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紫苑/しおん🐈⬛
③幼少期のジレンマ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
王は、特別なことのようには語らなかった。
どれも、彼にとっては普通の景色だった。
通学路で投げられた言葉。給食の時間に、ひとつ空いた席。名前を呼ばれる前に、出身を聞かれること。彼は、それらを順番に並べていく。因果も、感情も、付け足さない。出来事を、出来事のまま置いていく。
「嫌だった、とは思ってなかったです。」
そう言ってから、少しだけ間を置いた。
「今なら、違和感を持っていいことだとは分かりますけど。」
私は、その言い回しに戸惑った。
違和感を持っていいーー
まるで、感情が後から許可されているような言葉だった。
私は線を引きながら、そこに悲鳴を探してしまう。抑え込まれた怒り。言葉にならなかった孤独。そうしたものが、きっとどこかにあるはずだと。
だが、彼の語りは淡々としている。声は揺れず、視線も逸れない。そこにあるのは、ただ事実の列挙だけだった。
「そういうものだと思っていました。」
彼は、それ以上説明しなかった。
説明が必要だとも思っていない様子だった。
私は、その言葉を受け止めきれなかった。あまりにも静かで、あまりにも整っていたからだ。私には、それが悲鳴に見えた。声を上げることすら選択肢に入らなかった人間の、もっとも深いところからの。
だが彼にとっては、違う。
それは悲鳴ではない。
ただ、起きたことだ。
私は描きながら、何度も輪郭を修正する。感情を描こうとすると、線が嘘をつく。事実として描こうとすると、私の側が揺らぐ。
彼は、すでに通過してきた景色を話している。
私は、まだそこに意味を与えようとしている。
#創作小説 #紫苑 #Lineage

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