最高裁判所の「先例拘束性」→最高裁が示した判例(特にその法的理由部分)は、下級裁判所だけでなく、最高裁自身をも事実上拘束し(大法廷判決で変更されない限り)、裁判の公平性や判断基準の統一を図る重要な規範となる原則です。 これは法源に次ぐ重要な役割を持ち、特に憲法判例は立法府・行政府にも無視できない影響を与え、司法の安定と発展に不可欠ですが、判例変更の可能性も存在します。 先例拘束性のポイント拘束される対象: 下級裁判所は最高裁の判例に拘束されます。最高裁自身も、大法廷判決による判例変更がない限り、原則として自らの判例(特にratio decidendi(判決理由の核心部分))に拘束されます。「判例」とは: 判決の結論を導くために不可欠な法的理由付け(ratio decidendi)を指し、付随的・偶発的な意見(obiter dictum)は含まれません。重要性: 裁判所間の判断基準を統一し、手続きの公平性を確保します。法令の条文に次ぐ重要な規範として機能し、法務担当者も注目すべきです。憲法判例の特殊性: 憲法規範としての性格が強く、立法府・行政府にも強い影響を与えますが、その変更は慎重に行われます。判例変更: 先例は絶対的なものではなく、大法廷での判決変更によって新しい先例が作られることもあります(例:特許法における進歩性判断の変遷など)。 具体例大法廷判決: 最高裁大法廷が判例を変更する(例:昭和35年最大判(砂川事件)における政治的行為の司法審査性に関する判断など)ことで、それまでの先例が変更され、新たな拘束力が生じます。事実上の拘束力: 判例がない事項でも、下級裁判所の有力な裁判例が実務上の先例として影響力を持つことがあります。 このように、先例拘束性は、司法の安定性を保ちつつ、社会の変化や新たな法的課題に対応するために、判例を通じて法を発展させる上で中心的な役割を担っています。