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### うさぎのルルと、ふたつの道

むかしむかし、緑の森に、ルルという名前の白いうさぎが住んでいました。
ルルはなんでもすぐに決めちゃう子で、「これがいい!」と思ったら、もう迷いません。
でもそれが、ときどき大きなトラブルになっちゃうのでした。

ある朝、ルルは「おなかがすいたなあ」とつぶやきました。
目の前に、にんじん畑が見えました。
「わあ、にんじん! これを食べよう!」
ルルはぴょーんと飛び込んで、大きなにんじんを一本をガブリ!

でも……そのにんじんは、くまさんの大事なお誕生日用の特大にんじんだったのです。
くまさんがやってきて、びっくりして泣きそうになりました。
「ルルちゃん、それは僕の……」
ルルはあわてて謝って、にんじんを返しましたが、くまさんはがっかり。
ルルも「ごめんね……」と耳をぺたんと下げてしまいました。

その日の夕方、ルルはまたおなかがすきました。
今度は森の奥で、きれいな赤い木の実を見つけました。
「わあ、おいしそう! これを食べよう!」
またすぐに飛びつこうとしたとき……ふと、賢いふくろうのおじいさんが枝に止まっていました。

「ルル、ちょっと待ちなさい」
「えー、でもおなかがすいてるもん!」
「決める前に、いつも『選択肢をふたつ』用意するんだよ。
 ひとつだけしか見ないと、たいせつなものを見失うよ」

ルルは首をかしげました。
「選択肢をふたつ……?」

ふくろうのおじいさんは、ゆっくり教えてくれました。

「たとえば今、目の前に赤い実があるね。
 選択肢A:すぐに食べる
 選択肢B:ちょっと調べてから食べる
 どっちがいいと思う?」

ルルは木の実をぐるっと見てみました。
すると、赤い実のすぐ横に、小さな札が……
「毒キノコに似せた偽物の実です。食べたら3日寝込むよ。by いたずらキツネ」

「わああああ! 危なかった!!」

ルルは冷や汗をかきました。
「Aだけ見てたら、死んじゃうとこだった……」

それからルルは、なんでも決める前に
「選択肢AとB、どっちがいいかな?」
と自分に聞くようになりました。

ある日、川の向こうにおいしそうなクローバー畑が見えました。

すぐに飛び込もうとしたけど……
「待てよ、選択肢をふたつ!」

選択肢A:そのまま川を飛び越える
選択肢B:橋を探して安全に渡る

ルルはちょっと歩いてみたら、すぐ近くにしっかりした丸太の橋が!
無事にクローバーをたくさん食べて、大満足でした。

また別の日、おともだちのりすちゃんが
「ねえルル、一緒に高い木に登ってどんぐり取ろうよ!」と誘ってきました。

ルルはワクワクしたけど、やっぱり……
「選択肢をふたつ!」

選択肢A:りすちゃんといっしょに登る
選択肢B:地面で落ちてきたどんぐりを拾う

ルルは自分の短い足と、ちょっとビビりな心に気づいて、Bを選びました。
りすちゃんがどんぐりをポンポン落としてくれて、結局ルルのほうがたくさん集まりました。
「ルル、賢いね!」とりすちゃんもニコニコ。

それからというもの、森のみんなが言いました。
「困ったときはルルに相談しよう。ルルはいつも『ふたつの道』を見せてくれるから!」

ルルはちょっと照れながら、でも誇らしげに言いました。

「大事なのは、いつも『ひとつだけ』を見ないこと。
 『AとB、どっちが私に合ってるかな?』って考えること。
 それだけで、世界がぐーんと広くなるんだよ!」

そしてルルは、今日も森で
「選択肢AとB、どっちにしようかな~?」
と、楽しそうにスキップしながら歩いていました。

おわり。

──道に迷ったとき、心に迷ったとき、
小さくつぶやいてみてね。
「選択肢、ふたつ。」
それだけで、あなたの前にもきっと、
新しい道がぱっと開けるよ。
GRAVITY
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