すれ違った黄色いTシャツの青年からお祭りと屋台のにおいがした。騒がしいにおいじゃなくて懐かしいにおい。両側屋台の、その日だけは堂々と道路を歩けたあのにおい。彼は毛穴の底からお祭り男だ。片や甚平を着て夏のハットを被って誰も気にせず堂々と歩く男からは香水のにおいだけがした。