精神科臨床における初期の応用行動分析学1.行動分析学を初めての臨床場面への応用・インディアナ大学の学部生Fuller(1949年)当時Skinnerが勤めていた。植物状態にある男性の右腕の動きに対して、砂糖入りのミルクを強化子としてオペラント条件づけを行うことに成功(Bijou, 2001; Cooper, Heron, & Heward, 2007 中野訳 2013; Fuller, 1949)。・最初に記録に残っている報告Lindsley(Skinnerの門弟)精神科病棟の入院患者にオペラント条件づけの原理を応用して、それを行動療法(behavior therapy) と名付けた(1953) (Lindsley, 2001; 祐宗・春木・小林,1972)。・入院中の統合失調症患者の不適応行動に対して、看護師による介入を行う研究が中心となる。2.オペラント原理を応用した研究が増加した1960年代(Kohlenberg et al., 1993)・ナースステーションへの頻回の入室・食事時の介助要求(Ayllon & Michael, 1959)・盗食やタオルの貯め込み(Ayllon, 1963)・病的発話(Ayllon & Haughton, 1964)・精神科病棟において発声のない2名の統合失調症患者の発話をガムでシェイピング(Isaacs, Thomas, & Goldiamond, 1960)・複数の適応行動に対してトークン・エコノミー法を導入(Ayllon & Azrin, 1965)・実験室場面の吃音への介入(Goldiamond, 1965)。 3.支援対象の拡大・JABAが創刊(1968年)、対象が拡大、標的行動を客観的に定義し、介入方法を系統的に操作することでその効果を検証する研究。↓・広場恐怖の患者に対して、 病棟から離れることができた距離を従属変数として称賛の効果を検証した報告(Agras, Leitenberg, & Barlow, 1968)・閉所恐怖の女性に対して、閉ざされた部屋に滞在できた時間(部屋から出るまでの時間)を従属変数として、滞在時間のフィードバックを独立変数とした報告・先端(ナイ フ)恐怖症の女性がナイフを見る(ナイフが入った箱の扉を開けていた)時間を従属変数として、フィードバックおよび称賛の効果を検証(Leitenberg, Agras, Thompson, & Wright, 1968)・強迫性障害の女性が手洗いをする(洗面所に行く) 回数を従属変数としてエクスポージャーの効果を検証 (Mills, Agras, Barlow, & Mills, 1973)・アルコール依存症の男性に対して、血中アルコール濃度(アルコールを飲む行動の所産)を従属変数として3ドル分のクーポンチケットの効果を検証(Miller, Hersen, Eisler, & Watts, 1974)など。これらの研究によりは、基礎研究で得られた行動原理が、ヒトを対象とした精神科臨床場面にも応用可能であることを示した。 【参考文献】仁藤・奥田・川上・岡本・山本(2021)精神科臨床における応用行動分析学の実践と研究, 行動分析学研究 第35巻 第2号【ベストコメント】愛だよ、愛。心ですよ、ココロ!