デヴィッド・ストーン・マーティン画廊 # 25#レコードジャケット #JAZZレコード ☆『フリップ・フィリップス』 村上春樹のコレクションの中からのデビッド・ストーン・マーティンが手掛けたジャケット作品にフォーカスした本を紹介している。 約1ヶ月振りの投稿である。前回まではレスター・ヤングだったからレスターが終わって少々間延びしてしまった。 村上春樹が次に紹介しているミュージシャンはフリップ・フィリップスである。テナーサックス🎷奏者だ。村上春樹のこの本にも記されているように、彼は同時代のテナーサックス奏者のイリノイ・ジャケーと同質で集団演奏の中で特色を出す人であり、スモール・コンボで主役を張るだけの力量はない。やはりこの時代においてインプロヴァイザーとして一流の人たちは、それなりの個性が際立ち演奏能力に長けた人達が持て囃され、現在でも尚、名を残しているものだがフリップは時代に貼り着いたたまま終わった。彼の代表作は専らノーマン・グランツ主催のJ.A.T.P.コンサートの実況盤でイリノイ・ジャケーとの壮絶なテナーバトルを繰り広げた闊達なソロがいちばん有名だが、村上春樹は「ただうるさいだけ」とにべもない。が、私もそう思う。 しかし、ノーマンからはJ.A.T.P.での功労が認められて、デビッド・ストーン・マーティンの立派なイラストが設えられたジャケットを衣裳された幾つかの盤が残されている。村上春樹はそれらを丁寧に説明している。因みに、フリップ、と云うのは彼のニックネームでその迫力あるソロで聴衆をひっくり返す=FLIPする と云う意味がある、と村上春樹は解説している。 最初に紹介されたのは1950〜1951年に掛けて録音されたスモールコンボが多数所収された『FLIP WAILS』である。このジャケットを観て、良くぞここまで想像出来るな、と私のような美術音痴には羨ましい限りの村上春樹だが、サックス🎷を吹くフィリップスの左右両脇に、音楽に合わせて踊っている人と、椅子に座ってじっと聴き入る人の姿が描かれている。「楽しく踊るなり、音楽にじっくり耳を澄ませるなり、お好きにどうぞ」と云うデビッドからのメッセージなのだろうとのことである。見事な解釈であると思う。 幸い、Apple musicのサブスクにはその殆どがアップされているので、本回から暫くはそうしたフリップのソロをピックアップしてゆこうと思う。先ずはこのアルバム曲から♫Blue Room などはいかがか?