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紅緒べにを🦚
中学2年の頃の私は、中学書架に飽きて目ぼしいものがなかったことと、ほんの少し背伸びしたい気持ちとに背中を押され、高校書架に分け入った。
高校生の先輩に会ったら恥ずかしいな…生意気だって思われるかな…と今思えば取るに足らないことを恐れ、制服の胸元の高校生とは色の違うリボンを隠すように身を縮め、急いで背表紙を目で追った。中性的な著者名とどこか不穏なタイトルに惹かれ、そそくさと貸出窓口に出したあの日から、同じ作者の本を一晩一冊の勢いで読み耽り、毎日の朝練で図書室に行けないことがもどかしく、昼休みが待ち遠しかった。気が付けば、図書室入口から迷わず左に曲がれるようになっていた。
あれから二十年。恩田陸の魅力は色褪せず、また一晩夢中になれたことが嬉しい。
「六番目の小夜子」に代表する派手な展開は少ないがじわじわと追い詰められるようなホラー具合と、甘酸っぱいロマンスの気配さえも不気味さに書き換えてしまうSFミステリーの展開は恩田陸の真骨頂だと思う。巧みな情景描写に登場人物の心理を絡めるのが本当に上手い。
作品内のどこかおかしな現実世界があまりにも当たり前に進みすぎて、読者を置いてけぼりにする感じは小田雅久仁の「残月記」を彷彿とさせる。なるほど、そういうことかと推察出来始めたタイミングで上巻が終わった。
慌てて下巻を聴こうとしたら未配信……9月までお預けだとさ。
#Audible #べにを読書記録


紅緒べにを🦚
#GRAVITY読書部 #本好き
(Audibleの星用に再掲)2022年5月聴了
【対岸の彼女/角田光代】
2004年直木賞受賞作。
歳を重ねても時代が変わっても、生きづらさは付き纏う。
“八日目の蝉”の角田光代が今を生きる女性たちの友情と亀裂を描いた傑作長編小説。
――専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長、葵に雇われ、ハウスクリーニングの仕事を始める。同世代で出身大学も同じ、共通点の多い二人の間には自然と友情が芽生える。しかし、葵には週刊誌に取り沙汰されるような過去があり……――
学生時代、女性の誰もが経験するであろう、仲良しグループの形成。
似た者同士で集まることで得られる安心感は、その外に弾きだされた者は理不尽な仕打ちを受けるという恐怖心とも背中合わせだ。
彼女たちは慎重に言動を選び、“普通”のラベルをかき集めることで自分を守る術を身に付けていく。
自分が弾き出されないためになら、昨日までの友だちを嘲笑うことも厭わない。
小さな社会で傷付かずに生きるため、外側に伸ばした棘は、しかし同時に内側の無垢な少女も傷付けてしまう。
私自身もそうだが、いつの間にか少女が消えてしまったことにも気付かず、大人になった女性もきっと多いのだろう。
こうして身に付けられた女性社会を生きる術は、大人になってもそのラベルを変えて付き纏う。
結婚する女としない女、子どもを持つ女ともたない女、家庭の外で働く女と専業主婦。
少しの差異を標的にすることで団結し、安心し合う彼女たち。
その輪から自ら外れ、相容れない価値観を持ち、形の違う幸せを追い駆ける“彼女”を対岸から眺める。
憧れや嫉妬を燻ぶらせていることに気付いたとき、駆けだす一歩が踏み出せたなら。
その先に対岸へ繋がる橋が、あるいは無限の海があると希望を持てたなら。
失くした少女は私の心にも帰ってきてくれるだろうか。
息苦しさに共感させられ、自分自身の醜い感情を写した鏡を突きつけられた最後に、そんな小さな希望を見せてくれた作品。
女社長、葵の台詞に、「一人でいるのが怖くなるような大勢の友だちより、一人でいても怖くないって思えるような何かを見つけることの方が、大切だと思う様になったんだよね」とある。もっと早く、十代の自分がこの言葉に出会えていれば、と強く思った。


紅緒べにを🦚
せっかくAudibleの星作ったからね!
布教も兼ねて再掲します🙋
活字離れに持ってこいだよ、Audible🎧
月に文庫本2冊以上買うよりお得なのも、ありがたい!
ということで、実際にAudibleで聴いて良かった作品レビューです🙌
↓※900字以上あるよ、あしからず※↓
【吉原手引草/松井今朝子】
2007年、直木賞受賞作品。
江戸時代中期の遊郭吉原を舞台としたミステリー小説。
――吉原一と謳われた葛城花魁(かつらぎおいらん)は、忽然と姿を消してしまった。
作家の卵を名乗る謎の美丈夫は、小説の取材と称して葛城花魁に関わりのあった人物に話を聞いて回る。人気絶頂最中の花魁はなぜ失踪したのか、吉原一足らしめたその蠱惑的でしたたかな人となりと生き様が伝聞形式に少しずつ紐解かれていく――
落語然とした語り口に唸らされる圧巻の時代ミステリー!
ナレーター2人の読み分けも活き活きしていて、ぜひAudibleで聞いてみていただきたい。
"手引草"と言うだけあって、花魁に限らず当時の遊郭に携わる人々の役割だったり、実際に客として座敷に上がるまでの作法まで知れてしまう、遊郭遊びの教科書のような側面もある。
最後まで葛城自身の語りがなかった点は好みが分かれるところだが、個人的にはそこが良かった。
すべてを語らず、真っ赤な紅を差した小さな唇に煙管を押し当て、寡黙に微笑むだけで良い。目の前の男は想像を掻き立てられるほど、もっともっとと欲しがり、これでも足りぬと人生をも捧げ、まんまと転がされていく。
謎めいた女郎は謎を謎のままに去ることで、伝説として語り継がれていく。
この余韻がきちんと残されている気がして、祇園生まれの著者の粋な計らいにも感謝したい。
”吉原炎上”“さくらん“”花宵道中“と遊郭もの好きで、廓言葉萌えの読者としてはただただ痺れた。葛城花魁、格好良すぎるよー!わっちも禿にしてくりゃれー!と虜になったとか、ならなかったとか。
最後には聞き手の美丈夫の正体もちゃんと明らかになるが、それは読了(Audibleだと聴了?)後のお楽しみ。
直木賞作品の中でも、かなりとっつき易い作品なのでは?とも思う。ぜひご一読あれ。
べにを


紅緒べにを🦚
Audible愛好家です!
不定期でAudibleで聴了した作品のレビューや、オリジナルの1000字小説を投稿しています。
本や作家のお話もできるお友だちが増えると良いなあ🤔
↓ハッシュタグ参照
#べにを読書記録 #1000字小説チャレンジ
📖今読みかけの作品📖
【Audible】
◎流浪の月/凪良ゆう
【Audible更新待ち】
◎本好きの下剋上シリーズ/香月美夜
◎八咫烏シリーズ/阿部智里
◎RDGシリーズ/荻原規子
【持ち歩き文庫本】
◎白銀の墟 玄の月/小野不由美
◎フェルマーの最終定理/サイモン・シン
◎こころ/夏目漱石
🎧Audibleで聴了/今後レビューしたい作品🎧
◎同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬
◎羊と鋼の森/宮下奈都
◎鹿の王/上橋菜穂子
◎高校入試/湊かなえ
◎ブロードキャスト/湊かなえ
◎モモ/ミヒャエル・エンデ
◎推し、燃ゆ/宇佐見りん
◎コンビニ人間/村田沙耶香
◎赤毛のアン/L.M.モンゴメリ
◎麦本三歩の好きなもの/住野よる
◎劇場/又吉直樹
◎ハリー・ポッターシリーズ/J.K.ローリング
……etc

紅緒べにを🦚
最近、本のお話ができるお友だちが増えてきたのが嬉しいので、Audibleの布教も兼ねてやってみます🙋
活字離れに持ってこいだよ、Audible🎧
月に文庫本2冊以上買うよりお得なのも、ありがたい!
ということで、実際にAudibleで聞いて良かった作品をピックアップして、不定期でレビューしていきます🙌
↓※900字以上あるよ、あしからず※↓
【吉原手引草/松井今朝子】
2007年、直木賞受賞作品。
江戸時代中期の遊郭吉原を舞台としたミステリー小説。
――吉原一と謳われた葛城花魁(かつらぎおいらん)は、忽然と姿を消してしまった。
作家の卵を名乗る謎の美丈夫は、小説の取材と称して葛城花魁に関わりのあった人物に話を聞いて回る。人気絶頂最中の花魁はなぜ失踪したのか、吉原一足らしめたその蠱惑的でしたたかな人となりと生き様が伝聞形式に少しずつ紐解かれていく――
落語然とした語り口に唸らされる圧巻の時代ミステリー!
ナレーター2人の読み分けも活き活きしていて、ぜひAudibleで聞いてみていただきたい。
"手引草"と言うだけあって、花魁に限らず当時の遊郭に携わる人々の役割だったり、実際に客として座敷に上がるまでの作法まで知れてしまう、遊郭遊びの教科書のような側面もある。
最後まで葛城自身の語りがなかった点は好みが分かれるところだが、個人的にはそこが良かった。
すべてを語らず、真っ赤な紅を差した小さな唇に煙管を押し当て、寡黙に微笑むだけで良い。目の前の男は想像を掻き立てられるほど、もっともっとと欲しがり、これでも足りぬと人生をも捧げ、まんまと転がされていく。
謎めいた女郎は謎を謎のままに去ることで、伝説として語り継がれていく。
この余韻がきちんと残されている気がして、祇園生まれの著者の粋な計らいにも感謝したい。
”吉原炎上”“さくらん“”花宵道中“と遊郭もの好きで、廓言葉萌えの読者としてはただただ痺れた。葛城花魁、格好良すぎるよー!わっちも禿にしてくりゃれー!と虜になったとか、ならなかったとか。
最後には聞き手の美丈夫の正体もちゃんと明らかになるが、それは読了(Audibleだと聴了?)後のお楽しみ。
直木賞作品の中でも、かなりとっつき易い作品なのでは?とも思う。ぜひご一読あれ。
べにを

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