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おこげ
title【夢のコンパス】
小学5年生の夏 毎年の恒例となった、トモキの家に3人集まった。 「あーーー暇だーー 暇で死にそうぉおおー」 シゲは叫んだ。 「あのね人の家きてさ、しょーもないこと近所に 響かせないでよ、困るって」 トモキは呆れた口調で言った。
ナオトの方を向いてなんとか言ってくれと無言のメッセージをたっぷり込めて援軍を求めたが、、、 「さすがに暇で死ぬ人はいないんじゃないかな」 ナオトはポテチをつまみながら呟いた。
「なぁなぁなぁ。だってさ、俺たち1年から友達になってさ、夏休みいつも、ほぼほぼ3人でこうやってトモキの家に集まってさ、ゲームをオンラインで遊んだり、お菓子シェアしたりしてるよな。」 シゲの声のボリュームは止まらない。 「だから、声でけーのよ!外の人に聞こえたら、俺たち3人の会話に参加者増えるかもだろって。外の通行人がチャットルームに参加しました。ってさ」と、トモキ。 「さすがにこの部屋に通行人が突然扉開けて入って来ないんじゃないかな。」 「ユーモアよ、ユーモア。ナオトじゃなくて、暴走のシゲがボケに突っ込んできて話の流れを変えようと思ったのよ」 トモキはナオトを恨めしそうな目で見た。
シゲは炭酸ジュースを一気に飲んで、エネルギーを再充填。
「俺たちこのままずっとこんな感じなのかな? ヤバない?それって、ね。ヤバいよね?」
あおるシゲ。 「親に言われて塾行って中学受験の勉強してるやつはいるけどさ。そういうのは、俺たち3人みたいに親がそういう感じでなければこんなもんじゃん?」
冷静なトモキ。 そして、、、ナオトは、漫画を片手に持って、空いた手でポテチの袋に手を奥に突っ込んで、探っていた。
「まぁ、そうかもだけど。でもさ、俺は気付いてしまったわけよ。小5つまり、5年間、5年間同じこと繰り返してね?遊んでるゲームと、読んでる漫画が変わっただけじゃん。
あああー暇すぎて不安になってきたぁああ!」 「それはそれで楽しいじゃん。じゃあ、どうしろって言うのよ」
「、、、、、思いついた。
ゴッドからの天啓を受信。」
ナオトが急に真っ直ぐに立ち上がった。残りの2人はナオトの波動を感じたようにナオトを見ながら座りながら後ずさった。 ナオトは右腕を真っ直ぐに伸ばして天を指し示した。
「じゃあ今ここで3人それぞれの夢を決めよう。 そして、〝成人式の時に、夢の答え合わせ〟をしよう」
「はぁ?!??」トモキは目が点になった。 「、、、、ナオト!おまえ、たまには、いいこというじゃん!面白そうじゃん!俺たちそんなことしたことないし。やろうやろう!誰から言うよ?トモキ?おまえ、言いたそうじゃん?いっとく?」
なぜ?はぁ!?と開口一番にシゲがノリノリなのに指名するのかと、もう訳がわからないノリに戸惑いながら、このメンバー構成だったら、もうそうするしかないとトモキは腹を括った。 ナオトは相変わらず、棒立ちしたまま。あ、目をつぶってる。瞑想か?寝てるのか?? 「わかったよ。ちょっとだけ考えさせてよ。流石に」 頭の台拭きをギュッギュッと絞ってひねり出した一滴は・・・ 「パイロット、、、かな」 「おー!そうなんだ。なんで?」 「ちゃんとした理由なんてなくて、なんとなくだけど、海外に少し興味あるし、空飛ぶのいいなって。。はい!俺は言ったからね。シゲ、次はおまえがいいなよ!俺を指名したんだから」 「オッケー!俺は待ってる間に思いつきましたよ。俺の夢はお笑い芸人!人の笑顔見ていたいから」 そして、残るはナオト。 シゲとトモキが、自由の女神のように立ち尽くしているナオキを見上げると、ナオキは、急に目を見開いて。 「プロゲーマー」
3人は〝成人式で夢の答え合わせをする約束〟をしてから20歳を迎えた。 歳を重ねて生活の場がそれぞれ変わり、気づけば出会うこともなくなっていた。 そんな中、久しぶりにナオキから、シゲ、トモキに小学生のときの夢の答え合わせしようと連絡があった。
「久しぶりぃ!」3人は久しぶりに再会した。 「じゃあ小学生のときの夢の答え合わせ、していきますかね。」 ナオトがスマホを2人の前に突き出した。 スマホ画面には
〈小学生5年生の俺たちの夢〉 シゲ お笑い芸人 トモキ パイロット ナオキ プロゲーマー
「ナオト、マメだねぇ。 では、スマホの順番で、俺はお笑い芸人ではなくーー介護士になりました! なんだろ、介護士ってめちゃくちゃ人手足りないみたいなのよ、それ聞いてさ。なんかなら俺がやろう!力になろうって思えちゃったのよ!介護しながら、おじいちゃん、おばあちゃんと話をしていつまでも笑顔になっていて欲しいからさ。そうやってお笑いの力もつけたいなって」
「トモキ、お前はパイロットはどうなった?」
「俺?俺は旅行代理店で働いてるよ。パイロットは俺には現実的になんか遠く感じて、空、旅、世界の憧れとそばにいたいなって思ったら、みんなの旅のお手伝いさせてもらう旅行代理店を選んでた」
そして、、シゲとトモキは首をグイッと動かし、ナオトを2人で視線を送った。
ナオトは 「私がプロゲーマーから高校教師へとの夢の命題の変化には真に驚くべき物語りがあるのだが、成人式1日では短すぎるので、ここで話すことはできない」 「何を言ってるの?語り口調、急に変だし!」 「、、、、フェルマーの最終定理のオマージュ」 「高校で教えながら、eスポーツ部の顧問となるのだ!」
「あらあらあら、なーんだ、結局誰1人、小学生のときの夢を叶えてないじゃないか! あーあー、あの暇で死にそうなくらいたっぷりあった時間のリベンジにと思ったのに。 あの時間は必要だったってさ。昔の俺たちを肯定してやりたいじゃん」 シゲは演劇のワンシーンのように声に高低差をつけ、テンポも変えながら語った。 「シゲ、、お前、ほんとはそう思ってないだろ。 本心じゃないだろ」
「・・ああ、なんか、夢、外れてたけど、 なんか近いっていうか、、、、らしいよなって」
「わかるよシゲ。そうだな、なんでかわからないけど、小5のあのときと今、つながっている気がするな。あのとき、夢を言わなかったらさ、今も〝何者かになろう〟とは思っていなかったかもな」
介護士なんて夢にも思ってなかったけどさ、 …人の顔見て笑わせたいって気持ちは、変わってないかも。
空を飛んでるわけじゃないけど、誰かの旅のきっかけを作ってるって、ちょっと面白いよな。
ゲームは仕事じゃないけど、子どもたちと一緒に夢をもって部活でやるのもやりがいある。
「ナオト、お前はなんか言わないのか、
この流れは」
「我、小5とあの夏、汝らに、
夢のコンパスを授けたもうた」 「キィイイース!!」 ナオトはロックシンガーようにシャウトした。
一瞬、世界が止まった。
そして、
「あはははは、ナオト、おまえ、ずっとーーーと小学生のときから思ってたんだけどさ、 おまえ、なかなか変わってるよ!マジに!」 「だなだな、激しく同意」 「なんか腹減ったな、飯食いにいこー」
〈了〉
#プチストーリー #短編小説
#ジブンシゴトの1つ
#時が経っても変わらない関係

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