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大介

大介

#詩的散文
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『主役という問い』



人はそれぞれに、
夕暮れの光を追って歩いている。
それが、寂しさの始まりだとは知らずに。

──春の風が、
ひとりの肩をそっとすり抜けてゆくように。



「わたし」という言葉は、
ときに風に揺れる旗のようで、
その影が、誰かの輪郭を曇らせる。

──そのとき、沈黙が、
足もとに、やわらかく積もりはじめる。



舞台には、主役しかいない。
誰もが、まんなかに立ちたがり、
誰もが、譲らぬままに。
言葉は渦を巻き、
物語は、行き場をうしなう。



けれど、「主役」とは、ほんとうは──
語らずとも、そこに在る者。
言葉の消えた舞台に、
ひとり、光を受けとめる影。



遠くの灯が、かすかに揺れている。  
誰かの物語のなかで、
そっと立ちつづけている、私のしるし。

──脇役であることの、
やさしさを、そのとき私は知る。



「私は、私の主役」

そう思っていた確信は、
やがて問いに変わってゆく。

──それは、ほんとうに
私しか知らぬ物語だったのだろうか。



主役は、孤高ではない。
共演者の息づかいに耳を澄まし、
舞台の静けさに、身をゆだねる。

──そのとき、物語は、
ふたたび動きはじめる。



幕が降りるとき、
拍手は、誰に向けられるのか。

それに囚われている主役は、
まだ、物語の途中にいる。

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