共感で繋がるSNS
くまきち

くまきち

くまきちです
散歩
モンハンライズサンブレイク
くまきち

くまきち

「ブルー・アトラス」

宇宙はすべらかに濡れていた
青色の 薄羽のささらぎのような
おぞましくも おおらかな大河の
地の底からふるえてくる鼓動のような
無数の幾何学に彩られているのだから
止まり続ける道理などないのだろう

命はなにかを背負うためにあるが故に
その実存はずっとずっと重たいらしい
わたしが踏みつけた草花が
それでも凛として 死なないように
青葉の つららかな筋脈のあたたかさに
はっと息が漏れるように
なにかを背負うことをやめないのなら
命はどうにもしぶとく光るのだ

引力により世界および倫理は根付いている
足底が地面に縛り付けられているから
わたしはただ祈ることを許されている
あらゆる骨がひとつの軸をつくるから
わたしは生きていることを正当化されている
うごめく鼓動が溢れた熱を巡らせるから
わたしはおぞましくも動いている
冷たい色が指先にじわりと滲むのが
はっきりと見えるのだ
無数の推移が命を湛えながらふるえる故に
青色の宇宙は恐ろしいほどすべらかに濡れている
GRAVITY1
GRAVITY60
くまきち

くまきち

「鬼」

ココナッツミルクの香りがする
まるい真珠のような指先を
おれの しわがれた手が抱いている
息を吸うたびに埃が肺をすえてしまって
こひゅー、こひゅー、と鳴り続けている
おれの くぼんだ双眸が
おまえには鬼火に見えているか

垂れた布を巻いている
あたたかな乳白色の やわらかな手触りの
そのうちに蠢くぬるく脈づくいのちの熱に
おれは夜が泡立つほど溶けている
伸びやって歪んだ角先が
反りかえって喉を突き刺した
暗光にきらめく古い電音機のメロディが
すこしだけ すこしだけ おれを慰めている

胚がついに落ちようとしている
かすれた文字の一粒一粒を
おれは口に含んでは吐き捨てている
土に埋もれたそれは黒玉(ジェット)のように
煤けながらも芽吹こうとする
息を吸うたびに火種が跳ねて
視界一面に紫炎がはじけた

ココナッツミルクの香りがする
剥き出しの真珠のような指骨を
おれの 煤けた手が包んでいる
息を吸うとえずいてしまって
引き攣った唇が虫のように震えている
おれの おれの 双眸が
おまえに見えているか
GRAVITY1
GRAVITY70
くまきち

くまきち

「ステラ・アルピナ」

喉が静かに萎れてる
瞼がおもたく透けている
わたしは岩背を踏みしめて
裾野の灯りに目を凝らす
冷たいあなたの肌を撫で
しなだれながら 咲いている

わたしの毛皮は月光を
打ち据え輝くものだから
冷たさだけが先立って
痛みになってしまうから
ちいさくやさしく縮こまり
あなたの瞳を見つめてる

あわく明るく青白く
あなたの肌は透いている
爪牙が命を裂かぬよう
わたしはあなたをなぐさめて
ちいさくやさしく息をして
輝くままに咲いている
GRAVITY
GRAVITY92
くまきち

くまきち

「苗床」

かたい窓の桟に生えていた
新芽がやわく唸っている
幸福の一つも知らない
夕日の一端を浴びている

美しいものは無礼にも
わたしの瞳に棲みついた
それが滴って根をたぎらせて
舌を痺らせていた
爪先を震わせる

沈黙をするのがどうしても
腹に堪えている
かたい風が肌を撫でる
わたしはひとりで唸っている
感じるままに鈍っているままに
部屋の隅で伏せている

煩わしいものは無礼にも
わたしのからだに根を張った
美しいことを知りたい
不可視でもいいから知りたい
あなたのようにただ知りたい
変わらないものを知りたい

かたい窓の桟に生えていた
新芽がやわく唸っている
わたしは自然がそうするように
美しいものを食んだ
GRAVITY
GRAVITY46
くまきち

くまきち

「業火」

柔らかい石が降っている
濡れた空気が呼吸する
むろんだ朝日が土を踏むように
おまえは優しく燃えている

穏やかな顔が溶けている
暗い木陰がただ揺れる
首が上擦っている
うだったいのちが燃えている

うつくしい石が降っている
胸がひかっている
足がもつれて声が漏れる
蒼鉛に染まる掬水が
奥の暗闇で燃えている
GRAVITY
GRAVITY30
くまきち

くまきち

「うろこ」

乾いていて冷たいそれを
おれは か細いからだに縫っている
目や耳や口すら覆っている
輝いたことなど一つもないが
揺れ動かず しんとしていて
煮詰めて固めたざらめのよう
黒々してて 鈍重で
おれを煮詰めて固めたよう

釣瓶が落ちるような雨が降っている
細長い尻尾のような粒たちが
ざあーっ と遠くまで落ちている
おれは乾いて冷たいそれを
つまらなそうに見つめている
なだらかな曲線が光を散らしている
夜が西日を追いかける

それは小さな山だった
ざらざらと軽い石が積み上がっている
灰色風が吹いている
誰かが誰かを悼んだ場所は寂しさが満ちていて
だから祈りはあるんだろうか
おれは身体を丸くして 雲の隙間を覗いてる
まばたきもせず手を合わせ
ちいさくちいさく苦しみさえも縫っている

曙光が昨日を追いかける
ざらめた砂の塵が消えて
白雲が水を吹いている
風がゆるりと息をして
月がま白くなっている
おれは乾いた手をもたげ
黒いうろこを撫でている
冷たく煮詰めたこのおれの
すべてを散らした哲学が
鏡面に生えたわずかな傷のように
ささくれだって濡れている
GRAVITY
GRAVITY105
くまきち

くまきち

「青い夜をみたいな」

うもれてしまって みたいな
水の中は暗くて 入れなくなるから
青褪めた月光そのものが
ぼくらの海の底になる

ただならぬ命が泳いでいる
やわらかく沈みながら
やさしく浮かびながら
空飛ぶ鷹のように ぼくを睨んでいる
果てしない距離を睨んでいる
ただそこにあるがゆえに
霧のように いたましい
全てがあなたであるから
愛おしいと思うのか

触れられぬよう 踊ってみたいな
白い腕を風のように
ノコギリ刃のように薄くのばして
息を呑む声がする
壊すことは糸をぴんと引き伸ばすような
つめたくて身が逆立つ実感がある
泥のなかには神さまが住んでいる気がするな

青い夜を見たいな 見たい
おもい船を漕ぐように
若さが沈むように
青い夢を見たいな 見たい
糸がちぎれるように
波が静まるように
とおくとおくのように
GRAVITY
GRAVITY50
くまきち

くまきち

「抵抗」

歩いていると
轢かれたら死ぬ車が
なんでもなく 頬を通り過ぎていた
風が肌を擦れて 痛い
土煙がつく
爪先に汚れが詰まる

家に帰って
幾つもの肉を食べた この手で
擦り寄ってきた 子猫の頭を撫でる
黄金の体毛は さわさわしてて
ビー玉みたいな目が ゆっくりと細められる
指先を滑っていく
小さく 耳が垂れている

わたしは帰ったら 手を洗う
目を瞑れば全てを 忘れてしまう
かがやく朝日が 幽霊を焼き殺す
誰かが泣いている
いつもと同じように 仕事をする
わたしは帰って 手を洗う
手を洗って わたしはようやく息をつく

鏡に映ったわたしが わたしを見ている
黒い目が 濁らずにまだ見ている
じっと わたしの目を見ている
幾つもの命を わたしは内包し
そして殺してきた
黒い星のような 目は
しかし 愛しいものを求めて
柔らかくて優しいほうへ
楔を打つように 光っている
GRAVITY
GRAVITY69
くまきち

くまきち

「青いプールと少女Q」

学校のことを 思い出しても
ぼやけた記憶した浮かばないのは
僕にとって 青春というものは
伝統的矛盾色彩の衝突であったからだ

延々と神さまが 夜空を覗き込んでいる
からからと ちいさな星が降っている
槍のように 突き刺さった
濡れすさんだ 校舎に落ちた それは
あったはずの現実すら歪めて
あやしげに ひかっていた
少女Q
顔なしの心象風景
エラーコード→→→エメラルド

少女Qは 僕を見て笑っていた
盲ているにも かかわらず
少女Qは 沈みゆく運命を
僕の 生き様に見出したらしい
プールに行ってみたい
少女Qは言った
彼女は 沈みゆく運命を
なにかに 見出さざるを得ないらしい

僕は冷たく さらっとした手を引いて
プールの淵を 覗き込んでいた
黒くてゆるやかな波が 星と泳いでいる
偶に月光を吸い込んで 青色を宿すさまは
冬まで生き延びた 雌鹿の瞳のようだ
ちょうど少女Qのような
少し畏ろしいけど 綺麗な目だと思った

少女Qは 帰り道を探していたらしい
どこに帰るの と聞けば
寂しくない場所に決まっている と言う
少女Qは 僕を見て笑っていた
僕もなんだかおかしくて 笑った

少女Qは水のなかに足を沈めながら
うつむいていた
彼女の肌は なぜか濡れていない
少女Qは言った
「ここまでさ、全部嘘だって言ったら」
「あなたは嫌いになっちゃうかな」
彼女の目には 宇宙が宿っていた

少女Qはもう いなくなっていた
きっと その
寂しくない場所とやらに行ったんだろう
気がつけば 辺りは明るくなっていた
そろそろ 巡回の天使が来る
僕はふと 少女Qが沈んだ プールの淵を見た
ぷかぷかと そこには 
捨てられた ペットボトルが一つ浮かんでいた
GRAVITY
GRAVITY91
くまきち

くまきち

「竜が街を歩いている」

まどらかな 朝の空気が
うすくのばした 綿みたいに
街中を したたっている



誰かが 眠っているであろう
真っ赤な屋根の お家が
折れた 背骨みたいに
やわらかく
押し潰されている



ああ そうか
あいつは呼吸をしていない
ぬめりとした 鱗を
どれだけ 揺らしても
光に うつらないのは
あいつも また
ぐ  と眠っているからだ




家々は 見えない海のなかへ
どうしようもなく
どうすべきもなく
ぐぐまってしまって
静かに じとっと ついえていく



ああ あの家って
昨日 一緒に帰った あの子の





あいつは四肢を 地面に突き刺し
錆びついた翼を 空に広げている
翼骨に挟まった 欠片が
ざさ ざさ と 空気に落ちていく

ああ 
きっと あいつは 誰かの願いなのだ
朝など来ないで欲しかったのだ
ずっと ずっと 眠る言い訳が欲しかったのだ

その巨大な瞼を 閉じたまま
ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ
あいつは 世界を羽ばたかせている
ぼくはあらゆる瓦礫の 海に抱かれてしまって

ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ

滴っている 綿みたいに
ぼくは じっとりと 街中に広がった
それは ぬめりとした
あいつの 鱗のようだった
GRAVITY
GRAVITY43
くまきち

くまきち

「ぼくの目ぐるぐる」

ぼくは世界の真ん中の通天閣の上で回るぐるぐると回るただあなたを待っているえも言えぬままに待っている優しさにさ身を摘まれ優しさに身を包まれ優しさにさ身を詰まれ優しさにさ身を浮かべ優しくあろうとするんだよそんなことまだまだまだ言えないけどどうかその目で見て感じて知って愛して音楽に乗ってぼくとどうか踊ってよみたいな青い夜になってひとり浮かんでは消えるものばかり流れたベッドに横になって息をするだけどすれ違ってみたい今日だけは偶然でもいいからあなたに会いたい今日になったのもぼくのせいです明日になるのもさぼくのせいです生まれてきたのもぼくのせいですずっと会えないのもきっとぼくのせいです時は過ぎるぐるぐる抽象的になんでも溶ける熱を持って最低限の意味を持ったら喉を通してからだを染め上げて列車に乗るよ電話だけ持ってさ昨日も何も考えなかった一昨日も何も考えなかった何も考えなくても日々は過ぎてく窓の景色も変わっていく灰色の街の先の森を越えた後の下り道を軽快に歩いた歩くよ歩いたんだよいつか終わるんだろ何も考えないから悲しさに息をとられ悲しさにさ燃え焦がれ悲しさにさ落ちこぼれでも知らずに群青の影が揺れてて涙さえこぼれ落ちてしまうだから夏なんて好きじゃないんだよ後悔ばかりが息をして反復運動に身を埋ませて心を空っぽにいつものように夏の香り萌ゆる草花澄んだ心みたいなあなたの目
GRAVITY
GRAVITY25
くまきち

くまきち

「例になっていく」

編まれた愛を 起点として
この からだに 空いた穴が
揺れてく景色を 透過する
この 人生を 描画する

街を焦がした 夕日が沈む
頬にすれた 夏風の匂い
浴びた 花火の灯り さえ そう
終始 夜をただ 爪弾いている
朝になるのを 待っている
ひとりになるのを 待っている

ぼくらは 愛に基づいて
この からだを描画 している
線は自由に 空をかけ
静かに ほどけて飛んでいく

ぼくらは 雲の袖になる
それは青くて さらさらと
夏の匂いに 溶け込んだ
上記の通りに 描画する

ぼくらは記号になっていく
線はつながり 円になる
朝も夜さえ 例になる
前に倣って 今日になる

花は真似ても美しく
燃えつく因果も美しく
等しく終わりは美しく
それに倣って 前を向く
GRAVITY1
GRAVITY16
くまきち

くまきち

権利というのは、少なくとも与えられるのなら謙虚に受け取るべきである。
なぜなら与えられる権利とは弱者の特権であるからだ。
それを忘れ、目の前の権利が何によって並べられたものかを考えず、ただ貪ろうとするのは、弱さへの歪んだ肯定である。
弱さは重く抱えるべきもので、ひけらかして掲げるものではない。
GRAVITY
GRAVITY25
くまきち

くまきち

「20210331」

受信機は今日も空っぽです
天気は晴れ 時々 鉄の破片
流れ落ちる 身を梳くような
鋭い 言葉に 気をつけましょう
空は その様相を変えたとしても
美しさを 損なうことはないのですよ

あなたの メッセージから
37987時間 49分 32秒 経過しました
既読数 2
耐えることも いつか できなくなる
それでも 優しくあろうとする のは
愚かですが 許されるべきです
そうですよ わたし 天使ですから
あなたの いいところ
まだちゃんと ここに入っているんです

ああ、それよりも
今日はですね
あなたのために作ったんですよ
ケーキ
大事な 記念日ですから
作り方とか 知らないですけど
それっぽさって 
なによりも大切じゃないですか

フォーク ちゃんと持てますか?
抜け落ちた 人差し指は
もうきちんと 握れてますか?
まだ 痛みますか?
・・・大丈夫ってことですよね
心配とか いらないってことですよね

鋭い言葉はもうここにはないですし
空はまだちゃんと綺麗ですよ
あとはメッセージさえあれば もっと

さて
今日の記録はここまでにしましょうか

-終了-
-20210331-
-オール・デイ・ハッピー・デイ-
GRAVITY1
GRAVITY23
くまきち

くまきち

「アニマ」

指先をつたう 雷鳴
かかる
雨のなか 歌う少年
六弦に潜む 幽霊
誰か 聞こえねぇのかな

生きる希望と やらに ぶら下がる
縫われた からだで 息を吐く
風とともにぜんぶ剥がれて
この夏も じきに終わる

青い前髪が きらきらひかる
揺れる雲 とおく 蝉 時雨
純粋な憎悪 なんて知らない
誰に向けたらいい

芸術が 人をつらぬくのなら
吐き出したことも 意味があるんだろ
言葉が 世界になり得るのなら
誰だって 救われればいいのに

優しさなんか すりぬけて
白く伸びた その指先が
ひどいくらい 懐かしくて

永遠になった 少年
うだる
言葉さえ 鳥になって
からからと 歩く幽霊
誰かに 聞こえたらいいのに

雨のなか 咲いた雷鳴
かかる
音も ただ空を飛んで
懐かしむように 抱いて
誰かが 聞いてたらいいのに
GRAVITY
GRAVITY28
くまきち

くまきち

うちの猫のかわい子ちゃんショット
GRAVITY1
GRAVITY132
くまきち

くまきち

「なんか」

なんか
毎日ハンバーグでもいい気がする
なんか
スーツって窮屈に感じる
なんか
人に優しくできる日がある
なんか
たまには水風呂でもいい気がする
なんか
いつまでも眠りたいと思う日がある
なんか
足りないものを数えてみることがある
なんか
ありふれたことに気づく時がある
なんか
馬鹿みたいだなって思うことがある

なんだか
うまくいく日がある
なんだか
ただ揺られるだけの日がある
なんだか
自分のことが分からなくなる
なんだか
腹が立って目を瞑る
なんだか
昔のことを思い出す
なんだか
言葉にできないことばかり
なんだか
空を飛んでみたい

バスが揺れる
変哲のない 順路がどこまでも
このからだを ゆっくりと押し進める
言葉にならなかった なんか が
飲み込まれて 腹に沈んでいく
形にならなかった なんか が
静かに その形象を崩していく
バスは進む
赤いブザーを 誰かが押す

なんか 軽やかに
過ぎ去ってみたい
なんか 誰かに
思い出してほしい
なんか すぐに
終わってしまったら やだな
そうだ やだな なんか

なんか なんか
零れ落ちていく
このからだに沈んだ
なんか が
今日もわたしを突き動かす
なんか なんだか
今日は
そうだな
おなかが すいた
GRAVITY1
GRAVITY28
くまきち

くまきち

謙虚っていうのはやたら自分を下げることじゃないんだよな
この人はすごい、わたしは全然、じゃなくて、
おれもすごい、おまえもすごい、でいいんだよな
でもその裏には、おれも未熟、おまえも未熟っていう思想が流れている
GRAVITY
GRAVITY25
くまきち

くまきち

「ラストシップ・デュー」

視界は三角 さよなら視覚
あなたも あなたも
どうにも 臨界点
なんでもね あきあき

明日は 明日は
晴れたらいいな って
くらくらくら 見ててね

朱ぞめた 頬 へべれけ け
生葉が ひゅうって 透くみたい
あなたのね 思うままで
今日くらいは そう
そのまま
さわさわ 風 青色

ゆすらめく
ネオンテトラ
指のあいだから 抜けていった
ぐるり回る
終尾列車
濡れた髪色が 薄れてくの

ふわふわ ふわ 歩くね
ひらひら ひら 花びら
明日の 朝に なるまで
忘れてしまえ おやすみ
GRAVITY
GRAVITY20
くまきち

くまきち

「心象風景をみつけて」

あーーーあ
この湯船が 森の奥の隠れた湖だったら
やたら ちかちかする
黄色の照明は そう 月光!
夜のほとりに しんと沈む
この濡れた指先は
水底をうごめく
なんて恐ろしいの! 水生怪獣

気まぐれの うごき一つで
荒れ狂った宇宙みたいな 波に
ぜんぶぜんぶ 呑み込まれて
まあ たいへん
物語はここで おしまいです

はい!ではここで感想を聞いてみましょう
では、そちらの鎖に繋がれた
黒いお服の かっこいいお兄さん!
いかがでしたか?

は?
意味分かんない言葉を並べて
気取ってんじゃねえよ
病気だって 言ってんだよ
頭のなかをいくら反射させたって
結局 言いたいことなんかないんだろ

はい、ありがとうございました
うるさいな
おまえは 冥王星人
人の気持ちが分からないので
正しさに身を潜めるのでした
なぜなら安全圏内で石を投げたいからです
そして自分が 人間であることを
まっさら忘れてしまうのです

あーあ
このからだが 本当に怪獣だったら
なにもかもが どうでもよくなるんでしょう
だって 気まぐれ一つで
物語が終わってしまうんですから
荒れ狂った宇宙のなかで
ちかちかとした 
やたら眩しい 照明を見るのでした
もう繋がったので この詩はおしまいです
GRAVITY1
GRAVITY21
くまきち

くまきち

「ヴォイド・ダンサー」

街の波ぎわで ひと吹かせ
青げた煙がのぼる
冷たい宇宙は たなび風
くじらの 死骸がみえる

吸息
染まって 染まって 染まって いた
過ぎ去ってしまう さまざまに
昔読んだことばかり だな
雨もさあ ついてきて

眠れない誰かと踊って
ガラスに 爪で海を描いて
気怠げな猫の 灰色に
うずまって 生きていた

揺れた星たちを呑み込んで
寂しさみたいな 顔をして
遠くで浮いてた くじらのよう
宵空に吐き出した

きっと会えたら 今日こそさ
さよならだって 言える
君みたいにさ なれたらなあ
死骸も 砂浜になる
GRAVITY
GRAVITY44
くまきち

くまきち

「アズール」

ありふれた表現のなかに
ひとりで住んでいた
古紙のあたたかさに沈む
からだは文字になった

ペン先が 宙を書いている
濡れた宇宙が 呼吸する
それが滴って 喉に咲く
明日が爆ぜる

ブリキの巨人が踊っている
オレンジの月の舞踏会
泣き虫な竜が 吠えた
鉄製の洞に響く

嘘つきだと
嘘つきだとさ
笑えない物語みたいだ

理解されたいって ありふれた
売れない 言葉の綾のよう
期待しないって 嘘みたい
そんなことばっかだ

薄明かりの群青と
宝石のうろこ 顔なしの
砂嵐に 澄んだトカゲ
喉から舌を出す
おまえの言葉を喰らわせて
文字が喉に咲いた
GRAVITY
GRAVITY40
くまきち

くまきち

「言葉は世界になり得るか」

まばたき
銀色の砂
こまやかに
肌をうつ波

カモメが泳ぐ
はばひろい青雲
となりで眠る
天使のあなた

あなたは前世
ちいさな猫だった
お空を見るのが好きな
きらきらのおめめ

太陽はかがやいて
天使のあなた
白肌の 水滴が落ちる
翼が光に反射する

今日 あなたは
空になる
だれも侵すことのできない
神聖なひとつの

あなたは 本当の意味で
自由になる
風をつかみ 生きて 死ぬ
恐ろしさを知ったから

まばたき
黄金の瞳
さわさわと ま白い羽
ささやいて 海空のなか
GRAVITY1
GRAVITY24
くまきち

くまきち

「ドミネイト」

鈍い感覚に息をつがえて
とおく とおくの あの子のもとまで
運命みたいに飛び込んだ!

忘れてた ぼくは 最後の神さま
糸がほどけぬ わずらわしい子
黒い掃き溜め 虹色のはね
青輪光の うなる怪物
ひとりで堕ちて ときに明滅
絡まった空 ぐるぐるまわれ

あーあ、
今さらだけど ちょっとさ
帰り道とか 話せばよかったな

張り巡らした わずらわしい ぼく
断ち切れないのは 愛だったから?
渦を巻いてく 見果てぬ線上
ぐるぐる回れ ぐるぐる回れ!

忘れてた ぼくは いつかの神さま
糸もほどけぬ 悲しい神さま
手を伸ばしても 明けぬ夕焼け
本物ならば 目を眩ませて

鈍い感覚に耳を塞いで
とおく とおくの あの子のもとまで
運命みたいにぐるぐる回って
ひとりで ひとりで 飛び込んだ!
GRAVITY
GRAVITY25
くまきち

くまきち

「人魚姫とさよなら」

駅前の広場には 冷たい光が流れてて
わたしたち まるで 水族館のなか
ふたりで買った 炭酸水が
手のなかで 静かにゆれる

君は なにも言わずに
じっと ボトルの気泡を数えてた
わたしも それを見つめてて
しゅわ しゅわわ ぶくぶく 
人魚姫の 最後の吐息

「今日は あついね」

君は ぽつりと言った
世界から音を すべて奪ったら
きっと こんな感じになる
うろこ雲が 魚影のように広がって
声の調子が 前よりも ちょっと低くて
なんとなく さ 遠いような気がして

「夏だもんね」

わたしは 遠くの青色を 見つめて
どうにか 言葉を 吐き出した
いま うまく笑えてる かな とか
もう よく分かんなくて

陰るみたいに 声が掠れていくので
たまらず 手に持った泡を飲んだ
炭酸の抜けた ぬるい水の味は
なんとも言えないような 苦さで
わたしは少し 顔をしかめた
GRAVITY1
GRAVITY29
くまきち

くまきち

「眠るのは、なぜ?」

わたしが眠るのは 夜を越えるため
青い目をした狼が 林の奥で睨んでる
黒ざめた毛皮は 荒々しくなびき
木の根のように 重苦しくたたずむ

生きていれば 喰われるので
わたしは目を瞑る
死んでますよ わたし
死んでますから
だから 殺さないで

狼は部屋のなかに ふっと現れ
わたしの首筋に 鼻を近づけた
血の香り してます 
生きてるものを襲って 喰った香りが

生きてないです
生きてないです ほんとに
ずっと ずっと 生きてないです
これ以上ないほど 死んでます

狼は目を瞑り 動かないわたしを
つまらなそうに見つめてる
もはや当たり前のように 
わたしは 死んでいます

生まれてから 死ぬほどの時間
狼はわたしを見て そうして
興味がなくなったのか
ようやく夜闇に ふっと溶けた

呼吸がもれ 血管がゆるみます
首筋が 寒くてしかたなくて
世界まるごと 震えてます
わたしは死んでいました
まさしく 正当に死んでいました
GRAVITY
GRAVITY29
くまきち

くまきち

「月下、口ずさんで」

伸びやかに ひびかせてみて
小さな耳を 掻き抱いて
月の端から生えた 竜の顎が
頸木に巻かれて うなだれる

ここは 空にいちばん 近いところ
星さえ望めば 奪えそう
宇宙には 葛藤があるから
煌めくさまが 美しいのだ

眼が覚めてしまいそうなほどの
偶然になら 会ってみたい
言葉が 空を飛んだら
どんな枷だって 吹き飛ばせるんだろう

軽やかに 応えてみせて
小さな手で 地球儀を回して
わたしの口から逃げた 狼の首が
なにかを食べようと してた

生きてるって 難しいって言って
喉の奥からさ
美しいって 苦しいって信じて
捕えられた竜の 大きな翡翠の眼が
薄らと寒空を つらぬく
GRAVITY
GRAVITY19
くまきち

くまきち

「システム・フローネ」

暗闇に咲いた 手と花
青いまなざしが 頬をすべって
夜の波となった
見渡す限り それが続くので
どうか そのままで
追記 意味などない

揺籠のなか 酩酊
燃えてゆくからだが ひどく痛むので
光線に撃たれて 忘れることにした
眠ることだけが 癒しになる?
過ぎ去ってゆく すべてに涙が出そう ね
了解 どうぞ
さいあくさ 生きてはいけるのだ

ざらめいて 踊ってみたい
エメラルドのトカゲ
思い出してみたら へんてこでさ
そんなくらいが いいんだよね
コード:660
忘れなくても いいよ
クリーン・アップ・ザ・データ
確認 意味などない
GRAVITY
GRAVITY15
くまきち

くまきち

「生まれたての幽霊」

がたんと ごとんと
夜を行く 列車の鼓動にゆられ
わたしは天井を見た

誰もなにも言わずに 座っている
眠ってしまったような、、、
ジジジッ 電灯
ああ お前もそろそろか
もうすぐ わたしも帰って眠るぞ

瞼を閉じれば よみがえる
下手をうったな ばかばかしい
ジジジッ 明滅
ほころぶように ひかるなお前は
今日の小さな失敗を
笑ってやって くれるのか

がたんと ごとんと
夜を行く 列車の鼓動にゆられ
じわりと夜は更けていく
わたしは街の明かりを見た

そうだな
駅に着いたら 煙草を買おう
身に帯びた 重たいなにもかも
けれど 捨て去ってしまわぬよう
熱い煙を吐いて 気を済ますのだ

しのつく夜の空に 浴びせた
白い吐息は きっと そうきっと
ぼあぼあと 生まれたての幽霊になる
そうしてわたしは 帰って眠るのだ

ジジジッ
がたんと ごとんと しても
誰もなにも言わない
ただただ列車は 夜を行く
GRAVITY1
GRAVITY24
くまきち

くまきち

「飛ばされた燕」

ひゅーっ ひゅーっ
燕は白い つめたい風にのされ
空気のはざまを 飛ばされていたのでした
雨粒が羽毛にはじけ じわっと広がり
群青のからだに 水をふくませて
そうしたかと思えば すぐに去っていきます

まるで燕を 置き去りにして
世界が踊っているよう
だって 歯牙にもかけないんですもの
この ちいさな ちいさな
なんでもないような 命

悲しいほどの荒々しさに
燕は息もできぬほど
どこまでも 飛ばされていきました

どこまでも どこまでも
どこまでも どこまでも、、、

、、、、、あっ!

飛ばされた燕は 嵐のなか
一本の木の中に吸い込まれていきました
それはなんとも 立派で
美しい 風情のある木でありました
梳くような香りのする 深みのある茶色の幹は
少しばかりの風には びくともせず
たおやかな葉は しかし水をはじき
激しい雨の音だけを 木肌へと響かせています

燕は過ぎ去った 嵐に
目をぱちくりとし
一息ついて 太い枝にもたれかかりました
そうして
あまりにも安心してしまったものですから
じわじわと 涙が出てきてしまいました
ちいさな羽は さわさわと かすかに揺れ
もっとちいさく つぶらな目は うるうると
透明な粒をながしています

ぴ と声を漏らすと 
もう抑えられなくなってしまって
ぴぃぴぃ と嗚咽が漏れました
胸が抜け落ちるくらい 悲しかったのです
燕にとって 世界は友でありました
しかし どうしてか 
今日は燕に牙を剥いたのです
それが悲しくて 悲しくて
燕はこころのままに 泣きました
その声は ちいさいはずなのに
不思議と よく響きました

それを見ていた 美しい木も また
悲しい気持ちになりました
なんてちいさな命が
なんてかわいそうなんだろう

しかし いくら美しい木といっても
枝はあっても 手を持たず
実をならせても 与えられず
風にさざめいても 
やさしく お話しをすることはできないのです
そのはがゆさに 木は 燕とともに
静かに泣くのでした
GRAVITY
GRAVITY21
くまきち

くまきち

多分だけどこの街でおれの傘が一番でかい
GRAVITY4
GRAVITY24
くまきち

くまきち

「寂しくないを考えた」

わけもわからず寂しいので
寂しくない を考えた

青い部屋のなか 外を見たとき
あなたが眠る 姿を見たとき
誰かを待って 立っているとき
帰り道を 歌って歩いてみたとき
わたしが わたしでなかったとき

わたしは考えてみて 気づいた
わたしはわたしを見つめたときに
寂しくなって しまうのだ

それは本当に ひとりになるから
正しいことが 分からなくなるから
過ぎ去ったなにもかもが 流れているから
吐き出したすべてに わたしも傷つくから

詩を書いたのは 
わたしを見つめるためじゃなくて
わたしのようで 
これは わたしじゃなかったから

ずっと言葉の種火を吹いて
あたたくして くれたのか
わたしが寂しくならないように
一緒に書いてくれたのか
GRAVITY
GRAVITY21
くまきち

くまきち

「弱さ」

ああ
誠実さとは弱さであってください
優しさは弱さであってください
謙虚も弱さであってください
苦しみさえ弱さであってください

わたしがあなたを知れないのは
わたしの愚かさであって
愚かさなんか 特に弱さであって
虚弱なわたしを 嫌わないで
それすらも弱さであって

誰かと共にあるのも 弱さで
明るさの中に生きるのも 弱さで
なにかを正そうとすることも 弱さで
弱くあろうとすること これもまた弱さだ

わたしは弱さを 弱いゆえに かかえ
そうして生かしてください
溺れるのなら 弱さの方が好きなのです
GRAVITY
GRAVITY18
くまきち

くまきち

やっぱりベーコンエッグっていい言葉過ぎる
字面が美味しそうだし、音も気持ちいい
GRAVITY
GRAVITY20
くまきち

くまきち

「共鳴感覚」

あたしの目
ざらざらなの 夜風
くれないの うらかなしげな
からからと たびびとのあしおと
ぐるぐると 眠り果てた 子ども

死にたがり 空 鳥はただ飛ぶ
うるさいの さざめくすべて
からからと 笑う君の そばで
ぐるぐると 羽をたたみ 眠る

あたしの目
きらきらなの どうして
くれないの ここ 砂塵の星
さざめいて 寄る辺はどこへ 消えた
うるさいの 空 鳥はただ飛ぶ

あたしの目 
かがやくの 明滅
ぐるぐると 雲はいななき
黒い目が あたしのあたしを見る
木々たちは ざわざわと ゆらめく
ざらざらの 夜風 もうそこまで
くれないの 目の あたしは とりこ
うらかなしげな たびびとのあしおと
GRAVITY
GRAVITY21
くまきち

くまきち

頭が回り過ぎて苦しい時は、耳を澄ませるとよい。
それは大抵、意識が自分の内側に入り込み過ぎているということなので、逆に意識を外側に放ってしまえばいい。
周りの音をじっくり聞いていると、焦っているのは自分だけで、世界は意外にも静かで、ゆっくりと動いているのだと分かる。
GRAVITY
GRAVITY27
くまきち

くまきち

「みずいろ」

過去よ
あなたを 引きずっていく
とめどない ひかりの奔流
冷めるように ひろがる
その 指先の みずいろの波
鹿たちが 海を駆けていく
森の透くような そう
透くような 香りがする
もうすぐ ゆっくりと 日は 落ちて
むかし読んだ ものがたりの よう
柔らかい夢のなか
感じうるものは すべて きらめき
その みにくい たましいすら そう
朝を抱くのも 叶わぬ
その ま白い手の かすかな ふるえも
GRAVITY
GRAVITY17
くまきち

くまきち

「海の体温」

僕らは 海から生まれたのに
どうして 鱗がないんだろう

ああ そうか 寂しかったのだ
こころを 抱きしめたいのだ
願わくば どうか
あなたにも 抱きしめて欲しいのだ

じっとりとぬるい あなたと夜闇
ほのかな シトラスの ゆりかご
しんと 静まり返った ぼくらの海
魂が 触れ合っているから
寂しくないのだ きっと

聞こえるはずのない 黒い波音が
ざざあ ざざあ と
鼓膜に 流れていく
泳いだ 波のすえ
いつか ふたりで 
街を抜けて 雨になろう

寄せては返して 心臓が
ゆっくりと あるべき場所へ帰る
GRAVITY
GRAVITY19
くまきち

くまきち

最近、自分のことを棚に上げて人の弱さを許せないことがあった。
いま思い返すとすごく恥ずかしいことをした。
GRAVITY1
GRAVITY23
くまきち

くまきち

「ぼくのいない惑星」

青い風がなく
白い波がほとばしる
草木は朝日に輝く
灰色の月が眠る
すべてが見えるとは つまり
何も見えてなど いないのだ

座席がひとつ空く
泣いたはずの誰かが星を見る
失ったことなど知らずに
誰かがいのちを語る
こころなど見えないのに
語れば花が咲く
見えないのだから
その名すら騙る

炎は人の身をまねる
見出されたものならば
暗闇ですら
この世にあったものとする
約束は魔法になる
いないものをいるとする
こころは鏡になる
言葉はうつしてしまう

青い風がなく
わけも知らずに
いないものとする
鏡にすらうつらないなら
その名すら知らず
語れどいのちはなく
何も見えないなら
感じるこころもなく
約束は魔法になる
泣いたはずの誰かが星を見る
泣いたはずの誰かが
この世にあったものとして
ぼくを見ていた
GRAVITY
GRAVITY28
くまきち

くまきち

「花とレプリカ」

描き写した花びらの
燃えつく因果のあざやかさ
いずれ消えゆき 死んでいく
辿り着く道は ただおなじ

わたしの燃ゆる夕焼けを
灯していった あの人の
暗い木陰で澄む 横顔は
どこかで読んだ 出会い様

決まり尽くした 台本を
見知った声で そらんじた
月が綺麗と 月並みな
言の花びら たゆたった

紡いだ日々も 培った
笑顔も 色も ただおなじ
どこかで聞いた 物語
永遠のよう 冷めずとも

知らないことなど ない ならば
わたしの小さな特別な
儚い日々を ただどうか
わたしのものに 昇華して
月の刃はかりそめの
あざやかな色 つらぬいて

あなたの瞳のまま黒さ
はじめて見つめた気がするわ
GRAVITY
GRAVITY25
くまきち

くまきち

「ミュート・グラン・レイ」

やさしい天使だって
夜がくれば おやすみ だって
そんなこと ばっかでさ
泣いたって だめみたい
見えなくなること ばっかでさ

オレンジ飴の 甘さに会いたい
いつまでも 浸っていたかった そこで
揺れる
夜と海のはざまの
光にとろける きらきらのあなたへ

大事なもの 忘れてしまったら
お空でまたたく 恒星みたいになる からさ
いつか
線上で交わって また会えたらいいね
燃えて 固まって また一つになるんだろうね
静かにしてるから だから
きっとね 神さま どうかね あなた
GRAVITY
GRAVITY30
くまきち

くまきち

「トワイライト・モフ」

白いおひげの モフ
びくびくと 世界に
だってさ 生まれたてだもの
わしゃわしゃと 撫でたら
モフモフと いじらしい

やわらかな黄金の モフ
わくわくと 景色を
あっ! あっちで花が咲いた
お昼だからって 暇そうにあくびして
あんまりにも することがないならさ
ペタペタ モフと風のダンス
たいそう 綺麗だけど
そうなんでも 上手くはいかないものだね

夕焼けと雲みたいだな モフ
もう夜だからって かなしそう
真っ直ぐと 見つめてさ
なみだなんか 君の世界にはないんだよね
恥ずかしいんだものね
ちょうどぼくもさ そう思ってたところ

モフ
人間の比喩はどうして
優しくないんだろうね

モフのさ
やさしい モフモフの夢を
もう少しだけ見たかったんだけど

なんにも知らない モフ
そう思いたかっただけ かも
夕焼けが綺麗だ
風と踊ってみたい
思うことくらいは自由であって
白いおひげの
いいや 形なんて関係ない
ちょうどぼくもさ そう思ってたところ
GRAVITY
GRAVITY24
くまきち

くまきち

「垂直落下、ルルラ」

ケンタルラ ケンタルラ
ラッタルルラ ルルルルラ

あ、もしもし
わたしの ちいさな幽霊
今日はお日さま 見えますか
好きなものとか あるんですか
机に座るのが お好きと聞いたのですが
そうなのですか

なんにも言葉が言えないならさ
いいから わたしの目を見ろ!!
ノンステップバスみたいな
ノッポとノンストップで
ノーリアクション!!
ユーメイクミーフィールソーグー!
するどい針を噛んでしまった、、、

鮫肌のごわごわした あの波が
猫みたい ぐるるるる
ぜんぶ終わるまで
ふたりで一緒にいるのはどう?

千手の神さま がしゃがしゃ
黄金の人たちの ねえ
宙に浮かぶとりこ
あ!
ウラキモーって怪獣の名前みたい
さっきからさ うるさいよ!!!な!

ふりほどく すなわちミュート!!
飛び跳ねるって こうよ!!
タンタルルラ リルラリラ
みるみるうち みえる
宇宙は 寒いよ
エコー!エコー!
わたしを 見ないで!!!
GRAVITY1
GRAVITY65
くまきち

くまきち

「ヘリオスの子ども」

落ちこぼれの青空は恋をした
心臓みたいに跳ね回る
空中列車の汽笛の音
ダッダダララ ダッダダララ

雲を突く双子の山さえ
邪魔をできない きらきらの
糸をそうっと 掴む
ヒュルヒュル ヒュルル

めざめく宇宙を飛び越えて
青輪光のうろこを破り
孤独な街へ行こうよ
やわらかめの、サイダー色の
かわいい形のグミでも
一緒に買いに行きたいのです

ああ、もう
櫛を忘れてしまったわ!
今ごろ、そのヨルとやらが
流星を掻き梳かしているんじゃない?
ああ、もう
台無しどころじゃないよ

有形が2㎝ずれるまでの
わずかな遺伝子
概念って不自由なんだね
神さまも もう帰らなくちゃ
グス グスグスグス

ちゃんと吊り革は持ってね
握手のガラスは置いていって
お父さま あれお好きでしょ
また100000000000年後(およそ)
GRAVITY1
GRAVITY20
くまきち

くまきち

「そいつのなまえは」

つめたい壁をなぞって
空に 息を吹くよ
月はくうと 泣いた
踊り子さえ 眠る
ブーツを知らない猫が いたんだって

液晶のなかに 身を埋ませたら
砂あらしの トカゲにだって
会えるね きっと
そいつのなまえは エメラルド
生き物なんだから 元気じゃない時だって
あるよ
ね! エメラルド

机のえんぴつは 転がらない
ぼくの家は まっすぐだ
起きても 景色が変わらないのは
どうしたって ここが精密だからだ
大人は 積み重ねてみるのが好きなんだろう
ブロック遊びの 延長線ってこと
ひとつ欠けた飛行機は 落ちる

ドライヤーの電源をつけたまま
電線から引っこ抜く
一回やってみたかったんだ
耳からトカゲが ぬめりと出てくるくらい
ぞわぞわ 気持ちがわるいね

ア、ア、テステス、テスター
ア、ア、ア、あ、まだいたんだ、エメラルド
GRAVITY
GRAVITY18
くまきち

くまきち

「無口な君を忘れるな」

義務と責任に 取り憑かれ
小さな嗚咽を 飲み込んで
それすら 笑顔で遮った
君はどうして 無理をする

あればならぬと 奮い立ち
恥をかくなと 叱りつけ
そうして 自分を守るのか
背負った重荷に 身が軋む

なんでもなかった あの頃の
昼間の 小さな公園の
木陰に触れる 風のよな
無口な君を 忘れるな

見栄や外聞を 掻き抱いて
できないものを 見下ろして
見上げるものを 選んでは
それに及ばぬ ことを責め

金がなければ 生きられぬ
だから どうにか役に立つ
自分でなければ 価値はなく
こころは 二の次三の次

大人になった 君の手を
草穂の波が なでつける
なんでもなれた あの頃の
無口な君を 忘れるな

ぼくと遊んだ あの頃の
雲の白さを ただ見つめ
春の日差しに まばたいた
無口な君を 忘れるな
GRAVITY
GRAVITY22
くまきち

くまきち

自分を正当化しようとする力はすさまじく、ひとりの思考程度で抑え込むことは難しい
己を律するために効果的なのは、他者であり、それも憧憬や信仰に近いものであればなおよい

自分を正当化するため、複雑な論理を使おうとしていたら、大抵それはまやかしである。
GRAVITY1
GRAVITY20