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みの_chill

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#短編小説
夜の帳(とばり)が下りる頃、俺は女連れで馴染みの居酒屋の暖簾をくぐった。 少し早いのか好きなカウンターの席に陣取ることができた。
ビールに失礼だけど、とりあえずはビール!と声を掛ける。

魚料理に定評のあるだけはある。荒くれどもの漁港の町ならこれくらいでないと皆納得しない。

芋焼酎のお湯割りをちびりやりながら女に「俺はジンベイザメみたいに、この大海をゆっくりのんびり泳ぐように生きてみたい」と酔いに任せて言ってみた。 「よく言うわよ、この唐変木が! 今まであんたまともに働いたことが無いじゃないか。ずーっと私におんぶに抱っこだったんだからね。何がジンベイザメだよ、私にはコバンザメにしか見えないよ!それなら明日からオキアミだけ食べてな!」 そこに大将までも「そうだよ、いつもここの支払いは彼女持ちじゃないか」ってダメ出しを言い放つ。

俺は俺の夢を語っただけなのにとぶつぶつ言いながら、エイヒレをむしり口に放り込んだ。
今夜も美味い肴なんだが、酒だけは苦かったよ。
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