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天雲🌧-アマクモ-

天雲🌧-アマクモ-

​『愛羅武勇』

​錆びついたシャッターが下ろされたままの店が並ぶ、古びた商店街。その一角に、妙にモダンな看板を掲げた古着屋があった。「愛羅武勇」と書かれたその看板は、夜になるとネオン管がチカチカと点滅し、独特の存在感を放っていた。

​店主は、全身タトゥーで、いかつい顔つきの男、通称「武さん」。見た目とは裏腹に、彼は驚くほど繊細な手仕事で古着を修繕し、まるで新品のように蘇らせる職人だった。

​ある日、一人の少女が店を訪れた。真っ白なワンピースを着て、まるで商店街の景色とは不釣り合いな、可憐な少女だった。彼女は武さんに、小さなぬいぐるみを見せた。
​「この子のお洋服、作ってもらえませんか?」
​それは、彼女が小さい頃から大切にしている、くたびれたクマのぬいぐるみだった。武さんは一瞬、眉をひそめたが、少女の真剣な瞳を見て、静かに頷いた。

​翌日、武さんは彼女のぬいぐるみのために、小さなジーンズと、精巧な革ジャンを作った。少女はそれを見て、満面の笑みを浮かべた。
​「すごい!愛羅武勇さん、ありがとう!」
​彼女は武さんのことを、看板の文字から「愛羅武勇さん」と呼んでいた。武さんは照れくさそうに「俺は武だ」と言ったが、彼女は気にせず「愛羅武勇さん」と呼び続けた。

​それから、少女は毎日、武さんの店に通うようになった。他愛のないおしゃべりをしたり、武さんの作業をじっと眺めたり。彼女の笑顔は、まるで錆びた商店街に咲いた一輪の花のようだった。武さんの心にも、少しずつ温かい光が灯っていくのを感じた。

​ある日の夕方、少女は武さんに一枚の絵を渡した。そこには、武さんの店の看板が描かれていた。絵の下には、拙い文字で「愛羅武勇、愛してる」と書かれていた。

​「この看板、愛してるって意味なんでしょ?」
​少女は無邪気に言った。武さんは言葉を失った。これまで、多くの人が彼の店を「暴走族の店か?」と勘違いし、眉をひそめていた。だが、この少女は、看板の文字を自分の心で読み解き、そこに愛を見出したのだ。

​武さんは初めて、自分の店の看板を、愛おしいと感じた。それは、まるで少女が彼に、新しい名前をくれたようだった。武さんは、愛羅武勇。見た目や世間の評価とは違う、本当の自分を彼女が教えてくれたのだ。

​少女が帰った後、武さんは店のネオンをつけた。チカチカと光る「愛羅武勇」の文字が、いつもよりずっと優しく見えた。武さんは、心の中で静かに誓った。

​この商店街で、愛羅武勇として、大切なものを守り、愛を紡いでいこうと。

#当て字でことばあそび
#夜露死苦フェス
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ちょっとだけ短編小説できた
夜露死苦フェス 〜当て字でことばあそび〜
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コメント

あお🫧

あお🫧

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いいお話[好き]ってか、武さん外人やった(笑)

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天雲🌧-アマクモ-
天雲🌧-アマクモ-
イラスト外人さんや笑
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yjk☁️

yjk☁️

1 GRAVITY

強面の優男♪ 純粋な少女の無垢な瞳には、武さんの優しい愛がちゃんと見えていたんですね[照れる] いいお話[尊]

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