共感で繋がるSNS
人気
ナッツ

ナッツ

#読書日録

高橋源一郎
『君が代は千代に八千代に』
  Mother Father Brother Sister

何かが書かれているから小説であるのは言うまでもないけど、何を書いているかがわかってしまってはいけないような気がしている。
ほんとうのことは誰にもわからないように書かれているんじゃないだろうか。
もちろん、ニホンのある問題が書かれているんだろうと思う…でも、問題がうまれる前には争いがあるんだと言った人がいて、ニホンの問題とされる前には私たちのちいさな争いが蠢いてるんだ。
問題が問題だとわかるには、その前にしっかりとちいさな争いを観察する必要がある。
そう、僕たちは生きていて、生きているだけでも、怒ったり悲しくなったり、嫉妬したり貶めたりする。
それらをしっかりみること。しっかりとみて、それから問題をわかるんでも遅くはないと思う。しっかりみることができれば自分で問題をつくることだってできるだろう。
ただ、僕たちは僕たち自身のことをなんにもみえていないから、問題もわからないし自分で問題をつくることもできない。
僕たちは何をみてきたんだろうか。
問題や言葉ばかりをみて、わかったことにしているだけなんじゃないか。

「問題は誰もちゃんと聞いていないことだ」

もう誰も聞いていないのに、言葉だけが山積みにされている。それがどんな問題なのかは誰もわかっちゃいない。
死者のように誰にも言葉が通じない…だから、
まずはその人の生きている声に姿に、きちんと耳を澄ましてみるんだ。
そうすれば目の前にいる家族だって、それがどんな関係なのかわかるはずなんだ。
GRAVITY

Family Song

星野源

GRAVITY
GRAVITY26
ナッツ

ナッツ

#読書日録

吉増剛造
『吉増剛造詩集』


穿たれた紙片の、焦げた匂い、さそわれ、
ガラスから漏れた陽光に逆らいながら列車は、
尾をひく、
「魔」とは離れ離れに、胸はちいさく、
吸い込む風のつよさに肺は凍えて、
 やがて、キャベツが黒く萎びて…
塵の街、氷の家、
灯油の「魔」の匂いに部屋は焼かれて、
       無謬の世界に行く駅の、
照らされた花、
(walk、walk)
夜なれど、
       花はこの世の誤りなのだ
 「疾走詩篇」は、
裂かれたあとに咲く、
   季節をまたぐくらいなら、
      裂けろ、今生の詩になるな!
  分岐路に運ばれる詩篇のみ、
 「魔」の一行は千々に別れ、
瞬間の火花の喉を覗くのだ

GRAVITY

String Quartet No. 2 in F-Sharp Minor, Op. 10: II. Sehr rasch

アマリリス四重奏団

GRAVITY
GRAVITY22
ナッツ

ナッツ

#読書日録

千葉雅也 他
『思弁的実在論と現代について
          千葉雅也対談集』
  ポスト精神分析的人間へ 
   ーーーメンタルヘルス時代の〈生活〉
           ×松本卓也

私の記憶からあの人の風景へ
隣の人は誰だか
「ほんとう」って、壊れるもの
終わらない(陥没と波)
眼窩に雲間の青さ
病めない心を、またリセット
みずからの始まりの全体になる
ふふふふふふふ
回遊しながら笑い
空しくない、バイバイ私たち
何度も毎日それでも、生々しく驚いて
いつもカタワレを歩いてみて
歩いた徒労
不和の発見
そういうものものを話せること
ひとつの銀河
目の前の人と洞窟
ひとりではいられない身体だから、ふくらみがたくさんあるんだ
争っている読書を
詩の喘ぎだした声にまかせて…
GRAVITY

Come Here Go There

レイ ハラカミ

GRAVITY4
GRAVITY20
ナッツ

ナッツ

#読書日録

フランツ•カフカ
『審判』


「K」が、逃れられない罪を被っているなら私たちにするべきことなどないように、物語は逃れられない時間の進行によって私たちに読むべきことなど与えられないまま、「K」とは無意味に私たちの物語は書かれてしまい消されてしまいます。「あなたはあなたのことを聴いていてください。」「自分自身の自問自答に狂わねばなりません。」「そして、誰の問いにも答える権利を行使するのです。」私たちはそのように目の前の画面に向かってひとりでに喋りかけていました、が、羊毛のセーターに包まれた男が背後から覗き込んできて私たちの心中に手を差し出しすと、気持ちとは裏腹に訳もない言葉を吐き出して隅々にまで自分の分身を語らせようとするのです。
この世界にはどこからか人間がやって来ては去る機械原理がそなわっているだと思わずにはいられません。私たちはどこから来て、どこへ行くのか知る義務があるように生きています。すなわち、「K」が今も尚この世界のどこからか来ては去り、私たちの心をからめとっていく物語が書かれているのです。私たちが生きている以上、いつもなんらかの争いが生まれているのですが、すると後から知らない顔をした「問題」や「物語」がやって来ては去っていくのです。これを、人間が小説と呼びはじめてから数百年が経とうとしています。そして、私たちは誰も真実を語らなくなったのです。
GRAVITY

夜のガスパール: 第2曲: 絞首台

アリス=紗良・オット

GRAVITY
GRAVITY19
ナッツ

ナッツ

#読書日録

高橋源一郎
『君が代は千代に八千代に』
     殺しのライセンス


誰かが生きながらえようとすれば、誰かが殺される、そんな世だった。
星の輝きのためには、悲劇が描かれて…
誰が殺されているのかを太陽はしらない…
「殺しってなんだか晩餐のような静けさなんだな。やっと少しだけわかったような気がしたよ。誰にも教えてもらえなかったからね。生きようとすることにだって、ライセンスを必要とするんだからね。」
誰が生きてるかなんて想像したくもないな。僕を殺しにくる人のことなんて、想像したくない。
そして、僕が殺しにいく人のことなんて…。

小説っていうのは想像することなんだってさ、
知らなかったよ…
GRAVITY

Black Swallow I

Chihei Hatakeyama

GRAVITY
GRAVITY16
ナッツ

ナッツ

#読書日録

古川日出男
『ベルカ、吠えないのか?』


届け!
その声が、血の大きな流れの絶たれる瞬間まで。
人間の頭の中に爆弾を植えつけて、
あらゆる意味の地層の上を駆け、
交じり合う声の威光で、
渦巻く言葉の中心に逆らい、
散り散りに走れ!

速さは、ない。だが、止まっていた時限爆弾を進めろ。今の生きる、一瞬のあいだに、小さく死んでいく声を聴け!自らの声ではない。あらゆる生きものの反響音だ。イヌに吠える運命があるように、頭を垂れるがいい。
そこに居て、いつまでも聴いてみろ。
GRAVITY

HOWL

Mr.Children

GRAVITY
GRAVITY18
ナッツ

ナッツ

#読書日録

永井均
『マンガは哲学する』


哲学の目の前にたつ
震え、狂い、崩れる
ふりだしにもどる…
「書いてきた日々も、
ちいさくうずくまってしまったように、」
考えたていたことは
〈考えること〉とは縁遠く
生きていくも未然に行き詰まり
〈生きていくこと〉の外に放り出される

語りえぬもの、そして無意味
心を攫っていく身体
反転する倫理
無音の文字
眼の裏側にある光のない景色は
目の前の固有性に影を落とした

〈小景〉のための展望台にきて、
夢の中で、夢をみている自分の夢に、
全て、すぎてゆくものをくりかえすことなど…

GRAVITY

果敢無い光線 (feat. Kei Matsumaru)

江﨑文武

GRAVITY
GRAVITY17
ナッツ

ナッツ

#読書日録

松岡正剛
『外は、良寛。』


涅槃に近づきたくて、若さを飛び越えて、衰える身体に嬉々として老いを歓迎する。
散るときには、うらもおもても見せて逝く、もみぢのように生きた人を、いとしむ心が包んだ庵の寂しさよ…

死について書くとき、言葉の足らない、足る前に静まる定型の詠に、言葉と情緒の境がある。どちらも行き来するように、うらとおもてとどちらでも、あの人がいて、詠むと読むを遊ぶように。

すべてが、良寛だった。
GRAVITY

Setsu

橋本秀幸

GRAVITY1
GRAVITY13
ナッツ

ナッツ

#読書日録

東畑開人
『野の医者は笑う
      ~心の治療とは何か~』


誰もが一度は"告白"という一冊を書くのだろうと思う。私を私にしてくれた物語を書くのだ。

あなたはよく笑った、日常の外で
暗闇の車内で
私の知らない私を、笑う
私も笑う
どこに生きているのかわからなかった
生き方を笑ってくれている

心と身体の半分は不在で
もう半分は存在の証明にさらされている
これでは癒やしどころではない
透明と刻印によって引き裂かれてしまう
現実はどこにあるのだ

そう、私はずっと現実を探していたんだ。傷つけられた現実に帰って癒されようとしている。
人と出会い、出会った人と居る。
そして生き方を得ていくことが癒やしになる。
それぞれにふえていく傷つきが、多様な生き方をふやしていく。

GRAVITY

Lip Noise

TOMOO

GRAVITY2
GRAVITY19
ナッツ

ナッツ

#読書日録

東畑開人
『野の医者は笑う
    〜心の治療とは何か?〜』


傷ついた治療者と癒やす病者、
未だ人々はこのあわいにいる。

だけど、ここには癒やす病者しかいなくて、
離合集散する塵は
引力に負けて
衝突するばかりだ。
宇宙は
神さまを演じて
神さまは
健康を演じて
健康は
友達を演じた

野の友だちがいた、神社の境内であそぶ友だちを思い出した、ボールが茂みの奥の日の当たらない暗がりに消えた、それを、ひとりでとってこなければもう、遊ぶことなんてできなかった、ボールはひとつだけだった、友だちもたくさんいなかった、まだ、病も知らない、宇宙も知らない、野の友だちがいた、生き方をおしえてくれた、野の医者のようだった、
GRAVITY

touten No.1

江﨑文武

GRAVITY
GRAVITY14
もっとみる
新着
ナッツ

ナッツ

#読書日録

松岡正剛
『フラジャイル』


人は、何のために葛藤しているのか。
それは宇宙から来た複雑性のフラジリティによるらしい。
ああでもないこうでもないとやっているうちに、とんでもないところまできてしまって、気がつけばずいぶん変わってしまっている。
あるころから、あなたは変わってしまってかわいい。わけもわからずしゃべりつづけて、体もおおきくなってやがて萎れて。
あなたは、ずうっと壊れて泣いていたのに、強くなろうと必死だったね。曖昧で微妙な毎日を、記憶と行ったり来たり震えていたね。
子どものこわれやすさを寂しい本でさらに混乱をまねきながら、わがままに微弱な熱を発して一から作り直せば、揚々とちいさな世界を生き延びていた。
溶けてやわらかかった、型に付いてやってきては錯乱して、もう一度やり直すごとに予想できないような形に敷衍していった、葛藤よ。
あなたと、
ここまできた、
GRAVITY

Tired Mind

Hana Stretton

GRAVITY2
GRAVITY15
ナッツ

ナッツ

#読書日録

番外編 鑑賞録
ジョン•フォード
『駅馬車』


いつまでも未然でありつづけ、
未熟にも読むことになる『ジョン•フォード論』が見ているもののために…

歩いてゆく、ふたり。
靴音が鳴り響く夜の影と店の光。
映画は引き返せない荒野でありながら、追われることに囚われ続けなければ終わらない。
一歩、飛び出して撃つ。
見えない戦いの絶望を映し出す。
安堵と希望は、この一歩のまたその止められない終わりの先にある。終わってもなお、続いてゆく荒野のために銃声はならなければならない。そのようにしか越えようのない明日への断絶を映してくれるものでなければ、生きることを見ることにならない。
振り出された死の見えない行方と生まれた子を渡す終点の灯りに、私たちの明暗はいつまでも見られている、歴史の瞬きとして映画が撮られている限り…。
GRAVITY

How's It Gonna End

トム・ウェイツ

GRAVITY
GRAVITY10
ナッツ

ナッツ

#読書日録

番外編 鑑賞録
大林宣彦
『野のなななのか』


    「、ほとばしって泣きますわ」月などでていないのに、サンドウィッチを野の、花とは枯れないものだから、朝焼けが燃やしてくれるのね、晩秋の雪「、静かになさって」土に汚れたキャンバスなら。
     あなたはだあれ、ピアノも静かになって降る花の、七七日。
だからね、会いに来たのよ。
     なななのか、わからないけど…「、そうなのね、」若葉が夏の日のあいだに落ちていって、車を停めて爆撃機を追いかけたら、あの人に会えたのに…。
     丸裸の人なんてどこにも…。絵の中の人、って誰。絵の中の…夕べ見たの、絵の血の虹の花。わぁ!って驚いて、すぐに亡くなってるのを教えてくれた、青い空と赤い空とどちらが裸なのかね、描いてみようって…。
    「私はだあれ、だあれ、だ、あ、…」いつまでも戦争なのね。いつまでが戦争なの?昨晩終わったのは、緑のおしゃべりだったのね。
     どうしてもあなたとはお話できないの、どうしてもね。音楽が鳴りつづけているのを誰もとめられないわ、朝の焼けるようなあなたの血を誰もとめられないわ。
GRAVITY

野のなななのか

Pascals

GRAVITY
GRAVITY14
ナッツ

ナッツ

#読書日録

保坂和志
『あさつゆ通信』


どんな日常にも面影が横たわっているとして、身体の運ばれた残像、習慣の投げやり、思い出せない労苦、喜んで傷ついた好奇心の数だけ未だなかったものが描ける。
日常は終わらなくてやかましい、嬉しい、余計だから頷いてやる。いちばんくだらないベッドの揺れる一日を激しく寝る、起きる、思い出す。能天気な太陽のいない、水の流れない川も、口喧嘩のやまない夜のように忘れてしまいたい日常で、思い出せない涙と体温を読みながら泣く、読みながら思い描く心の川。
洪水をすごいと思う子どもが、死ぬことを怖いと思わない子どもが、心を生きているし憂鬱な日々を憶えていられるから、よく転んだところのカマキリの死骸をきれいに写して見せてくれた。子どもを知らない時代の記録を読んでいても、今までずっと子どもを生きている自分の心は生まれたばかりで、うとうとしている。
どんなにわからない言葉があっても、日常の身体の滞りにはついていけなくて、たくさん書いたからといって身体は女性にならないし、ましてや男性にもならない。詩を書いたぶんだけ人間を忘れられるのは人間らしさの日常のなかだけで、いつまでも星を見ていたりいつまでも恋を憶えてはいられない。
不安なままで書いたことやようやく出てきた言葉が馬鹿馬鹿しく卑しかったとして、もう一度思い出せばそんな自分のことなど忘れていた。そんなことを書くまではただ、雲も川も水も、人も毛も犬も 皿も枕も夢も、ずっと淫らに求めていた。
だから空は青いのではなく、深いのだ。
GRAVITY

Music for 18 Musicians: XII. Section X

スティーヴ・ライヒ

GRAVITY
GRAVITY10
もっとみる
関連検索ワード