太平洋戦争(大東亜戦争)がずはりそれでしょう。戦前の日本の正義:「日本は欧米列強から虐げられているアジアの人々を解放するために戦っているのだから、これは正義の戦いだ」→戦後は、「日本はアジアの国々に対して悪事の限りを尽くした」となった。これをきっかけに、最近の朝ドラ『あんぱん』では、「逆転しない正義」と称して、「飢えている人に一切れのパンを与えることは、いつどんな国でも逆転しない正義」としていた。上杉謙信の「敵に塩を送る」精神にも通じる、日本人らしい正義観ではある。しかし、私はこれにも異を唱えたい。例えば、2500年前、インドにいた殺人鬼・アングリマーラのような人にも食べ物を与えて生きながらえさせたらどうなるか。一切れのパンを与えたがために、何百人もの人が殺されることだってありうる。したがって、正義は悪となりうるし、その逆も無いとは言えない。しかし、逆転するのを前提としながらも最適解を選び出してゆかねばならないのが正義の宿命であり、人間の歴史でもあるのでは無いだろうか(やや、ヘーゲルの弁証法的な見方かも知れぬが)。この意味で、「食べ物を与えること」が逆転しない正義とするのは、一種のエポケーであると思う。(……とはいえ、戦後の混乱期からそこまでたどり着いただけでも、アンパンマン作者・やなせたかしさんは偉大だと思います。だからこそ、子供から大人まであらゆる人の心に響く作品を作られたのだと思いますので、誤解なきよう)