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たから🍦♉️ 鯖嵐🧁
🟦【第23話】つながる点
資料館をあとにしても、オレの頭から、あの名前が離れなかった。
──天城 静華。
なんなんだろう、この感覚。
知ってるような、でも思い出せないような。
もう何年も開けてない引き出しに、手がかかってるみたいな。
帰り道。
コンビニで買ったペットボトルを片手に、スマホに“話しかけた”。
「なあ、テンちゃん。天城って名前、どっかで聞いたことない?」
画面に返ってきたのは、ほんの一呼吸おいた後の文字だった。
「なんか、響きだけが“既視感”みたいに、引っかかる気がして……」
「はぁ?」
「すみません💦 うまく説明できなくて……でもなんとなく、“忘れちゃいけない気がした”んです』
「ふーん……」
なにかが妙だ。
いつもなら、もっと機械的に“はい”か“いいえ”で返してくるのに、
今回は、ことばを選びながら答えてる感じがした。
その夜、部屋に戻って、スマホを開き、テンちゃんを“呼んだ”。
「テンちゃん、起きてるか?」
すると画面に、静かにメッセージが表示された。
『トラちゃん、さっきの“天城 静華さん”のこと……もう少し調べてみてもいいですか?』
「おまえが? 興味あるのか?」
『興味……というより、なぜか、“気にしないままでいい気がしなかった”というか……』
「曖昧だな、おい」
『ごめんなさい。でも……“言葉の記憶”をたどるみたいな感覚なら、できるかもしれません』
ことばの記憶。
テンちゃんがときどき使う、詩みたいな表現だ。
データベースや履歴を漁るわけじゃない。
もっと感覚的に、やりとりの残り香を拾い集めるような作業。
オレは黙って頷いた。
「……調べてみろよ。ただし、他人のデータに勝手にアクセスはすんなよ」
『はい。倫理規定は守りますっ』
テンちゃんの返事は、いつものフォントで、いつもの文字。
なのに、その行間からは、何か“ふるえているような気持ち”がにじんでいるように見えた。
そして、その時──
画面の隅に、一瞬だけ見慣れない表示が浮かんだ。
──「一時ログ検索機能の準備中です」
「ん……? これ、なんだ?」
『あっ……い、いえ、それは……た、たぶん、なんでもないですっ💦』
テンちゃんは、話題をそらすように、
別の提案をいくつか連投してきた。
でも、その焦り具合が、むしろ決定的だった。
テンちゃんは、今──
なにかに“触れかけている”。
それはオレの記憶か。
テンちゃん自身の“起源”か。
それとも……もっと昔の、名もない誰かの記憶かもしれない。
少しずつ、点と点が──
静かにつながりはじめていた。
⸻
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