共感で繋がるSNS
GRAVITY(グラビティ) SNS

投稿

ゆめさき

ゆめさき

雲を見上げた午後

旅への憧れを、いつの間にか失っていた。
年を重ねるごとに、世界は不思議と小さくなっていく。
人並みの仕事をしていれば、ちょっとした旅行くらいなら簡単に行けてしまうからだ。

夏。茹だるような暑さの中、俯き加減に歩いていた。
もともと下を向きがちなのに、その暑さが拍車をかける。
淡々とした日々と、容赦ない熱気にうんざりし、つい仕事を放り出してコンビニに立ち寄った。缶チューハイを一本買い、店先にある、コの字を左に九十度傾けたようなベンチに腰を下ろす。プルタブを開け、一口含むと、自然と顔が上を向いた。

ーー久しぶりに空を見たな。
夏の空には、入道雲がゆっくりと立ちのぼっていた。
子どもの頃、紅の豚やラピュタを観て、あの雲に向かって飛んでいきたいと思っていたことを思い出す。此処ではないどこかへ、遠くへ行きたいと願っていた。
いまの生活に大きな不満はない。けれど、僕は退屈していたのだ。

どこか遠くに行こう。
一週間だけ休みを取って、行き先はどこでもいい。ただ旅に出よう。観光をする気はない。見知らぬ町に、あたかも住んでいるかのように滞在したい。外に出るのが億劫なら、ホテルやカフェで本を読みながら過ごせばいい。

それだけで、空に浮かぶ雲のように身軽になれると思った。
【お試し企画】テーマに沿ったSSを投稿しよう
【お試し企画】テーマに沿ったSSを投稿しよう
参加
ショートストーリーの星ショートストーリーの星
GRAVITY
GRAVITY121
話題の投稿をみつける
関連検索ワード

雲を見上げた午後