2025年のCATVの最新＆人気コンテンツ -GRAVITY(グラビティ) SNS

中学の時、アメリカのワイオミング州の
ララミーに1年間留学した。

私の主な友人は、ショーン、ブラッドリー、
そしてタイラーだった。
全員オタクで、ショーンは科学系で自分の部屋の
ドアにはアインシュタインのポスターが
貼ってあった。彼が一番おとなしめな性格だった
ブラッドリーはゲームオタクで、PSを愛してた。
しかしディスクの扱いが雑で部屋に散乱してた。
タイラーもゲームオタクだったが、機械全般が
好きな感じで、iMacがある横に天体望遠鏡が
あった。タイラーの家が一番デカくて豪邸で
庭は庭というより原っぱで、日本の小学校の
校庭くらいの広さがあった。
家のリビングの中央には暖炉があり、2階に
タイラーの部屋とは別にゲーム部屋があった。
そこで私は初めてN64で007をやり、
トイレに行った友の周りに他の3人で
動体検知爆弾を設置して、戻ってきたら
動けない状態にしたりして遊んだ。
夜はそのバカ広い原っぱで指鉄砲サバゲーを
してた。真っ暗で何も見えない中を匍匐前進し
僅かな隆起を利用して近づいて、口で
バンバン言い合ってた。

私の家は集合住宅だった。ただ日本の団地やアパートとはまた違う。二階建ての家が繋がって集合している。平屋みたいなものかもしれない。
セントラルヒーティングになっていて、膝丈まで
降り積りような豪雪の中でも、家の中は暖かい。
リビングには小さなブラウン管テレビがあり
CATVが見られた。カートゥーンネットワークを
よく見ていたが、実際面白かったのは番組より
CMの方だった。文化がより知れる。

学校には日本で言う「組」なんてのはない。
それぞれに割り当てられた授業時間に
それに適した教室に行く。その為に
個人にロッカーが割り当てられている。
洋画でよく見るアレだ。
当時日本人は私1人だけで、可愛がられた。
日本のオタク文化はそんな田舎町にも浸透していたからだ。

件の3人を家に呼んで一晩馬鹿騒ぎした事もあった
「Mr.ビル」という粘土の人形が滅茶苦茶にされるVHSを誰かが持ってきて、酸欠で死にそうになる程笑った。今も調べればYouTubeで一部観れるが
まぁ内容は言わずもがなだ。
誕生日パーティーをやった事もあった。
名前もよく知らない女の子達が何故かやってきて
ビビったが、後に聞くと私はモテていたらしい。
ただ私がそういう感情を持ち合わせていなかった

1人、ローズという少し年上の女の子と母経由で
仲良くなった。彼女もセーラームーンとかが好きなオタクだった。絵も描いていたので気が合った
ある日ローズの家でお泊まりすると、家の中で追いかけ回された。ベッドに隠れると上に乗ってきて滅茶苦茶にされた。恐怖だった。
あとは地下にやはりN64があって、時のオカリナを彼女の姉がやっていた。ゼルダ怖いと思った。
アメリカにはゲームのレンタル屋があった。
ゲームをビデオのように借りられるのだ。
日本もあれば良いのにと思った。

マクドナルドは自分でケチャップとマスタードを
入れるディスペンサーがあった。
道の向かいにバーガーキングがあったが、その時は行った事がなかった。

少し車を走らせればウォールマートがあり、
そこには全てが揃っていた。
食料品、雑貨、おもちゃ、果てには銃器。
ゲームボーイのカセットが日本では5000円のものが、そこでは5ドルで売っていた。まだ1ドル100円台の時代だ。
何故そんな違いが出るのか、今でも分からない。

自転車で少し走ればダウンタウンだ。
ララミーは西部劇で有名で、まだその面影が
ダウンタウンには少し残っていた。
小遣いなんて無いが、雰囲気を楽しむのに
ぶらりと自転車で走るにはちょうど良かった。
ただそれが徒歩なら危険だったと思う。
ダウンタウンとはどこでもそういう場所だ。

その他には何も無い。自然が広がっている。
少し走ればバッファロー、池にはビーバー
冬は車の窓ガラスに氷が張り、前が見えなくなる
不便は不便だ。

だがそれが良かった。多くが無いが故に
一つ一つの物を大切に出来た。
その心の余裕を持つ事が出来た。
煩雑で大量の情報に踊らされる事もない。
心の中にいつも空があり、心地いい風が
吹いていた。
今の私の心はヘドロが詰まり、その中に大量の
寄生虫が蠢いている。
今の日本人の多くが同じだろう。
もしかしたら今のララミーも。

もうあの時代には戻れない。
私達は捨てる事が出来ない物を手に入れてしまった。引き算ができない。常に情報や物は足し算になって、整理がつかないまま凄まじい量と質が
押し寄せてくる。一抜けたも通用しない。
渦潮に飲み込まれるだけだ。

それでも願わくば、あの頃感じていた風を
もう一度感じたいのだ。
記憶はその為にある。そしてそれは
誰にも共有する事が出来ない。

人気

関連検索ワード

新着

おすすめのクリエーター