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そう𖤣𖥧𖥣。
5日目(日)「犠牲を伴う愛情」
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目を開いたとき、涙がこぼれていた。
夢を見ていた。
……いいや、あれは夢なんかじゃない。
白く、無音の空間。
風もないのに、彼女の黒髪だけが静かに揺れていた。
ずっと見ていたような気がする。
なのに、名前も思い出せない。
でも――なつかしい香りがした。
彼女は、すっと僕の前に座った。
そして、静かに言った。
「あなたを、ずっと起こしてたの」
「目が覚めるたび、少しほっとしてた。
また、ここにいてくれてるって」
その声が、とても遠くて、でもやけに優しかった。
「みんなが消えていくこの世界で、
あなたひとりだけは、見届けてほしかったの。
誰かが“いたこと”を覚えていてくれるなら――
それだけで、私は……」
そこで彼女は一瞬、言葉を止めて、
少しだけ、笑った。
「私はもう、眠ったの。
記憶も関係も、全部整えられて、
名前さえ奪われた。
でも最後に残ったの。
“あなたを眠らせたくない”っていう、この想いだけが」
その手が、僕の頬にふれた瞬間、
彼女の輪郭が淡くほどけていった。
風にさらわれる花びらのように、音もなく、静かに。
そのとき彼女は、
少し笑って、少し泣くような声で言った。
「ほんとうは……もっと一緒にいたかった」
その言葉と同時に、
胸の奥に――
半年前の記憶が、
洪水のように押し寄せた。
コーヒーの湯気。
交わした視線。
「ちゃんと起きててよ?」と、
笑った声。
そうだ。
彼女は、あのとき……
僕の隣で消えたんだ。
僕だけが、整えられて、忘れていた。
彼女は、
消される瞬間まで、
僕のことだけを守ろうとしていた。
夢の中でさえ、ずっと。
たったひとりを、白の方に残すために。
目を開けたとき、
僕は声も出せず、床に崩れた。
あまりにも優しくて、
あまりにも残酷で、
泣くことさえ、赦されていないようだった。
……ねむい。
でも眠れない。
ここで目を閉じたら、
彼女も、僕も、
本当に“いなかったこと”になってしまう。
だから僕はまだ――
白の方に、立っている。
#ねむいだけなのに
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寝たら消える世界 指先のぬくもりが ほどける前に 僕は なにも言えなかった ねむい でも まだ 目を閉じられない 君が ここにいたことを 誰かが 覚えていなきゃ
みー
切ない 綺麗な言葉が並んでる