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ひるね

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小説読んでっていただけませんか?
私は小説が好きな学生です
この物語の主人公はカフェ巡りが趣味の小説家で
そのカフェで出会った人の相談に乗り、その人の人生や考え方を変えるという内容にしようと思ってます
よければ感想とアドバイスお願いします🙇‍♀️

【そのカップが空になるまで】

「今日はここにするか」
今にも溶け出してしまいそうなほどの暑さだ。
私はそう思いながら日傘をたたみドアを開ける
 ——カランコロン
ドアチャイムが静かなこの空間に鳴り響く。
私は迷わずに海の見える席へ。
眩しい太陽が海を照らしていて、少し現実味がなかった。
「アイスコーヒーを一つ」
待っている間、今日は気になっていた本を読もう。
新しく買った本を開き、かすかに聞こえる波の音を聞きながら読み進めていると
 
「お隣、いいですか?」

顔を上げるとそこには背の高くガタイのいい男の人が
「どうぞ」
それと同時に私の頼んだキッシュとアイスコーヒーが。
アイスコーヒーにミルクを入れて、ゆっくり混ぜる。

-カラン…
 
氷がぶつかる音が、やけに大きく聞こえた。
 
ふと、窓の外へと目を向ける
砂浜では、制服のままの女の子が二人、靴を脱いで海に足を入れていた。
波が来るたびに短い悲鳴と笑い声が重なって、すぐに風にさらわれていく。
帰り道の途中で、ほんの少しだけ日常を抜け出したようだった。
隣を見ると、隣の男性が、窓の外をじっと見ていた。
視線の先には、さっきの砂浜。
何かを思い出しているようにも、置いてきたものを探しているようにも見えた。
 
「あ、」
男性と目が合った
あまりにも綺麗な横顔だから見惚れてしまった。
 
「お嬢さんはあぁ言うふうに友達と海に来たことはありますか?」
急な質問に戸惑いつつ答える
「まぁ、何回かは行ったことがありますね。
 毎回靴下を汚して裸足で靴を履いて帰るから母に怒られてました。」
そう答えると男は少し口角を上げる。
その顔はどこか羨ましげだった
「いいですね。私もあんなふうにしてみたかったな」
 
私は一口アイスコーヒーを飲むとこう言った
「よければお話し聞かせてください」
男は少し驚いた表情をしてから語り出す
「女の子になりたかった、って言うと変ですか」
そう前置きして、彼は海のほうを見た。
「正確には、女の子として笑っていい時間を、ちゃんと欲しかったんです」
「でも、気づいたら大人になってて。
今さら、どう名乗ればいいのかも分からなくて
本当はセーラー服が着たかった、本当はお化粧だってしたかったしドレスも着てみたい。」

私はアイスコーヒーを飲み干しこう答えた
 
「じゃあ、羨ましがるのは、やめなくていいんじゃないですか」
 
そう言ってから、少しだけ間を置いた。
「なれなかったことより、
なりたかったって言えた今のほうが、私は好きです。今からでもその夢を叶えるのは遅くないと思いますよ。」
 
 彼は、いや、彼女はすぐには何も言わなかった。

しばらくして、砂浜から聞こえていた笑い声が遠ざかる。
「……そんなふうに考えたこと、なかったです」
小さく、でも確かにそう言った。
会計を済ませて、彼は先に立ち上がった。
ドアの前で一度だけ振り返り、
少し照れたように、頭を下げる。
「ありがとうございました」

カランコロン、とドアチャイムが鳴る。

彼の背中は、来たときよりも、ほんの少し軽く見えた。

私の前には、溶けきった氷と、
薄くなったアイスコーヒーが残っている。
ストローで底をさらうと、
カップの中は、空っぽだった。

#自作小説 #初投稿
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