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【お試し企画】テーマに沿ったSSを投稿しよう

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ゆめさき

ゆめさき

雲を見上げた午後

旅への憧れを、いつの間にか失っていた。
年を重ねるごとに、世界は不思議と小さくなっていく。
人並みの仕事をしていれば、ちょっとした旅行くらいなら簡単に行けてしまうからだ。

夏。茹だるような暑さの中、俯き加減に歩いていた。
もともと下を向きがちなのに、その暑さが拍車をかける。
淡々とした日々と、容赦ない熱気にうんざりし、つい仕事を放り出してコンビニに立ち寄った。缶チューハイを一本買い、店先にある、コの字を左に九十度傾けたようなベンチに腰を下ろす。プルタブを開け、一口含むと、自然と顔が上を向いた。

ーー久しぶりに空を見たな。
夏の空には、入道雲がゆっくりと立ちのぼっていた。
子どもの頃、紅の豚やラピュタを観て、あの雲に向かって飛んでいきたいと思っていたことを思い出す。此処ではないどこかへ、遠くへ行きたいと願っていた。
いまの生活に大きな不満はない。けれど、僕は退屈していたのだ。

どこか遠くに行こう。
一週間だけ休みを取って、行き先はどこでもいい。ただ旅に出よう。観光をする気はない。見知らぬ町に、あたかも住んでいるかのように滞在したい。外に出るのが億劫なら、ホテルやカフェで本を読みながら過ごせばいい。

それだけで、空に浮かぶ雲のように身軽になれると思った。
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浅葱ノア

浅葱ノア

外を見ると沈む夕日で赤くなっていた。
これから目的地に向かう車中、後部座席には2人分の荷物でいっぱいだ。
「楽しみだね」
助手席に座る彼女が笑顔で言う。これから彼女と婚前旅行に向かう。場所は彼女が設定したナビしか知らない。
「どこ行くの?」
彼女に行き先を聞くと、彼女は答えてくれない。
「秘密だよ」
彼女はそう言うと、楽しそうにYouTubeで音楽をかけ始める。曲は2人が好きなアーティストの最新曲。
高速道路に入ると、なんとなく関西方面に向かっているような道のりだ。途中のパーキングエリアで休憩を挟みながら、静岡で降りた。静岡に入ってから空に星々が小さく見える。
「静岡って珍しいな」
「そうかな?」
静岡に進むと、商店街の街頭が灯り次々と店仕舞いをしている。
「今日の宿泊先は決まってるのか?」
「もちろん、ナビに入れてるよ」
彼女は答える。それでも目的地までなかなか到着しない。道はどんどん山の中に入っていく。
「どこだ?」
「まだ先だよ」
道のりがどんどん険しくなっていく。
「おい!!どこに向かって……」
俺は助手席を見ると居たはずの彼女の姿がない。俺の顔が一気に青冷める。
「どこ向かってんだ!!」
俺は元に戻ろうとナビに触るが、壊れているのか反応しない。

「嘘だろ!!やめてくれ!!」

そこで目が覚めた。時間は朝の4時、自分の部屋のベッドの上にいた。
「夢か……」
俺と彼女の婚前旅行は夢の話だった。俺には彼女がいない。俺の妄想の話だ。
「……なんなんだよ」
俺は部屋のベッドの上で頭を抱えた。
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べな

べな

投稿してくださった皆様、企画参加いただきありがとうございました!!m(_ _)m

次回以降のイベントにもぜひ参加頂けるよう、惑星主も良い企画を準備したいと思います[照れる]
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べな

べな

――其処にはあった。
見慣れない景色。
虹色の空。不思議なかたちの雲。青青と茂った山並み。

――其処にはあった。
見慣れない風景。
歪な形の建物。妙に目立つ塔。小さく見える乗り物のようなもの。

――其処にはあった。
見慣れない光景。
言葉の分からない他人。変な鳴き声の鳥。聞こえるはずの無いさざ波の音。

――其処にはあった。
見慣れない情景。
少しも瞬かない星星。それを反射する足元の湖面。流れる涙。貴方の声。

すべてがあった。
私以外のすべてが。

死後の世界が在るならば、そこで貴方に会えるならば。
この夢は実在しないのだろう。
夢は夢で、真実は真実。

この旅の終わりに見た夢が死後の世界ならば。
私は、すべてを見て、知ってきたのだろう。

これ以上知ることは無い程に。

天を仰ぐ。
其処には何も無い。
残された寿命もあと僅か。

やがて私はすべてを忘れるのだろう。
今迄見てきたすべてを。

これは返上である。
人生とは借り物。
そうして最後に魂を返すのだ。

物語の最期には何がある?
貴方の最期には何が見えた?

私は貴方が視えました。
終焉に寄り添った手よりも。

貴方が。私には視えました。

#小さなものがたり
#ss
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manacuba

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別の惑星での出来事。子供たちに起こった素晴らしい励まし。眠りまでのいくばくかの時間。星空を見上げ、私たちがかつていた惑星を見つける。地球での思い出は、言葉にはできない。大きな悲しみ、それ以上に素晴らしい出会い。あの人の思い出は海底の遥かな闇の中。詩人も彼女の思い出は言葉にしない。誰にも伝えない。言葉ですら。あの人の思い出は永遠に私の中だけに。あまりに大きな悲しみ。すべて物語。

詩人は子供たちに語る。私は悲しみの側からやってきた。すべての素晴らしい芸術は悲しみの側からやってきた。私たちは永遠への途上で多くのものを失ってきた。喪失は真夜中に星空を見上げる勇気を。勇気は遥かな海の向こうに希望を届ける意志を。意志は言葉の形を取り、こうして子供たちに人生の価値と、芸術が何を意味するかを伝えた。今も希望は星々になり夜空に輝き続ける。すべて物語。
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manacuba

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八月の夕暮れに、僕はふと空を見上げる 
そして君のことを想う 
君は今どこにいる 
懐かしい日々 
君は僕にフランス語を勧めた 
そして僕はパリにいる 
空の青は日本と同じ新鮮な深みを湛えている 
この空は君のところに通じている 
パリと東京、別々の時を刻む 
それぞれ違う目的に向かって
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べな

べな

お試しでイベント作ってみました。
まだ考慮すべき事はあるかもしれませんが、
まずはノリで参加していってみてください[大笑い]
注意書きも今後の指標になるので念の為ご一読ください。
不明点は私宛にどうぞ[ほほえむ]
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