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フェンリル5150

フェンリル5150

『のぞみと希の航海日誌 《Sips Log》』3



「事故だってよ‼」

「石油運搬船と旅客船の衝突だ!」

「全漁連は出せる船を全部回せ‼」

「早く乗員乗客を非難させろ!引火する前に急げ‼」

漁業組合の人たちが、バタバタと走り回る。
しかし、みんな夜中のうちに漁に出てしまっているので、残っている漁船は少なく、ここからはものの数隻が出れたくらいだった。

「伯方と三原の海上保安庁もスクランブルかけてるらしいけど、消火船が足りないらしい。タンクに引火したらどうしようもないな」

この辺りの島を繋いでいる旅客船なら、乗客乗員合わせて100人くらいだろうか。まぁ、車も合わせれば150人くらいは居るだろう。
ほんと、引火してないのなら急がないと。

「にゃぁぁ?(大変そうだね?)」

のぞみに振り返って話しかけると、彼女は黙って爆発音のしたほうをじっと見ていた。

ん?
瞳の色が…?

彼女の黒かった瞳の色が、紅く変わった?!えっ?!

「マレシ?行くよ。」

「えっ?!行くよって?!」

思わず普通にしゃべってしまった。
けど、なんで? なんでぼくの名前を?

困惑してドロドロで、もぅ思わず二本足で立ってわたわたと焦ってるぼくにのぞみは、その強い意思の宿った紅い瞳で微笑んで、もう一度言った。

「行くよ?マレシ。 あなたも渡れるんでしょ? ついて来なさい。積もった話はあとにしましょう」

「えっ?!はっ はいっ!」

なんだかDNAレベルで彼女の声には逆らえず、思わず返事をしてしまった。

そして彼女は海に向かうと、思いきり息を吸い込んで叫んだ。

「海に住まう海の子供たちよ! 私は日本唯一の海賊にして、世界最大最強の村上水軍の最後の長、希子きこ! 村上希子の名において命じます! 私と私の従者、希マレシを彼の地へと運びなさい!」


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