなんかうちにいらない。今すぐ出ていけ」そう言って。
海魔の何にもなれなかった自分は、生まれてすぐ故郷の海を離れて暮らすしかなかった。
明かりも届かない暗闇をどれくらい漂っただろう。
食事もまともに取れず、このまま死ぬのではないかと、彷徨い続けた日々。
突如、打撃音がして激しく頭が痛んだ。
体が思うように動かず、頭を押さえることもできない。
代わりにぎゅっと目を閉じて、なんとか数回瞬きをした。
セラフィナ「………?」
自分は、地下牢のようなところに磔にされていたのだ。
両手首に枷が嵌められて、繋がれた鎖がピンと張ることで身動き一つ取れない状態になっていた。
記憶を手繰り、そこでセラフィナはやっと理解した。
自分は捕縛されたのだと。
ルーヴェリア「やっと、気が付いたか。3日間喚き叫んでいたのが聞こえなくなったから、死んだのかと少し焦ったぞ」
目の前に立つ敵の姿に動揺が隠せない。
セラフィナ「どうして…壊れてないの」
敵はくく、と喉を鳴らして口角を吊り上げた。
ルーヴェリア「あの程度で私の心が壊せると思ったのか?数多の戦場を駆け抜け、家族すら守れなかったばかりか、仲間を見殺しにしてきたような私が?笑わせてくれる。お前がやったのは私の心の破壊じゃない。ただの、死者の冒涜だ」
腹部に思い切り蹴りが入る。
思わず咳き込むも、胃の中身は既に空っぽになっていたようで、吐き出せるものは何もなかった。
ルーヴェリア「さて、少しお話をしようか」
彼女は近くに置いてあったナイフを手にとると、牢の中に吊るされたそれを見る。
セラフィナ「…拷問の間違いではありませんか」
ルーヴェリア「そうとも言う。が、お前は私に聞かれたことに回答するだけでいい。余計な口を挟むな」
セラフィナの尾の先、丁度二つに分かれた片方を切り落とす。
普通はすんなり切れるはずだが、わざと刃こぼれしたナイフを選んで使用しているため、苦痛に我慢できず叫ぶ羽目になる。
ルーヴェリアは切り落とした尾の片方を、牢の外に積まれた小箱の一つに入れた。
ルーヴェリア「まずは帝国の状況と魔王の居場所だ」
セラフィナ「そう簡単に吐くと…?っああああああああ!!」
ルーヴェリア「もう片方も無くなったな。残念、これじゃうまく泳げないなぁ?」
セラフィナ「くっ…」
魔術を使えばこんな枷も外れるはずなのに、先ほどから何故か壊せないでいることを不思議に思った。
それを察してか、ルーヴェリアはその枷を顎で指した。
ルーヴェリア「ああ、その枷は魔道具でな。作るのに少し苦労したが、魔力封じの術式を込めてある。魔族にも通用するよう、私の魔力で構成してあるから簡単には壊れん」
彼女は満面の笑みでそう言うが、その笑みはすぐに消え去り、「で?」と一言セラフィナに問う。
セラフィナ「…………」
ルーヴェリア「なるほど、あくまでも口を割らないつもりか……そうだ。確か私に会った時、人の殺し方は命を奪うことだけではない…というようなことを言っていたな?ああ、全くもって同感だ。そしてそれはお前達も例外じゃ無いな」
ルーヴェリアがぽつりと、記憶干渉とささやいた。
するとセラフィナの脳裏にはあの暗い、暗い、水底の記憶が過ぎり、あの時感じていた不安や恐怖が津波のように心に襲いかかった。
セラフィナ「…!やだ!やめて!」
ルーヴェリアはセラフィナの記憶に干渉し、幼い頃の記憶しかなかった頃に戻したのだ。
セラフィナ「くらい!こわい…!おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん…!!」
ルーヴェリアは呆れた目で泣き叫ぶ姿を見つめた。
なんだ、壊す側のくせにいざ壊されると脆くて話にならない。つまらないな。
二度と帰らない存在でもないくせに。
一方的に追い出されただけのくせに。
蹂躙されて殺し尽くされる恐怖を、絶望を、与えてきた側のくせに。
ふっと頭に血が昇りかけたのを抑えて
ルーヴェリア「どうしたの、お嬢さん」
わざと、優しい声をかけてやる。
きっとセラフィナが求めたであろう、救いの手を声だけで演じてやった。
セラフィナ「おかあさんたちと、はなれさせられて、ひとりぼっちで、こわいの」
ルーヴェリア「じゃあ、私のいうことを聞いてくれたら、一緒に家族を探してあげます」
セラフィナは首を何度も縦に振った。
セラフィナ「ききます!どんなことでもききます!だからおしえてください!おかあさんたちはどこにいますか?つれていってください!」
まだ舌足らずなその声を後に裏切ることにはなるのだが、まあ心は痛まない。
──だって相手は魔族なんだから。
ルーヴェリアは再度彼女の記憶に干渉し、捕縛されて目を覚ました直後に遡行させた。
もちろん、奴の幼い頃の記憶を改竄した部分だけはそのままにして。
セラフィナからすれば何が起きたか分からない。
自分はこの敵を壊しに向かって、敗北し、捕縛された。相手は敵だ。なのに何故かこの声の持ち主の言うことを聞かなければならない気がする。
遠い昔、孤独の海を彷徨っていた時に聞いた優しい声にどこか似ているからだろうか。
ルーヴェリア「何でも言うことを聞くという話だったな」
セラフィナ「…………」
ああ、やはりあの時の声の主だったのか。
ぽろぽろと涙を流しながら力無く頷くしか無いセラフィナの姿に愉悦を覚えながら、ルーヴェリアは再度質問する。
ルーヴェリア「魔王の居城、それから帝国の状況を話せ」
セラフィナは俯きながら、ぽつりぽつりと話し始めた。

👼🏻りょうき😈
神代真
星巡奏
宵宮灯
各2500粒
アイコンは神代と星巡のペア購入なら500値引きします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
魔導の灯
4000粒
アルファ
星絆
セラフィナ
各300粒
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天月 兎
第二十七話 後編
一方で、第一騎士団が去った後ではあったが、それは現れた。
降り頻る雨粒が地面に弾かれるたびに不協和音を奏で始め、跳ねた水滴が少しずつ魔物の姿を形成していき、水祖セラフィナが構築される。
セラフィナ「…他の方は撤退させたのですか?」
開口一番、ルーヴェリアしか残っていないこの状況に首を傾げてくる。
ルーヴェリア「賢明な判断だろう」
セラフィナはふふ、と笑ってルーヴェリアの言葉に頷いた。
そう、それでいいのだ。
だってセラフィナは、ルーヴェリアを壊すために来たのだから。
瞬く間にルーヴェリアの鎧を濡らしていた雨粒が、足元に広がる血の混じった水溜りが、彼女の全身を包み込んだ。
水の色は暗く、まるで海中深くに潜り込んだ時のような色をしている。
水は呼吸を許さず、数分の後に肺を満たして苦痛を与えた。
が、この程度、彼女の剣で裂けばどうってことはないのだ。本来なら。
何故それが出来なかったのか?
それは、彼女の目の前に広がった光景がそうさせなかったからだ。
砲弾の雨が嵐の如く襲いくる戦場。
着地地点にいた者は、敵も味方も関係なく地面ごと全てを吹き飛ばしていく。
魔術壁が張れるほど進歩はしていなかった時代において、科学を発展させて戦場そのものを蹂躙することに長けていた帝国との戦いは、こうであることが常だった。
これはまだ、ルーヴェリアが騎士団に入りたてだった頃の記憶だ。
少し周りより剣と魔術の才能が秀でていただけの、ただの人間だった時の。
敵兵器を無力化しろ、という無茶な指示に従って前線を走り抜けた。
歩兵の甘い攻撃なんて意にも介さず最後方まで突っ切って、傷だらけの体で砲台を爆裂魔法で壊していった。
でも、出来たのはそれだけだった。
敵地に1人乗り込んだ、それは奴らにとって格好の餌食というわけで。
無論、並の人間より少しだけ剣の才能があったから、疲弊していようと体から血が噴き出していようとも関係なく敵兵を屠って、屠って、屠り続けた。
自分の血で汚れたのか、敵の血で汚れたのか分からなくなる頃には、帝国兵達はこれを相手にするのは分が悪いと判断したのか、別所で魔族との交戦があったのかは分からないが、撤退していた。
自軍の方を振り返れば、自軍もほぼ壊滅状態。
立っているのは2、3人だけ。
こんなことが、毎度繰り返されていた。
それでも、あの頃はまだ、守れたものがある。
家族がいると力を振り絞れていたのだ。
だが、無情にも場面はとある戦場へと切り替わる。
魔族に占拠された、ヴィト・リーシェ湖奪還戦。
朝食を終えて、さあこれから戦だと息巻いて魔族の群れに一丸となって突っ込んでいった騎士団。
戦いは拮抗したままだったが、ついに七将ザルヴォが現れ、残る兵士は今朝ほど共に朝食を摂った同僚と自分だけ。
ザルヴォの蛇の尾が彼を拘束している。
自分はといえば、両脚を負傷したせいでうまく走ることが出来ない。
だってこの時はまだ、ただ周りより少し優れた才能を持っただけの兵士だったから。
それでも、失いたくない。
殺させたくないと必死になった。
腕の力だけで人間と魔獣の屍の上を張って、失血のせいで定まらない視点を気力だけで補って、必死の力を振り絞って、剣を投げつける。
剣は見事にザルヴォの蛇の尾の根元を切れはしたが、同時にかの仲間は圧死してしまった。
届かなかった絶望、救えなかった絶望で目の前が真っ暗になる。
でも確かに、此方へ近づいて来る足音が聞こえたから。
怒りとも、悲しみとも呼べない叫び声をあげながら、ありったけの魔術をザルヴォに浴びせた。
奴は致命傷を負ったと判断したのか、ゲートに帰っていき、ゲートは閉じられた。
……戦闘は勝利したが、生き残ったのは、正確にはまだ息があったために回収されたのはルーヴェリアだけだった。
だが、まだだ。まだ終われない。
回収しに来た兵士200余名を連れて、ルーヴェリアは軋む身体に鞭を打ってシュガル山、ファランス山へと進軍した。
周りの静止も耳に入ってはおらず、目につく敵と思しきものは全て切り捨て、焼き殺し、排除して、北西諸国へと向かったのだ。
激戦地に赴く恐怖で足を止める兵士もいた。
ルーヴェリアは構わず歩みを進めたため、ほぼ1人で北西諸国を襲っていた植魔、水魔の群れを一掃。
その目には敵しか映っておらず、まだだ、まだだ、これ以上奪わせるものかと、たかが剣と魔術の才能に秀でただけの小娘が突き進んでいったのだ。
後方は数多の死体の山が積み重なったが、それすら見えていないかのように踏み越えて。
たったひと月弱で周辺諸国の魔族を撃退し、サフラニア周辺の魔族の群れも、帝国領方面へと追い返してしまった。
帝国は魔族との争いでこちらを攻めるどころではなくなり、結果サフラニアは多くの死傷者を出しはしたが、国そのものは守られた。
その功績を讃えられ、彼女は12歳という前代未聞の若さで、先刻の戦いで穴が開いてしまった第一騎士団長の座に就くことになった。
その記憶の断片を見せられ、ルーヴェリアは考える。
こいつは、何がしたいんだろう、と。
セラフィナの声が水球の中を反芻する。
守りたかったもの、守れなくて残念ですね?
どうやらあの魔物は、自分に過去の記憶を見せることで、所謂トラウマと呼ばれるやつを思い起こさせたいようだ。
ヘルムのおかげでルーヴェリアが何も感じていない表情を図ることが出来ないためか、セラフィナは調子に乗ってこんなことをほざきだす。
セラフィナ「人の体は弱く、命は脆い。でも貴女はどこかの魔女がかけた呪いで体も命も奪えない。でも人の殺し方って、何も命を奪うことだけじゃないんですよ」
ルーヴェリアは「ああ、よく知っている」と頷きたかったが、あえて調子に乗らせておこうと何もしなかった。
相変わらず肺は痛むが、別に死にもしないので放置でいいだろう。
痛みには、慣れている。
セラフィナ「心が壊れてしまえば、それは死んだも同然なのです」
歌うように言いながら恍惚とした表情を浮かべて、さあ次は何を見せようかと思案した。
水球の内側に映し出されたのは、今ではおとぎ話となってしまった概ね50年前の戦いの記憶。
交戦中の他騎士団の援護に向かったあの日。
指定された位置には、敵影も味方もなく。
ただ、地面に戦いの残滓が散りばめられているだけで。
そんな中、見つけたのだ。
内包していた魔力を全て放出し、抜け殻と化している黒いチョーカーを。
その傍に、見知った筆跡で"私が生きた証"と書かれているのを。
ここで交戦していたのは間違いなく、そして敵も味方も全滅したのだ。
救援が間に合わず、かの騎士団長は己と騎士団員ごと敵を葬ったのだと悟らざるを得なかった。
次に映ったのは親友を喪った日の戦い。
唯一、心を預けられる存在だった大切な親友は、陣幕内で息絶え、七将ノクスの力で屍人となった騎士団員に殺されていた。
全身のあらゆる部分を食い千切られた状態で、地に伏していた。
戦う術を持たなかった彼女は、せめて屍人が外に出ないよう、必死に陣幕の入り口を塞いでいたのだろう。ここに敵が居ると叫んだのだろう、大きく口は開いたままで、両腕はぴんと真横に伸ばされた状態だった。
片腕には、親友の誕生日に贈ったブレスレットがしっかりと付けられていた。
内乱はあったものの、援軍に駆けつけてくれた他の騎士団のおかげで勝つことはできたが、大きなものを失ってしまった戦場だった。
色々な戦場の記憶が水球の内側を彩っていく。
死期を悟り、大切なペンダントと共に自分の意思を私に託して命を燃やし尽くした人。
生まれ育った地を守るために、死を厭わず魔獣の群れに攻め入り、劣勢を好転させ勝利に導いてくれた末に死んだ者。最期は騎士団員として履くように強制したブーツを脱がしてやったか。
数多の魔族に囲まれ、もう私と自分しか残っていない状況で、背中合わせで戦い、国一つを守り抜いた。だがその戦いで治療不可なほど深く傷を負って、私が、介錯した。
託されたガントレットは今、私の手を守ってくれている。
私の不在時、文字通り自国近辺を自軍だけで駆け回って多方向からの襲撃からサフラニアを守り切った英傑。彼の者が私に遺してくれたのは、心を守ってくれる兜。
もう、いいだろう。
充分だ。
水球に横一文字の線が描かれた。
線から真っ二つに裂かれた水球は、檻としての機能も鏡としての力も失って弾けるように消える。
ルーヴェリア「人の死を愚弄した感想を聞かせてもらおうか」
躍動感のある声色に、セラフィナは眉を顰める。
なぜ、壊れない。
確かに彼女が心に負った傷を、記憶を具現化させた。
人は傷を負った記憶を直視すれば心は闇に呑まれ、壊れるはずなのに。
ルーヴェリア「私の心を……壊す?のが、目的だったか?」
喉の奥から込み上がる笑いを堪えているような喋り方だ。
心が壊れて頭がおかしくなったのか、兜のせいで表情が見えないので何とも言えないが、セラフィナは一つ確信した。
自分は過ちを犯した、と。
ルーヴェリアの足元に魔法円が描かれる。
瑠璃色の円と朱色の円。それらは幾重にも重なって立ち昇ったかと思えば。
セラフィナ「……!」
体内を流れる魔力が停滞した。
水祖として得た力も、魔族が誇る膨大な魔力も封じられたのだ。
今やセラフィナは、少し常識を超えた姿形をしただけの、陸に上がった、ただの魚だ。
セラフィナ「あんな魔術を使っておいて、どこにそんな魔力を…!」
あんな魔術とは恐らく、屍人達を燃やし尽くした二つの太陽のことだろう。
なるほど、水鏡か何かで見ていたか。
驚愕の声に首を傾げてみせる。
ルーヴェリア「魔族のくせに潜在魔力というものを知らないのか?」
セラフィナはそんなもの、見たことも聞いたこともないようだった。が、魔族としてのプライドが首を縦に振るのを躊躇わせているらしい。
魔力というのは、生まれた時から体内を流れる量が定められていて、それを増やせるか否かは運次第だ。
努力でどうにかなるものでもないので、魔族は生まれたままの自分を受け入れる。
人間よりは遥かに多く内包されているものだから、別段何かをする必要はなかったのだ。
だからこそ人間は、それに対抗するためにどうにかして魔力の内包量を増加させる術を探した。
それが、潜在魔力の解放だった。
身体強化の応用で、魔力に魔力をぶつけて分裂、増幅させることで、本来なら運次第で伸びるか伸びないかの部分すら超越して莫大な魔力量を得る術だ。
体内に内包しきれなくなると、魔力が溢れ出ると同時に身体そのものも爆発四散してしまうので使える人間は限られているが、ルーヴェリアは呪いのおかげで死ぬ事がないので耐える耐えない以前に、そもそも魔力が溢れる事がない。
謂わば、彼女の特権のようなものだ。
ルーヴェリア「…さて。戦いに於いて食糧は大変に貴重なもので、食事はとてもとても大事なことだ」
目を瞠るセラフィナを見て、まあ彼奴からは見えることはないが残忍な笑みを浮かべた。
ルーヴェリア「お前は、どんな味がするんだろうな?」
髪と思しき部分を鷲掴み、ずるずると引き摺りながらルーヴェリアはサフラニアを目指して歩いた。
魔族が、それも七将がなす術なく暴れながら泣き叫ぶ光景を見ることが出来る人物がこの場にルーヴェリアただ1人しかいないのは、非常に残念である。
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天月 兎
埼玉/女/26歳
出会い目的の方は回れ右してくれ。
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名前の読み、実は「かむづき うさぎ」なんです。
あまつきでもてんげつでもないよ。
普段はゲームに夢中、ロボトミ、ルイナ、リンバス、FGO、雀魂、麻雀一番街がメイン。
FPS大嫌いだけど稀にBF5の愚痴吐くよ。
SSもたまーに書いてて時々うpします。
たまーにお絵描き、作曲もするお。
よろすく。
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かこーあ ꪔྀི̤ 🐡
出会い厨は嫌いすぎる😭
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