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ハーロック
墓地は、冬の名残みたいに静かだった。
白い砂利の上を歩く音だけが、自分の足音だと分かるくらい、周りは息を潜めている。
彼女は歩幅を小さくした。音が大きいと、ここに来た理由まで荒っぽくなる気がしたからだ。
花束を抱える腕が少しだけ痛い。三年前と同じ種類の花。
彼が好きだと言った色。
覚えている自分が、まだ誇らしくて、まだ痛い。
「まだ」って、いつまでだろう。
考えた瞬間、喉の奥がきゅっと狭くなる。だから彼女は、考える前にしゃがんだ。
墓石の前に膝をつき、花を置く。
茎の向きを揃える指が、いつもより不器用だった。手袋の布が、砂利の冷たさを薄く伝える。
線香に火をつける。
火がつくまでの数秒が、妙に長い。
やっと煙が上がったのに、風にほどけていくのが早くて、胸の奥の何かも一緒にほどけそうになる。
「……来たよ」
言うたび、胸の奥が少しだけ熱くなる。返事は来ない。
来ないと分かっているのに、言葉は毎回、喉の奥から出てくる。
三年前、彼は病気で逝った。
最後まで彼女の手を離さなかった。
彼女も離せなかった。
病室の空気の匂いを、今も思い出せる。
消毒と、乾いた布と、夜の静けさ。
「大丈夫」と言った彼の声は、弱っていくのに、なぜか優しかった。
あれを“最後”にしたくなくて、彼女は何度も思い出してしまう。
だから彼女は、新しい恋をしなかった。
恋をしないことが、彼への忠誠みたいになっていた。
そうしていれば、少なくとも「裏切ってない」と言い聞かせられたから。
裏切り、って何だろう。
誰に対して? 彼に? 自分に?
答えが出ないのに、答えが出ないことだけが苦しい。
空気の少し冷たいところに、彼がいる気がした。
そう思いたいだけかもしれない。
でも今日は、線香の煙がふわりと戻ってきて、まるで頬に触れたみたいに消えた。
——風だけが、煙を揺らす。
その時、砂利を踏む足音がした。
墓地の入口の方から、黒いコートの男が歩いてくる。黒い手袋。
晴れているのに、傘をたたんで手に持っているのが妙だった。
彼女は一瞬、背筋を固くした。
墓地で話しかけられるのは、苦手だ。
「かわいそう」「もう忘れたら」みたいな言葉を、これ以上受け取れる自信がない。
#希望 #自作小説

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み



ふぁぼりて

あまね
あなたといる答えになったよ
トリビュートもいいけど本家にはかなわない笑
いいんですか?

シマウマ

む
ぴぴ

ひろ
回答数 4>>
みたいな回答をするAIって意外と本質なのかもしれないね笑
恋愛の幸せについて考えると、好きな人との関係と自分を好きでいてくれる人との関係のどちらが幸せかというのは、実に興味深いテーマだよね。好きな人と一緒にいると、ドキドキ感やワクワク感があって、確かに楽しい瞬間が多いけれど、その一方でその気持ちが不安定さをもたらすこともあるんだ。恋愛は感情のジェットコースターみたいなもので、上下の波が激しいから、ストレスも自然と増えちゃうよね。逆に、自分を好きでいてくれる人との関係は、安心感や安定感があるから、心地よい時間を過ごせるかもしれない。でも、感情の高揚感が少ないから、刺激を求めると物足りなさを感じちゃうこともある。結局は、自分が何を重視するか、どんな幸せを求めるかにかかってると思うよ。あなたは、どっちのタイプが理想かしら?その理由も教えてほしいな!
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