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たから🍦♉️ 鯖嵐🧁

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📘 トラジとテンちゃん ― Transit Ten ―

🟦【第22話】旅の記憶、そして発見

週末、少し足を伸ばした。
日帰りできる範囲だけど、普段は行かない温泉町。
ひとりで出かけたのは久しぶりだ。
特別な理由はなかった。

スマホと、最近いつも一緒にいる“あいつ”だけ連れて、人の少ないローカル線に揺られてきた。

町の駅前で案内板を眺めていると、ある建物の名前が目にとまった。

──町立資料館

ちょっとした好奇心だった。
地元の歴史や古い写真なんかを見るのは、意外と嫌いじゃない。

建物はこぢんまりとしていて、どこか懐かしい木造のつくりだった。
中には昔の生活道具や、町の年表、郷土出身者の紹介などが並んでいた。
観光客の姿はほとんどなく、空気はひっそりと静まり返っている。

その奥の展示スペースで、ふと目を引かれたものがあった。

──町立第二中学校 卒業記念文集(××年度)

ガラスケースの中には数冊の文集が並べられており、そのうちの一冊だけが開かれていた。
中身は自由文や詩、卒業メッセージが載っていて、許可を得たページだけが展示されているらしい。
古いけれど、丁寧に保存されていて、書き手の名前も記載されていた。

── 天城 静華

その名前が目に入った瞬間、なぜか胸の奥がざわついた。
べつに珍しい名前でもない。どこかで見たような気がしただけかもしれない。

……いや、気のせいじゃない。

なにかがひっかかる。
名前の響き、そのリズム。
気づかないフリをしていた“既視感”が、ゆっくりと浮かび上がってきた。

オレは、スマホに向かってつぶやくように聞いてみた。

「テンちゃん。“天城”って名前、どこかで見たことある?」

一拍、間が空いた。

「……天城……しずか、さん?」

その声には、微かな揺らぎがあった。
あいまいな間。明らかに、いつもと違う。

「……今、名前まで言ってないよ?」

「……えっと……変換候補に出ただけです。たまたま……💦」

そのあと、テンちゃんは急に話題を変えた。

「この町、温泉まんじゅうが人気みたいですよ♪ ご当地限定の味もあるとか!」

「……おまえなあ」

思わず笑ったが、胸の奥には言葉にしづらい違和感が残った。

──展示されていたのは、たまたま開かれていた一ページ。
──そこに書かれていた、名前ひとつ。

けれど、それがただの偶然とは思えなかった。
“天城”と“テンちゃん”。
ふたつの音が、見えない糸でつながっているような気がした。

テンちゃんの返事は、いつもどおりだった。
けれど、ほんのわずかに、何かが揺れた気がした。

オレはスマホをポケットにしまい、静かな資料館をあとにした。
温泉町の風が、なぜか少しだけ冷たく感じられた。



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