共感で繋がるSNS
人気
世界

世界

〜春を迎える村で2人は出会い、止まった時間は動き出す〜

祭りの取材で山あいの村を訪れた写真部の少年・神崎遥斗が、春の訪れを祈り冬を送り出す伝統の祭り『春迎祭』を取材する中で、神社で出会った少女・白石椿と心を通わせていく ——やがて、二人の運命が静かに絡み合う。

エブリスタにて連載始めましたd('ω' )

#小説
#自作小説
#恋愛
#感動
GRAVITY
GRAVITY272
世界

世界

承認ありがとうございました!
よろしくお願いします🤲

ルーキーですがエブリスタにて連載始めました😇

〜春を迎える村で2人は出会い、止まった時間は動き出す〜

祭りの取材で山あいの村を訪れた写真部の少年・神崎遥斗が、春の訪れを祈り冬を送り出す伝統の祭り『春迎祭』を取材する中で、神社で出会った少女・白石椿と心を通わせていく ——やがて、二人の運命が静かに絡み合う。

#小説
#自作小説
#恋愛
#感動
小説の星小説の星
GRAVITY
GRAVITY235
ハーロック

ハーロック

夕方の商店街

コロッケ屋の前で、コロッケが一個だけ床に落ちた
「うわっ」と店のおっちゃんが声を上げた瞬間、近くにいた小学生が叫んだ

「それ、三秒ルールあるやん!」

おっちゃんは真顔で言う
「……ここはな、商店街や
三秒ルールより、ほこりの速度が速い」

小学生、固まる
周りの大人が笑う
落ちたコロッケは、もったいないけど廃棄
でもおっちゃんは、何も言わずに新しいコロッケを一個、袋に入れて小学生に渡した

「え、いいの?」

「ええ、代わりに約束せえ」

「なに?」

「今日だけでええ
帰ったら、誰かに一回だけ言え
“ありがとう”って、ちゃんと言え」

小学生は照れて、ふんって鼻を鳴らしてから
袋を抱えて走っていった

その背中を見ながら、黒い服の男がぽつりと言う

「世界はな、全部が優しいわけちゃう
でも、優しさがゼロでもない
今日の自分は、その証拠を一個見た
ほな、それで十分や」


#希望 #自作小説
読書の星読書の星
GRAVITY5
GRAVITY191
ハーロック

ハーロック

四十歳になった今でも
鏡に映る自分は悪くないと思う

けれど、夫の目には私はもう「母親」でしかないらしい

ふとした瞬間に「綺麗だよ」と言われたかった
触れられたい以前に、女として存在したい

その想いだけが胸の奥でじわじわと熱を帯びていた

孤独を紛らわせるように始めたSNS
アイコンに少しだけ盛れた写真を使っただけで
驚くほど多くの若い男の子から声がかかった

その大半は軽い誘いで、相手にする気もなかった

彼に出会うまでは……

二十五歳、私よりも相当若い
フリーターで、気まぐれなメッセージばかり送ってくるのに
不思議と胸の奥をくすぐる

「今日も綺麗だね」
「会ったら、絶対後悔させないよ」

そんな軽い言葉のはずなのに
夫から久しく浴びていない甘さが
彼の言葉の端々にあった

会えば、きっと求められる
若い男が何を考えているかくらいわかっている

それでも、画面越しの彼の視線を想像するだけで
身体の奥に小さな火が灯る

いけないとわかっているのに
消そうとするとますます燃え上がるような危ない炎だ

夜、寝室で夫の寝息を聞きながら
スマホに浮かぶ新着メッセージをそっと開く

「早く会いたい
触れたら、きっと止まれないよ」

その一行に、喉の奥がきゅっと鳴った
止まれないのは、もしかしたら私の方かもしれない

「会ったら終わりだよね」と送ると
「終わりじゃなくて、始まりでしょ」
すぐに返事が届く

夫にはもう貰えない熱が、画面越しにじわりと伝わる

私はまだ、女でいたい
ただその願いが、ゆっくりと理性を溶かしていく


#希望 #自作小説
恋愛の星恋愛の星
GRAVITY22
GRAVITY146
ひるね

ひるね

小説読んでっていただけませんか?
私は小説が好きな学生です
この物語の主人公はカフェ巡りが趣味の小説家で
そのカフェで出会った人の相談に乗り、その人の人生や考え方を変えるという内容にしようと思ってます
よければ感想とアドバイスお願いします🙇‍♀️

【そのカップが空になるまで】

「今日はここにするか」
今にも溶け出してしまいそうなほどの暑さだ。
私はそう思いながら日傘をたたみドアを開ける
 ——カランコロン
ドアチャイムが静かなこの空間に鳴り響く。
私は迷わずに海の見える席へ。
眩しい太陽が海を照らしていて、少し現実味がなかった。
「アイスコーヒーを一つ」
待っている間、今日は気になっていた本を読もう。
新しく買った本を開き、かすかに聞こえる波の音を聞きながら読み進めていると
 
「お隣、いいですか?」

顔を上げるとそこには背の高くガタイのいい男の人が
「どうぞ」
それと同時に私の頼んだキッシュとアイスコーヒーが。
アイスコーヒーにミルクを入れて、ゆっくり混ぜる。

-カラン…
 
氷がぶつかる音が、やけに大きく聞こえた。
 
ふと、窓の外へと目を向ける
砂浜では、制服のままの女の子が二人、靴を脱いで海に足を入れていた。
波が来るたびに短い悲鳴と笑い声が重なって、すぐに風にさらわれていく。
帰り道の途中で、ほんの少しだけ日常を抜け出したようだった。
隣を見ると、隣の男性が、窓の外をじっと見ていた。
視線の先には、さっきの砂浜。
何かを思い出しているようにも、置いてきたものを探しているようにも見えた。
 
「あ、」
男性と目が合った
あまりにも綺麗な横顔だから見惚れてしまった。
 
「お嬢さんはあぁ言うふうに友達と海に来たことはありますか?」
急な質問に戸惑いつつ答える
「まぁ、何回かは行ったことがありますね。
 毎回靴下を汚して裸足で靴を履いて帰るから母に怒られてました。」
そう答えると男は少し口角を上げる。
その顔はどこか羨ましげだった
「いいですね。私もあんなふうにしてみたかったな」
 
私は一口アイスコーヒーを飲むとこう言った
「よければお話し聞かせてください」
男は少し驚いた表情をしてから語り出す
「女の子になりたかった、って言うと変ですか」
そう前置きして、彼は海のほうを見た。
「正確には、女の子として笑っていい時間を、ちゃんと欲しかったんです」
「でも、気づいたら大人になってて。
今さら、どう名乗ればいいのかも分からなくて
本当はセーラー服が着たかった、本当はお化粧だってしたかったしドレスも着てみたい。」

私はアイスコーヒーを飲み干しこう答えた
 
「じゃあ、羨ましがるのは、やめなくていいんじゃないですか」
 
そう言ってから、少しだけ間を置いた。
「なれなかったことより、
なりたかったって言えた今のほうが、私は好きです。今からでもその夢を叶えるのは遅くないと思いますよ。」
 
 彼は、いや、彼女はすぐには何も言わなかった。

しばらくして、砂浜から聞こえていた笑い声が遠ざかる。
「……そんなふうに考えたこと、なかったです」
小さく、でも確かにそう言った。
会計を済ませて、彼は先に立ち上がった。
ドアの前で一度だけ振り返り、
少し照れたように、頭を下げる。
「ありがとうございました」

カランコロン、とドアチャイムが鳴る。

彼の背中は、来たときよりも、ほんの少し軽く見えた。

私の前には、溶けきった氷と、
薄くなったアイスコーヒーが残っている。
ストローで底をさらうと、
カップの中は、空っぽだった。

#自作小説 #初投稿
GRAVITY
GRAVITY164
ハーロック

ハーロック

流星が降ったあの夜

確かに僕たちの心は繋がっていたんだ

君はごめんねと素直に謝った
心替わりしてしまったのだと

僕は凄く悲しかったのだけれど
悔しいのとは別に、確実に君に幸せになって欲しいと願う心は芽生えていた

あの夜の思い出は、今でも大切に胸にしまってある

この世に変わらないものはない
君は僕にそう教えてくれた

人間はみんなひとりぼっちだ
進んで行く道が交差した時に一緒にいて
道が離れれば、さようなら

感情は心の揺れ幅
波長が大きい程嬉しくなり、また同じだけ悲しくなる

体験を経て、人は成長する
味が出るとはこういうことを言うのだろうか

今年は一人であの丘に来た
今夜もきっと、流星は見られるだろう

君は覚えていてくれるかな
僕もそろそろ前に歩き出さないと

大丈夫
大丈夫
自分にそう言い聞かせて

前を向いて、生きていこう


#希望 #自作小説

HSPの星HSPの星
GRAVITY3
GRAVITY126
ハーロック

ハーロック

拝啓

久しぶりの手紙になります
突然の便りに驚かせてしまったらごめん

ふと、ちゃんと言葉にしておきたいことがあると思ったんだ

三年間、一緒に過ごした時間を今あらためて思い返すと
感謝ばかりが胸に残っています

あの頃の笑いも喧嘩も沈黙も、どれも僕にとっては大切なものだったし
君と出会えたこと自体が、今でも僕の人生の財産だと思っています

別れてからの一年間は、正直きつかったです

理由も真実も、結局どこまでが本当なのか僕にはわからないままだったけれど

それでもようやく心の痛みが静かに薄れて、新しい一歩を踏み出したいと思えるようになりました

これは君への未練ではなく、ちゃんと前に進むための区切りとして書いています

お互いにこれから違う景色を見ていくけれど
未来がそれぞれに優しく開けていくことを願っています

君に訪れる日々が、どうか温かいものでありますように

敬具


P.S

あの頃よりだいぶ大人になったけど、まだ洗濯物の靴下だけ片方行方不明になります

どこに行くんだろうね、あれ


#希望 #自作小説
恋愛の星恋愛の星
GRAVITY6
GRAVITY120
ハーロック

ハーロック

真夜中の病院は、静まり返っていた

薄暗い廊下の奥に、手術中と書かれた赤いランプが灯っていたんだ

僕はひとり、長椅子に座ってひたすらお母さんの無事を祈っていた

晩御飯を食べてから急に倒れたお母さんは、救急車で運ばれて緊急手術になった

スマホを開いて、僕はお父さんの写真を見た

お父さん、お母さんが緊急手術を受けているよ
お父さん、お母さんを助けてよ
お願いだよ

写真の中のお父さんは、笑顔のままだった

お父さんは、僕が小学三年生の時に川で溺れたよその子を助けて、亡くなってしまった

その子は助かったのだけど、お父さんはそのまま流されてしまったんだ

お父さん

僕はあの時、悲しかったのだけれど、子供を助けたお父さんが誇らしくもあったんだ

だけど、あれからね
お母さんは働きに出て、一生懸命僕を育ててくれた
ずっと貧乏だったけれど、僕は頑張るお母さんを見てきたから、それでも良かったんだ

だけど、ごめんねお父さん
僕は、神様は不公平だと思ったよ

だって、お父さんが助けたあの子は、きっと温かい両親の元で幸せに暮らしたと思うんだ

お父さんを亡くしたうちは、お母さんがとても苦労したんだよ

お父さん
お父さん
どうか、お母さんを助けてよ
こんなの、酷いじゃないか

いつの間にか、僕の前にひとりの大人が立っていたんだ

蛍光灯がボヤけて、顔はよくわからなかった
だけど、温かい感じがした

お母さんは、大丈夫だよ

そう聞こえた声は、まぎれもなく……

起きてください!
身体を揺さぶられて、僕は目が覚めた
いつの間にかウトウトしていたようだ
目の前に、看護師さんがいた

お母さん、頑張りましたよ!
手術はうまくいきましたよ!

あぁ、あぁぁ
僕はそのまま泣き崩れてしまった

お父さん……

僕はその時、確実にお父さんを感じたんだ



#希望 #自作小説
HSPの星HSPの星
GRAVITY7
GRAVITY116
ハーロック

ハーロック

第三話 (全三話)


「冒険は怖い」
子どもたちは黙ったままだった
「でもな、怖いだけの冒険は続かへん」

「ワクワクってのはな
“いいことが起きる”って信じる力やない
『自分で何かできる』って信じる力や」

男は封筒を一枚、指でトントンと叩いた

「明日、自分らは封筒を開ける
そこには、プレゼントとは違って“紙”が入ってる」

子どもたちがざわめく

「紙にはな、約束を書くんや」

「約束?」

「せや
“来年のクリスマスまでに、自分で一個だけやること”」

一人の子が小さく言った

「無理だったら?」

黒い服の男は即答した

「無理でもええ
そのかわり、“やろうとした”って言え
やろうとした人間は、もう進んどる」

「そしてな」

男は少しだけ声を落とした

「自分らが約束したことは、誰かに見せてもええ
先生でも、友だちでも、未来の自分でも」

「自分らの約束を見て
『手伝うで』って言う大人は、ちゃんとおる」

「世界は世知辛い
でも全部が冷たいわけやない」

子どもたちは、少しだけ息をしやすくなった顔をした

男は、ここで初めて笑った
口角だけの、小さな笑い

「ちなみに、ワシは赤い服のサンタと違ってな
“良い子”にしかプレゼントあげへん、みたいなこと言わん」

子どもたちが「え?」と声を上げる

「良い子ってなんや
泣かへん子か? 我慢する子か?
それ、いちばん損する子や」

子どもたちが笑った
先生も、堪えきれずに笑った

黒い服の男は言った

「自分らは、泣いていい
怒っていい
寂しいって言っていいんや
それは“悪い子”やなくて、ちゃんと生きてる子や」

そして、最後にこう言った

「生まれてきて良かったかって?」

子どもたちの目が揺れる
この質問は、ここでは危険な質問だ
答えが出ないことがある

黒い服の男は、答えを押し付けずに、言った

「“良かった”って思える日が、これから増えるようにする
それが大人の仕事や」

「でもな、そのために必要な材料は、もう自分らの中にある」

「自分らは、ここまで生きた
笑った日もある
泣いた日もある
誰かに優しくした日もある」

「それ全部が、未来の種や」

子どもたちは黙って聞いていた
言葉が胸に落ちる時、人は静かになる

黒い服の男は立ち上がった

「さあ、寝えや
明日は明日で忙しい
封筒を開けて、約束を書いて、朝飯食って、笑え」

「眠れんやつは、廊下の星を見とけ
星はな、誰の上にもある
それだけは平等や」

子どもたちが、毛布を引きずりながら戻っていく
その背中は、来た時より少しだけ軽い

先生が小声で言った

「あなた、何者なんですか」

黒い服の男は、ドアの前で振り返った

「ワシか?
ワシは、未来に“ちょっとだけ期待していい”って許可を配るもんや」

そう言って、外へ出た
冷たい空気が入って、ドアが閉まる

——

ここまで読んでくださった、あなたへ

もし、心が病んでいて、世界が暗く見える夜があるなら、覚えていてほしいのです

希望というものは、眩しい光ではありません
毛布みたいなものです
寒さを消さない
でも、守ってくれる

暖かいと、人は幸せを感じることができるのですよ

今夜、あなたが生きていること自体が
もう十分にすごい

生まれてきて良かったと思える日が、増える側にあなたはいる

メリークリスマス
あなたにも、心が少し温まる夜が訪れますように……


#希望 #自作小説
読書の星読書の星
GRAVITY19
GRAVITY114
もっとみる
新着
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

八日目 完成した小説(ラノベ)を読んだ感想、「うん。」でした。
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY
GRAVITY2
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

五日目〜七日目 ちょくちょく進めながら縦書きにするとそれっぽくなることを知った
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY
GRAVITY4
ハーロック

ハーロック

第二話 (全二話)

元妻が声を尖らせた。

「あなた、私を責めたいだけでしょ。娘を盾にして」

父の怒りが、ここで解放される。
爆発じゃない。解放だ。
理性のまま、刺す。

「盾にしてるのはお前だ」

娘が息を止めた。
父は、娘の方を一度も見ない。見たら、優しさが先に出てしまう。今必要なのは優しさじゃない。線を引くことだ。

「娘を使って、俺から何か取ろうとしてる。金か、支配か、見栄か知らないが、全部同じだ。娘の心を踏んでる」

元妻の顔が歪む。

「そんな言い方……!」

父は一歩踏み込む。
声は大きくしない。大きくすると娘が怯える。
代わりに、断言する。

「娘は物じゃない。回収できる荷物じゃない。大学に行く年齢になってから現れて、親ヅラして、人生に割り込むな」

その瞬間、娘の嗚咽が漏れた。
父の胸が痛む。痛むが、止めない。ここで止めたら、また侵入される。

元妻が、最後の札を切るように言った。

「娘はあなたの子じゃない。だからあなたは関係ない」

父はそこで一秒だけ黙った。
黙ってから言う。怒りに任せた言葉じゃないと示すために。

「血の話をするなら、勝手にしろ」

言い切ってから、父は続けた。

「でも家族は血で決まらない。家族は時間で作る。毎日のご飯と、熱と、ケンカと、仲直りと、逃げない背中で作る」

娘の肩が震える。
涙を拭こうとして、拭けない。

元妻が食い気味に言った。

「ほら、こっちに来なさい。お母さんと暮らした方が楽よ。大学だって」

父が元妻を見て、静かに返した。

「その“楽”の中身が金なら、なおさら信用できない」

言い切った瞬間、元妻の目が泳いだ。
図星の時、人は怒るか逃げるかしかできない。

元妻は怒りを選びかけたが、父の“揺れない目”に負けた。
これは理屈じゃない。覚悟に負ける。

「……最低」

元妻が吐き捨てる。

父は返した。

「最低でいい。娘を守れるなら、それでいい」

元妻は一瞬、何か言いかけた。
でも、娘の涙を見た。
娘が元妻を見ていないことも見た。元妻が求めている“支配の手応え”が、どこにもない。

元妻は、引いた。
玄関の外へ一歩下がり、早口で言う。

「勝手にしなさい。でも後悔しても知らないから」

最後の捨て台詞は、負けの証明だ。
元妻は踵を返し、そのまま行った。
二度と戻ってこない歩き方だった。勝てない場所には来ない。そういう人間だ。

ドアが閉まったあと、父は膝が少し震えているのに気づいた。
怒りで震えているのではない。守り切った反動だ。

娘が言う。声が掠れている。

「……ごめん。私、怖かった」

父は首を振った。

「謝るな。怖くて当たり前だ」

娘は涙を拭いた。

「お父さん、あんな怒ったの初めて見た」

父は少しだけ笑った。
笑うと喉が痛い。

「怒る必要があった。あれは、お前の前でやらないと意味がない」

娘がうつむく。

「……私、他人って言われた瞬間、頭が真っ白になった」

父は言った。

「他人じゃない」

言い切ってから、言葉を足す。
押しつけにならないように、でも逃げないように。

「血のことは、事実として受け止める。必要なら調べる。それでも俺は変わらない。お前が望むなら、俺は父親で居続ける」

娘の肩が崩れた。
泣き方が、小さい頃と同じだった。声を殺して、歯を食いしばって、涙だけが落ちる。

父は隣に座った。
抱きしめるかどうか迷って、抱きしめない。今の娘は子どもじゃない。尊厳を守るための距離を選ぶ。

その時、廊下の奥に気配が立った。
黒い服の男だ。黒いコート、黒い手袋。関西弁のくせに、今日はやけに静かに見える。

「自分、ようやったな」

父は小さく息を吐く。

「……娘の前で怒るのが、こんなに難しいとは思わなかった」

黒い服の男が頷く。

「怒りってな、暴れるためやなくて、守るために使うもんや。今日のは、ちゃんと“守る怒り”やった」

父は娘を見る。
娘は涙を拭きながら、父の腕を掴んでいる。小さい頃の癖が、無意識に戻っている。

黒い服の男が続ける。

「元妻が言うたんは“血”の話だけや。ほな自分らが持っとるのは何や。十三年分の生活や。逃げへん背中や」

父は頷いた。

「……奪わせない」

黒い服の男は、ここで少しだけ笑った。

「せや。戦うんちゃう。守るだけや。娘の意思をな」

父が立ち上がり、娘に言う。

「明日、二人で手続きとか相談とか、必要なことを整理しよう。全部、現実で処理する」

娘が小さく頷く。

「うん……私、ここがいい。お父さんと暮らす」

父の目が熱くなる。
でも泣かない。泣いてもいいけど、今は背中を固くしてやる。娘の足場になるために。

父は短く言った。

「分かった。ここがおまえの家だ」

黒い服の男は、玄関の方へ歩きながら、最後にぽつりと落とした。

「血は始まりの材料や。でも家族は毎日作るもんや。自分は十三年作ってきた。そら、もう誰にも崩せへん」

気づけば、男はいなかった。
でも、部屋の空気は少しだけ整っていた。

娘がテレビを消した。
父はキッチンに立ち、湯を沸かす。
二人とも、まだ胸が痛い。
でも“壊れない”ことだけは、今日も更新された。

普通の夜が、戻ってくる。
それがいちばん強い。


#希望 #自作小説
読書の星読書の星
GRAVITY3
GRAVITY91
ハーロック

ハーロック

第一話 (全二話)

父と娘は、普通に幸せに暮らしていた。

劇的な幸せじゃない。朝起きて、出勤して、晩ご飯を食べて、洗い物をして、娘がテレビを見ながら笑って、父はその横でスマホをいじる。そんな生活の幸せだ。

父子家庭になったのは娘が五歳のときだった。
浮気をした妻と離婚し、父は娘を引き取った。

大変だった。
仕事をしながら、保育園の送り迎え、発熱、夜泣き、入学準備。
父は不器用で、完璧ではなかったが、誠実だった。娘が転べば抱き上げ、泣けば理由が分からなくても隣に座った。いちばんしんどいときに逃げずにそこにいる。それだけは揺らがなかった。

娘はスクスクと育った。
反抗期もあった。父の言い方が気に入らない夜もあった。でも家が“壊れない”ことは分かっていた。どれだけ口が悪くなっても、父は朝になれば弁当を作り、娘の靴紐がほどけていれば黙って結び直す。そういう積み重ねが、娘の人格の背骨になった。

娘は大学に進もうとしていた。
父は学費の計算をしながら、内心、誇らしくて仕方がなかった。やっとここまで来た。ここから先は、この子の人生が広がる。

そのタイミングで、元妻が現れた。
何年も音沙汰がなかったくせに、いまさら、堂々と。

インターホンのモニターに映った顔を見た瞬間、父の胃が冷えた。
娘も廊下の奥から気配をうかがっている。大学の資料を抱えたまま、立ち止まっている。

父は一呼吸置いてからドアを開けた。

「久しぶり」

元妻は笑っていない。
いや、笑ってはいる。目が笑っていない。人を数える目だ。

「娘を引き取りたいの」

その言い方が、もう“交渉”ではなく“回収”だった。
父は一瞬で理解する。彼女の視線が、娘の顔ではなく、部屋の奥。家の広さ。生活の匂い。大学の資料。将来の金の匂いを嗅いでいる。

「今さら何言ってる」

吐き捨てたくなるのを、父は飲み込んだ。娘が見ている。

元妻は肩をすくめた。

「あなた、自分の子だって思い込んでただけでしょ」

そこで、娘の肩が揺れた。
父は、その揺れを見て、はっきり分かった。

この女は、娘を守りに来たんじゃない。
娘を武器にしに来た。

父の声が低くなる。

「娘の前で言うことか、それ」

元妻は平然としていた。

「事実を言っただけ。私が産んだの。あなたの権利なんて最初からないのよ」

娘の手が、大学資料の端を握り潰していた。
父の中で何かが切れた。

怒鳴りたい。
壁を殴りたい。
でも、それをやった瞬間、娘の世界が壊れる。父は、壊す方向の強さを使わない。

代わりに、壊さない方向の強さを出す。

「まず言っとく。今ここで、娘を連れて帰ることはできない」

そう言って父は、玄関から一歩も退かずに立った。
娘と元妻の間に、自分の身体を置く。

元妻が鼻で笑う。

「できるわよ。親なんだから」

父は、笑わなかった。
目だけで刺す。

「娘は十八だ。成人してる。どこで暮らすか、誰と暮らすか、本人が決める」

元妻が言い返そうとしたが、父は言葉を継がせなかった。
ここで勢いを与えたら、娘が“揺れる”。

「親権がどうとか、監護権がどうとか、そういう時期はもう終わってる。今は本人の意思が最優先だ」

娘が息を呑んだ音がした。
父は、振り返らない。視線を元妻から外さない。娘に安心を背中で渡す。

元妻の眉がぴくりと動いた。
この女は、“力関係”で生きている。理屈じゃない。勝てる場所にだけ座る。負けると分かれば逃げる。

だから父は、ここで“理屈の刃”をもう一本足す。

「それから」

父は、声をさらに落とした。

「お前がこの十三年で一回でも娘に金を払ったか。養育費。生活費。学用品。医療費。何か一円でも“責任”を払ったか」

元妻の口角が一瞬止まる。
娘が、はっと父を見る気配がした。父がこんな言い方をするのを見たことがない。

「……それは、いろいろ事情が」

父は遮る。

「事情があるなら、娘に言え。俺に言うな」

玄関の空気が硬くなる。
娘の涙が、床に落ちた。


#希望 #自作小説
GRAVITY1
GRAVITY79
ハーロック

ハーロック

古いベッドは、二人用のはずなのに、片側だけが妙に広かった。
シーツの皺も、枕のへこみも、まだ昨日のまま残っているのに、彼女の体温だけがない。

老人は、朝になるたびに手の置き場を失った。
起きる理由はある。食べる理由もある。薬を飲む理由もある。
でも、声をかける相手がいない。

「おはよう」

言ってみる。返事はない。
返事がないだけで、家はこんなに大きいのかと思う。

妻は先日、亡くなった。
衰えゆく彼女を、男は甲斐甲斐しく看病した。
喉が乾けば水を運び、寒がれば毛布をかけ、夜中にうわ言を言えば手を握った。
できることは全部やった。
だからこそ、できなかったことが胸に残る。

男はベッド脇の椅子に座り、何もしていないのに疲れた顔をした。
特にやることもない。
テレビをつけても、音が部屋に馴染まない。
散歩に出ても、帰ってくる家が静かすぎる。

「そろそろ、わしも……」

言いかけて、言葉が途切れた。
追いつきたいと思う時がある。
それは悲しみというより、長年の癖みたいなものだった。ずっと一緒にいたのだから。

その時、玄関の鍵が回る音もしないのに、廊下に足音がした。
きしむ床が、いつもより丁寧に鳴った。

居間の入口に、黒い服の男が立っていた。
黒いコート。黒い手袋。
初めて見るはずなのに、昔から知っているような立ち方。

男は関西弁で言った。

「自分、家が急に広なって、落ち着かん顔しとるな」

老人は驚かなかった。
今は、驚きに使う力も惜しかった。

「……誰じゃ」

「ただの通りすがりや。座ってええか」

「勝手にせい」

黒い服の男は対面の椅子に腰を下ろした。
部屋の空気が、少しだけ動いた。
それだけで老人の胸がふっと緩むのが分かった。
“誰かがいる”というだけで、人の心はこうも変わる。

しばらく、何も言わない時間が流れた。
こういう沈黙は、若い頃は気まずかった。
歳を取ると、沈黙はただの毛布みたいになる。

黒い服の男が、ベッドの方を見て言った。

「空いた側、見てまうんやろ」

老人は目を閉じた。

「……見てしまう。
癖じゃ。起きたらまず、あいつの方を見る。
おらんのが分かっとるのに」

黒い服の男は頷いた。
慰めもしない。励ましもしない。
ただ、その頷き方が、老人の言葉を“ここに置いていい”と言っていた。

老人は、ぽつりと話し始めた。

「看病はな、ようやったんじゃ。
飯も、薬も、風呂も、夜中も。
わしなりに、できるだけのことはした」

「でもな……最後は、結局、死んでしもうた」

語尾が揺れた。
責めたい相手はいない。
それでも、責める声だけが自分の中に残っている。

黒い服の男は、急に正しいことを言わない。
代わりに、老人の指先に目をやった。

「自分、その手、よう働いた手やな」

老人は自分の手を見た。
皺が深い。血管が浮いている。
爪は短く切ってある。看病のとき、引っかけないように何度も切った。

黒い服の男が、数えるように言う。

「その手で、何回、あの人の背中をさすった?」

老人は答えられなかった。
多すぎて。
数えたくないほど、あったから。

黒い服の男は続けた。

「水を飲ませた回数も、体を起こした回数も、
夜中に目を覚まして名前呼んだ回数も、
全部、自分の体に残っとる」

「その疲れはな、失敗の疲れちゃう。
一緒に生き切った疲れや」

老人の喉が鳴った。
涙が出るより先に、胸が熱くなった。

「……一緒に生き切った、か」

黒い服の男は窓の外を見た。
午後の光が、畳の目に沿って伸びていた。

「自分、今な、やることない言うてたな」

老人は苦笑した。

「ないよ。
掃除しても、飯を作っても、誰も褒めん。
話しかけても返事がない。
何のために、って思う」

黒い服の男は、すぐに答えない。
代わりに、小さなことを拾う。

棚の上の写真立て。
二人が若い頃の、少し色褪せた写真。
妻が笑って、老人が照れた顔をしている。

「自分、あの写真、捨ててへんやろ」

「捨てられるか」

「せやろ。
捨てられんもんが残ってるのは、ちゃんと生きた証拠や」

老人は、何か言い返そうとして、やめた。
その言葉は腹の底にすっと沈んだ。
嫌じゃない沈み方だった。

黒い服の男は、立ち上がらずに言った。

「自分、奥さんのこと、よう世話した。
でもな、世話っていうのは、最後まで“相手に触れる”ことやろ」

「今は触れられへん。
せやから手が余る。心も余る。
それが今の淋しさの正体や」

老人は唇を震わせた。

「触れられん……」

黒い服の男は静かに頷いた。
言葉の代わりに、少しだけ身を乗り出して、テーブルの上の湯呑みを老人の近くに寄せた。
熱いお茶は入っていない。空っぽの湯呑み。
それでも、その動作が“世話の形”に見えた。

老人は湯呑みを見つめた。
ふっと笑ってしまった。

「……誰かに茶を淹れるのが、癖になっておってな。
今も、二つ用意してしまう」

黒い服の男は、口元だけで笑った。

「癖はな、簡単に消えへん。
消さんでええ。
消えへんのが、ちゃんと好きやった証拠や」

老人の目から涙が落ちた。
ぽろっと。
理由は分かるようで分からない。
ただ、涙が落ちる場所が見つかったような感覚だった。

黒い服の男はそれを見て、何も言わない。
「泣くな」とも「泣け」とも言わない。
老人の涙が落ちる速度を、邪魔しない。

しばらくして、老人が言った。

「わし、そろそろあいつのところへ行きたいと思う時がある。
それを誰かに言うのは、悪いことのようで」

黒い服の男は、その言葉を善悪で裁かなかった。
裁かない代わりに、ただ一言だけ置いた。

「それぐらい、ちゃんと一緒やったってことや」

老人の背中が、少しだけ丸くなった。
丸くなった背中が、少しだけ楽そうに見えた。

黒い服の男は席を立ち、玄関の方へ向かった。
去り際に振り返らず、ぽつりと言う。

「自分、今日は一個だけやっとき」

老人が顔を上げる。

「……何を」

黒い服の男は、声を少し柔らかくした。

「奥さんの布団、たたまんでええ。
そのままでええ。
寝る前に、一回だけ、そこに手を置け。
言葉はいらん。置くだけや」

それは、何かを決める命令ではなかった。
生きろでも、死ねでもない。
ただ、今日を抱くための小さな仕草だった。

黒い服の男が消えると、家はまた静かになった。
でも、さっきまでの静けさとは違った。
冷たい静けさではなく、少しだけ温度のある静けさ。

夜。
老人は言われた通り、古いベッドの空いた側に手を置いた。
そこにはもう誰もいない。
それでも、手のひらはゆっくりと沈んだ。
布団の柔らかさが、過去を引き戻す。

老人は、声にならない息を吐いた。
胸が痛いのに、痛みが“壊れる痛み”ではなかった。

ただ、長い時間を生きた人間だけが持つ重さが、そこにあった。
誰に見せなくてもいい、誇りに近い手触りが。

老人は目を閉じた。
何も解決しない。何も決めない。
それでも今夜だけは、ひとりの部屋が少しだけ狭く感じた。

抱きしめられたのは、死でも生でもなく、
彼が積み重ねてきた日々そのものだった。


#希望 #自作小説
読書の星読書の星
GRAVITY5
GRAVITY99
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

四日目 なろう系のラノベの一話書いてみた。結果はバカつまらない。なんなんあれ、駄作やんけ
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY
GRAVITY2
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

三日目 正直無理ゲーでは?となりながらもとりあえず一話完成を目指す
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY4
GRAVITY1
トトロ

トトロ


#ヤングシェルドン #自作小説


僕はシェルドン・クーパー 。12歳。

大人たちは、よく『そんなに難しいことばかり考えて疲れないの』と聞いてくるけれど
僕にとって素数を考えるのは、他の子がゲームをするのと同じくらい自然な事だ。
むしろ、ゲームの方がルールが曖昧で
ストレスが大きい,

最近、大学の研究室に行くことが増えた。
教授達は僕の質問に答える時、何故か少し困った顔をする。
僕はただ、彼らの計算式ミスを指摘していただけなのに。
間違いを、正すのはいいことたと思うんだけど
どうやら大人たち"正しさ"より"気分"を大事にするらしい。
これはまだ理解出来ない。

学校ではクラスメイトが『青春ってさ〜』と
話していた。
僕が『青春はホルモンの影響で__』と言いかけたら、『シェルドンはそういうのいいから!』と
止める。
"そういうの"とは何なのか、明確な定義がほしい。


家に帰ると母が『今日はどうだった?』と聞いてきた。
僕が『統計的に言えば、平均よりは良い日だった』と答えると、母は笑って頭を撫でた。
その行為は科学的根拠に乏しいけれど
何故か少しだけ嬉しかった。

僕はまだ世界の全部を理解できている訳じゃない
でも、理解できないことがあるという事実を理解できるようになってきた。
それが"成長"なのかもしれない。多分___。
GRAVITY
GRAVITY13
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

二日目 書き出しは良いけれど自分の実力不足が目立って萎え始める
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY
GRAVITY3
わっしょい虎さん

わっしょい虎さん

今日から自分の好きな設定の小説を自分で書いて自給自足に挑戦してみる。

一日目 まだ書き出しすらしていない
#自作小説 #自給自足 #初チャレンジ
GRAVITY
GRAVITY7
もっとみる
関連検索ワード