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ゆま

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【不良と犬人Part13】


ハマは仲間たちによってすぐさま病院へと担ぎ込まれた。幾本も全身の骨を折り、打撲も酷く、骨折箇所にプレートを入れる手術を受けている最中だが、どうやら命に別状はないらしい。
仲間たちはその知らせに胸を撫で下ろした。その中で俺は落ち着かない心持ちでその時間を過ごしていた。

ぽっちは今もあの廃工場にいるのだろうか。男の足に噛み付いたあと、どうなったのだろう。

やっぱりあの時、戻ればよかった。
例え、捕まったとしても、ぽっちの命を守ってやれるのは俺だけだったのに。

心は晴れない。

その時、公園のベンチで項垂れる俺の肩を、リョウが叩いた。顔をあげるとなんとも言えない表情でリョウは俺を見つめている。

「なんだよ」
「犬っころの事気にしてんの?」
無言を貫く俺を僅かに笑ったリョウは投げかけた。

「らしくねえじゃん。あんな犬っころに肩入れするなんて」
「……俺だってわけわかんねえよ、ぐいぐい心ん中こじ開けて土足で入ってこられたのに、なんか」

心が叫ぶ。
心は求む。
ぽっちを。

歯を食いしばると涙が浮かぶ。

「恋紫って昔あの犬ころと似たような犬でも飼ったことあんの」
「あるわけ」
ねえだろ。と言いかけて、心に引っかかる。
記憶の奥底で何かが渦き出すようなそんな感覚だった。

「あんの」
もう一度リョウに問われて、俺はとうとう頭を抱えた。
「……わかんね」
「なんだよそれ」

ケラケラと笑い、膝を叩くリョウに俺はため息をついた。夕暮れ時の空が彩られた雲を伸ばし、虚しいほど美しく輝いて見える。

ぽっちは言っていた。
久しぶりだと。頭を撫でる俺の手のひらに目を細めていた。
ぽっちは告げた。
俺と一緒にいる、と。

なのに俺は、ぽっちの所に戻らなかった。
後悔が渦巻いて、心が破裂しそうだった。

「あーあ。お前今日へたれじゃん」
リョウが苦く笑って俺の肩を叩き、続ける。
「もう帰っていいんじゃね。遥亮先輩たちには俺からうまく伝えとくよ」

それはリョウの優しさだった。
「マジか。サンキューな」
俺はそう言うが早いか、駆け出した。
目指す場所は廃工場だ。

ぽっちが取り残されているかもしれない。
ひとりで、泣いているかもしれない。
俺を求めて、叫んでいるかもしれない。

生きててくれ
待っててくれと俺は走り続けた。#小説 #いぬびと #不良
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