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優飛

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『白い息の向こうで』

仏は、今日も教室の隅で窓を見ていた。
みんなの笑い声が遠く聞こえるのに、自分だけ別の世界にいるみたいだった。

「どうせ、ぼくなんか……」

口に出したら、本当にそうなってしまいそうで、仏は心の中だけでつぶやく。
外は白い息が溶けていく冬の朝。曇った窓ガラスに、指で小さく丸を描いた。

そこにふっと風が吹くように、文字が浮かんだ。

──きょうも、生きててえらいよ。

「……え?」

急いで手をこすっても、消えない。
まるで窓が、仏の気持ちを知っているみたいだった。

胸の奥がきゅっとして、涙がにじむ。
誰にも言えなかった言葉。ずっと欲しかった言葉。

“えらい”なんて、誰も言ってくれなかった。
ネガティブな自分なんて、居場所なんてないと思っていた。

仏は小さく笑った。
笑おうとしてじゃなく、自分でも気づかないうちに。

「……ありがと。」

窓ガラスにそっと指で書き足す。

──ぼく、もう少しだけがんばるよ。

白い息がふわりと広がる。
その向こうで、曇った窓に残った文字が、弱い光に揺れていた。

まるで、彼だけの味方がそこにいるように。



#創作小説
GRAVITY

Loneliness

Mrs. GREEN APPLE

GRAVITY
GRAVITY107
あい

あい

今創作小説が61pまで進んでるんですけど、読んでみたいって人いますか?


#雨天決行
#創作小説
#質問をしたら誰かが答えてくれるタグ
GRAVITY16
GRAVITY74
光音

光音

【My Profile】


〈自己紹介〉

📘光音
📘ダイガクセイ
📘小説・趣味垢


〈ひとこと〉
頑張って生きてます✌️元文芸部&元演劇部で小説や台本、ちょっとした文章を書くのが好きです。基本低浮上にはなってしまいますが、よろしければ覗いてみてください📘



#自己紹介 #小説 #創作小説 #学生 #ひとりごとのようなもの
GRAVITY1
GRAVITY358
みおこんぼ

みおこんぼ

※再掲

過去投稿引用仕方がわからなかった〜[目が回る]
そもそも、そんな機能あるのかしら…。


スクショですみません💦
これから載せる話がこれの続編だったの[ほほえむ]

#友人Kシリーズ
#創作小説
#ほぼ実話
#長文注意
GRAVITY
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彼方@休眠中

彼方@休眠中

#30DAY架空読書CHALLENGE
※このチャレンジはお題にある架空の本のタイトルから物語を想像し、
あらすじ、もしくは感想文を書くチャレンジです

DAY19

地上800メートルでみる夢

世界一高い建物と言われたブルジュ・ハリファ
高さは829.9メートル
しかし、既にこれを上回る高さの建物を同都市で建築中とのこと
世界一と羨望の眼差しを向けられても、
すぐに追い越そうとするものは現れ、
抜かれ、
それでも人は夢を見る
それでも諦められないものがある
あの高さから見る夢の先に待ち受けるものはなんだろうか

そんな偉大なことをぼんやりと
平凡な教室の席で一人窓を眺める
“私”の戯言


*〜*〜*〜*〜


寒い!!!

ほんと寒い!!!
雪は降らなくても寒いって、損した気分!!!

みんな、風邪ひかないようにね[大泣き]


#物書き
#創作小説
#GRAVITY小説部
#創作小説
読書の星読書の星
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彼方@休眠中

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#30DAY架空読書CHALLENGE
※このチャレンジはお題にある架空の本のタイトルから物語を想像し、
あらすじ、もしくは感想文を書くチャレンジです

DAY12

桃源郷風ヨーグルト

祖母が時折はなすこと
「あの三つ目の信号を右に曲がると、
豆腐屋があって、
その脇道の室外機の上に猫がいる

いない日はだめ
あと、マダラの猫もだめ、
三毛猫が正解

そこの猫に丁寧に挨拶をして、
桃源郷へ行かせてくださいと頼むの

そうすると、
機嫌さえよければ案内してくれる
でも猫はきまぐれだから、
本当の桃源郷には案内してくれない
それでももう一度、あそこに行けたなら
あの真っ白で甘い絨毯に……」
不思議なことを言うなあと思った
豆腐屋なんかみたこともない
ただ祖母が嘘をついているようにもみえないのだ


これは僕の、
祖母への恩返しの旅路の物語であるーー


*〜*〜*〜*〜


はい!勢い大事です!!

ほんと、一緒に参加してくれるお友達に感謝[大泣き]

言い出しっぺ、一人だったら完全にめげてました💦

たくさんの人の色んな発想見れてほんと、楽しませていただいております!

ありがとうございます[照れる]


#物書き
#GRAVITY小説部
#創作小説
#彼方創作倉庫
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彼方@休眠中

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#30DAY架空読書CHALLENGE
※このチャレンジはお題にある架空の本のタイトルから物語を想像し、
あらすじ、もしくは感想文を書くチャレンジです

DAY4
死街灯

また一つ街灯の灯りがともった。
今日の灯りは温かい色だ。
私はこの街灯の番人
あなたたちが思うよりずっと長くここでこの灯りを見てきた。
きっとこの灯りの持ち主は温かい心のまま命の幕を下ろしたのでしょう
私の仕事はその灯りを見守り、
その生に目を向け、
敬意を払い、
手向けの花を添えること。
街灯は、誰かが終わりを迎える度に灯る
一つ一つが違う色
大抵の場合は寒色か暖色に分類される
今日もいつものように街灯を見守ると、
みたことのない色の灯りがそこに灯った
この灯りは一体……


*〜*〜*〜*〜*〜

なんかファンタジー短編集な気がする

今日は夕方から用事があるので、
早めに投稿!!
あと、早めに投稿しないと、
ハードル上がりそう💦
いや、嬉しいことなのです、
それだけみなさんご参加いただいておりますので
ほんとありがたい!!

ちなみこれまで、
私の投稿のコメ欄にてご参加くださってる方や、
友達限定公開で素晴らしいプロット組み立てくださってる方や、
ハッシュタグつけてないでご参加くださる方もいらっしゃったりします

同じ題材でここまで感じるものが違うってほんと面白いですね✨✨
楽しませてくださって本当にありがとうございます✨

是非とも、途中からでもどこからでも、
一つだけでも好きなように
ご参加くださいませ^ ^

鳥さんマークのSNSにてフリー配布してくださったアカウントの方に敬意を……[照れる]

#物書き
#GRAVITY小説部
#創作小説
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#30DAY架空読書CHALLENGE
※このチャレンジはお題にある架空の本のタイトルから物語を想像し、
あらすじ、もしくは感想文を書くチャレンジです

DAY3
倖せシュガーポット

他人の幸せなんて考えられない。
飢えを凌ぐために誰かが捨てた腐った野菜を食べ、雨の日は泥水を飲み、生きることにいつでも必死。
彼女に出会ったのは月夜の晩。
庭のテラスで優雅にお茶をしていたのだ。
ティーカップに月を浮かべて、砂糖を1さじ、そして仕上げにティースプーンで3回まわす。
それだけで人を倖せにできるのだと。
それが自分のことでさえ幸せにできない私に教えてくれたおまじない。


*〜*〜*〜*〜*〜

これ、考えるにあたり、
幸せと倖せの違いについて考えました

このお題って敢えて倖せになってるから、
それ、理解しなきゃなと思って[照れる]

倖せは人偏がついてるから、
人が寄り添う、
もしくはご縁があったうえの
しあわせなのかな?
なんて、
そんなこと考えながらのあらすじです[ほっとする]


着々と挑戦者増えていて嬉しく思います
鳥さんマークの某SNSにてフリー提供してくれた方(画像にアカウント明記あり)に感謝を[照れる]

コメント欄にてお題添付します!
今からでもみなさん一緒にチャレンジ楽しみましょう[ウインク]

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紫苑/しおん🐈‍⬛

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【桃太郎〜推し活とゆめかわの島〜全6章】
①秋葉原、好きと出逢う町。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

むかしむかし、秋葉原に、
おじいさんとおばあさんが
住んでいました。

おじいさんはコンカフェで働き、
おばあさんはメイド喫茶で働いていました。

ある日、
おばあさんの店に、
全身ピンクのふしぎなお客さんが来ました。
『オッフゥ…メイドかわよ...』

ピンクのお客さんは、
かわいいものが好きでした。
でも、振る舞いはどこかぎこちなく、
推し活の作法をよく知りませんでした。

そのとき、
店の奥から声がしました。
常連客の犬山でした。
「こいつァー、なってねーやッ。」

犬山は、
長年メイド喫茶に通い、推しとの距離、お金の使い方、礼儀と覚悟を知り尽くしたオタクでした。

犬山は言いました。
「かわいいだけで近づくなッ。金はァー、気持ちの代わりに出すもんだァ。推し活はァー、作法だッ。」

犬山は、
振る舞いの意味、応援の仕方、
お金の重さを、一から教えました。

ピンクのお客さんは、
犬山から学び、自分で働き、
自分で稼いだお金で、
自分の推しに団子を渡すようになりました。

けれど、その頃、
街では混乱が起きていました。

#創作小説 #紫苑 #推し活とゆめかわの島
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【経過良好(全7章)】
⑦通常業務

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「みつきちゃ~ん、交代の時間よッ!」

詰所の向こうから張りのある声が飛ぶ。
振り返らなくても誰だか分かる。

「はい」

看護師の吉田は、それだけ返して手元を片づける。
ペンを置き、端末を閉じる。

休憩室は昼でも薄暗い。
窓はあるが外は見えない。

カップを取る。豆を量る。お湯を注ぐ。
考えなくても手は順に動く。湯気が立ち 香りが広がる。
ここまで来ると ようやく一区切りだ。

スマートフォンが震える。
他愛ない通知を横に流す。
「くだらない…」

指でスクロールする。
一つだけ目に引っかかる言葉がある。

[令和に丙午の火災、再び!]

記事を開く。
[昨夜、文京区内の老朽アパートで火災。台所付近から出火。近隣住民が初期消火。大きな被害なし。]

コーヒーを一口飲む。苦い。いつも通り。

記事は続く。
[出火当時、30代の女性が一人在宅。火が出た直後、建物の外階段付近で発見。煙吸引なし。救急搬送なし。鍋が火にかけられたまま。室内に戻ろうとしなかった。不自然な点あり。警察は事情聴取。]

近隣住民の声。
(静かな人だった)(普通の会社員に見えた)

SNSの反応。
(丙午の火災?)(八百屋お七みたい!)

記事を下まで流し、そこで止める。
「どうりで……」

定期通院を無断キャンセル。
それだけで理由は足りた。

コーヒーがまだ温かい。

カップを置き立ち上がる。
休憩時間はまだ残っている。
だが十分だ。

吉田は廊下に出る。

白い床。
同じ音。
次の仕事が、もう動いている。

#創作小説 #紫苑 #経過良好
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死の舞踏 S.555 R.240

角野隼斗

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【経過良好(全7章)】
⑥火を見る女

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

七海は台所に立ったまま火を見ていた。鍋の中身はもう確認していない。煮立つ音だけが身体の内側に届く。

白い病室がふいに戻る。低い声。丁寧すぎる語尾。言葉の意味ではなく音の温度だけが残る。

息が浅くなる。
自分の輪郭が台所の空気に溶けていく。
手首に力が入らない。
膝がわずかに揺れる。

鍋が小さく鳴る。

その瞬間、身体の奥で何かが切り替わる。自分がいまどこに立っているのか分からない。ただ重さだけがある。内側から押し上げるような逃げ場のない感覚。それは快楽とは違う。不快でもない。溜まったまま行き先を失った熱だ。

七海は流しに手をつく。
視線は火から外れない。

煙を吸えば戻れる。

考えはそこまで整っていない。
ただ身体が先に知っている。

七海は火を見たまま財布を手に取る。鍵を掴む。バッグを肩にかける。火を弱めたかどうかは思い出せない。玄関を出る。靴を履く。扉を閉める。決断は言葉になる前に終わっていた。

ーー。

七海はアパートの階段を上っていた。外階段で鉄製だった。足を置くたび薄く鳴る。火は下から来るはずだった。料理中の鍋をそのままにしてきた。

階段の途中で一度立ち止まる。息は苦しくない。まだ煙は来ていない。

一段 また一段。手すりは冷たく ところどころ塗装が剥げている。ここを上り下りした記憶はいくつもある。仕事に行く朝。買い物から帰る夜。どれも同じ足取りだった。

今日は違うはずだった。そう思ったかどうかは自分でも分からない。

二階の踊り場に風が抜けていた。焦げた匂いはない。代わりに消火器の粉が床に散っている。

赤色灯の光が遠くで回っている。誰かの声がする。

七海は階段の途中で止まったまま。火はなかった。煙ももうなかった。

鍋は誰かが火を止めたのだろう。あるいは勝手に消えたのかもしれない。結果は同じだった。

七海は階段の真ん中に立っている自分の姿を、少し離れた場所から眺めるような気がした。

救急車のドアが閉まる音がした。サイレンは鳴らない。

七海はその場にしばらく立っていた。
上る理由も
下りる理由も、
もうなかった。

#創作小説 #紫苑 #経過良好
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【経過良好(全7章)】
⑤定期通院

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

七海は定期通院の日に少し早めに来た。受付を済ませ、待合の端ではなく中央寄りの椅子に座る。

その動きで服の前側が一瞬張る。布が先に動き、少し遅れて戻る。服が変わっている。派手ではない。露出もない。だが身体の線を隠すための服ではなかった。選び直されている。

化粧も濃くはない。肌の色を整え、眉を揃え、唇にだけわずかに色がある。整っている。

吉田は名前を呼ぶ。七海はすぐに立つ。
「はい」

声がよく通る。語尾が少しだけ跳ねる。歩き出す。歩幅は小さい。その分上半身の動きが目立つ。診察室の前でガラスに映る自分を一瞬だけ見る。

中に入る。

佐藤の声がする。
『どうですか その後』
いつもと同じ。低く丁寧。

「変わりないです」
七海の声が返る。
身体を寄せる。ほんの数センチ。

佐藤は椅子を引く。距離はこれまでと変わらず。
『表情 良くなってきましたね』
そう言ってカルテを見る。

七海は何も言わない。
軽く口角を上げる。

聴診器が当てられる。位置は正確。時間も変わらない。視線は下へ流れる。顔には留まらない。

吉田は数値を記録する。〖安定。問題なし。〗

七海の声が次に出る。
「康平さん 次も同じ時間で大丈夫ですか」
頼みではない。確認だ。

佐藤はうなずく。
『はい その方がこちらも助かります』
事務的な返答。

七海は「分かりました」と言う。声だけが柔らかい。

診察室を出る。歩幅は一定。だが足音が軽い。廊下で別の患者とすれ違う。七海は軽く会釈をする。会釈が少し大きい。

吉田は次の患者を呼ぶ。七海は振り返らない。足音が一定のリズムで遠ざかる。佐藤は七海のカルテを閉じる。
『安定ですね』
それだけ言う。

吉田は入力する。〖経過良好。定期通院継続。〗それ以上書くことはない。仕事は流れていく。七海の足音だけが、しばらく耳に残った。

#創作小説 #紫苑 #経過良好
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【経過良好(全7章)】
④退院日

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

朝の病棟は音が少ない。夜を越えた白が少しだけ薄まっている。七海はベッドに腰掛け、退院用の書類を膝に置いていた。紙は軽い。中身も軽い。

胸の奥が落ち着かない。理由は分かっている。ここを出るという事実そのものだ。昨日までこの部屋では呼吸が管理され、声が届き、名前を呼ばれた。今日は違う。呼ばれない。

衣服を整える。入院時よりも少しだけ選んだ服。派手ではない。ただ身体に沿う。立ち上がると重心が遅れてついてくる感覚がある。それを七海は意識してしまう。意識した時点で、もう戻れない。落ち着こうとする。できない。それも知っている。

ドアがノックされる。
佐藤が入ってくる。
手には退院確認の書類。

『調子はどうですか』
昨日と同じ声。同じ高さ。同じ速さ。

「大丈夫です」
声は安定している。七海自身が驚くほど。

佐藤は頷き、数値を確認する。
酸素。呼吸。問題なし。
『今日で退院になります』
宣告ではない。報告だ。

七海は「はい」と言う。言葉は短い。
それ以上足さない。

佐藤は説明を続ける。
吸入。薬。生活上の注意。
すべて正しい。すべて必要。

だが七海の意識は、声の内容ではなく、声がここにあるという事実に引き寄せられている。

説明が終わる。
『何か質問はありますか』
仕事としての一文。

七海は一瞬だけ迷い、首を振る。
「大丈夫です」

佐藤はそれ以上踏み込まない。書類にサインをし、『お大事に』と言う。佐藤が部屋を出る。白衣の裾が一度だけ揺れる。

扉が閉まる。
音は小さい。
だがはっきりと区切られた。

吉田が来て、手続きを終える。淡々と。
「では、お疲れさまでした」
その言葉に意味はない。儀礼だ。

七海は病棟を出る。エレベーターに乗る。鏡に映る自分を見る。顔色はいい。生気が戻ったと言われる種類の顔だ。だが身体の奥が静かにざわついている。

外に出る。風が思ったよりも冷たい。

七海は歩き出す。歩幅は一定。だが意識は内側に沈んでいる。何かを失ったというより、置いてきた感覚。名前も理由も与えられないまま。

一方、病棟では日常が続く。
佐藤は次の患者のカルテを開き、同じ声で同じ説明をする。吉田は詰所で入力を続ける。〖経過良好により退院。〗それだけで一件は閉じられる。

誰も振り返らない。
七海だけが歩きながら、胸の奥に残った重さをどう扱えばいいのか、まだ分からずにいた。

#創作小説 #紫苑 #経過良好
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そな

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自分で創作のお話とか書いてる人っていたりするのかなー。自分は何年か前から独学で書き始めて、すごく楽しい趣味のひとつになってる!
#創作小説
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【経過良好(全7章)】
③白は続く

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

病棟は朝になっても同じ色を保っている。光は入るが白は薄まらない。吉田は点滴の残量を確認し、吸入の時間を合わせる。順番どおり決められた動き。七海はその動きに抵抗しない。

ベッドに腰掛ける姿勢は昨日と変わらない。背もたれに寄りかからず、肩は少し前に落ちている。身体を守る姿勢だが、隠そうとしている感じはない。
「苦しくないですね」
「はい」
声は一定。抑揚がない。

吸入器を口元に当てると、七海は一度だけ視線を落とす。呼吸は徐々に整っていく。

回診の時間になると 足音が変わる。佐藤だと分かる。歩幅が揃っていて急がない。だが止まらない。
『おはようございます』
声が低い。診察室より柔らかい。

七海は顔を上げる。表情は変わらない。
だが、
顎の角度がほんの少し違う。
『昨夜は眠れましたか』
「まあまあです」

佐藤は椅子を引かず立ったまま距離を詰める。近いが触れない。聴診器を当てる。位置は正確だが、当てる前に一度だけ迷う。七海は呼吸を止めない。吸う。吐く。佐藤はその動きに合わせて視線を落とす。医学的に必要な確認、という顔。

吉田は回診表に目を落とす。〖肺音 良好。改善傾向。〗佐藤の手が外れる前に、一拍遅れる。その一拍は説明されない。
『このままいけば もう少しで退院ですね』

七海は一度だけ瞬きをする。表情は変わらない。
「そうですか」
声も変わらない。だが視線は逃げない。

『無理しなくていいですからね』
誰にでも言う文句。しかし七海の時だけ語尾が丁寧だ。吉田はカーテンを整える。

七海の周りには物がない。差し入れも連絡もない。それでも七海はこの空間に収まっている。
昼も、
夜も。
呼ばない。
呼ぶ必要がない、という顔をしている。
それが一番 長居する患者の顔だ。

夜の見回り。七海はベッドの上で上半身を少し起こしている。テレビは消えている。
「何か 困っていることは」
「いえ」

即答。
吉田はそれ以上、聞かない。

廊下に出ると、佐藤が詰所の前に立っている。七海の部屋の方を見ている。長くはないが、視線は正確だ。吉田はカルテに一行足す。〖経過 安定。〗
それだけで、この一日は終わる。
白は続く。
時間も続く。

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【経過良好(全7章)】
②火の不始末

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その日は、夜勤明けだった。
空が白み始める頃、救急外来の電話が鳴った。

内容は短い。
《老朽アパート。煙吸引。意識清明。喘息持ち。》

ストレッチャーが入ってくる。
女は上半身を少し起こした状態で、
マスクをつけていた。
呼吸が細かく割れている。
吸う。
吐く。
間が、ない。

「名前 言えますか」
「……しらやま ななみ」

声が
途中で切れる。

服には煙の匂いが残っている。焦げではない。生活の中に混じる、軽い煤。消防隊員が簡単な状況説明をする。《同じ階の住人の不始末。鍋。消し忘れ。火はすぐに回ったが 鎮火も早かった。》

吉田は頷き、モニターを装着する。
酸素飽和度、やや低下。呼吸音、軽度の喘鳴。
「少し様子を見ましょう」
それだけで入院は決まる。

病室に入ると、佐藤が先に来ていた。当直ではないはずなのに白衣を着ている。
『白山さん』
声が少しだけ柔らかい。

七海は視線を向ける。表情は変わらない。
『火事 怖かったですね』
慰めとしては、よくある言葉だ。

「……気づいたら 運ばれていました」
それ以上話さない。

佐藤は聴診器を当てる。布越しに、丁寧に。必要以上に、時間をかけて。吉田は記録を取る。〖火傷等外傷なし。意識障害なし。〗ただ入院の理由は成立している。

酸素。
吸入。
点滴。
ベッドに横になる七海は、いつもより少しだけ楽そうに見えた。佐藤は処置の説明を終えても、すぐには部屋を出なかった。
『何かあったら、すぐに私を呼んでくださいね』
医師として正しい言葉。

「はい」
七海はそれだけ答える。

吉田はカーテンを引く。
区切られた空間に火の気配はもうない。

それでも
七海は病室に残り、
佐藤は病棟に残った。

事故だった。
ただの火の不始末。そう処理される。

吉田はカルテに淡々と入力する。〖火災。煙吸引。喘鳴あり呼吸苦あり。SpO2 88%〗それ以上のことは、どこにも書かない。


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【経過良好(全7章)】
①問題のない患者

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「白山さん、白山七海さん。診察室へどうぞ」

待合の椅子から女が一人立ち上がる。吉田はカルテから目を上げて、その動きを追った。

白山七海。

ここに通い始めて、もう一年になる。
化粧は薄い。ほとんどしていないと言っていい。服装はいつも身体を締めつけない。首元も胸元も意図的に開いてはいないのに、布の重みだけが前に残る。歩くと、揺れが遅れてついてくる。急いでいないのに、視線が集まる歩幅だった。

カルテをめくる。
〖既往歴 喘息。発作 安定。服薬 遵守。
離婚歴あり。理由 記載なし。
同居人なし。緊急連絡先 職場。
生活状況 仕事と自宅の往復。〗
――問題のない患者。

診察室の扉が閉まる音。
続いて、佐藤の声。
『今日は……調子どうですか』
少し間がある。語尾が下がる。

「変わりないです」
七海の声は低くも高くもない。

佐藤は椅子を引き直す。距離を測り直すように。吉田は視線をカルテに落とす。数値はいつも通りだ。

『念のため 前回と同じ処方で』
念のため。この言葉は、七海の時だけ丁寧に使われる。

聴診器を当てる位置を佐藤は一度迷う。布の上から、必要以上に、正確に。七海は息を吸う。深くも浅くもない、ただ従う呼吸。佐藤の視線が一瞬、上から下へ流れる。医学的に必要な確認、という顔をして。

吉田はペンを動かす。
〖呼吸音、清。異常なし。〗

佐藤の手が聴診器を外す前に、ほんの一拍、留まる。七海は動かない。気づいていないのか、気づかないふりか。

『最近 忙しいですか』
診察に必要のない質問。

「普通です」
短い返答。余計なものを与えない。

『何か 気になることは』
「特に」

佐藤は少しだけ残念そうに頷く。救えなかった時の顔とよく似ている。診察室を出る時、七海は軽く頭を下げる。礼儀正しい。触れさせない距離。

吉田は一度だけ目を上げ、すぐにカルテに戻す。記録には 症状と数値しか残らない。佐藤の視線も、七海の身体も、どこにも記載されない。
次の患者の名前を呼ぶ。

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福来 雀

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続・帰り道

「この後……」
自分に言ったみたいな声だった。
返事を待つ前に、信号が青に変わる。
その人が歩き出す。
青だから歩く。それだけの理由で。

横断歩道の真ん中で、親子とすれ違う。
「たい焼き買ってあるよ、帰ったら食べよ」
「たい焼き!やったー!」
弾む声だけが先に進んで、視線だけが追っていった。
感情じゃなく、反射みたいに。

「……たい焼き、食べてく?」
その人が言った。
私が見ていたから、じゃなくて。
自分も食べたいから、そんなふうに聞こえた。

「……また今度」
“今じゃない” を言葉にしないまま渡した。

横断歩道を渡り切ると、道が分かれる。
「またね」
「……うん」

鍵を回して、家に入る。
空気が少し揺れた気がした。

「……」
声は出なかった。
出なかったというより、出そうと思うところまで行かなかった。
喉まで来る前に、言葉がほどけて消える。

扉が閉まる音が響く。
静かな部屋に、音だけが残った。

照明はつけなかった。
暗さの中でも、家具の輪郭は見える。
誰の気配もない空気が、ずっとそこにある。

ソファに座って、そのまま横になる。
何かを考える前に、時計の秒針の音が耳に入った。
規則正しい音。
それだけが、この部屋の時間を進めていた。

音が遠のいていく。
眠った。

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