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くまきち

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「飛ばされた燕」

ひゅーっ ひゅーっ
燕は白い つめたい風にのされ
空気のはざまを 飛ばされていたのでした
雨粒が羽毛にはじけ じわっと広がり
群青のからだに 水をふくませて
そうしたかと思えば すぐに去っていきます

まるで燕を 置き去りにして
世界が踊っているよう
だって 歯牙にもかけないんですもの
この ちいさな ちいさな
なんでもないような 命

悲しいほどの荒々しさに
燕は息もできぬほど
どこまでも 飛ばされていきました

どこまでも どこまでも
どこまでも どこまでも、、、

、、、、、あっ!

飛ばされた燕は 嵐のなか
一本の木の中に吸い込まれていきました
それはなんとも 立派で
美しい 風情のある木でありました
梳くような香りのする 深みのある茶色の幹は
少しばかりの風には びくともせず
たおやかな葉は しかし水をはじき
激しい雨の音だけを 木肌へと響かせています

燕は過ぎ去った 嵐に
目をぱちくりとし
一息ついて 太い枝にもたれかかりました
そうして
あまりにも安心してしまったものですから
じわじわと 涙が出てきてしまいました
ちいさな羽は さわさわと かすかに揺れ
もっとちいさく つぶらな目は うるうると
透明な粒をながしています

ぴ と声を漏らすと 
もう抑えられなくなってしまって
ぴぃぴぃ と嗚咽が漏れました
胸が抜け落ちるくらい 悲しかったのです
燕にとって 世界は友でありました
しかし どうしてか 
今日は燕に牙を剥いたのです
それが悲しくて 悲しくて
燕はこころのままに 泣きました
その声は ちいさいはずなのに
不思議と よく響きました

それを見ていた 美しい木も また
悲しい気持ちになりました
なんてちいさな命が
なんてかわいそうなんだろう

しかし いくら美しい木といっても
枝はあっても 手を持たず
実をならせても 与えられず
風にさざめいても 
やさしく お話しをすることはできないのです
そのはがゆさに 木は 燕とともに
静かに泣くのでした
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