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ハーロック
大晦日の商店街は、寒いくせに人だけは熱かった。
「歳末大感謝」「福袋」「年越し特売」の旗が風にバタバタ鳴って、どこかの店からは演歌が漏れている。
その真ん中に、さらに場違いなものがあった。
巨大なおでん鍋。
そして鍋の前に立っているのは、黒い服の男。
黒いコート、黒いマフラー、黒い手袋。
なのに頭には――白いモコモコのうさぎ耳当て。
通行人が二度見する。
三度見したおばあさんが、標準語で言った。
「あなた、誰なの?」
黒い服の男は、鍋をかき混ぜながら関西弁で答えた。
「ただの通りすがりや。今日は寒いから、“あったかい係”やっとるだけや」
「その耳当ては……?」
「耳が冷えると“みみず”…ちゃう、耳ずや。つまり耳が…ずっと寒い。……今のは忘れろ」
すでに周りが笑い始める。
黒い服の男は笑わない。真顔のままギャグを投げる。
鍋の横には張り紙。
「年越し“福おでん”無料配布! 先着100名!」
子どもが叫ぶ。
「サンタじゃないの!? うさぎなの!?」
黒い服の男は即答。
「サンタちゃう。うさぎでもない。ワシは“おでんタ”や」
「おでんタ?」
「そう。“おでん”+“サンタ”で“おでんタ”や。……ほら、分かりやすいやろ」
周りが「なるほど!」と笑う。
ベタは強い。ベタは裏切らない。
⸻
少し離れたベンチに、今年ずっとしんどかった人たちが座っていた。
笑えない一年。踏ん張り続けた一年。
「年越しって、何がめでたいんだ」と顔に書いてある。
黒い服の男が、おでんの器を二つ持って歩いてくる。
湯気が街灯に照らされて、ちょっとだけ神々しい。
「はい、自分。顔が冷えとる。まず出汁や。出汁は裏切らん」
ベンチの人が標準語で言う。
「……あなた、誰ですか」
「通りすがりや。年末は理屈より塩分。塩分は正義や。…“えんぶん”だけにな」
「そこ、ダジャレ?」
「せや。年末やから“年末”に“ねんまつ(念末)”…ちゃう、年末はダジャレ末や」
ベンチの人が吹き出した。
硬かった空気が、湯気と一緒にほどける。
器の中には、大根、たまご、ちくわ。
そして――ウインナー二本。
「おでんにウインナーって、ありなんですか」
黒い服の男は胸を張る。
「ありや。ウインナーは“運”が“いいなー”で、運いいなーや」
「……分かりやすい」
「分かりやすさが正義や。難しいギャグは腹に入らん」
周囲が笑う。
黒い服の男は、ベンチの人の顔を見て言った。
「ええか。今日だけは“反省会”禁止や。反省は来年に“持ち越し”や。
……いや、年末やから“年越し”や。反省は年を越してからや」
「言いたいことは分かりました」
「分かったら食え。冷めたら“おでん”が“おでん(おー、でん…)”って電気みたいに弱くなる」
「それはちょっと無理がある!」
「無理があるのが年末や!」
ベンチが笑いで揺れる。
笑いながらも、誰かがぽつりと標準語で言った。
「今年、何もいいことがなかった気がします」
#希望 #自作小説

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ひとみまる


maverick





湾星☆爆走族2025
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DJの湾星★爆走族2025です。
さて、今日は大晦日。今年最後の選曲になります。洋楽と邦楽1曲ずつかけます。まずは洋楽。。。洋楽となると、やっぱり個人的にはこの曲になるんですよねぇ。
長年のプロレスファンなら、武藤敬司の初期の入場曲といっても通じるでしょう。それでは。
ザ・ファイナル・カウントダウン
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はな🐹

あべ茶
遠隔じゃないのほんま天才です

いちご
TAKENOKODESUはどのように使われますか?
TAKENOKODESUは、主に日本の文化や日常生活に関連する表現で、特に「竹の子です」という意味を持ちます。この言葉は、竹の子(たけのこ)を指し、春の季節に特に人気のある食材です。以下に、TAKENOKODESUの使い方をいくつか紹介します。
食材としての使用: 料理の中で「TAKENOKODESU」を使うと、竹の子を使った料理を指すことが多いです。例えば、竹の子ご飯や竹の子の煮物など。
会話での表現: 友達との会話で「今、竹の子を食べてるよ」と言いたいときに、「TAKENOKODESUを食べてる」と言うことができます。
文化的な文脈: 竹の子は日本の春を象徴する食材であり、季節感を表現する際にも使われます。「春になったら、TAKENOKODESUが出てくるね」といった具合です。
このように、TAKENOKODESUは食材としてだけでなく、文化や季節感を表現するためにも使われる言葉です。

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