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ミチフミ龍之介
まざあ・ぐうす # 35
北原白秋訳
☆『まざあ・ぐうす』
「お面もち」
グレゴリイ・グリッグスさんは、
グレゴリイ・グリッグスさんは、
二十と七つのお面もちでおじゃって、
とっかえ、ひっかえ、ひっかえ、とっかえ、
街じゅうをやんやとわらわせる。
東へいっちゃひっかぶり、
西へいっちゃひっかぶり、
それでも、どの面がいちばんおすきか、
やっぱり御本人でおいいやれぬ。



あこ
橋本輝幸 編
早川書房
全部で9編のSF短編傑作選。
その名の通り、どの話もとても面白く読めた。
元来、SFを読んで来なかった私が、読み終わった後に更にSFを読もうと思う程には面白かった。
特に気に入ったのが3作
『第二人称現在形』 ダリル・グレゴリイ
この物語は、最初から自我と心を冷たく分析してみせる。
自己とは何かを模索していくストーリー。
淡々と行われる「ゼン」の説明や、登場人物のやり取りで、こちらの理解が追いついた瞬間から、
私たちは共にある決定的な喪失に向き合うことになる。
私は最後のアリスの決断で、彼女がとてもすきになった。
『暗黒整数』グレッグ・イーガン
高等数学証明による別世界との戦争の物語。
だと思う。
と言うのは、私には何の事だか分からない数論モデルの攻防戦が繰り広げられるからである。
しかし、それでもその攻防戦は、鮮烈にイメージ出来、グイグイと物語の中に引き込まれていく。
非常に面白く感じる事が出来たのは、流石イーガンの筆力のなせる技。
『ジーマ・ブルー』アレステア・レナルズ
ジーマ・ブルー。
「その色が世界で最も重要だった経験が僕の中に眠っている」
青の革命的な作品を発表してきたアーティストのジーマ。
超人的な体を持つ彼のルーツとは?
一度は埋もれてしまった彼の微小な存在理由。
それを探し求めていくジーマ。
その静謐な情景に心打たれる。
そして最後の作品に込められた決断と想い。
私は、深い感動を覚え、涙ぐんでしまうほどだった。
これら9作品の順序にも、編者の拘りが感じられ、最後までぐんぐん盛り上がりで、魅せてくれた。

