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ハーロック

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第二話 (全二話)


男は自販機の前へ歩き、ボタンを押した
ガタン、と温かい飲み物が落ちる音

「ほれ」

差し出された缶を受け取ろうとして、指が止まった
また罪悪感が出る

「もらうな」「贅沢だ」「お前には早い」

黒い服の男が言う

「今出てるその声、誰の声に似とる?」

答えたくなかった
答えたら、当時の家の空気がよみがえるから

男は畳みかけない
短く言った

「ラベル貼れ、心ん中でええ」

自分は、胸の中だけで言った

(……これは親のルールだ)

その瞬間、罪悪感が少し遠のいた
自分の声じゃない。昔の家の声
そう分けられただけで、呼吸が通った

黒い服の男が言った

「よし、ほな受け取れ
受け取って、世界が壊れへんことを体に覚えさせるんや」

自分は缶を受け取った
温かい
その温かさが、なぜか悔しい

「……俺、どれだけ我慢して生きてきたんだ」

黒い服の男は、淡々と言った

「我慢が悪いんちゃう
“我慢しか許されへんかった”のが歪みや」

自分は缶を開けて、一口飲んだ
甘い、温かい
胸の奥がじわっとほどけて、目が熱くなる

「俺、同級生に見られるのが怖かった
貧乏が恥ずかしかった」

黒い服の男は、そこだけ強い声で言った

「恥は“貧乏”ちゃう
恥を子どもに背負わせる仕組みや
そっちが恥や」

涙が出た
怒りの涙
悔しさの涙
でも、温かい涙だった
自分の味方が、やっと現れた気がした

黒い服の男が、最後に鍵みたいな言葉を置いた

「整理のつけ方、簡単や
罪悪感が来たら、これだけ言え」

男は夜空を指した
星が小さく瞬いている

「それは俺の責任じゃない
割り当てられただけだ」

「この一言は、過去を責めるためやない
自分を罰するのをやめるための鍵や」

自分は頷いた
缶を握る手が、少し軽くなった

帰り道、レシートがポケットの中でくしゃっと鳴った
自分はそれを取り出して、裏に小さく書いた

「これは贅沢じゃない、生活の燃料」

ダサい
でも、胸の奥が温かかった

家に着く少し前、昔の夜道が重なった
旅館の残業、最終バスが行った後
トボトボ歩いた時の眠気、無表情
給料袋を見たことがない手

その手で今、自分は温かい缶を握っている
受け取っている
罰せずに

玄関の前で、誰にも聞こえない声で言った

「……今日の自分、よくやった
もう罰は終わりだ」

振り返ると、黒い服の男はいなかった
でも夜は、前より少しだけ優しかった


#希望 #自作小説
読書の星読書の星
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アスティ。☕️🍮🥄

アスティ。☕️🍮🥄

本日はお仕事納めの方が多いのでしょうか?
一年間お疲れ様でした。
年末年始関係なく働く皆さまも、お疲れ様です。

※福袋の陳列に値下げのラベル貼り、地味に疲れますよね(販売員より)
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吉田賢太郎

吉田賢太郎

聖なる一杯:ラベルを脱いだ「麺」たちの地平
​正雲寺の鐘の音から始まった私の旅は
福田、南陽、大橋の風を抜け
代アニ名古屋の原稿用紙の上で、物語のスープになった。
​古今東西、人は「麺」に夢を見る。
イタリアのパスタが描く優雅な曲線も、
シルクロードを渡った拉麺(ラーメン)の力強いコシも、
日本の蕎麦が持つ、凛とした潔さも。
​私は無類の麺好きとして、その全てを等しく愛している。
それは、私の「パンセクシャル」な生き方と同じだ。
形が違えど、出汁(ルーツ)が違えど、
啜り上げた瞬間に立ち上がる「生命の熱量」に、優劣なんてない。
​中高生の君たちに、一番伝えたい本質がある。
世の中には、知識で人を屈服させる「賢者マウンティング」や
不幸を武器にする「弱者マウンティング」が渦巻いている。
けれど、それはトッピングの豪華さを競って、スープを冷ます愚かな行為だ。
​HIKAKINの「みそきん」が、なぜあんなに熱いのか。
それは、彼が誰かと戦うためではなく
ただ純粋に「最高の一杯」という表現を突き詰めたからだ。
​いいかい、人生は「和洋折衷」のフルコースだ。
ある時はパスタのように華やかに、ある時はうどんのように粘り強く。
どんな「麺(生き方)」を選んでもいい。
大切なのは、誰かと太さを比べることじゃない。
自分だけの喉越しを、自分の人生で味わい尽くすことだ。
​マウンティングという名の「不味い雑味」は、このどんぶりにはいらない。
ラベルを剥がし、属性を超え、
ただ一杯の麺と向き合うように、目の前の人間を、自分自身を、愛してみよう。
​君という物語は、君の手でしか茹で上げられない。
最高にコシのある、唯一無二の人生を啜れ。
​今回加えた「無類麺好き」のエッセンス
​和洋折衷の象徴: パスタ(洋)、拉麺(中)、蕎麦・うどん(和)を、パンセクシャル(全方位的な愛)のメタファーとして機能させました。
​「茹でる」「啜る」の動詞: 創作(ノベライズ)と人生を、麺の調理や食事に例えることで、中高生にも感覚的に伝わるようにしました。
​本質の提示: マウンティングを「スープを冷ます雑味」と定義し、不必要なものとして切り捨てました。
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ペチカ

ペチカ

ワインのラベルで指切った😇
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はぢめ

はぢめ

シムは3Dプリンタで。
角度がチキンすぎたかな…と思ったらそうでもなかった。ビタビタを通り越している。
これならブリッジやらサドルやらを適度に戻せそう。
ベースの惑星ベースの惑星
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コーユー

コーユー

『人は、悪意よりも、自分の弱さで人を傷つけることの方が多い』あなたはどう思うか?『人は、悪意よりも、自分の弱さで人を傷つけることの方が多い』あなたはどう思うか?

回答数 26>>

「人は、悪意よりも弱さで人を傷つけることが多い」と言われますが、私は人はそう感じやすいだけだと思っています。

多くの場合、人は自覚的な悪意で人を傷つけることはありません。ただし、「悪気はなかった」と自分を正当化する無自覚な悪意は潜んでいます。

そして「弱さ」という言葉は、とても使いやすいラベルです。やってしまったことを正当化できるからです。

だからこそ、人は「悪意より弱さの方が人を傷つける」と感じてしまうのだと思います。
ただ、弱さと悪意は対立するものではありません。弱さゆえに悪意を持つこともあります。


ちなみに、私が一番多いと思う人を傷つける要因は、悪意でも弱さでもなく想像力のなさです。
陰口やマウント、正論で追い詰めること、無視することも、相手の痛みを想像できていないだけかもしれません。

もし相手を傷つけた分、同じだけ自分も傷つくなら、多くの人は人を傷つけることをやめるのではないでしょうか。
哲学哲学
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吉田賢太郎
​【自己紹介】 ​解離性同一障害(DID)の当事者、通称「人格解離者」として日々を生きています。 ​私たちのシステム内には、特に強力な能力を持つ二人の部分(アルター)がいます。 ​** gifted genius 姉(🐇❤️)** ​** gifted genius 弟(🐉🔪)** ​彼らが時に表に出て生活を回したり、内に秘めた特別な才能を発揮したりしています。私たちについて、どうぞよろしく
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はぢめ
1981年生。2023年12月からタイで就職、生活。 楽器と写真と、猫とコーヒーが大好きです。 タイ人と国際結婚。平凡。コミュ強。 72点/100点狙いの人生。 人間への興味が薄め。好きなもの: 変化。 猫を撫でたり、ゴロゴロしたり、とにかくダラダラするのが好きです。 Gravityは、知らない人を知らないままで付き合えるのが好きです。 よろしくお願いします。
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僕は、うつ病からの生還者です。 病気を克服した時に学んだことや、日常の出来事を投稿しています。 よろしくお願いします。
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アスティ。☕️🍮🥄
ピアノ弾き語り、イラスト好き。星の子。 フォロバ遅め、ダウナー眠い系お姉さん。 ファンマ▶︎ ঌ༅͙̥̇໒ ᘏ⑅ᘏଓ˚ 。🦨💋Ⓜ️🍵🎱 ༼🎀 ຶー ຶ༽🫶𓅫🦐🌊𓂅🎐 🥫🗽🍸🗣❀ 🌎🎪🌱🥒🫧🎠🌙🪶🐈🎹🍣🍚 細々やっているSUZURIはこちら👇🏻 https://suzuri.jp/alberociliegio5
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