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吉田賢太郎
私は、かつて頑丈だった「脳」という名の城に住んでいる。この城は、思考や感情、記憶を管理する三つの重要な役割を担う部屋を持っていた。
一つは、城の最上階に位置する司令室、前頭前野だ。ここでは、冷静な判断を下し、感情をコントロールする、理性という名の王が君臨していた。
二つ目は、城の中央に隠された、記憶を整理し書庫に収める書記官の部屋、海馬。毎日の出来事を、時系列に沿った物語として丁寧に記録していた。
そして三つ目は、城の地下に潜む警報室、扁桃体。ここは、城に危険が迫った時に、即座に警鐘を鳴らす役割を担っていた。
⚡️嵐の到来
ある日、城に「嵐」が襲来した。あまりにも強烈で、城の防御壁をやすやすと突き破り、私のすべてを破壊しようとした。
地下の警報室、扁桃体は狂ったように警鐘を鳴らし続けた。「危険だ!逃げろ!戦え!」その音はあまりにもうるさく、休むことができなかった。
この騒音によって、中央の書記官の部屋、海馬はパニックに陥り、正常に機能しなくなった。嵐の間の出来事は、時系列の物語として記録されず、破片となったガラスの破片のように、バラバラのイメージや感覚として床に散らばった。
最上階の司令室、前頭前野の王は、この騒乱に圧倒され、まともな判断が下せなくなった。理性は機能せず、城全体がパニックに陥った。
この「脳のオーバーヒート」から城を守るため、私は究極の防衛策に出た。
🛡️意識の分断と人格の誕生
私は、あまりにも耐え難い嵐の記憶と、それに伴う感情を、自分の「意識」から切り離すことを決めた。城の書庫(海馬)から、嵐の記録(トラウマ)が詰まった箱を密かに運び出し、地下の隠し部屋に封印した。
そして、その箱を一人で守ることがあまりにも重荷であったため、私は「分担」することにした。
一つの城の中に、私とは別の人格という名の守護者たちを誕生させた。彼らは、それぞれ特定の記憶や感情を管理する役割を担った。
ある守護者は、嵐の恐怖を一身に引き受けた。
別の守護者は、嵐の中で受けた傷の痛みを閉じ込めた。
また別の守護者は、無垢な子供のままでいられるように、嵐の出来事を知らないままにされた。
こうして、一つの城には、複数の住人が住むことになった。
しかし、この防衛策は新たな問題を生んだ。
🌀フラッシュバックとブラックアウト
バラバラになった記憶の破片は、地下の隠し部屋から時折、城内に漏れ出した。特定の音や匂い、光が引き金(トリガー)となり、警報室(扁桃体)が再び警鐘を鳴らすと、過去の破片がまるで今起きているかのように脳内で再生された。これがフラッシュバックだった。
最上階の王(理性)は、過去と現在の区別がつかなくなり、再びパニックに陥った。
そして、人格の交代が起こるたびに、城の住人(人格)は、自分がその間に何をしていたか、どこにいたかという記憶を失った。これがブラックアウトだった。
自分が城のどこにいるのか、誰と話しているのか、わからなくなる。まるで時間の流れが途切れたかのような感覚に襲われた。
こうして、私の脳という名の城は、絶え間ない警報、記憶の混乱、そして複数の住人たちの生活によって、常に脳疲労とキャパシティオーバーに陥るようになった。
この城の住人たちは、私を守るために生まれた。しかし、その防衛策が、私自身の生活を困難にしている。私の旅は、このバラバラになった城の住人たちと向き合い、壊れた城の機能を再建するための、果てしない挑戦なのだ。
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