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紅緒べにを🦚

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#べにを読書記録 #Audible
#GRAVITY読書部 #本好き
(Audibleの星用に再掲)2022年5月聴了

【対岸の彼女/角田光代】
2004年直木賞受賞作。
歳を重ねても時代が変わっても、生きづらさは付き纏う。
“八日目の蝉”の角田光代が今を生きる女性たちの友情と亀裂を描いた傑作長編小説。

――専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長、葵に雇われ、ハウスクリーニングの仕事を始める。同世代で出身大学も同じ、共通点の多い二人の間には自然と友情が芽生える。しかし、葵には週刊誌に取り沙汰されるような過去があり……――

学生時代、女性の誰もが経験するであろう、仲良しグループの形成。
似た者同士で集まることで得られる安心感は、その外に弾きだされた者は理不尽な仕打ちを受けるという恐怖心とも背中合わせだ。
彼女たちは慎重に言動を選び、“普通”のラベルをかき集めることで自分を守る術を身に付けていく。
自分が弾き出されないためになら、昨日までの友だちを嘲笑うことも厭わない。
小さな社会で傷付かずに生きるため、外側に伸ばした棘は、しかし同時に内側の無垢な少女も傷付けてしまう。
私自身もそうだが、いつの間にか少女が消えてしまったことにも気付かず、大人になった女性もきっと多いのだろう。

こうして身に付けられた女性社会を生きる術は、大人になってもそのラベルを変えて付き纏う。
結婚する女としない女、子どもを持つ女ともたない女、家庭の外で働く女と専業主婦。
少しの差異を標的にすることで団結し、安心し合う彼女たち。

その輪から自ら外れ、相容れない価値観を持ち、形の違う幸せを追い駆ける“彼女”を対岸から眺める。
憧れや嫉妬を燻ぶらせていることに気付いたとき、駆けだす一歩が踏み出せたなら。
その先に対岸へ繋がる橋が、あるいは無限の海があると希望を持てたなら。
失くした少女は私の心にも帰ってきてくれるだろうか。

息苦しさに共感させられ、自分自身の醜い感情を写した鏡を突きつけられた最後に、そんな小さな希望を見せてくれた作品。

女社長、葵の台詞に、「一人でいるのが怖くなるような大勢の友だちより、一人でいても怖くないって思えるような何かを見つけることの方が、大切だと思う様になったんだよね」とある。もっと早く、十代の自分がこの言葉に出会えていれば、と強く思った。
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